ブラックホーク・ダウンの紹介:2001年アメリカ映画。1993年10月3日、ソマリアの首都・モガディシュで実際に行われた作戦(作戦名:アイリーン)を描いた戦争映画。実際に戦闘に参加した元隊員達が多く出演した作品でもある。参加した隊員の中にはイラク戦争で命を落とした人物もいる。本作は、ソマリア内戦を描いたノンフィクション小説「ブラックホーク・ダウンアメリカ最強特殊部隊の戦闘記録(マーク・ボウデン著)」を元にして製作されている。
監督:リドリー・スコット 出演者:ジョシュ・ハートネット(エヴァースマン)、ユアン・マクレガー(グライムス)、トム・サイズモア(マクナイト)、サム・シェパード(ギャリソン)、エリック・バナ(フート)、ジェイソン・アイザックス(スティール)、ヒュー・ダンシー(シュミット)、 オーランド・ブルーム(ブラックバーン)ほか
映画「ブラックホーク・ダウン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ブラックホーク・ダウン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ブラックホーク・ダウン」解説
この解説記事には映画「ブラックホーク・ダウン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ブラックホーク・ダウンのネタバレあらすじ:起
1993年、長きに渡る民族紛争が続き未だ解決の糸口すら見えない泥沼にあるソマリア。政府は崩壊し無政府状態となったことで大混乱に陥っていました。アメリカは内戦終結と難民支援のため、国連主導のもとソマリアへ派兵していました。アメリカ軍は事態の解決を急促進させるべく、敵対している民族の指導者であるアイディード将軍の副官を捉える作戦を発動します。作戦名はアイリーン。総勢160名のレンジャーとデルタ・フォースが参加する本作戦は、ヘリでアイディード将軍派達の会合を急襲し副官2名を捕えた後、車両部隊と共に脱出するというもので、特別困難なものではなく30分もあれば達成できる計算でした。
ブラックホーク・ダウンのネタバレあらすじ:承
作戦当日、ブラックホークとリトルバードに分乗したレンジャーとデルタ・フォースの隊員たちは、会合場所へ向け進発。会合が行われているホテルを一気に急襲し、敵の副官2名を捕えることに成功します。しかし、作戦行動中、敵のロケット弾を回避するため大きく横に動いたヘリからトッド・ブラックバーン上等兵が落下してしまいます。副官達を捕えるまでは順調に進んでいた任務ですが、長時間遅延したことで上空援護のブラックホークに敵の放ったRPGロケット弾が直撃、そのまま墜落してしまいます。
ブラックホーク・ダウンのネタバレあらすじ:転
撃墜されたブラックホークの乗員を救うべく、墜落現場へ向かう隊員達ですが、ソマリアの民兵はそこら中から攻撃を加えてきており、思うように進むことができません。直後にもう1機のブラックホークも被弾し、墜落してしまいます。単調と思われた任務は、地獄の様相を示してきたのでした。捕えた敵の副官達を乗せた車両部隊も行く先々でバリケードに阻まれ脱出に手間取っています。そこに民兵の放った銃弾がドミニク・ピラ三等軍曹を直撃、遂に戦死者(KIA)を出してしまいました。やがて地上の隊員たちは最初の墜落現場へ到着するも、約90名のレンジャー隊員は数百人の民兵に包囲されてしまいます。
ブラックホーク・ダウンの結末
2機めの墜落現場には、デルタ・フォースの隊員2名(ランディ・シュガート一等軍曹、ゲーリー・ゴードン曹長)が到着、乗員を救うべく奮闘しましたが、善戦虚しく民兵の放った凶弾に倒れました。ガリソン少将は猛攻を受ける地上部隊を救うべく国連軍に救援命令を出しますが、作戦は極秘であったため救出準備に時間がかかり、直ぐに救援部隊を派遣することができません。次の日の早朝に救援部隊が到着するまで、レンジャーとデルタ・フォースの長い夜が始まります。翌朝の午前6時半、ようやく救援部隊が到着、地上部隊の隊員達は命からがら戦闘地域から脱出することに成功しました。18名の戦死者と73名の負傷を出し、ブラックホーク2機、車両その他多数の多大な損失を被った作戦は遂に終わりを告げたのでした。
この映画「ブラックホーク・ダウン」は、1993年のソマリア紛争にアメリカが介入した際、いつまでも事態の解決を見ない内戦に業を煮やしたアメリカ軍が、内戦の当事者の一人であるアイディド将軍を捕らえるべく計画したミッションを描く、マーク・ボウデン原作の同名のベストセラーを映画化した、軍事ドキュメント・ドラマだ。
予定通りに事が運べば、何の問題もなしに数時間ですべて決着が着くはずだったその計画が混乱を極めていき、結果として何の関係もない一般市民を含め1,000人以上の死者を出した究極の軍事的失策となったのだ。
映画は、そのミッションが坂道を転げ落ちるように収拾がつかなくなっていく様を、圧倒的な迫力で見せる。
監督がリドリー・スコットだし、出だしは快調、テンポのいい演出で話はどんどん進んでいく。
リドリー・スコットの演出は、視覚的効果以外では、無駄がなく、脇道に寄らず、いきなり本題にズバリと斬り込む直線的な演出が特色だが、この映画ももちろんその路線は健在だ。
映画が始まってから30分くらいで、既にクライマックスみたいな戦闘シーンに入る。
敵の大将拿捕のためにヘリコプター(ブラックホーク)が、編隊を組んで波打ち際を進んでいくのだが、この編隊を組む戦闘機というのは、確かに戦争映画の醍醐味の一つではありますね。
そして、いざ戦闘が始まると、リドリー・スコット監督のパワー全開という感じで息つく暇もない。
しかも、このテンションの高さが残り1時間半、ずっと続くのだ。
スピルバーグの「プライベート・ライアン」の前半30分の戦闘シーン並み、いや、それ以上のテンションが、1時間半続くのだ。
しかも、リドリー・スコット監督お得意のエログロ描写満載で、はっきり言って、途中でまだ続くのかと少し食傷気味になり、この辺で少しスローな展開にならないものかと思ったほどでしたね。
この映画は戦争映画なので多くの俳優が登場しているのだが、主要な役は米軍指揮官のガリソン大佐に扮するサム・シェパードを筆頭に、ジョシュ・ハートネット、ユアン・マクレガー、トム・サイズモア、エリック・バナらといった布陣だ。
ジョシュ・ハートネットは「パール・ハーバー」に続き戦争映画への出演となっており、半分は恋愛ものだった「パール・ハーバー」に較べ、今回は超シリアスで、しかもほとんどのシーンでヘルメットを着用し、顔は汚れていてはっきりしない。
その他の面々も皆はまっていて、サム・シェパードはこういう役を演じさせたら貫禄だし、トム・サイズモアは戦争ものには欠かせない俳優となっている。
ユアン・マクレガーは、彼のネーム・ヴァリューのわりには、あまり大きくない役で出ているので、なぜだろうと思ったものだが、面白いことに彼が演じたグライム、本当の名前はステビンスといい、ソマリアでの働きにより勲章を授けられたのだが、その後、なんと自分の娘をレイプしたかどで30年の刑を食らって、軍刑務所に服役した人物らしいんですね。
原作がどうなのかはわからないが、この映画の最大の特徴は、ありがちなアメリカ万歳にもその逆の人道主義に走り過ぎの戦争反対にも与せず、ただただ究極のアクションとして存在していることだ。
リドリー・スコットは、最初からそのように演出しており、命を賭けた戦いだけをとらえ、何が正しいか、何が悪いかという判断は保留していて、観客にその判断を委ねているようだ。
本当の軍人にとって戦争の意味や善悪の判断は必要なく、ただ命令が下りたから戦うだけなのだ。
そして、戦闘が始まれば、相手を倒さなければ自分がやられてしまう。
だから戦うだけだ。それが軍人というものなのだ。
もちろん、この映画は米軍の視点から描いているから、アメリカ寄りと言えないこともないが、はっきりとアメリカ礼讃の立場はとっていない。
しかし、そうは言っても、非常に気になるのは、この戦闘による死者が、ソマリア側1,000人以上に対し、米軍はたったの18人という、ほとんど戦争というよりも一方的な”大量虐殺”に等しいことだ。
映画の中では、サム・シェパードがアイディド将軍の部下に対し、お前たちがやっていることは内戦ではなくて殺戮だと糾弾するシーンがあるのだが、結局、米軍も同じことをやってしまうのだ。
しかも、エンド・クレジットが始まって死亡した米軍人の名前が全員羅列されるのに、ソマリア側の死者は1,000人以上で、終わってしまう。
この差は一体なんなのだろう?——-。
最新鋭の武器を所有する米軍の方が、有利なのは最初からわかりきったことで、だからこそ高をくくって、よく考えたら無謀とも言えるこういう計画が実行に移されたわけだが、アメリカという”軍産共同体国家”がいつもこんなことをするから世界中から嫌われているということに、まだ気づかない連中が多すぎるという気がしますね。
こういう殺戮をやっておいて、自分の国がテロリストにやられると、いきなりショック状態に陥って、やられたらやり返せと連呼する。
私は基本的には、アメリカという国は善意の国だと思いたいのですが、アメリカが他の国で行なっていることもテロリズムに他ならないということを、アメリカ国民はもっと知っていた方がいいのではないだろうか。