フランコフォニア ルーヴルの記憶の紹介:2015年フランス,ドイツ,オランダ映画。ルーヴル美術館の映画作成に想いを馳せるアレクサンドルは、ロシアからの目線でルーヴルと美術をめぐる歴史を俯瞰する。ルーヴル美術館に刻まれた芸術の歴史と人類の戦争に迫る。
監督:アレクサンドル・ソクーロフ 出演:ルイ=ド・ドゥ・ランクザン(ジャック・ジョジャール)、ベンヤミン・ウッツェラート(ヴォルフ・メッテルニヒ伯爵)、ヴィンセント・ネメス(ナポレオン)、ジョアンナ・コータルス・アルテ(マリアンヌ)、ほか
映画「フランコフォニア ルーヴルの記憶」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「フランコフォニア ルーヴルの記憶」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
フランコフォニア ルーヴルの記憶の予告編 動画
映画「フランコフォニア ルーヴルの記憶」解説
この解説記事には映画「フランコフォニア ルーヴルの記憶」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
フランコフォニア ルーヴルの記憶のネタバレあらすじ:起・ロシアへ向かう船から
アレクサンドルの元に、アムステルダムから船でサンクトペテルブルクに向かうダークから連絡が入った、彼は荒れた海で美術館からの荷物を運んでいると言う。美術品を船便で運ぶなんてと驚くアレクサンドルは、美術館の映画を作っていたとルーヴルについて語りだす。
アレクサンドルの語りと古いドキュメンタリーフィルムとアレクサンドルの作ったフィルムが交錯しルーヴル美術館の姿が映し出されていく。大絵画の間で「自由、平等、博愛」と繰り返すマリアンヌは、ジェリコーのメデューズ号の筏の前で立ち止まった。それは今まさに荒波の渦中にあるダークを思わせた。
フランコフォニア ルーヴルの記憶のネタバレあらすじ:承・無防備都市パリのルーヴル
二次大戦がはじまって間もなくパリは無血開城され、フランス北部はナチスによって占領された。また南部にはペタン元帥によってナチス寄りのヴィシー政府が置かれた。パリ市民は変わらず日常を続け、映画を撮る者もいた。
ルーブル美術館では、ナチスから美術品を掌握するために送られてきたメッテルニッヒ伯爵を館長のジョジャールが迎えた。この時点で主要な絵画は他の場所へ疎開させており、ルーブル美術館に残るのはギリシャの彫刻や遺跡からの収集品が主だった。この時点でフランスに送り込まれる爵位のある将軍たちは学者筋がほとんどで、メッテルニッヒ伯爵その一人だった。
ナチスの占領下にあっても、ルーヴル美術館はジョジャール館長のもと、企画展を行い、さらに美術品の買い付けも行っていた。
フランコフォニア ルーヴルの記憶のネタバレあらすじ:転・ルーヴルの亡霊
ルーヴル美術館ではマリアンヌの他にナポレオンが登場し、「これが私だ」と、自慢げに話す。ルーブル美術館のエジプトやオリエントの古代美術は、ナポレオンが遠征した際に戦利品として持ち帰ったものでそのほとんどが構成されている。時の権力者は美術品に価値を見出し戦利品とする。それはヒトラーも例外ではなく美術品んは保護の対象だった。しかし、彼らが保護したのはいわゆる西側の美術品で、当時社会主義国とソ連のエルミタージュ美術館はその範囲ではなく、孤立していた。アレクサンドルはエルミタージュの惨状を語りだす。絵は疎開に出され額縁だけ残されたギャラリー。額縁に残された画題と作者名でここにもダ・ヴィンチやエル・グレコなどがあることが見受けられる。戦中は美術館としては機能せず、もっぱら野戦病院としてけが人をホールに受け入れていた。サンクトペテルブルグでは飢えと寒さで亡くなる人間もいた。川辺に母親と子供の遺体が転がっていたが次の日には彼らの脚がなかった。屍人の肉を口にするほど飢えだったと語る。さらに、連行や粛清で亡くなる人も多く、遺体が連日まとめて埋葬された。
フランコフォニア ルーヴルの記憶の結末:二人の未来
ルーヴル美術館の中を漂うマリアンヌとナポレオンは大絵画の間から、グランドギャラリーを通り、やがてルーヴル美術館の象徴ともいえるモナ・リザの前に至る。
ジョジャールはメッテルニッヒを絵画の疎開先のひとつの城に招いた。ヒトラーとゲッペルスは疎開した絵画をルーヴルへ戻すように要求したが、メッテルニッヒはそれを事あるごとに延期した。
アレクサンドルはカフェで話すジョジャールとメッテルニッヒを招き、二人の未来を話し出した。
ジョジャールは戦後再び叙勲され、美術アカデミーの会員にもなるが、アレクサンドルのいる時代ではもう覚えている人がいない。
メッテルニッヒは疎開した絵画をルーヴルに戻さない事に焦れたナチス上層部によって、フランスからドイツの町へ異動になる。そこでは爆撃によって破壊された文化遺産の修復が彼の主な役目だった。戦後、ナチスだった責任裁かれもしたが、大家族となったメッテルニッヒは家族、親類に囲まれて亡くなった。
アレクサンドルの部屋では、誰も見ていないパソコン画面に映し出されたダールの船が、今まさに沈没していくところだった。
以上、「フランコフォニア ルーヴルの記憶」のあらすじと結末でした。
フランコフォニア ルーヴルの記憶のレビュー・考察:歴史にもまれた美術品たち
アレクサンドル・ソクーロフの語りから、二次大戦時のルーヴル、ルーヴルの歴史、そして画題にされたナポレオンや自由の女神マリアンヌの出てくる幻想のルーヴル、この三つが並行して流れていく。ルーヴル美術館はその収蔵品、展示品の数々がフランスの歴史そのものと言っても差し支えないと思う。そして、アレクサンドルに連絡を取っている荒波にもまれている船はいったい何を表しているのか。沈没していく様はまるで崩壊していったソ連のようでもある。この映画の製作された2015年、そして現在に掛けて、なお争いをやめないでいる人間そのものへの皮肉にも見える。
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