オランダの光の紹介:2003年オランダ映画。フェルメールやレンブラントに代表されるオランダ絵画の光の表現、それはどのように生み出されたのか定点観測を通じて、古今の光を考える。
監督:ピーター=リム・デ・クローン 出演者:ジャームス・タレル、ほか
映画「オランダの光」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「オランダの光」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「オランダの光」解説
この解説記事には映画「オランダの光」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
オランダの光のネタバレあらすじ:起・オランダ絵画の光
オランダ絵画において、光は着想源であり、絵画の主人公でもある。ヨーゼフ・ボイスに寄れは20世紀の半ばの埋め立てや新しい堤防の建築、特にエイセル湖の干拓でその透明さを失ってしまったと考えた。
本当に失われてしまったのか、撮影班は10月からエイセル湖畔の堤防の上で一年間定点観測をすることにした。
干拓によって光の色調に影響が出るのかは意見が分かれる。水に光が反射し雲が入り込むのは事実だけれど、北海からやってくる雲は昔と変わらない。物理的な側面から見ると、水が光を反射し、二重の風景と光源を生み出す。その水は湖だけにとどまらず、水滴や雲等大気中の水分にも関係する。
オランダの光のネタバレあらすじ:承・オランダの光は失われたのか
ボイスが正しいのなら、今見ている光は、かつてとは違う光。当時と比較はできないが今の光を見る事はできる。天候や条件によって常に変化する光を、画家たちは、その変化を意識して描いた。しかし、美術史学からすると、オランダの画家は主題によってオランダの光を描いており、常に光を描いていたわけではなく、風景を描く際に用いられた。
光とは、光そのものが目に見えるわけではない。しかし、光が射すことで目に見える世界を描くことはできる。
オランダの光のネタバレあらすじ:転・画家と光
描くということは解釈する事。フェルメール、最も明るい光の中心点によって構成される。イタリア画家は物語を描き、オランダ画家は窓から外を覗いた風景を描いた。画家それぞれが、光の描き方を持っていた。絵画は描くことで混沌とした世界に秩序をもたらした。17世紀、150万枚以上の風景画によって、外国人はオランダの風景を知った。19世紀の画家はオランダへ遊学し、光の書き方を学び、眺め方を探し求めた。
画家の巡礼地でもあるドルドレヒトは、ターナーに好かれた。巡礼した画家たちは本当にオランダの光りを描いたのだろうか。
ハーグ派、灰色のひかりの画家たち。光は描くことで固定したが年が進み、沼沢地帯へ異動した。繰り返し描かれた、空、雲、水、そのどれもが違っていた。中にはスケッチに光と天候を書き留める画家もいた。
オランダの天候は変わりやすく、四季が一日に来るとも言う。ボイスの言うオランダの光りはどれだろうか。光りは国境に縛られないけれど地域や場所で異なる。地平線と雲、それがオランダの光りの秘密かもしれない。南仏の青空はオランダ程深くなく。プロヴァンスに行ったゴッホは、オランダと同じモチーフを用いたが、光の差を意識して南では明るく描いていた。
光は見たり触れる事はできないが、光は描かれることでその国の文化になる。ボイス曰く、オランダ人は目の感覚しか持たない。しかし、見たものが存在するとは限らないと言うことをオランダ人は知っており、光や光源に気をつけて描いていた。科学者たちは光について研究し、光の波長や波を見つけた。17世紀科学と芸術が並行して発達し、その表現が最高水準に達したフェルメールである。
オランダの光の結末:オランダの光と風景
地平線の低い土地からの眺め。それがオランダの風景である。モンドリアンの光もフェルメールも同じくらい強烈。光りの動きを表現するために線を描いた、モンドリアンの『桟橋』は写実的であって、抽象的。鏡の水なくして、オランダの光りは存在しない。干拓によってそれが変わるとボイスは言うが、気象学者は変わらないと言う。
水槽に水を張り実験する。オランダの湿った空気になるように白い液を広げ、湖の代わりに鏡を底に置く。すると光は、拡散、反射 太陽光の三つの光源となる。また、見る人の低い位置や何にも妨げない風景も必要。建物が多くなるほど、想像しづらくなる。
ならば現代芸術にオランダの光は存在するのだろうか。モンドリアンは光を表現する伝統の方法を信頼し確立している。光をどう認識して解釈し、作品にするのか。オランダの光りは透明感だけでなく、変化にある。風があり、いつも動いている。オランダで見える光そのものでなく絵画芸術に深い関係がある。
近代化に伴い、建物が増え、オランダの光は遮られ、エイセル湖は無くなったわけでなないが変化をした。しかし、芸術家は自分が観察するだけでなく、先人がどう観察したかも見る。ゆえにオランダの光は無くならない。
以上、映画「オランダの光」のあらすじと結末でした。
オランダの光のレビュー・考察:絵画の伝統
その地域における絵の伝統、光の伝統というのは、日本の絵画にも当てはめられるのではないだろうか。西洋絵画と比較するには差があり過ぎるものの、独自の絵画史がある。西洋に日本の絵画が知れたのは浮世絵に始まるジャポニズムだが、絵から版木を作り、摺り師によって生産された浮世絵もまた、先人たちの試行錯誤の積み重ねによってできあがった。オランダの光への探求心とそれはとてもよく似ている。
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