映画「浜の朝日の嘘つきどもと」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
浜の朝日の嘘つきどもとの紹介：2021年日本映画。福島県南相馬市に実在する映画館「朝日座」を舞台に、福島中央テレビ開局50周年記念オリジナルドラマとして2020年に放映されたヒューマンドラマ「浜の朝日の嘘つきどもと」。本作はテレビドラマ版の前日譚となる劇場版作品として製作され、経営が傾いた「朝日座」を存続させるべく奮闘する一人の女性の姿を描いていきます。
監督：タナダユキ 出演者：高畑充希（茂木莉子／浜野あさひ）、柳家喬太郎（森田保造）、大久保佳代子（田中茉莉子）、甲本雅裕（岡本貞雄）、佐野弘樹（チャン・グオック・バオ）、神尾佑（市川和雄）、竹原ピストル（川島健二）、光石研（浜野巳喜男）、吉行和子（松山秀子）ほか
この解説記事には映画「浜の朝日の嘘つきどもと」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
福島県南相馬市。ひとりの女性が道に迷いながら歩いていました。やがて女性はこの街の映画館「朝日座」に辿り着きました。「朝日座」はかれこれ創業100年近くを誇る名画座として地元の人々に愛されていましたが、今や東日本大震災、シネコン（複合映画館）の台頭、新型コロナウイルス禍などにより経営の危機を迎えていました。
「朝日座」では支配人の森田保造（柳家喬太郎）が古い映画のフィルムに火を点けて燃やそうとしていました。「朝日座」は森田の祖父が立ち上げたのですが、森田は自分の代で畳もうと考えていました。
森田がフィムルを燃やそうとしているのを見た女性は慌てて止め、“ある人物”に頼まれてこの映画館を立て直しに来たのだと語りました。女性は自らの名前をチケットのもぎりに例えて「茂木莉子（もぎりこ）」（高畑充希）と名乗りました―――。
―――茂木莉子、本名・浜野あさひ（以降の呼び名は“莉子”で統一します）。福島県郡山市で生まれ育った莉子でしたが、2011年、莉子がまだ高校1年生だった頃に東日本大震災と福島第一原発事故が発生しました。
タクシー運転手だった莉子の父・巳喜男（光石研）はこれを機に独立して南相馬でタクシー会社を立ち上げ、原発の除染作業に従事する人々の送迎を受け持つことで莫大な富を得ました。タクシー会社の名称は何と莉子の本名を記した「浜野あさひ交通」。莉子が「莉子」と名乗った要因は自分の本名を名乗りたくがないためでした。
やがて巳喜男の事業は世間から「震災成金」と揶揄され、南相馬に居場所のなくなった莉子は東京の高校に転校しました。莉子は東京でも居場所はなく、時間を持て余していましたが、彼女を見かねた教師の田中茉莉子が声をかけ、莉子に昔の映画のDVDを見せてくれました。
茉莉子は「映画を見ている間、人の目の半分は暗闇を見ている」と莉子に語りました。映画は1秒に24コマのフィルムを映写機にかけて再生する仕組みのため、残像現象によってコマとコマの間の暗闇を認識せずスムーズに繋がっているように見えるのです。
茉莉子は「だから映画好きには根暗が多いのかも」と笑い、この日から莉子は映画の魅力に強く取りつかれていくようになっていきました―――。
―――莉子は森田から「朝日座」の現状について訊きました。「朝日座」が閉館した後は「オフィスI」なる企業が跡地の土地を買い、スーパー銭湯とリハビリ施設を建てることになっていました。
莉子はオフィスIの仲介業者である岡本不動産の経営者・岡本貞雄（甲本雅裕）に掛け合い、何とか閉館を阻止できるか頼んでみました。岡本も「朝日座」がなくなることを残念がっていましたが、森田には450万円という多額の借金があったのです。
そこで莉子は引き渡し日までに資金を調達すべくクラウドファンディングを開始することにしました。莉子は以前は東京の映画配給会社で働いていたのですが、新型コロナ禍により倒産してしまい、何としても映画を上映できる場所を残したいと考えていました。
森田の弟は震災の翌年に自殺しており、死の直前に映画を観に来ていたことから、森田は映画では人を救えないと消極的でした。それでも莉子は一歩も引くことはしませんでした―――。
―――東京の高校に転校していた莉子でしたが、父の会社の名前がこの学校にも広まり、結局東京でも居場所を失った莉子は学校を辞めて家出しました。莉子が向かった先は恩師・茉莉子のいる郡山でした。
茉莉子は夏休み期間の間だけ莉子を預かると彼女の実家に連絡し、莉子はしばしの間茉莉子との一緒の日々を楽しみました。茉莉子もまた以前に東京の映画配給会社に勤めていた経歴がありました。茉莉子は莉子に、高卒認定を大学へ進学するよう勧めました。
この頃から茉莉子はベトナム人の海外実習生チャン・グオック・バオ（佐野弘樹）と付き合い始めていました。莉子は茉莉子やパオと楽しい時間を過ごしていましたが、莉子の実家が彼女を家に戻すよう強く迫ってきたことから、莉子は泣く泣く茉莉子たちと離れることになりました―――。
―――莉子は森田と共に積極的にテレビや新聞の取材に応じ、「朝日座」の宣伝も兼ねて幅広くクラウドファンディングへの協力を呼び掛けていきました。地元の資産家で「朝日座」の常連客である松山秀子（吉行和子）も協力してくれたのですが、それでも集まった金額は目標の450万円にはまだまだほど遠いものでした。
コロナ禍で休業していた「朝日座」は1ヶ月ぶりに上映を再開し、客もそれなりに集まってくれたのですが、そこにオフィスI社員の市川和雄（神尾佑）が現れ、「朝日座」閉館の方針に変わりはないと告げてきました。
市川の主張は、「朝日座」を存続させたとしてもそれは一時的なセンチメンタリズムでしかなく、今時の若者はYouTubeを見て映画など見ないこと、スーパー銭湯とリハビリ施設を建てることで地元の雇用を生み出せることでした。
岡本不動産との本契約はまだでしたが、オフィスIは既に解体業者と契約しており、市川は「朝日座」閉館が白紙になった場合は森田の借金450万円だけでなく解体費用1000万円も負担しろと迫ってきました。
オフィスIは既に地元住民に根回しをしており、この日から「朝日座」の客足がバッタリと途絶えてしまいました。困り果てた莉子は長年絶縁状態だった巳喜男に助けを求めることにしましたが、いざ会いに行くと何も言えずにすぐその場を離れてしまいました―――。
―――茉莉子の助言通りに大学へ進学した莉子は卒業後に映画の配給会社に就職しました。ところが、今から1年前、莉子はバオから茉莉子が末期ガンで余命幾ばくもないことを伝えられました。
莉子はすぐさま茉莉子の元に駆け付け、束の間の楽しいひと時を過ごしました。いよいよ最期の時が近づいた茉莉子は莉子に遺言として、以前行ったことのある南相馬の「朝日座」を立て直してほしいと頼みました―――。
―――何の成す術もないまま、遂に「朝日座」は閉館の日を迎えました。既に解体業者も準備を始めていましたが、そこに岡本が現れ、オフィスIには別の更地を用意したので「朝日座」の解体はストップするよう命じてきました。
森田の借金は地元住民たちが少しづつ寄付してくれ、そしてパオも茉莉子の遺産から500万円を寄付してくれました。既にベトナムに帰る決心をしていたパオは莉子の元へ立ち寄り、これから故郷で映画館んを立ち上げるのでその間茉莉子の遺骨を預かってほしいと頼みました。
少しづつ金は集まりましたが、莉子はまだまだ足りないと感じていました。そこに思わぬ援軍が現れました。何と巳喜男が金を寄付してくれたのです。莉子は巳喜男に電話をかけ、感謝の気持ちを伝えました。
莉子はこの南相馬に留まって「朝日座」を手伝うことにしました。そんなある日、「朝日座」に生きる希望を失った映画監督・川島健二（竹原ピストル）がふらりとやってきました・・・。
（テレビドラマ版に続く）
以上、映画「浜の朝日の嘘つきどもと」のあらすじと結末でした。
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