司祭の紹介:1994年イギリス映画。カトリックの司祭でありながら同性愛者という相克に苦悩する、若き神父の姿を描いたドラマ作品。リバプールの労働者区域の教会に着任したグレッグ神父は、信仰心に絶対の自信を持ち理想に燃えていた。しかし理想と現実はあまりにもかけ離れており、苦しむグレッグは夜のゲイバーに足を向ける。そんな中、グレッグは父親から性的虐待を受けているという少女の告解を受けた。放っておく訳にはいかないが、懺悔の秘密を他言する訳にもいかない。グレッグは己の良心と宗規の狭間で、更に激しい苦悩に陥っていくのだった。
監督:アントニア・バード 出演者:ライナス・ローチ(グレッグ神父)、キャシー・タイソン(マリア)、ロバート・カーライル(グレアム)、クリスティン・トレマルコ(リサ)、トム・ウィルキンソン(マシュー神父)ほか
映画「司祭」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「司祭」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
司祭の予告編 動画
映画「司祭」解説
この解説記事には映画「司祭」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
司祭のネタバレあらすじ:理想と現実
舞台はイングランドの港町、リバプール。労働者区域の教会に、若き神父グレッグ・ピルキントンが新しく着任しました。彼の純粋な瞳は理想に燃え、胸には厚い信仰心があります。しかしグレッグの理想は現実とあまりにもかけ離れていました。
先輩の司祭マシュー神父はリベラル派で、保守的なグレッグを驚かせるような説教を繰り広げます。その上、司祭館の家政婦マリアと愛人関係にありました。また、住人達も熱心に神を信仰しているようには見えません。そこでグレッグは家庭訪問を実施しますが、ほぼ門前払いの結果に終わりました。知れば知るほど理想と乖離していく現実にグレッグは深く苦悩します。
そしてある夜、彼は僧衣を脱ぐとゲイバーに足を運びました。グレッグはカトリックの司祭でありながら、同性愛者でもあったのです。そこで彼は不思議と惹かれる青年グレアムに出会いました。勢いのまま、激しくグレアムを抱くグレッグ。しかし冷静になると途端に罪の意識に苛まれ、逃げるようにグレアムの前から去りました。
司祭のネタバレあらすじ:深まる苦悩
ある日、告解を受けていたグレッグは高校生のリサから深刻な悩みを打ち明けられました。父親から性的虐待を受けているというのです。怯えた目をしたリサは、母親には知られたくないと声を震わせました。グレッグはひとまず、神父が止めるよう言っていたとリサから父親に伝えさせます。
しかしリサの父親は止めるどころか、罪だとも思っていない様子でした。わざわざ告解室に現れたリサの父親は、近親相姦は最も自然な行為であり、これからも続けると笑います。グレッグが「リサの気持ちは?」と尋ねると、苛立った様子で荒々しく出て行きました。グレッグはどうにかしてリサを救いたいと考えますが、懺悔の内容を他言することは宗規に違反します。よって告げ口の類は出来ません。
詳細を伏せてマシューに相談すると、彼は自分なら周囲にほのめかすとアドバイスをくれました。グレッグは早速母親や学校にリサを注意深く見守るよう促しますが、思うような成果は得られません。福祉局への通報もあと一歩踏み切れませんでした。仕方なくリサの父親に直談判しますが、案の定乱暴に追い払われて終わります。
司祭のネタバレあらすじ:募っていく罪の意識
1人の少女も救えない現実に、グレッグはどんどん追い詰められていきました。心の拠り所となっていたのはグレアムです。彼と何気ない会話を交わし、時に激しくキスをする。グレッグはそうやって心の安定を保っていました。
ところがある日のミサにグレアムが現れ、グレッグは激しく動揺します。そして聖体拝領の際、舌を出したグレアムを前にグレッグは完全に硬直してしまいました。神父が聖餐を与えないなど、あってはならないことです。グレアムは深く傷つき教会を出て行きました。
グレッグは引退した前任の神父を訪ね、グレアムのことを打ち明けます。自分は説教など出来る人間ではないと悲痛な声を上げるグレッグ。前任の神父は「好きな人間を愛せ、好きな時に」と諭し、教会から去るよう助言しました。しかし司祭でいることが自分の宿命だと信じるグレッグは断ります。
後日、またリサと父親が自宅で2人きりだと知ったグレッグは我慢出来ず司祭館に戻って絶叫しました。キリストの磔刑像に向かい、「何とかしろ!」と叫びます。どうにかして、リサを助けてやってくれと。彼が泣き喚きながら祈りを捧げた同時刻、予定より早く帰宅したリサの母親が、父親にレイプされかけているリサを発見しました。
母親は猛然と父親を罵倒し、リサを助け出します。彼女は泣きながらリサに許しを乞いました。そしてグレッグの前に現れた母親は、虐待を知りながら何もしなかったことを詰ります。「地獄で焼かれるがいい」と激しい憎しみを静かにぶつけ、グレッグの前から立ち去ります。
司祭のネタバレあらすじ:露見
落ち込むグレッグはグレアムの部屋を訪ねますが、彼は別の男性を連れ込んでいました。最後の心の支えにすら裏切られ、グレッグは無言で踵を返します。グレアムは教会で受けた仕打ちに腹を立てていましたが、結局グレッグを車で追いかけました。2人は見つめ合い、車中で激しいキスを交わします。
ところがそれを警察官に見られ、裁判沙汰にまでなってしまいました。カトリックで禁忌とされる同性愛を、司祭であるグレッグが犯したという醜聞は、瞬く間に町中に広まります。グレッグは薬を大量に飲んで自殺を図りますが、マシューらの尽力もあり一命を取り留めました。
しかし住民の多くに白眼視され、司教の逆鱗に触れてしまったグレッグは僻地の教会に転任させられます。先住の老神父はグレッグを心の底から嫌悪していました。
そんなある日、マシューが訪ねて来ます。宗規は人が作ったものであり、グレッグは悪くないと話すマシュー。彼は形式ばかりを重んじる世の中を批判し、人種やセクシュアリティに拘らず全ての人間に愛と哀れみを与えるべきだと説教し続けていました。そのため教会側から異端視されています。
グレッグはグレアムのことを嫌悪し、サタンの化身だと思っていると口にしました。しかし夜まで語り合い、ついにグレアムのことを愛していると認めます。マシューは日曜日のミサを一緒にやろうと根気強く誘いました。
司祭の結末:許し
日曜日。ついにグレッグはマシューと一緒に祭壇に立ちました。グレッグを見た住人の中には、あまりに非常識だと激高し、家族を連れて教会を出ていく者が現れます。直接グレッグに罵声を浴びせる者もいました。マシューはグレッグを受け入れられない者は去れと怒鳴ります。
それでも少なくない数の住人が残りましたが、聖体拝領になると誰もグレッグの前には並びませんでした。そんな中、ただ1人グレッグの前に進み出た人物がいます。それはリサでした。
グレッグは涙を流し、許しを求めるようにリサを抱きしめます。苦しみ抜いた2人が泣きじゃくり、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「司祭」のあらすじと結末でした。
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