少年たちの時代革命の紹介:2021年香港映画。2019年、“逃亡犯条例改正案”などに反対する学生たちによって民主化デモが起こり、香港の街は異様な状況に陥っていた。体制への考え方によって大人と子供、友人たち、街の人々は分断され、デモに参加した者は警察によって厳しく取り締まられた。『少年たちの時代革命』はそんなデモに参加しつつ、当時流行ってしまった抗議の自殺を止めるべく奔走する若者たちの姿を描いている。香港で上映禁止となった本作は台湾アカデミー賞で注目され、台湾そして日本などで劇場公開された。
監督:レックス・レン、ラム・サム 出演:ユー・ジーウィン(YY)、レイ・プイイー(ジーユー)、スン・クワントー(ナム)、マヤ・ツァン(ベル)、トン・カーファイ(ルイス)、アイビー・パン(バウ)、ホー・ワイワー(バーニズム)、スン・ツェン(ファイ)、マック・ウィンサム(ゾーイ)ほか
映画「少年たちの時代革命」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「少年たちの時代革命」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「少年たちの時代革命」解説
この解説記事には映画「少年たちの時代革命」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
少年たちの時代革命のネタバレあらすじ:起
香港の女子高生YYとジーユーは17歳。ゲームセンターのクレーンゲームでぬいぐるみをGETするところを動画に撮り、そのあとビルの屋上からネイザンロードの夜景をバックに大はしゃぎでSNSを更新します。
2019年、香港では民主化を求め若者たちを中心にデモが起き、その高まりとともに抗議のための自殺が相次ぎます。6月中旬には黄色いレインコートを着た男性が高所から落下して死亡しました。YYはひとりでその現場を訪れ、マスクをはずして祈りを捧げます。
7月21日、警察はデモ隊に向けてついに発砲。デモに参加していたYYとジーユーはその夜、他の若者たちといっしょに逮捕されてしまいます。連帯の証である黒のTシャツを着た彼らは、室温18℃の部屋で名前を呼ばれるのを待っています。その後釈放されると、同じく逮捕された見知らぬ少女が、体中触られたと泣きじゃくっていました。ジーユーの制止を振り切ってYYは彼女に近づき「死んでも許しちゃダメ」と抱きしめます。
ジーユーは、親が怒りながら車で迎えに来たので帰っていきます。YYの父親は中国で働いており、離婚した母親は英国で既に別の家庭を持っているので彼女の逮捕のことを両親は知りません。
YY18歳の誕生日。ジーユーは「あの日すぐ逃げれば逮捕されなかった」と恨めしそうに言います。YYは「悔しかった」と説明しますがジーユーは「悔しくても香港は変わらない」とそっけない返事。そして事後処理が終わったら留学するといいます。ここでなければどこでもいい、と。誕生日のプレゼントとしてポケモンのぬいぐるみを渡し、ジーユーは去っていきます。
YYは自分の部屋で手紙を書いていますが、その上にポロポロと大粒の涙が落ちて止まりません。
朝の5時、うなされながら目覚めた20歳のナム。警官に叩かれた背中にはアザができていました。出かける準備をして恋人のベルに電話をすると、ひとりでは行かせられないと彼女もデモに来ることに。ヘルメットやゴーグルを持ち、傘で警官隊からの催涙ガスや放水に抵抗するデモ隊の若者たちは、レンガをバラバラに崩して投石に使っています。
「こんなことは犯罪だよ」と諭す年配の男性に謝りながら、ベルはナムが捕まらないように見張っています。警察の装甲車両が近づいてきたのでナムたちは走り出します。大きな通りへ抜けるとそこへ黒いワゴン車が急停車し、「乗って」とナムたちを助けてくれました。それはデモの後方支援をしているドライバーのファイとその妹ゾーイでした。
少年たちの時代革命のネタバレあらすじ:承
車に乗り込んだのはナムとベルのほかに、軽口をたたくルイスとまだ幼さの残るバーニズムです。ルイスはゾーイに話しかけますが、ファイはそれを牽制します。
そんな中、ナムにYYから電話がかかってきます。実は逮捕された夜、偶然見かけたYYを心配したナムが、連絡するようにと自分の電話番号を伝えていたのです。やりとりは短いものでしたがYYはSNSで自殺をほのめかしていました。ナムは、上環のデモに加わろうと言うルイスを説得し、YYの自殺を止めるために行動を起こします。
自殺を止める活動をしている組織TGに連絡し、YYが利用していると思われる葵芳駅へ向かうナムたち。そこに現れたのはソーシャルワーカーの女性バウでした。突然現れた大人に対してメンバーたちは顔を隠し警戒しますが、バウが味方だとわかるとその指示に従い手分けして付近を捜し始めます。
ショッピングセンターを走り回り、店員や客にYYの画像を見せて聞き込みをするメンバーたち。バウが話しかけたのはアルバイト中のジーユーでした。バウはジーユーにYYの住所を聞きますが、親しくないフリをするジーユーはよく知らないと答えます。バウは彼女に名刺を渡し、なにかわかったら連絡してほしいと頼んで立ち去ります。
メンバーのひとり、勇武派のルイスは料理人の父とふたり暮らし。共産党を支持する父はデモに参加する息子を叱って小遣いをやらないと脅し、時には家から追い出して鍵をかけてしまいます。血気盛んなルイスを心配したバウは、「挑発に乗ったらあなたが損する。それを忘れないで」と忠告します。
もうひとり、偵察係のバーニズムは15歳。友だちの家でゲームをするとウソをついて活動に参加しています。以前、自宅の周りがデモ隊で埋め尽くされたとき、目をつけられないように部屋の電気を消し、外を見ちゃダメだと母親に言われてから心に引っかかるものを感じています。
そのころYYは、英国の母に向けた別れの手紙を投函していました。ナムはベルとともにがむしゃらに走り回ってYYを捜しています。なぜそんなにYYにこだわるのか、ベルは恋人ナムの行動に疑問を感じています。
自室に戻ったYYはジーユーに「返信して」と連絡しますがジーユーはそのメッセージを無視し、バウの名刺も握りつぶしてしまいます。ひとりぼっちのYYは持っていたビー玉を手すりから階下に落とします。
少年たちの時代革命のネタバレあらすじ:転
食堂で食事中のメンバーたち。店員や他の客など大人たちはデモに否定的でナムは思わず声を荒げてしまいます。するとそこへ“セーラームーンライダー”と名乗る男が現れ、YYの捜索に協力すると言ってくれました。実はバーニズムがSNSで情報を広め、協力を要請していたのです。
店を出て再び聞き込みを開始すると、どうやらYYはブロック4に住んでいるらしいとの情報が得られナムたちはそこへ向かいます。途中でベルが仕事はどうしたの?とたずねると、ナムはデモなどに専念するためやめてしまったと言います。活動にはお金が必要なのに…とベルは不満を言いますが、ベル先輩は中文大生で英国留学を控えているエリート、かたや自分は受験に失敗した建設作業員だからつり合わない、とナムは感情を吐露します。
ルイスはたまたまふたりになったバーニズムになぜ活動に加わったか質問します。バーニズムは「両親はイヌ」と語り、母はかつて若者の味方だったのに変わってしまった、自分はそんな大人になりたくないと言います。
YYがゲームセンターに来ていたころ、ジーユーはバウに連絡していました。YYがブロック1に住んでいると聞いたバウは皆に大声で知らせ、メンバーたちは走ってそこに向かい1軒1軒あたっていきます。ようやく見つけたYYの家には鍵がかかっており、中で自殺していることを危惧したナムはバールや電動ドリルでドアを壊して中に入ります。
しかし中にはだれもおらず、YYから父親に宛てた手紙が残されていました。協議の上手紙を開封すると、自殺をほのめかすような内容がつづられていました。「また間に合わない!」以前母親を自殺で亡くしているゾーイがパニックになります。しかしもうアテはなく、メンバーたちはYYの部屋で情報や連絡を待ちます。
ベルはナムになぜYYにこだわるのか質問します。ナムはあの逮捕された夜、「死んでも許しちゃダメ」と見知らぬ少女を抱きしめたYYを見て、彼女の孤独な表情が気になっていました。その日ベルは弁護士から、ナムとルイスは心配だからついていてあげてと言われていました。ベルはナムにお菓子のハイチュウを渡し、ナムは子どものように喜びます。そのハイチュウをナムはYYにあげ、それがいまYYの部屋にあるのをベルは見つけます。
ゲームセンターでカエルのぬいぐるみをgetしたYYがSNSに画像をアップし、バーニズムがそれに気づきます。皆急いでゲームセンターに向かい、投稿に気づいたバイト中のジーユーも早退します。現地に到着したメンバーたちは聞き込みを開始しますが、1時間ほど前に出て行ったと言われてしまいます。皆は付近を探すため外に出ました。そんな彼らを3人の私服警官が監視し追跡しています。
少年たちの時代革命の結末
大通りの交差点まできたとき、YYにこだわるよりデモに行きたいルイスはひとりだけ横断歩道を渡りません。ルイスを説得しようと戻ってきたメンバーたちは、そこで尾行してきた警官たちに捕らえられてしまいます。出遅れたバーニズムだけは難を逃れ、皆が連れ込まれた路地の外から様子をうかがっています。そんなとき、YYがその交差点を通り過ぎていきました。
警官たちは暴力的で、加えてひどい言葉を彼らに浴びせます。ゾーイが警官に不当に触られそうになり、止めに入ろうとしたファイが殴られ頭から血を流して倒れてしまいます。その混乱に乗じてバーニズムが機転をきかせナムとベル、ルイスは逃げ出すことに成功します。
4人はしばらくいっしょに逃げますが、やがてルイスとバーニズムはナムたちとたもとを分かち、デモに参加すると言って走り去っていきます。残されたナムとベルはそこに座り込んだまま話をします。
ナムは逮捕された日、あの警官が初めてデモ隊に発砲した7月21日、逃げ遅れて倒れていたところをYYに助けられたのだといいます。あのとき自分を助けに戻らなければYYは逮捕されなかった、危険を冒した彼女に救われたから今度は自分が助けたいのだと打ち明けます。そのときふたりの横に、上からカエルのぬいぐるみが落ちてきました。
実はそのビルは、以前YYとジーユーが動画をアップした屋上のあるビルだったのです。YYは飛び降りるつもりで屋上に上がり、先にぬいぐるみを落としました。ナムとベルは急いで屋上へと向かいます。
その屋上にはさらに一段高い場所があり、YYはそこに上がっていました。ベルはYYを説得するため彼女の視線に入る位置に立って話しかけ、ナムはYYに気づかれないようにそっと近づいていきます。ベルは、自分はナムの恋人だと説明し自殺をやめるよう声をかけ続けます。するとそこに、YYを心配したジーユーも駆けつけます。それでもYYの孤独と絶望は深く、説得もむなしく彼女は身体を投げ出してしまいます。
しかしそのとき、YYの手をしっかりとナムの手がつかみます。ジーユー、ベル、手は次々に増え、YYの命は救われました。
〝たとえ結果が出なくても、私たちは諦めない。〟
以上、映画「少年たちの時代革命」のあらすじと結末でした。
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