マダム・フローレンス! 夢見るふたりの紹介:2016年イギリス映画。ニューヨーク社交界で有名なソプラノ歌手フローレンス・フォスター・ジェンキンスという実在の女性をモデルにしたドラマ。歌唱力は音痴であるにもかかわらずソプラノ歌手になろうと夢を追う彼女と、その夫の奮闘する姿を描く。
監督スティーヴン・フリアーズ 出演:メリル・ストリープ(フローレンス・フォスター・ジェンキンス)、ヒュー・グラント(シンクレア・ベイフィールド)、サイモン・ヘルバーグ(コズメ・マクムーン)、レベッカ・ファーガソン(キャサリン)、ほか
映画「マダム・フローレンス!夢見るふたり」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「マダム・フローレンス!夢見るふたり」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
マダム・フローレンス!夢見るふたりの予告編 動画
映画「マダム・フローレンス!夢見るふたり」解説
この解説記事には映画「マダム・フローレンス!夢見るふたり」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
マダム・フローレンス! 夢見るふたりについて
宣伝文句の通りの映画と思って見ると、かなり印象が違う映画です。本来、「アベンジャーズ」の一員の「ビッグヒーロー6」を「ベイマックス」という感動作に見せて、家族層にアピールするような姑息な宣伝をするように、夫婦の愛や絆の重要さを前面に押し出したCMの仕方は、この映画を損ねている気がします。どちらかというと、資産を持つ老女に、結婚詐欺師や、彼女の資金目当てに演技をしている音楽家がたかり(資金援助を目的)に来てるというのが物語の大半を締めています、勿論、最後に夫婦愛や絆は描かれているので、多少は感動するし、それだからこそ評価されているのでしょうけど。主役のマダム・フローレンスを演じるメリル・ストリーブは本来、歌がうまく、「マンマ・ミーア」という映画では、その美声が発揮されています。この映画でも最後の最後に、その美声が披露されます。なので、この映画のほとんどが音痴で構成していて、メリルは、実際のフローレンス・フォスター・ジェンキンス本人の、その音痴な歌声をエンドロールで聞く事が出来ますが、限りなく再現しています。ただ、時々、音が外れる程度で、そこそこ聞けるから、あの程度で笑える当時の人間の底意地の悪さとか、悪意に腹が立ってきます。カラオケの普及で、下手な歌を聞きなれてるからかもしれません。当時は、戦争中、もっといえば昭和19年です。アメリカの戦争犯罪。市街地への絨毯爆撃も始まっています。世間は、戦争をしていても、金があれば、好き勝手、趣味の音楽だけに没頭できてよかったね…としか思えませんが、それこそが人間の自由なのかもしれません。最期は笑いものにされるし、それでも自分の意志を貫けたという自己欺瞞で終わる後味が悪い映画だけに、ある意味、現実の苦さを味わえるのかもしれません。多分、幸せそうなタイトルを期待した人で、楽しめる人は少ない気がします。史実が元だから仕方ないのかもしれないけど、誰も幸せにならず、嫌な気分になる、ある意味、凄い映画です。優しい世界は時として残酷です。
詳細あらすじ解説
マダム・フローレンス! 夢見るふたりのネタバレあらすじ1
シンクレア・ベイフィールドが「ハムレット」の一節を読み上げた後、幕が上がります。1944年、フローレンス・フォスター・ジェンキンスは、自ら設立した「ヴェルディ・クラブ」で宙づりにされていましました。彼女の役はフォスターに啓示を与える天使の役。舞台袖で3人の男たちが、必死の形相で支えています。そしてフォスターの名曲「おおスザンナ」を歌います。はずれた音で。最期は、ずれたカツラでワルキューレの恰好で歌い上げ、場内は割れんばかりの大拍手。夫シンクレアから設立20年を祝う時計を貰い上機嫌でした。コンサートを終えると今にも倒れそうなフローレンスは夫、シンクレアに支えられて帰宅し、寝床に就きます。シンクレアは詩を朗読し、彼女が眠ると、メイドはウィッグを脱がせました。フローレンスに髪の毛は一本も生えていませんでした。メイドはナイトキャップをかぶせ、シンクレアは、愛人キャサリンのアパートメントに帰って行きました。マダム・フローレンスは、あるコンサートで感銘を受け、有名な指揮者がニューヨークに来ているので、レッスンを受けたがります。シンクレアは、彼女の資金が目当てで運営するビジネスパートナーですから、逆らいません。言われるとおりに、ピアニストのオーディションを開きます。フローレンスの注文通り、ベートベンのように荒々しい演奏をしたピアニストは即座に追い出されました。次の候補者は、すぐに音がやんだことを察して、優しい静かな曲を選択しました。外の候補者は、事情が分かってないので、課題曲と違うその選曲を笑いますが、フローレンスは気に入ったようです。さらに、作曲も出来ることもアピールしました。そして、コズメ・マクムーンが選ばれました。他の候補者は追い出されます。フローレンスが集めている椅子に勝手に座ったせいかもしれません。シンクレアは、マクムーンに、注意事項を言います。フローレンスと接する際、とがったものを持ち込まないこと、コレクションの椅子には絶対座らないこと、そして、彼女が持ち歩いてるカバンについて質問しないことなど、フローレンスの好みを逐一教え込みますが、マクムーンは浮かれて上の空で帰るのでした。翌日から、フローレンスとのレッスンが始まります。フローレンスが歌うと、コズメは音程やリズムのあまりのズレに呆然とし、演奏を止めてしまいます。彼女が音痴という事が理解できるにつれ、笑いをこらえるのに必死です。しかし、指揮者もシンクレアもほめたたえています。やっと、解放され、部屋を出て、エレベーターに乗った時に、他人がいるにもかかわらず、とうとう、大爆笑してしまいました。一応、翌日、シンクレアに彼女の音痴を忠告しますが、「ステーキハウスのピアノ弾きに戻りたいのか?」と言われては、こちらの方が給料はいいので、マクムーンは黙ってピアノを弾き続けるしかありません。ところが、ある日、フローレンスがリサイタルを開きたいと言い出します。指揮者は逃げました。残されたのは、マクムーンだけです。シンクレアに「辞めさせてください」と訴えても、拒否されます。シンクレアは徹底的に聴衆を「ヴェルディ・クラブ」の知り合いだけで固めて、新聞記者を買収して、リサイタルの準備に備えます。買収できなかった、NYポストの記者は排除しました。
マダム・フローレンス! 夢見るふたりのネタバレあらすじ2
聴衆の中には、スターク氏の新しい妻アグネスも混じっていました。フローレンスの歌を聞いても「笑ってはいけない」作法を知らなかった彼女は、リサイタル中に引きつけを起こしたように笑い転げたので、廊下につまみ出されてしまいました。何とか平穏無事にリサイタルは終了しましたが、音痴とはいえ2時間半を一人で歌いきったので、体力を消耗してしまいました。パーティーでは、食糧難と言いつつ、ここだけは、世間と違うようです。フローレンスの好きなポテトサラダは、バスタブいっぱいに作られています。でも食べても体力は回復できないようなので、急いで自宅に帰り、医師の診察を受けます。いつもの医師はこれなかったので、新しい医師が漸く、フローレンスの病状を説明します。彼女は、梅毒でした。医者も、この症状で50年以上も生きてるなんて奇跡だと言いつつ帰ります。当然、シンクレアとフローレンスに肉体関係はありません。それが汗腺を防ぐ唯一の方法だからです。1943年には、ペニシリンによる治療法が確立されていましたが、それは早期発見時にのみ、効く治療法です。彼女の治療薬は1940年代以前から飲用されている「塩化第二水銀」でした。つまり、水銀を服用していたから、頭髪がなくなっていたのです。神経にも影響は出ているでしょう。生きているのが不思議な彼女を生かしているのは、音楽への情熱だけ…とシンクレアは理解していました。寝たかと思って、キャサリン宅に向かおうとしますが、起きていました。いつもの朗読をし、寝かせつけて、出かけます。その晩、シンクレアのアパートでシンクレアの愛人キャサリンも含め、スターク氏の新しい妻アグネスも参加して盛大な打ち上げが開かれていました。アグネスに誘われたマクムーンは、シンクレアに愛人がいたことを漸く知ります。でも、シンクレアはフローレンスも了承していると嘘をつき、酒を飲ませるのでした。翌朝、フローレンスがシンクレアのアパートへやってきました。二日酔いのマクムーンが気づき、シンクレアに知らせます。とりあえず、キャサリンを隠す時間を稼ぐため、マクムーンが応対します。マクムーンが出ると、フローレンスが言います。「コズメあなた、何故ここにいるの?」「昨日、止めてもらったんです」と説明します。フローレンスが、寝室に飛び込むと、シンクレアは読書をしていました。結局、フローレンスが飛び込んできた理由は、新聞が大絶賛だったから、ただ。それだけでした。彼女は一刻も早く夫とその嬉しさを分かち合いたかったのです。さらに、彼女は思いつきを語ります。その前に、夕べのパーティーで汚れ放題の部屋を全部、マクムーンのせいにされ、怒られます。で、フローレンスの思い付きの行動は、まだ続き、今度はレコーディングをするのです。マクムーンも伴奏のため、一緒に連れて行かれます。録音技師は「今のは練習ですか?」と聞きますが、フローレンスは「いいえ、今のが本番よ」と満足したようです。シンクレアが愛人宅に帰ると、自分の家なのに隠れなければいけなかったキャサリンは怒っていました。シンクレアは穴埋めにゴルフに行くことにしました。フローレンスの思いつきとは、クリスマスに、ヴェルディクラブの会員にレコードをプレゼントすることでした。シンクレアがゴルフ旅行で1泊2日出かけている間、彼女は一人で寂しく梱包をしています。梱包が出来ると、ラジオから戦地の息子に故郷の母親から曲を届ける番組に感銘を受け、それをラジオ局へ届けさせるのです。そして、出来たばかりのレコードを届けようと、マクムーン宅を訪ねるのです。マクムーンは筋トレをしていました。そこにフローレンスが訪ねてきたので、慌てます。部屋が散らかっていたので、フローレンスは片づけをする代わりに、ピアノを弾いてとねだるのです。マクムーンは、オリジナル曲を即興で弾き始めます。そして、フローレンスは、その曲に作詞を始めるのです。彼女もピアニストを目指していて、かつては大統領の前で弾いたこともありました。しかし、両親に反対され、医者と駆け落ちしてしまいました。しかし、その男は梅毒でした。伝染されたフローレンスは、ピアノが弾けない身体になったのです。その後、今から25年前の1919年に、シンクレアと出会ったのです。彼は、イギリス出身の俳優の卵でした。彼の叔父は伯爵でしたが、シンクレアに爵位はありません。その後、父母が死に、莫大な資産を受け継いだフローレンスは、音楽業界に出資し始めたのです。愛人宅にシンクレアとキャサリンが帰ってきました。レコードをかけると、フローレンスの歌がかかります。また勝手に入ったのです。愛人をなだめようとシンクレアは食事に出かけますが、そこでも、あのレコードがかかり、若者たちがバカにしていました。シンクレアは止めようとしますが、キャサリンは我慢の限界でした。「今は私との時間でしょう。無視して」シンクレアは、その願いを退けて、若者たちからレコードを取り上げますが、多勢に無勢、返り討ちに会います。そして、テーブルに戻るとキャサリンは消えていました。
マダム・フローレンス! 夢見るふたりの結末
もう、シンクレアにはフローレンスしかいません。フローレンス宅に帰ると、彼女はいませんでした。行く先を聞いて、慌てて駆けつけます。そこはカーネギーホールでした。客席にフローレンスが座っていました。シンクレアは、隣に座ります。彼女は夢を語ります。ここでリサイタルを開きたいと。既に、1000人の復員兵に招待状を出した後でした。シンクレアは一応聞きます。「フローレンス、もういいんじゃないか?」 しかし、彼女の情熱は、消えかかる前のロウソクのように燃え盛っているのが分かりました。「チャーチルが諦めていたら、今頃ヒトラーがバッキンガム宮殿の主だったでしょうね。」史上最大の作戦ことノルマンディー上陸作戦は、4カ月前の6月6日のことです。もう、止められません。シンクレアも覚悟を決めました。せめて、出来ることをします。顔なじみの事情が分かっている「ヴェルディ・クラブ」の会員を呼び寄せ、そして、絶賛しかしない新聞で興味を持った人たちも集まり、チケットは全て売り切れ、SOLD OUTし、3千人が集まりました。1944年10月25日。リサイタル当日、マクムーンが来ません。フローレンスは不安がっています。シンクレアは励まします。会場では、復員兵は大半が酔っぱらっていました。アグネスが、登場すると、口笛を吹いて歓迎するので、アグネスも乳と尻を震わせて、歓声に答えました。夫のスターク氏は頼むから大人しくしてくれと頼んでいます。マクムーンが来ました。渋滞に巻き込まれていたようです。そこで、フローレンスは、カバンから書類の束を取り出しました。それは、彼女の遺書と財産の分配について書かれていました。新たに、マクムーンの名前が書きこまれ、カバンの中身を知って、彼女が常に死を覚悟していたことを知って、マクムーンは思わず涙します。もう、怖れるものはありません。マクムーンは、シンクレア同様、彼女に人生を捧げると誓ったのです。さて、リサイタルが始まりました。事情を知らない、復員兵たちは嘲笑します。「さかりのついた猫」とか、「母親の方がうまい」とか。フローレンスは今までの客と反応が違うことに流石に気づき、歌うのをやめてしまいます。そこにアグネスが復員兵を叱りつけます。「一生懸命歌っているのに、バカにするな」と。先ほど、歓声を浴びせた復員兵は、何故怒られているか分かりませんが、彼女には嫌われたくなかったのでしょう。笑いをこらえながら、大人しく観賞するようになりました。しかし、問題児はまだいました。それは、ニューヨーク・ポストの記者です。彼は今まで買収に応じなかったために、今まで排除されていたのですが、恐らく、フローレンスが招待状を送ったのでしょう。参加していました。そして、1曲が終わると席を立ちます。シンクレアが追いかけて、買収しようとしますが、「これは音楽への冒涜だ」「彼女はおだてあげられて可哀想だ」とまで言って立ち去ってしまいました。それ以外は、リサイタルは成功しました。翌朝、全部の新聞に目を通して、全てが絶賛記事でフローレンスは喜んでいました。でも、気づいていました。ニューヨーク・ポストだけ無かった事に。それは、シンクレアとマクムーンが、ニューヨーク中のニューヨーク・ポストを各売店で、20ドル出しては買い押さえして、ごみ箱に捨てていたからです。フローレンスがホテルの朝食会で、ヴェルディ・クラブのなじみの会員から褒められていると、レストランに、買い押さえ損ねた1部のニューヨークポストを買った男が入って来ました。マクムーンが気づき、買い上げようとしますが、男は頑固です。シンクレアが乗り出して行き、50ドルで何とか売ってもらえました。新聞の一面は「日本の連合艦隊の敗北」を飾っています。1944年10月24日に、不沈艦と歌われた戦艦武蔵が沈められ、1400人が海のもずくと消えていました。生き残った1000人の多くもレイテ島の露と消えました。その隙に、フローレンスが居なくなっていました。シンクレアは追いかけようとしますがご婦人方に止められます。「化粧室よ。殿方は行ってはダメ」そう言われては、待つしかありません。フローレンスは、当然、ニューヨークポストを買いに行ったのです。売店で聞いても、買い占められて、捨てられたと言います。彼女はゴミ箱をあさります。ありました。新聞を読みながら、ホテルに帰ってくると、2人の若者が笑いながら語りかけてきました。「マダム、昨日のリサイタルは最高でした。腹がよじれるほど」それと新聞の内容で、フローレンスは漸く、自分が世間から笑われていたことに気づくのです。彼女は倒れました。心配になったシンクレアがロビーで、彼女を見なかったかと尋ねている時でした。倒れる音を聞いてすぐ駆けつけます。ただちに家に運ばれ、ベッドで眠りにつきます。フローレンスはシンクレアに言います。「ずっと、私は笑われていたのね。」シンクレアは答えます。「それでも僕には君が最高だったよ」と。そこに、美しい歌声が聞こえてきました。フローレンスの理想な歌声です。「もう歌わない」という歌詞ですが、それはシンクレア以外には歌わない、あなたのために歌います…という歌詞でした。フローレンスは最後に言います。「たとえ音痴でもカーネギーホールで歌った事実は消えないわ」翌月、息を引き取りました。その後もシンクレアは、音楽事業への貢献を続け、コズメ・マクムーンはボディービルダーとして、活躍し、ピアニストとしては裏方の生涯でした。フローレンス・フォスター・ジェンキンス本人の歌声で幕を閉じます。
以上、映画「マダム・フローレンス!夢見るふたり」の詳細あらすじ解説でした。
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