忠臣蔵の紹介:1958年日本映画。数多くの「忠臣蔵」映画の中でも最高傑作との評価もあり、公開当時も大ヒットした166分に渡る大型時代劇。大映創立18年を記念して製作されたカラー、大映スコープのオールスター大型時代劇。大石内蔵助を演じるのはもちろん長谷川一夫。監督は生涯に200本を超える監督作品を誇る渡辺邦男。
監督:渡辺邦男 出演者:長谷川一夫(大石内蔵助)、滝沢修(吉良上野介)、市川雷蔵(浅野内匠頭)、鶴田浩二(岡野金右衛門)、勝新太郎(赤垣源蔵)、山本富士子(瑤泉院)、淡島千景(りく)、京マチ子(るい)その他
映画「忠臣蔵(1958年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「忠臣蔵(1958年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「忠臣蔵(1958年)」解説
この解説記事には映画「忠臣蔵(1958年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
忠臣蔵のネタバレあらすじ:1.刃傷事件
元禄14年3月、早駕籠で宿場を乗り継いできた江戸からの二人の使者が、疲労困憊して赤穂城に着く。城代家老・大石内蔵助は書状を見て「吉良殿」とつぶやく。彼の最も恐れていたことが起きてしまった。
主君・浅野内匠頭は朝廷からの使者の接待役となったが、まじめな彼は、儀式について指導する係の吉良上野介への賄賂を怠る。その腹いせで上野介は内匠頭へのいじめを続ける。妻や国許から届いた大石からの手紙に支えられて耐えてきたが、使者接待の最後の日である3月14日、江戸城内で内匠頭は上野介への刃傷に及んでしまった。
内匠頭と上野介を取り調べた目付の多門伝八郎は、赤穂藩をかばうために内匠頭の突然の発狂による刃傷という処理を望んだが、内匠頭は怨恨によるものと述べる。上野介に近い柳沢出羽守は、命に別条のなかった上野介には咎めなし、内匠頭は田村右京太夫邸で即日切腹という処分を決定し、将軍のお考えであるとして反対意見を受け付けない。
内匠頭切腹の報を受けて、妻はその日のうちに剃髪して名を瑤泉院と改めた。
藩は取り潰しと決まり、城明け渡しをひかえた赤穂城では大石の主張に従い殉死を希望する者たちが集まっていた。だが、これから切腹をしようという土壇場で、大石は主君の恨みをはらすべく吉良への仇討ちをするという真意を明らかにする。ただし、大石は内匠頭の弟、大学を跡目とする浅野家再興の嘆願書を、城を受取りに来た脇坂淡路守に託した。
忠臣蔵のネタバレあらすじ:2.仇討ちの大義
大石は京都の山科に引っ越す。上野介の実子・上杉綱憲の家老・千坂兵部は、知恵者の大石への警戒を怠らず、山科にもスパイを放つ。江戸では吉良家が屋敷替えになり、かつての赤穂藩士が仇討ちの機会をうかがっていた。
江戸へ上った大石が瑶泉院を訪れた帰り、吉良方の刺客に襲われるが、たまたま多門伝八郎の屋敷の前だったために、多門に助けられる。多門は上野介の新居の図面を渡すなど、仇討ちを目指す旧赤穂藩士たちを密かに支援していた。
堀部安兵衛ら江戸の急進派は早く仇討をと、大石をせかしたが、大石は大学の世継ぎ擁立の成否がわかるまで待たなければならないと説得する。上野介の背後で権力をふるう柳沢に反省を促すのでなければ仇討ちは無意味、仇討ちは大義に乗っ取らなければならないというのが大石の考えだった。
忠臣蔵のネタバレあらすじ:3.遊郭の大石
半年後、山科の大石は遊郭で遊興三昧の日々。遊郭には千坂のスパイ・るいが仲居として勤めているが、美しい仲居も大石に気に入られる。遊女たちの間では人気者の大石。とうとう浮橋太夫を身請けし、妻子を離別すると言い出す。大石の母も息子に怒るが、仏壇に大石自身の位牌があるのをみつけて、仇討ちをめざす大石の真意を知る。大石と長子の主税のみを残して一家は妻・りくの実家に移った。
大石の位牌に千坂のスパイも気づき、大石の仇討ちの意志は明らかになる。るいは遊郭で横になる大石を刺し殺そうとして果たせない。彼女は、一つの目的のために生きる大石の澄んだ目と姿に魅せられていた。
忠臣蔵のネタバレあらすじ:4.江戸に集結する同志
内匠頭の弟大学による浅野家再興の望みは絶たれ、ついに大石たちは、かねて用意した討ち入り道具の箱をもって江戸に上る。脱落者は多く、仇討ちの同志は47名となっていた。旅の間、大石は近衛家用人・垣見五郎兵衛と名乗っていたが、本物の垣見五郎兵衛が怒って訪ねてくる。しかし、偽者の正体が大石と知って、近衛家の手形を渡して大石を助ける。
母親を連れて旅をしてきた矢頭右衛門七もやっと到着し、47名の同志は全員江戸に集った。仇討ち決行が間近に迫るが、吉良屋敷の最新の絵図面がまだない。小間物屋の番頭、金さんになっていた岡野金右衛門が吉良家出入りの大工の娘・お鈴から絵図面を手に入れることが期待されていたが、岡野は自分に惚れている女を利用することに良心がとがめていた。
だが、ついに決意して屋形船の中で、絵図面を見せてほしいと頼む。鈴のことを好きだと言う金さんのために、鈴は絵図面をもち出す。岡野は来世できっと一緒になると誓う。
忠臣蔵のネタバレあらすじ:5.決行は14日
江戸に戻ったるいは、千坂の命令で吉良邸に住み込む。14日の茶会に来るように上野介に誘われる。一方で、浪士を探し出そうと人々に暴力をふるう清水一学らの振る舞いに心を痛めていた。
清水はるいを大石がいると思われる宿に行かせるが、るいは茶会のある14日は屋敷の者たちは酒宴を開くことを大石に教える。そして、外で待っていた清水に斬りかかられた大高源五をかばって斬られてしまう。大石はいなかったと清水に嘘をついて、るいは死ぬ。
忠臣蔵の結末:6.仇討ちの日
決行当日、大石は瑶泉院のもとを訪ねるが、スパイを恐れる大石はけっして仇討ちのことは話さず、瑶泉院を失望させる。しかし、その後、スパイが大石の置いて行った歌日記を奪おうとしたことで、瑶泉院は大石の決意を知ることとなる。
歌日記と言っていたのは仇討ちの連判状だった。その日、赤垣源蔵は実兄の家に、勝田新左衛門は妻が身を寄せる妻の父の家に、それぞれ暇ごいに行った。
その夜、四十七士はついに吉良屋敷へ討ち入る。乱闘が続く。清水一学は岡野金右衛門が斬る。ついに炭小屋に隠れる上野介が発見され、大石が上野介を殺す。
翌朝、江戸は四十七士の快挙に沸く。雪の積もった道で、内匠頭が葬られている泉岳寺に引き上げる四十七士を見守る沿道の人々の中には、岡野の妻である鈴もいた。多門伝八郎は両国橋の前で四十七士を止め、大石たちをねぎらい、泉岳寺への道を指示する。四十七士は沿道にいた瑶泉院に黙礼して歩き続けるのだった。
以上、映画「忠臣蔵」のあらすじと結末でした。
「忠臣蔵(1958年)」感想・レビュー
-
カット編集を見ました。子供のころ、映画好きの母のお供で、映画館で見た記憶がありますが、今回カット版を見て、改めて、この作品の良さにきずきました。特に、”武士は、相見互い、落ちぶれてこそ、人の情けは身に染みてありがたいもの”のセリフ等、この場面は、何回見ても飽きません!!。ただ、昔の武士は、他に選択がないとはいえ、仕えた主君次第で、寿命も決まる。理不尽な時代。このような、主従関係は、世界中、歴史上、日本だけでしょうね。
-
子供のころ、映画好きの母に連れられて、映画館で観ました。今回カット編集を見て、改めて感動しました。特に”武士は相見互い、落ちぶれてこそ、人の情けが身に染みてありがたい”の場面は、何度も繰り返し見て感動してます。解説文もすばらしいです。
この作品は名実共に史上最高峰の「忠臣蔵」である。これまでに忠臣蔵や赤穂浪士を名乗る作品は映画では約20本、テレビドラマでは凡そ25本にわたって制作されてきた。その全てを見た訳ではないが、少なくともこの映画が頂点であることだけは間違いない。そしてそれはこの映画がつくられた時代が物語っていると言うことに尽きるのである。1958年(昭和33年)に大映の創立を記念して永田雅一が総力を挙げて制作した。当時の大映が誇るオールスターキャストで臨んだ超大作時代劇なので、この映画に比肩する作品は他には見当たらないであろう。日本映画の黄金時代はまた名優の宝庫でもあった、ゆえに現代の豪華キャストとは桁違いなのであって全くもって比較にならない。この時代の俳優や女優は、存在感も質も品格も立ち居振舞いも練度も何もかもが完璧なのである。大石内蔵助を演じる長谷川一夫にいったい誰が対抗できようか。市川雷蔵の代わりに浅野内匠頭を演じる役者がいるだろうか。滝沢修の吉良上野介にしても・・・・・等々、挙げてゆけばキリがない。女優陣も誠にゴージャスな顔ぶれが出揃っている。いずれ菖蒲(アヤメ)か杜若(カキツバタ)。先ほど時代と言ったが日本が誇る見目麗しき女優たちも、この時代がちょうど良い旬(見ごろ熟れごろ食べ頃)だったのだ。白雪の如き山本富士子、正にアヤメの京マチ子、梅香の匂う淡島千景、女鹿のような若尾文子、大輪の菊花は木暮実千代など。彼女たちの艶姿を拝んでいるとついつい日本酒が恋しくなってくる。さてこの作品の一番の見所は、個人的には長谷川演じる大石内蔵助の圧倒的な存在感ではないかと。長谷川一夫の他を圧倒する目力は強烈で、その瞳は神聖なるオーラを放っていて近寄りがたい。そして私は長谷川一夫こそ世界屈指の名優中の名優であるとかたく信じている。長谷川には筆舌に尽くしがたい魅力が幾つも揃っている。静けさと威厳に満ちたその偉容と優雅で気品溢れる洗練された所作など誠に稀有な役者なのである。また歌舞伎役者として徒弟関係にある二代目鴈治郎との共演も息がピッタリと合っていて見応えがあった。「歌舞伎」と言う伝統芸能が日本にあるのは映画界にとっても誠に幸運であった。欧米には歌舞音曲を伴った総合芸術たる「歌舞伎」に匹敵する分野がないので、その点では日本が一歩も二歩も抜きん出ている。オペラなどは歌手が演じるだけなのでプロの役者とは比べ物にならない。あとはシェークスピアの舞台劇くらいしかないのだから。市川雷蔵と長谷川一夫の気迫に満ちた台詞回しがこの作品を一段と引き締めて品格のある芝居へと昇華させている。名場面や見せ場の連続で片時も目を離すことができない。まるで錦絵を見るような役者たちの艶やかな容姿が幾重にもかさなる贅沢なひととき。「忠臣蔵」は惚れぼれするアングルと目の覚めるようなショットが連続する夢のような時間と空間を提供してくれる。伝説の巨匠、渡辺邦男監督の並々ならぬその力量と技量には脱帽するしかあるまい。日本映画の粋を結集した「忠臣蔵」は空前絶後の傑作時代劇であり、日本人の夢であり、我々の永遠の憧れなのである。