大丈夫であるように ─Cocco 終らない旅─の紹介:2008年日本映画。2007年から2008年にかけてシンガーソングライターのCoccoさんを映画監督、是枝裕和が追ったドキュメンタリー映画。
監督:是枝裕和 出演:Cocco
映画「大丈夫であるように」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「大丈夫であるように」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「大丈夫であるように」解説
この解説記事には映画「大丈夫であるように」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
大丈夫であるように Cocco 終らない旅のネタバレあらすじ:起
沖縄県那覇市出身のシンガー、Coccoさん。
当時30歳だった彼女が2007年から1年間にかけて行ったツアー「Cocco Live Tourきらきら2007/2008」。ライブリハーサルとツアー初日を迎えた2か月前から是枝監督は彼女を追いかけました。冒頭は、車の中で黒糖を一かじりし、地元の見知らぬ子供に優しく気さくに話し掛けるCoccoさんの姿から物語が始まります。地元にツアーグッズのタオルを届け、沖縄独特のエイサーを学校で練習する子ども達を見守ります。ツアーのリハーサル風景と迎えた本番初日。少女のように天真爛漫にはしゃぐCoccoさんの姿にステージは大盛り上がりです。しかし、ただはっちゃけているだけではありません。「みんなが進むべき道と進みたい道がある。大丈夫と言えない状況でも自分自身で大丈夫にするしか多分方法はない。それでも私はみんな(ライブを観に来てくれたお客さん一人一人)大丈夫でありますようにと祈っている」と、とても深い発言をしてファンのみならず、その場にいた観客全員の心に突き刺さるMCをします。だからこそ、この映画のタイトルは「大丈夫であるように」というタイトルなのです。きらきらツアーの他にも彼女はミニライブをして各地へ向かいました。エッセイ「想い事」の発売記念イベントとしてアコースティックミニライブと展示を新宿の某所で行ったCoccoさんは、観客に「生きてゆく事は一生続いてゆくこと。沖縄の方言に「よんなーよんなーしなさい」という言葉がある。生きてゆく為に走り続ける、でも立ち止まって、焦らないでゆっくりね」とお客さんに優しく語り掛けます。このミニライブにはCoccoさんが描いた絵の他にお客さん達が沖縄基地問題への祈りと想いを綴った何枚もの布の短冊がありました。他人の心の痛みに人並み以上に敏感で感受性が強すぎるCoccoさんの愛情深い人柄が分かる場面です。それと同時に、世間が彼女に抱いている「歌が恐い」などのマイナスなイメージも拭い去れる描写でもあります。そのライブにて、友達を癌で亡くしたこと、その友達に捧げた「鳥の歌」という歌を披露し、友達のことを思い出して泣いてしまいます。その他に沖縄に生息するジュゴンのことを歌った「ジュゴンの見える丘」という曲を歌います。神戸の阪神淡路大震災のモニュメントを訪れ、まだ当時タイトルが決まっていなかった曲「バイバイパンプキンパイ」を初披露します。
大丈夫であるように Cocco 終らない旅のネタバレあらすじ:承
青森県六ヶ所村に住む女性のファンから手紙を受け取ったCoccoさんは、六ケ所村で起きている「六ケ所村核燃料反対運動」の状況を知り、「今まで知らなかったことごめんなさい、歌う事しか自分にはできない」と、背負う必要のない事を、誰もがどうすることも出来ない現実に対し、自分の無力さを嘆き悲しみます。六ケ所村の次に、故郷沖縄で家族とクリスマスパーティーをしたり、可愛い愛息子に愛情を注いだりといった「素」の部分が覗かれていきます。また、沖縄の平和の礎やひめゆりの塔に花を手向け、平和を祈るのです。そして、沖縄での公演では、沖縄民謡と自分の楽曲を交えながら披露し、客席にいる「ひめゆり」を経験した生き残りのお婆ちゃん達に向けて「お菓子と娘」という歌を披露し、観客一層、沖縄音楽で踊り狂う愉快なステージとなりました。ライブツアーは続きます。今度は「Human Stage」という会場でライブを行うのですが、そこで父が母にプロポーズした時に歌った「結婚しようよ」を本番前にスタッフと歌って上機嫌になります。そして、ファンから人気の高い曲「強く儚い者たち」、「鳥の歌」、「小さな町」を披露してから自分が歌うことしか出来ないと無力さに打ちひしがれて泣きます。
大丈夫であるように Cocco 終らない旅のネタバレあらすじ:転
Coccoさんはライブの途中で有刺鉄線のある砂浜へ「想い事」発売ライブの時に観客が書いてくれた短冊を持っていきます。普天間基地の予定地であるその砂浜は、米国と沖縄を繋ぐ境界線になっていました。Coccoさんは平和を祈るようにその短冊を有刺鉄線に飾り付けるのでした。ツアー最終日にCoccoさんは精一杯笑顔でステージを務め上げますが、会場のファンに「えっと、皆さんに最後に最も言いたいことがあります。生きろ、生きろ、生きろ・・・。」と言葉を投げかけるのです。それは、この場にいるお客の一人一人が様々な環境を生き続け、自分の置かれた現実と懸命に向き合いながら毎日を過ごし、自分のライブの観客として存在していることを彼女は感じ取ったのです。ライブツアー終了後、自分の無力さに苦悩し、楽屋で泣き叫びながら心の声を訴えるCoccoさんの姿がありました。楽屋の中の様子は敢えて映されていませんが、一人のアーティストが凡人には理解出来ない葛藤を抱えている事が伝わります。
大丈夫であるように Cocco 終らない旅の結末
是枝監督が登場し、Coccoさんにインタビューするようなかたちで原っぱに座りながら2人は語り合うのです。かつて若かりし頃の自分は「全部ぶっ壊してなくなればいい。ハッピーエンドなんて糞くらえ」と思っていましたが、母親になって息子にせがまれて一緒に「もののけ姫」を見た時、「どうかこの美しい光景が場が続きしますように」と気持ちが変わったと話します。若く、人生経験も浅い自分と大人になり、視野が広がってゆく物の捉え方を是枝監督に伝えます。砂浜に穴を掘り、火をつけて、ファンレターにさっと目を通してから燃え盛る炎の中に手紙を投げ込みます。理解しがたい行動ですが、この行動は彼女なりの「みんなからの想いを受け止め、次へ進む」という意味なのです。燃やした手紙と一緒に「ケジメ」をつけるために長くてパーマが掛かった自分の髪も乱暴に持っていたハサミで切り落として投げ入れ、「再生」へと繋げるのでした。
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