ジョアン・ジルベルトを探しての紹介:2018年スイス,ドイツ,フランス映画。フランス生まれでブラジル音楽を心から敬愛するジョルジュ・ガショ監督によるドキュメンタリー。それはドイツ人ジャーナリストのマーク・フィッシャーが、ボサノヴァの神様ジョアン・ジルベルトに会うためにリオ・デ・ジャネイロに出向いた顛末を描いた1冊の本「オバララ ジョアン・ジルベルトを探して」をガショ監督が手に取ったところから始まった。ジョアンにとりつかれたマークの使命感や強迫観念なまでの旅を綴ったその本は、単なる日記にとどまることなく、ブラジルの音楽、文化、そしてボサノヴァに関する刺激的な考察に満ちた素晴らしい記録でもある。しかしその賢明な追跡にも関わらず結局のところマークはジョアンに会うことなく、本が出される1週間前に自らの命を断った。ガショ監督はマークの旅に強く共感し、彼の夢を実現すべくその足跡をたどりジョアンゆかりの人々や土地を訪ね歩く。
監督:ジョルジュ・ガショ 出演:ハケル(マーク・フィッシャーのアシスタント)、ガリンシャ(ジョアン・ジルベルの料理人)、ミウシャ(歌手/ジョアン・ジルベルトの元妻)、アンセンモ・ホシャ(ジョアン・ジルベルト公認のものまね歌手)、ジョアン・ドナート(ジョアン・ジルベルトの旧友)、ホベルト・メネスカル(作曲家)、ジェラルド・ミランダ(ジョアン・ジルベルトの知人)、マルコス・ヴァーリ(作曲家/ミュージシャン)、オタヴィオ・テルセイロ(マネージャー/ジョアン・ジルベルトの友人)ほか
映画「ジョアン・ジルベルトを探して」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ジョアン・ジルベルトを探して」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ジョアンジルベルトを探しての予告編 動画
映画「ジョアン・ジルベルトを探して」解説
この解説記事には映画「ジョアン・ジルベルトを探して」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ジョアンジルベルトを探してのネタバレあらすじ:起
ジョルジュ・ガショは、とあるホテルの部屋で1冊の本を手に取り読み始めます。その本の題名は「オバララ ジョアン・ジルベルトを探して」。ドイツ人ジャーナリスト、マーク・フィッシャーが、ボサノヴァの神様ジョアン・ジルベルトに心を奪われ、彼に会うためにリオ・デ・ジャネイロに出向いた顛末を綴った物語です。
フランスに生まれ、ブラジル音楽を心から愛するガショはマークに共鳴し、自らの命を断った彼の役目を引き継ぐべくリオ・デ・ジャネイロに降り立ちました。頼みの綱はマークの本と彼が残した写真や音声などの資料。それらを手掛かりにジョアン・ジルベルトを探す旅がはじまりました。
ジョアンジルベルトを探してのネタバレあらすじ:承
まずカフェで待ち合わせをしたのは、マークから“ワトソン”と呼ばれていた通訳ハケル。自称“シャーロック”のマークにとって、彼女は相棒として力を貸していたのでした。
ジョアンの10年以来の料理人であるガリンシャは、いつも電話で注文を受けているが、たったの一度も会ったことはありませんでした。注文はいつも決まって同じメニュー〈粗塩添えステーキとクレイジーライス〉でした。毎回、料理を届けるスタッフですらもジョアンに会ったことはないとのことでした。
手掛かりが見つからず不安がよぎるガショ。しかしこの気持ちを一番理解し合えるマークはすでにこの世にはいません。彼はこの本が出版される1週間前に自らの命を断ったのでした。40歳というあまりにも早い死。ガショの旅はジョアンを探す旅でもあり、またマークを想う旅でもありました。
次に助けを求めたのはジョアンの元妻ミウシャ。彼女はマークが訪ねてきた時のことを思い返しマークについて話しはじめます。そして人を惹きつけてやまないジョアンのミステリアスな魅力についても語りました。
その後もレコードショップの主人、ジョアン公認のものまね歌手マンセルモ・ホシャなど次々に話を聞きに出向きましたが、調査は一向に進みません。
ジョアンの大親友だったミュージシャン、ジョアン・ドナートに会った際には、疎遠になったまま15年も顔を合わせてないとのことでした。
ジョアンジルベルトを探してのネタバレあらすじ:転
ガショは作曲家ホベルト・メネスカルにも会うことができました。彼はかつてマークに「ジョアンの呪いに気をつけろ。理解できると思うな、見つからないものを探すことになる」と警告したひとりでした。そんなホベルトもジョアンとは62年以来会っていませんでした。
次に向かったのはヂアマンチーナ。ここはかつてジョアンが住んでいた町です。ここでガショはジョアンの知人であるジェラルド・ミランダを探し当てました。彼はジョアンとの数か月の交流を懐かしそうにそして誇らしげに語り、かつてジョアンが居候していた姉の家の存在を教えてくれました。
ジョアンの姉宅へ行き、ガショがまっすぐに向かったのはバスルームでした。ジョアンはいつもこの小さなバスルームに閉じこもりギターを演奏していたのでした。まさにボサノヴァが生まれた場所。ガショはジョアンの空気を感じながらマークに思いを馳せて感動に浸るのでした。
ヂアマンチーナから戻ったガショは、ボサノヴァの伝説的なシンガーソングライター、マルコス・ヴァーリにも会うことができました。ジョアンは電話口で自分の歌を歌って聞かせてくれたものの直接会ったことはありませんでした。
ジョアンジルベルトを探しての結末
結局のところ、誰もが皆ジョアンと長らく会っていないという人々ばかりでした。そして今度はジョアンが泊まるホテルの部屋までヘアカットに出向いている美容師に会いに行くガショ。そして自らもジョアンと同じ髪型をオーダーしました。ところが美容師の口は堅く、ジョアンに関する手がかりは決して教えてくれはしませんでした。
そんな中、ジョアンの元妻ミウシャから連絡がありました。会いに行くと、かつてマークがジョアンに送った手紙があると教えてくれました。するとそこへミウシャに突然かかってきた電話。電話を切ったあとにミウシャは一言「ジョアンからよ」とさらっと言いました。なんで代わってくれないのか!?ガショはあと一歩のところでどうしても彼に近づくことができない葛藤に疲れを感じはじめていました。
そんな中、ついにジョアンの友人でありマネージャーのオタヴィオ・テルセイロに辿り着くことができました。なんとかジョアンに会うことができないかと頼むガショに、できる限りの協力をすると言ってくれその場は別れました。
数日後、オタヴィオから連絡がありました。これからジョアンに会いにいくから一緒に来ないかと誘われたのです。ただし顔は合わせず、部屋のドア越しならギターを弾き語ることはできると。ついにジョアンを感じることができる!感動に胸が高まるガショ。そしてタクシーは伝統的なあのホテル「コパカバーナ・パレスホテル」で止まりました。部屋の前に行き、オタヴィオにドア前で待たされると緊張の面持ちでその瞬間を待ちます。
それは突然はじまりました。
少しも聴きもらすことはできないと言わんばかりに、ドア越しに一生懸命耳を傾けるガショ。その向こう側にはあのジョアンがギターを弾きながら歌っている。しかも自分だけのために!漂うような柔らかな音色と、甘美なジョアンの歌声が心地よく流れるのでした。
ジョアン・ジルベルトは10年間もの間、リオ・デ・ジャネイロの自宅に引きこもりながら、例外的に隠居生活から離れて世界各地でコンサートを開いていました。
元妻であり友人でもあったミウシャは2018年12月に癌で亡くなり、後を追うようにジョアンもまた2019年7月6日に自宅で息を引き取りました。享年88歳でした。
以上、映画「ジョアン・ジルベルトを探して」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する