真珠のボタンの紹介:2014年フランス,チリ,スペイン映画。チリのアタカマ砂漠で観測される宇宙の水と、南部パタゴニアに住むインディオたちの水との関わり。悲劇の歴史に巻き込まれていった人と水と宇宙の関係を、雄大な映像と過去の写真で解き明かす。
監督:パトリシオ・グスマン 出演者:マルティン・G・カルロデン、ガブリエラ・バリテト、エンマ・マリグ、ラウル・スリタ、ガブリエル・サラサル、パス・エラスリス、フアン・モリナ、ほか
映画「真珠のボタン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「真珠のボタン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
真珠のボタンの予告編 動画
映画「真珠のボタン」解説
この解説記事には映画「真珠のボタン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
真珠のボタンのネタバレあらすじ:起・パタゴニアの水の民
水は宇宙からやって来た。地球以外でも水を湛える惑星があり、チリのアタカマ砂漠では天体観測が続けられている。
チリ南部、氷河と群島の地域パタゴニア。白人が上陸するまで、住民たちは宇宙と共に生き、水の恵みを食べていた。水の遊牧民、ノマドは五つの部族があり、一万年前にこの地に着き、フィヨルドをカヌーで移動した。
彼らにとって「海/水」は危険だが恵みをくれる家族の一員で、19世紀には8千人もの住民が群島を旅していたが、軍に規制されてしまった。また、チリ人は彼らほど海を近い存在には感じていない。
真珠のボタンのネタバレあらすじ:承・チリの歴史とインディオ
チリは世界で一番長い海岸線を持っているが、主要産業の選択を間違えた。盆地は狭く内陸で農業をするのは難しいのに、目の前の太平洋に価値を置かなかった。土地を山に分断された南は氷で孤島のようになっている。
しかしインディオと天文学者にとって、水は生命として息づいている。インディオは石も水も全てに魂が宿っていると考えている。地表の四分の三を覆い、大地と生物を作り、硬い鉱物を作り、空中にも水があると考えている天文学者の主張も理にかなっている。
また海洋学者は、人間の思考は水と同じですべてに適応するように出来ているという考えは、インディオがなぜこの極寒の地で何万年も生きていたのかという問いに説明をつけられる。
セルクナム族は体に絵を描いた。死ぬと人は星に生まれ変わると信じており、神話の中に、南十字星やオリオンなど、星座が出てくる。彼らの絵は宇宙全体を表し、星は祖先の塊。インディオはすぐ近くに死者を感じる事で宇宙の存在を感じている。
そして天文学は、宇宙に人間が本質的に懐かしく思っている感情から、技術は進歩した。
真珠のボタンのネタバレあらすじ:転・インディオの今
1883年、入植者たちによって、インディオたちはその世界が崩壊する悲劇に直面した。チリ政府は入植者を支援し、インディオを批判し、伝道本部が置かれた。信仰、言語、カヌーを奪われた。着せられた古着には病原菌が付着しており、ほとんどが病死、生存者達は先住民狩りの標的となり、その身体の一部は売られた。
入植者達は牧場を作るために彼らを虐殺したが、罪に問われる事は無かった。彼らには怪物に見えた。16世紀のスペイン人もパタゴニアで怪物や、巨大な未開人の存在の記録がある。
チリで発見された惑星の一つに、大きな海があるかもしれないという事がわかった。そこに生物は存在するのだろうか。その星に逃げることができたら、インディオは平和に暮らせただろうか。堅実的な考えではないが、現在純粋な子孫が20人の水の民が滅びないで欲しい。
ジュール・ベルヌの本にジェミー・ボタンというイギリスに連れ帰られた実在のインディオの話がある。彼らは真珠のボタンと交換で船に乗せられ、産業革命のイギリスへ行き紳士になったが、パタゴニアに戻ると、元の姿に戻り、彼らの言語と英語を話した。ジェミー・ボタンは髪を伸ばしたが、以前の彼には戻れなかった。その頃から、南部のインディオたちは滅亡へ向かう。
真珠のボタンの結末:変革とクーデター
それから150年の支配の後、サルバドール・アジェンデの変革により社会主義政権が発足、インディオが奪われた土地を、帰された。しかし、アメリカが支援するクーデターにより、地球に近い場所での超新星爆発がチリの天文台で観測された頃、彼らの自由は奪われた。
独裁者ピノチェトの政権は16年続き、秘密収容所で殺すための拷問が行われた。関与した軍人・民間人は遺体のありかを隠した。独裁政権は強制収容所を作りアジェンデ政権の官僚たちを送り、収監、拷問を行った。しかしドーソン島の出来事はその一角に過ぎない。
フンボルト海流によって、身元不明の女性の遺体が海岸に打ち上げられた。後に、独裁政権の何人かが、拷問で死亡し捨てられた人々の存在を認めた。彼らは袋に入れられヘリから重しをつけて海へ投げ込まれた。
2004年、グズマン判事が捜索を命じ、海に潜ると、腐食したレールだけが見つかった。40年の月日によって、遺体は長い時間で溶けてしまっていたが、レールに付着したボタンが人が一緒に沈んでいたという証拠になった。
もし水に記憶があるのなら、人間の持つ悪しき者や、この地で行われた悲劇を覚えているはずだ。
パタゴニアのインディオは、人は星として新たな命を与えられ、魂は永遠だと信じていた。水には記憶があると言われ、近づけはインディオや行方不明者の声が聞こえるだろう。
少し前に、宇宙で大量の水蒸気が存在する銀河核が発見された。地球上にある1億2千万倍の水が存在している。もしその水の中に避難出来たら、行方不明の魂も安らぎを得るだろうか。
以上、映画「真珠のボタン」のあらすじと結末でした。
真珠のボタンのレビュー・考察:地上の水、天の水
天文観測で有名なチリのアタカマ砂漠で観測された宇宙に広がる水と言う物質と、この地球の成り立ち、と水の不可欠さと、絶えかけたインディオたちが常に水に接し築いて来た文化は似ている。そしてインディオたちの星々との関りも欠くことはできない。水と星と人の連綿と紡がれて来た時間をインディオの視点と、最先端の天文学の視点から見る事ができる。それらに断ち切るように行われた入植や独裁政権による悲劇は、粛々と事実だけが語られ、映像で語るよりもその言葉が重く刺さる。
この映画の感想を投稿する