マラソンマンの紹介:1976年アメリカ映画。ダスティン・ホフマンとローレンス・オリヴィエという米英の名優が演技合戦を見せるサスペンス映画。歯を使っての拷問場面が話題となった。シュレシンジャー監督とホフマンとは名作「真夜中のカーボーイ」以来の顔合わせとなる。
監督:ジョン・シュレシンジャー・出演:ダスティン・ホフマン(トーマス・リービ(ベイブ))、ローレンス・オリヴィエ(クリスチャン・スツェル)、ロイ・シャイダー(ヘンリー・リービ(ドク))、ウィリアム・ディヴェイン(ジェーンウェー)、マルト・ケラー(エルサ・オペル)、ほか
映画「マラソンマン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「マラソンマン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「マラソンマン」解説
この解説記事には映画「マラソンマン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
マラソンマンのネタバレあらすじ:起
ニューヨークに住む72歳のクラウスという老人が交通事故で死亡。その知らせを受けた兄のクリスチャンは暗殺ではないかと疑います。クリスチャンは元ナチス。戦犯としての逮捕を逃れて今は南米に住んでいました。元ナチスたちは戦争中にユダヤの富裕層からダイヤモンドを強奪しており、それを管理していたのがクラウスだったのです。彼が死亡した今、その手元にあったダイヤモンドを早く取り戻す必要があります。クリスチャンは髪の毛を剃って身なりを変え、ニューヨークへと旅立ちます。
マラソンマンのネタバレあらすじ:承
一方、アメリカ政府の秘密諜報員であるドクはナチスのダイヤの行方を追ってパリに滞在していましたが、身元がバレて殺されかけます。そして上司のジェインウェイからクラウスの死を聞き、自分もニューヨークへ。ニューヨークには弟の大学院生ベイブが住んでいて、久しぶりに兄弟水入らずで過ごします。ところがベイブが恋人のエルサとともに2人組の凶漢に襲われる事件が発生。ドクは元ナチスたちの自分への警告だと考えます。ドクはベイブを巻き込んだことで腹を立て、ニューヨークへ着いたクリスチャンに大胆にも面会しますが、クリスチャンが隠し持っている特殊なナイフによって刺されてしまいます。刺されながらもドクはベイブの部屋までたどり着き、そこで事切れます。
マラソンマンのネタバレあらすじ:転
ドクが死亡間際に何か伝えたのではないかと、ベイブは警察やジェインウェイから散々尋問されますが、もちろん彼は全く蚊帳の外。しかし、元ナチスはそう考えず、彼を誘拐。歯科医でもあるクリスチャンがドリルを使って拷問しますが、何も知らないベイブは返答できません。一旦ジェインウェイが助け出してくれましたが、彼も実はクリスチャンの仲間だという事が分かります。再び拷問。最後に見切りをつけた彼らはベイブを始末しようとしますが、ベイブはマラソンで鍛えた足を使って脱出。恋人のエルサに電話して助けてもらいます。しかし、ベイブは彼女も怪しいと見て問い詰め、やはり彼女も裏切り者ということが判明。やがてジェインウェイたちがやって来てベイブは殺されそうになりますが、エルサのお陰で助かります。エルサ自身は撃たれて死亡。
マラソンマンの結末
一方、クリスチャンはニューヨークの街角で身分がバレそうになり、人殺しを繰り返す羽目に。そしてダイヤモンドを銀行の金庫から取り出して外へ出ますが、待ち構えていたベイブに脅され、セントラルパークの浄水場へ。ベイブは復讐のためにクリスチャンにダイヤモンドを飲み込ませようとしますが、彼はそれを拒否。やがて取っ組み合いになりクリスチャンは自らのナイフで体を刺してしまい死亡。外へ出たベイブは虚しさに耐えながら去ってゆきます。
「マラソンマン」感想・レビュー
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マラソンランナーの話かと思って観たらそうじゃなかった。
兄のドクは結局何者だったのかもわからない。ジェインウェイは政府の仕事してるとは言ってたけど、彼はナチス側だったから真実を話していたとは限らない。政府の人間ならドクが死んでも他の人が後を継ぐはずで、クリスチャンが銀行から楽々ダイヤを手に入れられるとは思えない。
ナチス側の人間も大勢いるわりには役立たずだった。
脚本もキャラクターも中途半端だった。 -
私は1970年代のサスペンス映画をこよなく愛しています。
この映画「マラソンマン」も、1970年代を代表するサスペンス映画の傑作です。何しろ監督が「真夜中のカーボーイ」のジョン・シュレシンジャー、原作・脚色が「大統領の陰謀」のウィリアム・ゴールドマン、撮影が「明日に向って撃て!」のコンラッド・L・ホール、主演が「レインマン」のダスティン・ホフマン、共演が「探偵スルース」のローレンス・オリヴィエ、「オール・ザット・ジャズ」のロイ・シャイダー、「ローリング・サンダー」のウィリアム・ディヴェイン、「ブラック・サンデー」のマルト・ケラーというように、超一級のスタッフ、役者が勢揃いしていて、もうこれだけで、映画的興味をそそられ、しかも、サスペンス映画ときてますから、映画好きにとってはたまらない映画です。
とにかく、1970年代のサスペンス映画というのは、冷静に考えてみると大風呂敷を広げた、壮大なホラ話であるのにもかかわらず、思わず背筋を正してジッと見入ってしまうものがほとんどなのです。
作品が作り手たちの思惑を超えて一人歩きし、”メッセージ性を持った社会派映画”などと高く評価されたり、1977年の「ブラック・サンデー」のように、政治色が強いと解釈され、上映禁止の憂き目を見たという事実など興味深いものがあります。
ジョン・シュレシンジャー監督が手掛けた、この「マラソンマン」も、そんな”壮大なホラ話”の一本であり、現代ニューヨークの超高層ビルの間隙をぬって、ナチスの残党が暗躍するという、大時代的な”怪奇探偵小説”の世界を、サスペンス映画として展開してみせた作品です。
しかし、映画の中でナチスの残党に「この国(アメリカ)は豊かだ。だが近頃では神にも見捨てられてしまった」などと言わせているあたりが、一筋縄ではいかないところです。
しかも、マッカーシーの赤狩りで父親を失くした青年を主人公に据え、ナチスの残党と一騎打ちをさせるという設定が、かなり屈折しているなと思います。
そしてまた、そのようなところが、いいようのない翳りと、いかがわしさを、この映画に醸し出し、作品の魅力になっているような気がします。
名門コロンビア大学で専制政治という歴史学を専攻するベーブ(ダスティン・ホフマン)は、アベベに憧れ、セントラル・パークをマラソンするのが日課という生活を送っています。
一方、彼の兄シーラ(ロイ・シャイダー)は、アメリカ政府の諜報員で、ナチスの生き残りであるクリスチャン・ゼル(ローレンス・オリヴィエ)に接近し、味方のふりをして戦犯の逃亡先を探っていました。
このゼルは、第二次世界大戦中に捕虜たちから大量のダイヤモンドを賄賂として受け取っていて、終戦を迎え、ウルグアイにその身を隠したが、あらかじめニューヨークの銀行にダイヤを保管しておき、時折、兄のクラウスとシーラを運び屋にして、闇のルートで売りさばいていたのです。
ところが、クラウスが事故死したため、ゼルがダイヤの安否を確認するためアメリカにやって来ます。
その後、正体を見破られたシーラは致命傷を負わされ、ベーブのもとで絶命します。
更に、物語は密売の秘密を知っていると誤解されたベーブが、ゼルとその一味に捕らえられ、映画史に名高い、”過酷な拷問”を受けてしまいます。
この拷問シーンは、本当に痛い、ヒリヒリするほどの痛さを、主人公のベーブと一緒になって感じてしまいます。
そして、命からがら脱出したベーブは、ただ一人、兄の仇討ちを開始する事になります——–。
主演のダスティン・ホフマンは、出世作の「卒業」でも、元中距離走の選手という青年を演じていて、あの時は炎天下、愛する女性を取り戻すために走ったのですが、この作品のクライマックスでは、深夜、濡れた舗道の上を絶望的なまでに、延々と疾走する事になります。
悪魔から逃れるために——–。そんな彼の姿を捉えた、撮影の名カメラマン、コンラッド・L・ホールによる撮影は、異様なほど美しく、我々観る者を圧倒してしまいます。
名優ローレンス・オリヴィエは後年、自身の出演作の中で最もこの作品が好きだと語っていましたが、ほとんど完璧とも言える演技を示していて、さすが1900年代の最高のシェークスピア役者だと言われるだけあって、その深くて味わいのある演技は最高です。
ダスティン・ホフマンが最高の役者だと賞讃し、彼と共演する事を夢見て、遂にその実現を果たした、ローレンス・オリヴィエという役者—-、本当に凄い、凄すぎる本物の役者です。
脚本監督撮影俳優のすべてが上等のサスペンス。