海峡の紹介:1982年日本映画。東宝創立50周年を記念し、北海道と本州を結ぶ「青函トンネル」の着工から完成までの壮絶なドラマを『八甲田山』でタッグを組んだ監督・森谷司郎と主演・高倉健により映画化したヒューマンドラマです。高倉健演じる国鉄の地質調査員の視点から、約30年近くにも及んだ壮大なプロジェクトとそれに関わる人々のドラマが描かれていきます。
監督:森谷司郎 出演者:高倉健(阿久津剛)、吉永小百合(牧村多恵)、三浦友和(成瀬仙太)、森繁久彌(岸田源助)、大谷直子(阿久津佳代子)、伊佐山ひろ子(おれん)、新田昌玄(江藤滝蔵)、大滝秀治(岡部)、山谷初男(石谷音太郎)、笠智衆(阿久津才次)、中川勝彦(阿久津修)、小林稔侍(金丸五郎)、阿藤海(古川亘)ほか
映画「海峡」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「海峡」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
海峡の予告編 動画
映画「海峡」解説
この解説記事には映画「海峡」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
海峡のネタバレあらすじ:起
1954年。本州と北海道を海で隔てる津軽海峡で青函連絡船「洞爺丸」の転覆事故が発生、多数の犠牲者を出しました。相次ぐ青函連絡船の事故を受け、国鉄は青森県と北海道を結ぶ「青函トンネル」構想を立ち上げ、海底の地質調査のため技術調査団を青森県の竜飛岬に派遣しました。
調査団のメンバーで地質調査員の阿久津剛(高倉健)が竜飛の浜を歩いていると、洞爺丸の事故で両親を亡くしたある少年と出会いました。今なお傷跡の残る少年の睨みつけるような目つきに、阿久津は忘れえぬ強い印象を受けました。
季節は冬。阿久津は現地の地質の調査をしていたところ、牧村多恵(吉永小百合)という若い女性が竜飛岬から飛び降りようとしているに遭遇しました。多恵は福井県の旅館で働いていたのですが、不注意による失火で多数の宿泊客を死なせてしまったことに深く自責の念に駆られていたのです。
多恵を救った阿久津は、彼女を行きつけの居酒屋の女将おれん(伊佐山ひろ子)に預けることにしました。まもなくおれんは女の赤ん坊を出産、名付け親を依頼された阿久津は津軽海峡にちなんで「峡子」と名付けました。出産に立ち会った多恵は生きる希望を取り戻し、おれんの店を手伝うことにしました。
海峡のネタバレあらすじ:承
1957年。阿久津は調査の結果、青函トンネルは技術的に可能であるとの報告をまとめました。その直後、阿久津は故郷の岡山県に近い明石海峡の調査部門への異動を命じられ、お世話になった竜飛の人々に必ず帰って来ることを約束して旅立っていきました。
それから間もなく、阿久津は婚約者の佳代子(大谷直子)と結婚、息子の修が誕生しましたが、阿久津に想いを寄せていた多恵はそのことを知って深い失恋の悲しみに暮れました。
1964年。国鉄は日本鉄建公団を発足させ、いよいよ青函トンネル工事に向けて動き出しました。明石海峡での調査を終えた阿久津もこの計画に加わり、所長の浜口圭介(加藤和夫)以下25名の一員として再び竜飛に舞い戻っていきました。
トンネル掘削部隊の編成を任された阿久津は、新潟県の親不知トンネル工事などいくつもの難工事を指揮してきたトンネル掘りのベテラン岸田源助(森繁久彌)をスカウトし、引退を考えていた岸田は引き受けることにしました。
岸田を慕う各地のトンネル掘りたちが竜飛に家族を伴って集い、竜飛の町は大いに活気づいていきました。佳代子も修と共に阿久津に帯同、多恵は阿久津との再会を喜びますが、阿久津への秘めた想いは口にすることはありませんでした。
海峡のネタバレあらすじ:転
1966年。調査斜坑掘削が開始され、トンネル作業員の募集に高校卒業を控えた成瀬仙太(三浦友和)が応募してきました。成瀬こそかつて阿久津が竜飛の浜で出会ったあの少年であり、阿久津は周囲の反対を押し切って成瀬を採用しました。
成瀬は阿久津や岸田からダイナマイトの起爆を任され、祈りを込めながら見事起爆を成功させました。これにより本格的に掘削が開始され、阿久津らは列車が通る本坑、本坑を工事するための作業抗、地質調査を行うための先進導坑のうち最も重視する先進導坑の掘削に着手しました。
過酷な環境は掘削隊を大いに苦しめ、岸田ら歴戦のベテランをもってしても工事は難航を極めるばかりでした。佳代子は竜飛での厳しい生活に耐えられずに修を連れて岡山に戻り、故郷の阿久津の父・才次(笠智衆)も病を患っていました。阿久津はそれでも気丈に陣頭指揮を取り、何とか海底まで調査工事は進めていきました。
着工から数年の時が流れ、いよいよ本格的な工事が行われることになりました。佳代子は久々に竜飛を訪れますが、阿久津が多恵の世話を受けている様子を目の当たりにしました。実際には阿久津と多恵には男女の関係はなかったのですが佳代子は嫉妬心を抱いてしまい、また阿久津が家庭を顧みず仕事に没頭していたことから夫婦仲は疎遠になっていきました。
着工から20年近くが経過した頃、大学生になった修(中川勝彦)も父の仕事場の見学のため竜飛を訪れました。ところが、修の目の前で作業員が死亡する事故が発生しました。この20年の間、数多くの仲間たちが命を落としていました。
海峡の結末
多恵はおれんや峡子(青木峡子)と共にねぶた祭に繰り出していたその頃、作業員らは工事始まって以来最大級の大出水事故に見舞われていました。才次の危篤の知らせを受け取っていた阿久津は対応のため竜飛に残り、先進導坑を死守すべく本坑への水の誘導を指示しました。
阿久津の決断により事故はようやく収束しましたが、この事故により岸田は致命傷を負ってしまい、阿久津に「北に風は通ったぞ」と言い残して息を引き取ってしまいました。
時を同じくして、故郷の才次も帰らぬ人となっていましたが、阿久津は死んでいった仲間たちの思いを胸に気丈に陣頭指揮に精を出しました。
工事着工から25年が過ぎ、遂に先進導坑の貫通の時を迎えました。ダイナマイト起爆の大役には成瀬が任命され、遂に本州と北海道は1本の先進導坑で結ばれました。阿久津の目には涙が浮かんでいました。
先進導坑貫通の祝宴の後、阿久津は岸田の墓に貫通の報告をし、多恵の働く居酒屋に行きました。本坑工事に道筋をつけた阿久津はこの任を離れ、日本から遠く離れたジブラルタル海峡を次の仕事場と定めていました。阿久津は竜飛に永住することを決意していた多恵と言葉を交わすことなく、静かに酒を酌み交わしました。
阿久津が日本を離れた後、多恵は穏やかな表情で前を見つめていました。ジブラルタルでは新たな生活を始めた阿久津もまた未知の大地をただ見つめていました。
以上、映画「海峡」のあらすじと結末でした。
25年間命がけでトンネルを通した後に、また次の現場も海中トンネル、しかも外国。更なる過酷な場所へ身を置く姿が、凛々しいですよね。