危険なメソッドの紹介:2011年イギリス,ドイツ,カナダ,スイス映画。精神分析学の創始者フロイトと分析心理学の創始者ユング。二人の心理学者がある女性患者を巡って対立し、やがて決別するまでの軌跡を描いた人間ドラマ。鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督が挑んだ美しくも悲しい伝記映画です。
監督:デヴィッド・クローネンバーグ 出演者:マイケル・ファスベンダー(カール・グスタフ・ユング)、ヴィゴ・モーテンセン(ジークムント・フロイト)、キーラ・ナイトレイ(ザビーナ・シュピールライン)、ヴァンサン・カッセル(オットー・グロス)、サラ・ガドン(エマ・ユング)、ほか
映画「危険なメソッド」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「危険なメソッド」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
危険なメソッドの予告編 動画
映画「危険なメソッド」解説
この解説記事には映画「危険なメソッド」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
危険なメソッドのネタバレあらすじ:起
1904年8月、チューリッヒにあるベルクヘルツリ病院に精神を病んだ女性患者が収容されます。女性の名はザビーナ、精神科医のユングは彼女の担当医になりました。ユングは彼女の背後に座り、心に浮かんだことをありのまま語らせていく談話療法を開始します。この斬新な治療法の可能性を見いだしたのは精神分析学者のフロイトでしたが、彼は公に研究の発表を行ってはいません。フロイトを敬愛するユングは談話療法を成功させることに並々ならぬ意欲を見せているのでした。ザビーナは裕福なユダヤ人であり、教養も持ち合わせていました。しかし父親から激しい虐待を受けて育ったため、物を叩く音に過剰に反応したり、ヒステリーを起こしたりします。ユングは医療に興味を持っているというザビーナに研究の助手をしてみないかと持ちかけます。
危険なメソッドのネタバレあらすじ:承
ユングは身重の妻エマを被験者にして、単語に対して何を連想するかをテストする言語連想実験を開始します。実験の様子を終始観察していたザビーナは、エマが夫の関心を失うことを恐れているのではないかと彼女の心理を鋭く見抜き、ユングを驚かせます。やがてエマは娘を出産しますが、彼女の悲願は息子を授かることであり、次の妊娠へ強い執着を見せるようになります。夜を怖がるザビーナは幻聴や幻覚に悩まされていました。初めて父親に折檻された時、恐怖から失禁してしまったザビーナでしたが、やがて痛みつけられることに性的な興奮を感じるようになったと言います。ザビーナは自分の不道徳さに罪悪感を募らせ、生きることに絶望しているのでした。2年後ウィーンにやってきたユングはフロイトと念願の対面を果たします。ユングは心理分析療法により、ザビーナが劇的に回復し、今では大学の医学部に通っていることをフロイトに説明します。二人は十数時間に及ぶ長い意見交換を交わし、交流を深めていきます。自分が見た夢の話をしたユングは、子孫を増やすことへの不安から無意識のうちに性衝動を抑圧しているフロイトに指摘されるのでした。
危険なメソッドのネタバレあらすじ:転
すべての症状は性衝動に基づいているというフロイトの解釈にユングは疑問を抱くようになっていきます。やがてユングはフロイトから神経症を患うグロス博士の治療を依頼されます。次々と愛人を作り、欲望のままに生きるグロス博士に自己を抑制することを説くユングでしたが、グロス博士は患者の精神を解放することこそが精神科医の役目であると考えているのでした。一方ユングとザビーナの間には恋愛感情が生まれつつありました。ザビーナから処女を捧げたいと誘惑されたユングは激しく葛藤します。しかしグロス博士から欲望に忠実になるべきだと説得され、ついに二人は一線を越えてしまうのでした。グロス博士は治療の最中に失踪してしまいます。待望の息子が誕生したことで、ユングは妻や家族を裏切り続けることに罪悪感を感じ、不倫関係に悩むようになります。ユングはフロイトの元を訪ねますが、保守的な考え方のフロイトに批判的な態度を見せるようになります。この世には科学では説明できない謎があると信じるユングに対して、フロイトは霊的な現象など研究する価値もないと一蹴するのでした。マゾヒストのザビーナとの性行為は刺激的なものでしたが、妻にも不倫を知られることになります。ザビーナとの関係を絶つことを決意したユングでしたが、納得できないザビーナはフロイトに相談を持ち掛けます。困り果てたユングはフロイトにザビーナとの仲裁を頼みますが、ザビーナはフロイトを味方につけ、彼の患者になると言い残しユングの元を去っていくのでした。
危険なメソッドの結末
ユングとフロイトは学会に出席するため渡米します。ユングが見た夢の話を聞いたフロイトは、その夢が二人の対立を象徴しているのだと皮肉を言います。1910年9月、ザビーナは作成した卒業論文の意見を聞くため、ユングの元を訪ねます。ユングがザビーナの論文に助言しているうちに、二人はまたしても不倫関係に陥っていきます。しかしザビーナは再びフロイトのいるウィーンに戻っていくのでした。2年後、ザビーナは性衝動が自己を破壊するというテーマの画期的な論文を書き、話題を呼びます。フロイトはザビーナの功績を讃える一方で、ユングを神秘主義に走った下品な人間だと非難します。ザビーナはユングをかばおうとしますが、フロイトは完全に彼に愛想をつかしていて、聞く耳を持ちません。ザビーナはフロイトの元で分析医としての一歩を踏み出します。一方ユングとフロイトは手紙で互いを激しく批判し合うようになり、二人の対立は決定的なものになっていくのでした。1913年7月、医師と結婚し、妊娠中のザビーナがユング一家の元を訪ねてきます。ザビーナはエマからふさぎ込んでいる夫を助けて欲しいと頼まれます。ユングはフロイトと決別してからというもの、医師の仕事も投げ出し、深い孤独の中にいました。ザビーナと再会したユングは彼女を心から愛していたことを告白し、ザビーナと出会えたことで本当の自分を理解できたと話します。ユングを救い出したいザビーナでしたが、彼の心の中に底知れぬ深淵が広がっていることを感じるのでした。ユングへの深い愛を胸に秘めたまま、ザビーナはロシアへ帰っていくのでした。
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