ファイブ・デビルズの紹介:2021年フランス映画。『パリ13区』でセリーヌ・シアマ(『秘密の森の、その向こう』『燃ゆる女の肖像』監督)とともに共同脚本をつとめたレア・ミシウス。本作は彼女の『アヴァ』以来の監督作だ。『シャイニング』や『アス』などをリスペクトしたシーンを盛り込みつつ、独自の感性で描いた不思議なタイムリープ作品となっている。主演は『アデル、ブルーは熱い色』でカンヌ国際映画祭のパルム・ドールを監督や共演者とともに受賞したアデル・エグザルコプロス。
監督:レア・ミシウス 出演:アデル・エグザルコプロス(ジョアンヌ)、サリー・ドラメ(ヴィッキー)、スワラ・エマティ(ジュリア)、ムスタファ・ムベング(ジミー)、ダフネ・パタキア(ナディーヌ)、パトリック・ブシテー(ジャン=イヴォン)、ほか
映画「ファイブ・デビルズ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ファイブ・デビルズ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ファイブ・デビルズ」解説
この解説記事には映画「ファイブ・デビルズ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ファイブ・デビルズのネタバレあらすじ:起
きらびやかな衣装を身にまとった女性たちが燃えさかる炎を見つめ泣き叫んでいます…
ヴィッキーは小学生の女の子。大好きな母ジョアンヌは町のスイミングクラブで働いています。母の同僚ナディーヌは顔にやけどのあとがあり、ヴィッキーのことを脅かすので苦手です。
ヴィッキーには毎日湖で泳ぐジョアンヌに付き添い、ワセリンを塗ったり20分で呼び戻す役割があります。母が泳いでいる間、匂いを嗅ぐことが大好きなヴィッキーは母に塗ったワセリンの残りを少し取り、瓶に入れて保存します。ヴィッキーの部屋にはいろいろなものが瓶に入って並んでいて、「ママ1」などとシールが貼ってあります。
ある日ジョアンヌは湖から上がったあと、ヴィッキーに匂いをあてさせます。娘の驚くべき嗅覚と匂いへの執着にジョアンヌは不安を感じます。そんなヴィッキーは同級生たちからいじめられていますが、ジョアンヌはそのことを知りません。
実家に立ち寄ったジョアンヌはヴィッキーの匂いフェチについて相談しますが、父親は夫に話せと言って取り合ってくれません。
ジョアンヌの夫ジミーは消防士です。ある晩、彼の妹ジュリアから電話がかかってきて、翌朝ジュリアがやってきました。
ジミーは歓迎しますがジョアンヌは不機嫌そうです。ジュリアは、ヴィッキーがインコを飼っている空き部屋に滞在することに。今回彼女がやってきたのはジミーが10年振りに年始のカードを送ったからで、ヴィッキーは叔母さんがいるなんて知らなかったとジミーに話します。
ヴィッキーはこっそりジュリアの部屋にしのびこむと、荷物を出して匂いを嗅ぎ始めます。とある瓶の中身が気になったヴィッキーは、それを含め何点かを隠して自分の部屋に持ち帰ります。空き瓶にジュリアの衣類の一部を切り取って入れ、そこにジュリアがよく飲んでいると思われるモルトウィスキーを注ぐと、最後に気になった香水のような液体をかけてフタを閉めて混ぜ合わせ「ジュリア」とシールを貼りました。そして完成したそれの匂いを嗅いだ瞬間、ヴィッキーは倒れてしまいます。
目覚めたヴィッキーはどこかの路上にいました。すぐ横を女子高生姿の母ジョアンヌや、まだきれいな顔のナディーヌたちが通り過ぎていきますが、ヴィッキーのことは見えていないようです。彼女たちは体操部に所属していて体育館で練習しています。こっそりヴィッキーがのぞいていると、ジュリアが転校生としてやってきました。
ファイブ・デビルズのネタバレあらすじ:承
次の日。ヴィッキーはまたジュリアの匂いを嗅いで倒れ、今度は森の中で目覚めました。父ジミーとナディーヌが仲良くふたりで話しており、その向こうではジュリアがジョアンヌの膝枕でくつろいでいます。するとなぜかジュリアだけがヴィッキーに気づき、恐怖の表情で飛び上がります。
夜、ジュリアはアルコールに依存しているようで家の中に酒がないとわかると外に出ていきました。
翌日、仕事前にジョアンヌはナディーヌにジュリアのことを聞かれます。ジョアンヌは知らないフリをしますがナディーヌは怒っていました。ジミーも同僚に、ジュリアが帰ってきたことについて苦言を呈されますが問題はないと返答します。
放課後ヴィッキーが校庭の隅で瓶を並べていると、同級生たちがそれを見つけ、気持ち悪いと言いながら中身をヴィッキーの口に押し込んできました。そしてだれかが瓶を開けた途端、全員が倒れこんでしまいます。
迎えにきたジョアンヌに教師が、ヴィッキーがマフラーでみんなの首をしめたらしいと説明します。同級生がヴィッキーのことをいじめているとわかったジョアンヌは、彼らやその母親に向かって猛烈に反論しヴィッキーを連れて学校をあとにします。その後買物中に父からの電話があり仕方なく実家へ向かうと、ジュリアが来ていることでジョアンヌはとがめられ、彼はジュリアのことを「同性愛の放火魔」と呼びました。
キッチンにやってきたジュリアはワインを飲もうと誘いますがジョアンヌは断ります。つらそうな顔をするジュリアに「タコ切って」と手伝いを頼むジョアンヌ。慣れないタコ相手に苦戦するふたりは笑い合い、次第に楽しくなっていくのでした。
一方ヴィッキーはまたタイムリープしています。ジョアンヌの実家のテーブルの下で、ヴィッキーはジュリアとジョアンヌがただならぬ関係だということを知ってしまいます。そして部屋に入ってきた父に注意されたジュリアは出ていきます。ジョアンヌはジュリアを追いかけ、いっしょに町を出てマルセイユに行こうと持ち掛けます。抱き合ってキスするふたりをヴィッキーが見つめていました。
ファイブ・デビルズのネタバレあらすじ:転
ヴィッキーが家の庭で、カラスの死がいや木の実、自分の尿などを煮込んでいます。ジュリアのベッドの下に、その汁が入った瓶を仕込むヴィッキー。
ジュリアは深夜、幼い自分がヴィッキーを見て驚いた夢を見て叫び声をあげます。ジミーが駆けつけ、部屋のひどい臭いに気づきます。
次の朝、ジョアンヌに問い詰められたヴィッキーは祖父の家に預けられることに。ジュリアには直接、やめるよう警告されました。
ジョアンヌはジュリアとふたりで湖へやってきます。ジョアンヌはなぜ戻ったのかとたずねますが、ジュリアは逆に「あの事件のこと怒ってる?」と質問します。するとジョアンヌは「子どもを持ったこと、怒ってる?」と聞き返すのでした。
ヴィッキーはまたタイムリープします。ジミーとナディーヌ、ジュリアとジョアンヌが車で夜の森にやってきています。ジミーとナディーヌは車の外、ジョアンヌとジュリアは車の中。いい雰囲気のジョアンヌとジュリアですが、外からのぞいていたヴィッキーに気づいたジュリアがパニックを起こします。ジョアンヌは、その子を追い払おうと言ってジュリアをなだめます。
ヴィッキーは祖父の家を飛び出して湖へ行き、ジョアンヌとジュリアがふたりでいるところを見ています。
別の日、スイミングクラブでナディーヌが暴れ出し、「私の人生返してよ!」と言いながらいろいろなものを破壊していきます。そしてジョアンヌの顔にツバを吐いて出ていきました。
夜、皆が飲みにくる店にやってきたジョアンヌたち家族。ジョアンヌは早いペースで酒を飲み、既に泥酔しています。店の客たちは好奇の目でジョアンヌたちを見ています。カラオケで盛り上がる店内で、彼女はデュエットするためジュリアを舞台に引っ張り出します。妙な空気の中、ご機嫌で『愛のかげり』を歌うジョアンヌ。ジュリアも歌い出し、次第にふたりはラブラブな雰囲気に。そんなふたりの様子に困惑の表情を浮かべるジミーとヴィッキー。
家に帰るとヴィッキーは悔しくて不機嫌になり、ジミーにジュリアに対する怒りをぶつけます。そして、結婚しなかったら私はいなかった?とたずねました。
ジミーはジョアンヌにヴィッキーが傷ついていると言い、ジョアンヌとジュリアの関係が町中に知れ渡っただろうと話します。ジョアンヌは酔っているのでその言葉に反発し、あざ笑いながらジミーを侮辱します。ジミーは激昂して彼女を部屋から追い出してしまいました。
翌朝、インコが1羽死んでいました。ヴィッキーはジュリアを疑いますが、ジョアンヌは無視して埋葬の準備をします。ヴィッキーは、自分のことを生まれる前から好きだった?と聞くのでした。
ジュリアの帰り支度を見てヴィッキーは喜びます。学校まで送ってもらうと、ヴィッキーはポケットから取り出したものをジョアンヌに渡します。それは高校時代の彼女が失くしたピアスでした。
一方ジュリアは、酔ってヴィッキーの部屋を荒らしています。
ジミーはジョアンヌに会うためスイミングクラブへとやってきました。しかし彼女はおらず、ナディーヌと話すうちにいつのまにか気分が高まり、ふたりはそのまま関係を持ってしまいます。
ファイブ・デビルズの結末
ヴィッキーは空き教室でタイムリープをします。
その日は体操部のクリスマス発表会。体育館を抜け出したジュリアのあとを追うヴィッキー。ジュリアはあとからくるはずのジョアンヌを待っています。ふたりはかけおちするつもりなのです。外には大きなクリスマスツリーとかがり火があり、ツリーと体育館は万国旗でつながっています。
ジュリアはヴィッキーに気づき、追い払おうととっさにかがり火を手に取ります。ヴィッキーが隠れたツリーの根元に火をつけてしまうジュリア。ヴィッキーはそこにはいなかったのですが、火はそんなことには関係なく燃え上がり、あっという間に体育館へと燃え移ってしまいます。ちょうどジョアンヌが出てきますが、体操部の仲間や観客たちを呼びに中へ戻っていきます。しかしナディーヌが逃げ遅れ、部員たちは燃えさかる炎に向かって泣き叫びながらナディーヌの名を呼んでいました。
ゆっくり振り向いたジョアンヌは、うずくまっているジュリアを見つめます。
ヴィッキーを学校に送ったあと、ジョアンヌは職場には向かわず自宅に戻ります。すると玄関に「ありがとう」というジュリアのメモがありました。ジョアンヌはジュリアを探して再び車に乗り込みます。
町まで来ると、なぜか学校から飛び出してきたヴィッキーと出会います。ヴィッキーは車に乗ると、湖に行くよう指示します。
少し前にジュリアは湖に着いていました。入水しながらジュリアは、ヴィッキーの部屋から持ち出した「ママ1」の瓶を開けていました。
ジョアンヌたちが湖に到着すると、ジュリアは岸に倒れていました。ジョアンヌはジュリアの服を脱がせ、体温が戻るように抱きしめてあたためます。ヴィッキーもそれを手伝い、ジュリアはそのままの体勢で救急車を呼びます。その必死な姿を見てヴィッキーは「死なないで」と思うのでした。
救急車からはジミーが下りてきます。ジュリアを乗せ、彼はジョアンヌを付き添わせます。代わりにヴィッキーを連れて家に帰るジミー。リビングで音楽をかけソファに座り込んでいると、ヴィッキーがやってきてやさしく抱きしめてくれました。
ジュリアは救急車の中で意識が戻り、ジョアンヌと微笑み合ってやがてキスをします。
ジミーはヴィッキーを抱き上げてダンスをしています。ふたりは気づいていませんが、部屋の隅にあるクリスマスツリーの横で、見知らぬ少女がヴィッキーをじっと見つめていました。
以上、映画「ファイブ・デビルズ」のあらすじと結末でした。
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