陽暉楼(ようきろう)の紹介:1983年日本映画。『鬼龍院花子の生涯』の宮尾登美子が1976年に発表した小説を、『鬼龍院~』を映画化した五社英雄監督が映画化した作品です。昭和初期の土佐・高知の遊廓を舞台に、侠客の世界に生きる父と芸妓となった娘、そして原作にはない父の愛人との愛憎を描きます。
監督:五社英雄 出演者:緒形拳(太田勝造)、池上季実子(太田房子・桃若/豊竹呂鶴(二役))、浅野温子(珠子)、倍賞美津子(お袖)、二宮さよ子(胡遊)、熊谷真実(茶良助)、仁支川峰子(助次)、仙道敦子(とんぼ)、市毛良枝(吉弥)、風間杜夫(仁王の秀次)、田村連(佐賀野井守宏)、曽我廼家明蝶(堀川杢堂)、丹波哲郎(前田徳兵衛)ほか
映画「陽暉楼」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「陽暉楼」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
陽暉楼の予告編 動画
映画「陽暉楼」解説
この解説記事には映画「陽暉楼」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
陽暉楼のネタバレあらすじ:起
大正元年。吹雪が吹き荒れる夜。娘義太夫の豊竹呂鶴(池上季実子)は愛人の太田勝造(緒形拳)との駆け落ちを決行しました。しかし、呂鶴は勝造の命を狙う追っ手の男に刺されて命を落とし、勝造に残されたのは二人の間に産まれたばかりの赤ん坊・房子だけでした…。
…時は流れて20年後、昭和8年の春。美しく成長した房子(池上季実子)は“桃若”と名乗り、土佐・高知随一の料亭「陽暉楼」で売れっ子芸妓として活躍していました。
桃若は幼くして勝造により「陽暉楼」の女将でかつて呂鶴とは勝造を巡っての恋敵だったお袖(倍賞美津子)の元に預けられた桃若は、今や店のナンバーワン芸妓となっていましたが、その美貌とは裏腹にこれまで本気で人を愛したことはなく、同僚や客からは「見かけとは違って情が薄い冷たい女ではないのか?」と思われることもありました。お袖はそんな桃若の才能を高く買っており、自らの後継者として手塩にかけて育てていました。
一方の勝造は娘の桃若とは距離を置いており、後妻のお峯(園佳也子)との間に息子の忠(玉野叔史、井田弘樹)をもうけていましたが、勝造はお峯と目が不自由な忠の元には、たまにしか帰ってきません。桃若は腹違いの弟である忠を可愛がっており、時折ハーモニカやサングラスなどをプレゼントしてもらっていました。
当の勝造は大阪で愛人の珠子(浅野温子)と暮らしており、借金などで金に困った女性を芸妓や女郎として風俗店に斡旋する女衒(ぜげん)をしていました。
そんなある日、勝造は大阪一帯を仕切るヤクザ「稲宗組」から中学教師の古田徳次(木村四郎)を紹介されました。徳次は借金のため妻・昌江(佳那晃子)の身売りに来たのですが、徳次は勝造から渡された前金の百円を持ち逃げしてしまいました。勝造はこの夫婦を探そうとはしませんでした。
陽暉楼のネタバレあらすじ:承
カフェで働く珠子は勝造のことを「お父ちゃん」と呼んで慕っていましたが、勝造は今でも亡き呂鶴のことを想い続けているのが、珠子にとって嫉妬心を抱かせるものでした。
ある日、珠子は意を決して呂鶴を超える芸妓になるべく、勝造を伴って「陽暉楼」に向かいましたが、お袖に断られてしまいました。帰り際、桃若の姿を見た珠子は彼女に痛烈な対抗心を燃やし、衝動的に「玉水遊廓」の女郎として働き始めました。珠子は最初のうちは逃げ出してしまうこともありましたが、持ち前の気の強さで瞬く間に売れっ子となっていきました。
一方の桃若はある宴席で「南海銀行」の御曹司・佐賀野井守宏(田村連)と出逢い、生まれて初めてのほのかな恋心を抱くようになりました。
そんなある日、桃若ら「陽暉楼」の芸妓たちは常連客らと共にダンスホールに出向きましたが、そこで女郎のリーダー格となった珠子率いる女郎たちと出くわしました。珠子は桃若を挑発するかのように佐賀野井と一緒にダンスを踊り、人々の喝采を浴びました。
面白くない桃若は強引に二人を引き離すと、洗面所で珠子と取っ組み合いの喧嘩を繰り広げました。髪の毛も服も乱れた桃若はダンスホールを飛び出し、バーで待っていた佐賀野井に会いに行きました。その夜、桃若は佐賀野井と愛し合いました。
この頃、「稲宗組」の親分・稲村宗一(小池朝雄)は土佐進出を狙っていました。稲村は手始めに高知を代表する店である「陽暉楼」を手に入れ、その資金を手に入れようと目論みました。そこで稲村は夫・徳次をケンカで亡くし、その後売れっ子の芸妓となった昌江、芸名“丸子”を「陽暉楼」にスパイとして送り込みました。
陽暉楼のネタバレあらすじ:転
稲村は丸子に「陽暉楼」の主人でお袖の亭主の山岡源八(北村和夫)を誘惑させて陥れる計画を立てました。稲村の企みを知った勝造は命がけで「陽暉楼」を守ろうとし、襲いかかってきた「稲宗組」の衆と戦って怪我を負いました。
入院中の勝造の元にお袖が見舞いに訪れ、桃若が身籠っていることを伝えました。桃若のお腹の子の父親は「陽暉楼」のパトロンである四国銀行協会会長の堀川杢堂(曽我廼家明蝶)かと思われましたが、実は桃若が身籠ったのは佐賀野井の子だったのです。
ところが、佐賀野井は3年間ヨーロッパに行くことが決まっており、桃若を置いて旅立ってしまいました。桃若は子供を産む決意をし、店を訪れた堀川に正直にお腹の子は堀川との子ではないと伝えました。落胆した素振りを見せる堀川でしたが、実は堀川もこのことに気付いていました。
引き続き「陽暉楼」でスパイ活動を続ける丸子は、道後温泉の貸し切り風呂で山岡を誘惑していました。そこに山岡の浮気に気付いたお袖が現れ、着物を着たまま風呂に入って丸子を威圧しました。怯えた丸子は渋々その場を後にするしかありませんでした。
ところが、山岡は浮気のみならず、大の博打好きが祟って「稲宗組」から借金をしてしまっていました。そこで勝造が助け舟を出し、山岡は借金を全額返済することとなりました。土佐を手に入れる計画が狂った「稲宗組」は「陽暉楼」を諦め、やむなく大阪へ戻っていきました。
お袖は桃若に店を継がせるべく、桃若の子の父は堀川ということにしておこうと考えていましたが、桃若はお袖の意に反して堀川と別れ、一人で産み育てる決心をしました。やがて桃若は女の赤ん坊を出産、弘子と名付けました。
陽暉楼の結末
勝造は珠子との別れを決意、かねてから珠子を想い続けていた勝造の舎弟・仁王の秀次(風間杜夫)との結婚を彼女に勧めました。こうして秀次と結婚した珠子は高知で小料理屋を開き、この店にはかつて互いのプライドをかけて全力でぶつかり合い、その後心を通わせ合うようになった桃若も弘子を連れて訪れるようになっていました。ところが、この時既に桃若の身体は結核に侵されていました。
弘子を育てられなくなった桃若は、お袖に頼んで弘子を里子に出すことにしました。勝造は弘子を引き取って育てようとしましたがお袖に拒否されました。
やがて容体が悪化した桃若は入院、勝造は弘子を連れて見舞いに訪れました。窓越しに弘子を見つめた桃若は「死にたくない…」と呟き、程なくして帰らぬ人となりました。
勝造は桃若の死を伝えるため、珠子と秀次の店を訪れました。そこにかねてから勝造の命を狙っていた「稲宗組」の刺客が襲撃、秀次が殺されてしまいました。勝造は秀次の仇を討つべく、珠子を連れて船で大阪に向かいました。
勝造は珠子を大阪駅で待たせ、理髪店にいた稲村を射殺しましたが、逃げる途中で「稲宗組」の者に刺されて命を落としました。大阪駅では、珠子は終電を過ぎてもいつまでも勝造の帰りを待ち続けていました。
以上、映画「陽暉楼」のあらすじと結末でした。
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