プラスチック・オーシャンの紹介:2016年イギリス, 香港映画。このドキュメンタリーは、幼いころからシロナガスクジラに魅せられ、その後、ジャーナリスト、フィルム・メーカー、冒険家、となったクレイグ・リーソン氏のチームがシロナガスクジラの撮影をする中で、海に浮かぶ大量のプラスチックごみを目にしたことを発端に、制作されている。様々な海洋学者や海洋生物学者たちの研究や見解が紹介され、海がどれだけプラスチックで汚染されているか、海の生き物たちがどれだけ苦しんでいるかを教えてくれる。エグゼクティブ・プロデューサーはレオナルド・ディカプリオ。ユネスコが後援している作品。
監督: クレイグ・リーソン 出演:クレイグ・リーソン、タニヤ・ストリーター、リンジー・ポーター、ダグ・アラン、マイク・ディグリー、ジェニファー・レイバース、ほか
映画「プラスチック・オーシャン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「プラスチック・オーシャン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
プラスチックオーシャンの予告編 動画
映画「プラスチック・オーシャン」解説
この解説記事には映画「プラスチック・オーシャン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
プラスチックオーシャンのネタバレあらすじ:起
ハーマン・メヴィルの「白鯨」より、「考えてみてほしい。海と陸の両方のことを。不思議な重なりが見えないだろうか。」という一節が文字で紹介される。ディレクターのクレイグ・リーソン本人が、子どもの頃に科学雑誌でシロナガスクジラを見て以来、その魅力に取りつかれ、それから40年後の今、やっとシロナガスクジラの映画を撮ることになった、と語る。
クジラ目の学者、リンジー・ポーター博士らとともに、撮影のためスリランカ沖の海でクジラを探す。そこで若いシロナガスクジラの撮影の初めて成功する。内戦で30年間も閉ざされていたその海には手つかずの自然があるはずだったが、海の中から水中カメラマン、ダグ・アランが海中から海面を映したときに見えたものは、浮遊する大量の油やごみだった。
プラスチックオーシャンのネタバレあらすじ:承
フリーダイバーで4分間素潜りできるタニヤ・ストリーターがTEDxでプレゼンしている。ジンベイザメや大きなエイなどと並んで泳ぐシーンが流れる。彼女は、この10年で20世紀よりも多くのプラスチック製品が製造されていることを指摘。その半分が使い捨ての製品だが、プラスチックは分解されない。ではどこに行くのか?海岸で断末魔に苦しむ大きなクジラが映される。
体内で見つかったのは大量のプラスチックごみだった。クジラは大量の海水を飲み込むことで餌を食べる。餌とプラスチックの違いが判らないまま飲み込んでしまう。スリランカ沖でリーソンたちがプラスチックごみの一部を集めてみると、使い捨てライターが何本も、また、漁の網やお菓子の袋などがあった。米国にプラスチックボトル入りの水を供給するために使われる石油は年間約2300億リットルだという。他の飲み物も入れたらさらに多くの石油が使われている。
米国人は毎年380億本のボトルを捨て、200万トン分の埋め立て地を産んでいる。プラスチックは丈夫で分解されないため、これまでに作られたプラスチックのほぼ全量が何らかの形でまだ地球上に存在する。海のプラスチックごみの8割が川から海に流れ込む陸由来のものだ。そしてその半分以上は海底に沈む。
映画監督で生物学者、そして潜水艦操縦士でもあるマイク・ディグリーとタニヤ・ストリーターが海底を調べる。その海底のプラスチックの量はプランクトンの半数に及ぶ。推進367メートルにペットボトルがあった。また大きなプラスチックの塊があり、マニピュレーターで回収する。また無人探査機を2.4キロメートルまで沈めてみると、そこにも大量のペットボトルの吹き溜まりのほか、多くのプラスチックが沈んでいた。
海洋学者アンドレア・ニール博士は、細かい網で太平洋ゴミベルトの海面をさらう。一見プラスチックやごみなどは見えない海面だが、網の中には細かいプラスチックが大量に入っていた。これらがマイクロプラスチックであり、海水をプラスチックのスモッグのようなもので汚す。マイクロプラスチックの表面には凹凸があり、そこに化学物質が入り込み、それを魚が食べることで、化学物質は魚の体内に入り、それが人間の口に入る。
プラスチックオーシャンのネタバレあらすじ:転
フィジーの人々は外のかまどで料理をするが、火をつけるときの着火剤にプラスチックを使っている。煙が目に沁みたり、息が苦しくなったり、頭痛がしたりするが、安いから使っている、と言う。その煙を集めて分析すると、発がん性のある化学物質が検出された。それを吸い込むと内分泌がかく乱されて、様々な体調不良が起こるという。
香港では台風によるプラスチックペレットを積んだコンテナ6個が壊れて海に流れた。そのプラスチックペレットは様々な国に流れ着いた。ペレットを作った中国企業の上層部も海岸に出てペレットを集めたが、養殖の魚などは死んだ。これとは別に研究機関がインドネシアとアメリカの食用の魚を調べたところ、それぞれ25パーセントのから、自然界にはない物質がみつかった。
世界遺産のロード・ハウ島には、多くの渡り鳥がやって来る。ミズナギドリは、長旅の後にこの島で繁殖する。海鳥専門の研究者レイバース博士がヒナの胃に塩水を流し込み、吐き戻させると、その中には油と多くのプラスチック片が混ざっていた。海辺で死んでいたミズナギドリの胃はパンパンで、開くと234個の破片が出てきた。ミッドウェー島のアホウドリの死体からも、大量のプラスチック片が出た。海辺で死んだ鳥が腐敗したとき、骨と羽毛と胃の中のプラスチックだけが残っている映像が数羽分流れる。
ストリーターはイタリアシエナ大学のフォッシ教授を訪ねる。そこでは胃の中のプラスチックがガスを発生させ、体が浮いてしまいうまく泳げなくなったウミガメが保護されていた。ウミガメはビニール袋をクラゲと間違って食べるのだ。教授はまた、地中海のバンドウイルカの皮膚を少量採取した。そこにイルカが食べた魚からプラスチック誘導体があれば、人間の身体も汚染されていることになる。イルカの皮膚からは高濃度のプラスチック誘導体が検出された。リーソンはフィリピンのごみ処理場を訪ねる。ごみ処理といってもゴミで埋め立てられたようなところに、2000世帯が暮らす。ごみの中からプラスチックを拾い、それを売って家計の足しにしている。
プラスチックオーシャンの結末
ストリーターは2人の幼い子供の母親であり、環境問題に非常に関心がある。彼女はプラスチピュアというプラスチックの物理的特性をテストする会社を訪ねる。そこで研究員が言うには、プラスチックにはエストロゲン活性があるものが多い。また、化学物質にもエストロゲン活性がある。哺乳瓶も、おしゃぶりもエストロゲン活性がある。ステンレスボトルはプラスチック製の蓋や飲み口を除けば安全だという。プラスチック製品が発するエストロゲン活性がある化学物質は、太陽光を浴びるとさらに多くなる。
一方リーソンは様々なファストフード店で注文し、プラスチックではない容器に入れてほしいと言うと、どの店からも断られる。ストリーターは娘とスーパーで買い物をする。プラスチックに包装されていないものはほとんどない。プラスチック包装されているものは、袋から出し、小売店に処分をゆだねるのも手だ、と本作は促す。
1991年にドイツはいち早く、プラスチックの廃棄や再利用には製造業者が責任を持つという政令を発した。またドイツには、プラスチックボトルの回収機にペットボトルを一本ずつ入れると、そのバーコードを読み取り、正しく廃棄されるシステムもある。消費者には1本につき25セントほどが戻ってくる。プラスチック製品を使わないよう、政府に呼びかけよう、とリーソンは語る。
ルワンダはポリ袋を禁止しており、ルワンダの紙袋工場が映される。環境の豊かな国だからこそ、動物や家畜への影響を考えポリ袋を禁止したと同国の環境管理庁長官は言う。また、アクシオン・ポリマーズの代表取締役は、プラスチック1トンを埋め立てるのに150ドルの損失だが、再利用すれば1500ドルの利益となる、と言う。多くのプラスチック製品で同じものを作ることができるという。建築素材や車のパーツにも使えるという。ペットボトルからシャツを作ったり、そのシャツから車の部品を作ったりすることも可能だという。
プラスチック・バンクという企業は、途上国の人たちがプラスチックを川や海に捨てる代わりに集めてお金に換えられるシステムを構築した。このように回収されて再生されたプラスチックは「ソーシャル・プラスチック」と呼ばれ、同じ価値観を共有する企業により再利用される。プラスチック・エナジーというアイルランドの企業は、食品包装のプラスチックをディーゼルに変える装置を開発した。
水中カメラマンのダグ・アランは、イギリスの小学生に、クジラや環境の話を伝えている。小学生たちはとても熱心に聞いてくれるという。廃棄された網に首がひっかかってしまったアザラシが助けられるシーン、シエナ大学で保護されていたウミガメが放流されるシーン。動物学者のアッテンボロー卿は、地球環境の改善には海洋環境を改善することだと言う。リーソンは、すべての生物が環境を破壊しないように生きているが、人間だけがその自覚がない、と指摘する。人間を代表して、動物の親たちに謝罪したい、と結ぶ。
以上、映画「プラスチックオーシャン」のあらすじと結末でした。
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