あの群青の向こうへの紹介:2019年日本映画。未来の自分から手紙“ブルーメール”が届くようになった世界を舞台に、ひょんなことから出会った高校生と家出少女が共に東京を目指すこととなり、その過程で次第にそれぞれの過去や秘密が浮き彫りとなっていく姿を描いた青春ロードムービーです。
監督:廣賢一郎 出演者:芋生悠(ユキ)、輝山準(“中山優輝”名義)(カガリハヤト)、瀬戸かほ(彩)、斎藤友香莉(ユキの幻覚の少女)、合アレン(ユキの母)、田口由紀子(カガリの母)、ひと:みちゃん(ミヤウチイサオ)、フランキー岡村(マリコ)、石神リョウ(マリコの彼氏)、大口彰子、石上亮、鈴木ただしほか
映画「あの群青の向こうへ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「あの群青の向こうへ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「あの群青の向こうへ」解説
この解説記事には映画「あの群青の向こうへ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
あの群青の向こうへのネタバレあらすじ:起
未来の自分が死ぬ前に1通だけ過去の自分に送ることができる手紙「ブルーメール」。政府は未来が改変されぬよう、ブルーメールを徹底的に管理していました。そのため、ブルーメールの中身は「がんばれ」「元気か?」程度に留められていましたが、このメッセージは現代に生きる人々の心の支えとなっていました。
高校生・カガリハヤトは過去に恋人の彩を自殺で失っていました。彩は死の間際、カガリに「いつかきっと良い人に出会えるから」と言い残していました。カガリは学校の屋上でタバコを吸っているところを教師に見つかり、厳重に注意されました。
そんなある日、カガリの母が交通事故で命を落としました。病院で母の遺体と対面したカガリは、自宅で母が事故前に作っておいてくれたカレーを泣きながら食べました。その夜、あてもなく夜の街をぶらついていたカガリは、警察官の職務質問を受けていた家出少女・ユキと出くわしました。ユキは手首を黒いリストバンドで隠していました。
カガリはユキの手をとって逃げ出し、ユキに「(助けたのは)気まぐれだから」と語りました。ユキはカガリと同じ高校の制服を着ていましたが、二人はこれが初対面でした。互いに自己紹介をしたカガリはユキに「東京に行ったことはあるか?」と尋ね、物心ついてから一度も会ったことのない父に会うために東京に行くのだと語りました。カガリはユキを連れて電車に乗りました―――。
―――ユキはインターネットカフェでメールを打っていました。ユキには同じ年頃のの女子高生の幻影が常につきまとっていました―――。
あの群青の向こうへのネタバレあらすじ:承
―――所持金が底をついたカガリとユキは電車を降り、徒歩で田園地帯を歩き続けました。カガリとユキはヒッチハイクで軽トラックの荷台に乗せてもらい、次の街まで移動しました。
東京に行くには次の峠を越えなければなりませんでした。ユキはカガリが持っていたヘッドホンで音楽を聴かせてもらいました。このバンドは去年、ボーカルの死をきっかけに解散していました。
ユキは街のスーパーでお菓子を万引きしようとし、その場に居合わせた女性客に取り押さえられました。警察が来るのを待つ間、ユキとカガリはその場にいた店長の知人のオネエのマリコに事情を語りました。事情を察したマリコはカガリとユキを自宅に連れて行き、ご飯を食べさせてくれました。マリコの部屋には「林真梨子」からのブルーメールがありました。中には「我が人生に悔いなし」とだけ書かれてあり、マリコは自分の将来のことがもっと書かれていればよかったのにと語りました。この日、カガリとユキはマリコの家に泊めてもらうことにしました。
ユキの前に幻影の少女が現れ、ユキが万引きをしたことをからかうと、未成年二人がこのまま東京に行けるのかと問いかけてきました。少女は「ユキちゃんは本当は私になりたがっている」と言うと、ユキは怒って否定しました。
ユキは都会の片隅で不安を抱えたままうずくまっている自分の夢を見ていました。目を覚ましたユキはカガリを起こしました。マリコは彼氏に浮気を疑われて口論になっていました。翌朝、カガリとユキは県境近くまで車で送ってもらいました。マリコにお礼を言って別れたカガリとユキは猛暑の中をひたすら歩き続けました。途中の草むらで自転車が捨てられているのを見たカガリとユキはその自転車に乗って移動を続けました―――。
―――カガリは彩と出会った時のことを思い出していました。同じ高校の出身だった年上の彩。カガリがタバコを吸うようになったのも彩の影響であり、バンドを教えてくれたのも彩でした。そんな彩は将来に漠然とした不安、これからの人生への焦りを抱えていましたが、カガリには「絶対に幸せになれるよ。諦めちゃだめだよ」と言っていました―――。
―――ユキは東京に会ってみたい人がいると明かしました。ネットで知り合ったという「たぶん女の人」は何年も前からずっとユキの悩みを聞いてあげてくれていたのです。
その夜。カガリとユキはコンビニで余った弁当を分けてもらおうとしましたが、いつの間にか自転車を盗まれてしまっていました。カガリとユキは夜通し街を歩き続け、カガリは流れ着いた街でしばらくの間働いて金を稼ぐことを思いつきました。カガリはこの街の木工業者にユキとの住み込みで雇ってもらえることになりました。カガリはユキに「金が貯まったら俺についてこなくてもいいんだぞ」と告げましたが、ユキは「ここまできたら私はカガリと一緒に行く」と返しました。
あの群青の向こうへのネタバレあらすじ:転
カガリはユキがシャワー中にブラジャーで遊んで怒られたり、ユキと共に業者の青柳さんと佐々木さんとご飯を食べに行ったりして過ごしました。カガリは青柳さんから、結婚したら嫁さんを大事にしろよと言われました。青柳さんは一所懸命やってる奴が好きだからカガリを雇ったのだとも話しました。
カガリが一生懸命に働いている間、部屋で留守番をしているユキの前にまたしても幻影の少女が現れました。少女は「ずいぶんと楽しそうじゃない?」とユキと一緒にベランダの景色を眺めていました。
カガリは青柳さんから給料を受け取り、お礼を言うとユキと共に再び旅立ちました。カガリとユキは新宿行きの夜行バスに乗りました―――。
―――カガリは彩と過ごした日々を思い出していました。カガリと彩は愛し合っていましたが、ある日彩はカガリに「私、もうダメだ」と弱音を吐きました。慰めようとするカガリに、彩は「カガリには、まだわからないんだよ」と言いました。彩は唐突に「カガリは私のために死ねる?」と言ってきました。カガリは「バカなことを言うなよ」と返すと、彩は「ごめんね、バカなことを言って」とタバコに火をつけました。そしてある日、彩は「いつかカガリに大切な人ができたら絶対に離さないでね」と言い残して自ら命を絶ちました。それからというもの、カガリは自分に言い寄ってきた女性を拒絶するなど、漠然とその日暮らしを送ってきたのです―――。
―――カガリとユキはようやく東京・新宿に辿り着きました。実はカガリは勢いで飛び出してきてしまったため、父の住所などの手がかりは全く知りませんでした。探偵を雇う金もなく、ユキは役所で戸籍謄本を調べてみたらと提案しましたが、そんなことをしたらカガリは家出したことがバレてしまうため却下されました。
カガリとユキは電車に乗って東京をあてもなく移動しました。そんな時、カガリの前にブルーメール事務局の者が現れ、カガリ宛てのブルーメールを渡してきました。カガリはユキをホテルに残し、ブルーメールの封を開けぬまま夜の街をさまよい歩きました―――。
―――彩は生前、「ブルーメールってきっと良いことばかりじゃないんだよ。あれってみんながみんな受け取れるわけじゃないと思う」と語っていました。彩のもとにはブルーメールは届いていませんでした。彩は自らの苦しみの詳細については決して語ることはありませんでした―――。
―――「俺たちはいったい何を信じて生きていけばいいんだろう」―――カガリはネットカフェのパソコンで「ブルーメール 人探し」と検索しました。翌日、カガリはユキにブルーメールを見せてみました。封筒の中には何も入っていませんでした。カガリにはこの何もないブルーメールのこと、そして東京で受け取ったことには何か意味があるのではないかと考え、もしかしたら父に関する手がかりが得られるのではないかと思い、ユキと一緒にブルーメールの管理局へ行くことにしました。カガリとユキは途中の河原に立ち寄り、ユキは空へ無数のしゃぼん玉を飛ばしました。
カガリの母は生前、父のことについては多くを語らず、カガリは父のことを知らないまま育ってきました。カガリは父の名が「ミヤウチイサオ」であることを突き止め、早速イサオの住む雑居ビルへと向かいました。イサオは「身分証明書を見せろ」と言うと、カガリの財布から金を抜き取り、「二度と来るな」と追い返してしまいました。
カガリはユキには何も語らぬまま黙り込んでしまいました。ユキは何があったのかと問うと、カガリはユキの手首のリストバンドを見て「お前、死にたがってるんだろ? 死にたい奴が偉そうに訊くんじゃねえよ」と突き放しました。ユキは「あんたのこと、私は・・・」と言いかけるとその場を去っていきました。
あの群青の向こうへの結末
「私には何もなかった。ずっとひとりぼっちだった」―――ユキは自らの過去を振り返りました。ユキは母と行きずりの関係を持った男との間に生まれた子でした。ユキもまた父を知らずに育ったのです。ユキの母は、ユキの存在を隠したまま別の男と交際を始めましたが長続きせず、家で自堕落な日々を過ごしていました。ユキの母はユキが高校に進学することを許さず、制服を着ただけでも暴力を振るったためにユキは家出したのです―――。
―――夜の街をさまようユキの前にまたしても幻覚の少女が現れました。少女はユキに「こっちに戻っておいでよ」と誘いました。少女はユキのことは何でも知っていると告げるとキスをしてきましたが、ユキは少女を拒絶しました。
ユキは怪しげな男にナンパされ、ラブホテルへ連れていかれました。幻覚の少女は「いってらっしゃい」と見送るばかりでした。その頃、カガリはあの時、彩の心の苦しみを聞いてあげられなかったことを悔やんでいました。カガリはユキを探して回りました。
翌朝、ユキは路地裏で倒れ込んでいました。カガリは「俺が悪かった」と謝りましたが、ユキは「お前に私の気持ちがわかるのかよ!」と拒絶しました。カガリはユキを強く抱き締めました。
ユキはネットで知り合った人の居場所を知り、カガリを連れて向かいました。そこは老人ホームであり、その人物の正体は車椅子のおばあちゃんでした。おばあちゃんははるばる来てくれたユキの労をねぎらい、ユキ宛てのブルーメールを渡しました。おばあちゃんは「ユキさんは不安でいっぱいになることがあるかもしれないけど、きっと大丈夫」と励ましました。実はおばあちゃんはカガリの祖母だったのです。
ユキは制服をゴミ箱に捨てました。そしてユキはカガリと共に河原に行き、ブルーメールを開けてみました。ユキは中身を見て涙ぐみました。カガリはユキの手を取って走り出しました。「俺はもっと強くなりたい。今度こそは大事な人を守りたいから」「見えない不安で押しつぶされそうになるけど、今はただ未来へ向かって走っていくんだ。前へ、前へ、この瞬間だけを私は生きているから」―――。
以上、映画「あの群青の向こうへ」のあらすじと結末でした。
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