北斎漫画の紹介:1981年日本映画。矢代静一の戯曲を原作とした新藤兼人監督による伝記映画。江戸時代後期を代表する浮世絵師、葛飾北斎の波乱に満ちた半生が幻想的に描かれていきます。北斎を支え続けた娘お栄役の田中裕子、魔性の女お直を演じた樋口可南子の体当たりの熱演が話題となりました。
監督:新藤兼人 出演者:緒形拳(鉄蔵/葛飾北斎)、田中裕子(お栄/葛飾応為)、西田敏行(佐七/曲亭馬琴)、樋口可南子(お直)、音羽信子(お百)、フランキー堺(中島伊勢)、宍戸錠(十返舎一九)、大村崑(式亭三馬)、愛川欽也(喜多川歌麿)、ほか
映画「北斎漫画」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「北斎漫画」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
北斎漫画の予告編 動画
映画「北斎漫画」解説
この解説記事には映画「北斎漫画」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
北斎漫画のネタバレあらすじ:起
舞台は町人文化の発展していた華やかな江戸後期。浮世絵師の鉄蔵は銭湯帰りの夜道で妖艶な美女・お直と出会い、居候している履物商の伊勢屋に連れて帰ります。伊勢屋の婿佐七やその妻・お百はあきれ顔でしたが、鉄蔵はお直を絵のモデルに抜擢し、同居させてしまいます。
鉄蔵の娘お栄もこの素性の知れぬ女に興味津々、夢中でデッサンする父のそばを離れようとせず、鉄蔵から煙たがれます。鉄蔵は度々お直を抱きたい欲求に駆られながらも、結局金欲しさに養父の鏡磨師、中島伊勢にお直を売ってしまいました。しかし鉄蔵はその後もお直を忘れられず、お直をモデルにした枕絵を描き続けます。
伊七は生活のため履物商の婿に入りましたが、実際には読本作家になることを夢見ており、お百の目を盗んでは黄表紙の新作作りに夢中になっています。鉄蔵と佐七は竹馬の友と呼べる間柄ですが、性格は正反対。豪傑な鉄蔵は常に金に困っていて、生真面目な佐七から金を借りる日々、お栄は気の優しい佐七に淡い恋心を抱いていました。
北斎漫画のネタバレあらすじ:承
ある日、中島伊勢が青白い顔をして鉄蔵を訪ねてきます。聞けばお直を抱きたくて仕方ないのだが、いつもことの手前で逃げられ困っているという相談でした。中島伊勢は完全にお直の魔性に狂わされていました。その後、お直がふらりと現れて、今晩中島伊勢の屋敷まで来るようにと鉄蔵に告げます。その夜、鉄蔵が屋敷に出向くと、庭でお直が履物商の丁稚小僧と性行為に及んでいました。その光景を見た中島伊勢は激しいショックを受け、首を吊って自ら命を絶ってしまうのでした。
さらにお直も姿をくらましてしまいます。お直を失った鉄蔵は絵を描く意欲を失い、唐辛子売りに商売替えして日銭を稼ぎます。鉄蔵に自信を取り戻させたい佐七は版元問屋の蔦谷のもとへお金を持っていき、鉄蔵の絵を置いてもらえないかと頼みます。佐七の尽力もあり、鉄蔵の絵は次第に評判を呼び始めます。
一方、お百が病を患い、床に臥せるようになります。お百は私が死んだ時にはこの家を畳み、読本作家に専心するよう佐七に進言します。そして店を潰すからには立派な読本作家にならなければなりませんよと言い残して息を引き取りました。
北斎漫画のネタバレあらすじ:転
佐七はお百の遺言を胸に執筆に一層力を入れ、読本作家曲亭馬琴として本格的に活動を始めます。一方、鉄蔵も売れっ子絵師・葛飾北斎となり、本願寺で120畳大の紙に巨大だるま絵を即興で描いてみせるなど、派手なパフォーマンスをして話題を呼びます。しかし流行絵師となったものの、北斎とお栄の暮らし向きはなかなかよくなりません。北斎の浪費癖が原因でした。
ある日、お栄が馬琴の家に金を借りにやってくると、続いて北斎も飲み代欲しさに金の無心にやってきます。馬琴が金は貸せないと言うと、北斎はつまらない読本に挿絵を描いてやってるのにと憎まれ口を叩きます。父の傍若無人ぶりに腹を立てたお栄は佐七が金を積んだおかげで絵が売れたのだと暴露してしまいます。その時、人気の浮世絵師喜多川歌麿が幕府に捕まるという知らせが飛び込んできました。北斎は馬琴から金をむしり取って慌てて家を飛び出していきます。
お栄が馬琴に私にできることがあれば何でもすると願い出ると、馬琴は床に布団を敷き始めました。お栄は抱かれる覚悟を決めていましたが、小心者の馬琴は結局尻込みをしてしまい、二人が結ばれることはありませんでした。北斎は富士山を描くため長い旅に出ます。そしてかの有名な「富嶽三十六景」を描きます。
北斎漫画の結末
時は流れ、北斎は89歳、狭く猥雑な浅草の長屋にお栄と二人相変わらず貧しい暮らしをしています。喜多川歌麿、十返舎一九、式亭三馬など親交のあった作家達は皆すでにこの世を去り、北斎は孤老の日々を送っていました。
そんなある日、お直にそっくりな若い田舎娘が奉公人になりたいと北斎の家を訪ねてきます。娘の名は偶然にも同じお直、北斎は深い因縁を感じます。そして北斎の胸の中に描きたい絵の構想が沸き起こってきます。それはお直をモデルにした海女がタコを玩具にして戯れるというもの。裸になることを嫌がっていたお直も面白そうだと絵のモデルになることを承知しました。
北斎とお栄は裸のお直を床に寝かせて、身体にタコを這わせます。最初はくすぐったがっていたお直も次第に恍惚の表情を浮かべてタコと戯れ始めます。北斎は巨大なタコがお直の身体に絡みつく様子を思い描きながら、一心不乱に筆を走らせていきます。そうして描きあがった絵を見て、お栄は傑作だと呟くのでした。北斎は今描きたいのは魔性の女の百面相なのだと気付くとともに、老い先短いおのれの人生を憂いました。
その後、心身共に衰弱した馬琴が北斎を訪ねてきます。馬琴は死期が迫っていることを悟っていました。お栄が馬琴を心配する姿を見て、北斎はお栄が馬琴に惚れていることにようやく気付きます。北斎はお栄に馬琴と一緒になるよう告げ、二人を追い出してしまいました。その後、馬琴はお栄に看取られて静かに息を引き取りました。お直は北斎に枕絵を描かせて大金を手に入れようともくろみますが、北斎は絵を描く気力を失っていました。
お直が出ていき、一人取り残された北斎のもとへお栄が戻ってきました。北斎には、もはや筆を握る力さえ残されていませんでした。北斎は辞世の句を残して息を引き取るのでした。
以上、映画「北斎漫画」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する