疑惑の紹介:1982年日本映画。夫に多額の保険金をかけ殺害したという疑惑をかけられた魔性の女、球磨子。彼女の弁護を担当することになった佐原律子は球磨子の無罪を立証すべく法廷に立つ。松本清張原作、野村芳太郎監督による手に汗握る法廷サスペンス映画です。捉えどころのない悪女球磨子役の桃井かおりとクールな弁護士律子役の岩下志摩、二大女優の演技対決が話題となりました。
監督:野村芳太郎 出演者:桃井かおり(白河(鬼塚)球磨子)、岩下志摩(佐原律子)、鹿賀丈史(豊崎勝雄)、柄本明(秋谷茂一)、 仲谷昇(白河福太郎)、 森田健作(藤原好郎)、北林谷栄(白河はる江)ほか
映画「疑惑」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「疑惑」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
疑惑の予告編 動画
映画「疑惑」解説
この解説記事には映画「疑惑」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
疑惑のネタバレあらすじ:起
昭和56年の夏の夜のこと。富山新港湾埠頭において白河酒造の社長白河福太郎とその妻球磨子の乗る乗用車が海に転落するという事故が起きます。球磨子は自力で車から脱出して助かりましたが、夫の福太郎は溺死しました。引き上げられた車の中には福太郎の左足の靴と球磨子が脱出時に使用されたとみられるスパナが落ちていました。
若くして福太郎の後妻となった球磨子は恐喝や暴行事件など複数の前科を持つ女であり、夫に3億円もの保険金をかけていたことから、この事件は球磨子による計画的な保険金殺人事件なのではないだろうかという疑惑が深まっていきます。
マスコミは球磨子について北陸一の毒婦だとスキャンダラスに書き立て、執拗に追いかけまわし始めます。新聞記者の秋谷は球磨子の元恋人であり、恐喝事件の共犯者であった豊崎勝雄と連絡を取り、球磨子の本性に迫ろうとします。
やがて事件当日、車が海へ転落する瞬間を目撃していた青年藤原好郎の証言が決め手となり、球磨子は夫殺しの容疑で逮捕されます。
昭和56年9月には初公判が行われますが、球磨子の弁護人原山は持病を理由に突然弁護を辞退してしまいます。後任の弁護人選びに難航する中で白羽の矢が立ったのが、民事事件を得意とする弁護士佐原律子でした。
疑惑のネタバレあらすじ:承
律子は球磨子が留置されている拘置所を訪ねますが、初対面の互いの印象は最悪なものでした。球磨子は誰にも弁護を頼むつもりはないと言い放つと、律子は死刑になりたいのならば断ればいいと余裕の表情を見せます。律子から法律を勉強するよう告げられた球磨子は拘置所の中で六法全書を読み漁り、弁護を引き受けることになった律子は球磨子の経歴について調べ始めます。
養女として育てられた球磨子は、若くして福岡の中洲のスナックで働き始め、当時バーテンをしていた豊崎と知り合います。豊崎が喧嘩沙汰で逮捕されると、球磨子は客だった森口という割烹料理店の跡取り息子と結婚します。
森口の両親から家を買い与えられ、幸せな結婚生活を送っていたかに思われた球磨子でしたが、出所した豊崎と共犯して森口から土地の権利書をだまし取り、一億円もの金を手にします。
球磨子と豊崎はその金を元手に銀座にクラブを開店しますが、経営難で潰れ、さらに球磨子は同僚のホステスを暴行した容疑で逮捕されます。3年後、刑期を終えた球磨子は再びホステスとして働き始め、そこに客として来ていた白河福太郎と出会ったのでした。
疑惑のネタバレあらすじ:転
昭和57年1月、球磨子の裁判が再開されます。殺害の目的で福太郎と結婚し、多額の保険金をかけて自らの運転で福太郎を溺死させたと訴える検察に対して、球磨子は車を運転していたのは夫であり、夫の運転ミスによる事故死であると訴えます。
第五回の公判、福太郎の遺体を鑑定した医師安西は、助手席の荷物入れに出来ていたヘコみと膝の傷痕が一致したことから、福太郎が助手席に座っていたと主張します。律子は海水の入ってきた車内において、中にいた者は脱出しようと無我夢中で暴れるであろうことから、傷がどの段階でできたなどと断定することは難しいのではないかと安西を追い詰めていきます。
次の証人、藤原は自身の車のヘッドライトにより球磨子が運転席に座っているのを目撃したと証言しますが、律子は夜の埠頭においてヘッドライトの灯りだけで車の中の様子を正確に捉えることは難しいはずだと主張し、証言のあいまいさに斬り込んでいきます。律子からの厳しい追及に藤原は動揺を見せはじめますが、被告席の球磨子から、でたらめを言っていると罵られ、ムキになった藤原は、運転席に座っていたのは球磨子で間違いないと断言してしまうのでした。
次に証言台に立ったのが球磨子が務めていたクラブの経営者、堀内とき枝でした。とき枝は球磨子と福太郎が出会った時の状況を説明していきます。律子はとき枝が資産家の福太郎から金を引き出すため、従業員の球磨子を近づけさせたのではないかと主張しますが、とき枝はこれを強く否定します。球磨子にのぼせあがってしまったのは福太郎のほうであり、球磨子を独占したいがために結婚を迫ったのでした。
白河酒造の専務岩崎は球磨子が結婚後も方々で問題を起こし、その度に福太郎と謝罪に走ったことを証言します。球磨子に財産を食いつぶされることを懸念した白河一族は、福太郎の全財産を中学生の福太郎の一人息子、宗治に受け継がせることを決めます。これを知らされた球磨子は激昂、財産を相続できないのならば、掛け金の高い生命保険に入れと福太郎に迫ったのでした。
疑惑の結末
第13回公判、証人の豊崎は福太郎と結婚をした球磨子に会うため、一度富山を訪れたことがあると証言します。その時、豊崎は球磨子からアメリカで起きた自動車の水没事故について聞かされ、福太郎の殺害計画をほのめかされたことを打ち明けます。これまで終始開き直った態度を見せてきた球磨子でしたが、豊崎のこの証言に取り乱し、わめき始めて退廷を言い渡されてしまうのでした。
その後、事件当日と同じ条件で事故の再現実験が行われますが、転落した車は水圧によりフロントガラスが割れることが判明、車内のスパナは脱出道具として使用されていなかった可能性が高まっていきます。律子は車内に残されたスパナと福太郎の左足の靴が一体何を意味するのか考えを巡らせはじめます。
ある夜、律子の家を訪ねてきた豊崎は、球磨子が本当は殺しなどやっていないのではないかと思いはじめていることを告白します。そしてその後の公判で豊崎は、警察から球磨子に不利な証言をするよう脅されていたことを告白、これまでの証言を撤回したのでした。
律子は富山に出向き、宗治に証言台に立ってもらいないかと頼みます。弁護人側証人の尋問の日、律子は福太郎がブレーキペダルと床の間に左足の靴とスパナをかませる細工をし、自殺を試みたのではないかと裁判長に訴えます。さらに証言台に立った宗治は事件前日の夜、福太郎が会いにやってきて、ある手紙を渡されたことを告白します。そこには白河家のために球磨子と心中する決意であることが綴られていたことが判明します。
宗治の証言が決定的な証拠となり、球磨子の無罪が確定しました。球磨子の出所祝いに律子も招かれますが、球磨子は福太郎の保険金が下りないことに不満を漏らした挙句、慰謝料を取れないだろうかと強欲な顔をのぞかせ、律子を呆れさせます。
福太郎が無理心中を起こさなければどうしていたかと律子が問うと、球磨子は福太郎を殺していたかもしれないと呟きます。律子は最後まで球磨子の真意が掴めませんでしたが、また問題を起こした時には弁護を引き受けてあげると言い残し、去っていきました。
別の日、球磨子は一人特急列車に乗り込もうとしていました。ホームを行き交う人々が、すっかり有名人となった球磨子に無遠慮な視線を投げかけますが、球磨子は臆するどころか愛想をふりまきつつ席に着きます。しばし寂しげに遠くを見つめる球磨子でしたが、その表情はやがて不敵な笑みへと変わっていくのでした。
以上、映画「疑惑」のあらすじと結末でした。
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