キャラクターの紹介:2021年日本映画。浦沢直樹の『MASTERキートン』『20世紀少年』などでストーリー共同制作などを手掛けた長崎尚志が原案・脚本を手掛け、構想10年を経て映像化した完全オリジナルストーリーのダークエンターテインメント作品です。菅田将暉と本作が俳優デビュー作となる「SEKAI NO OWARI」のFukaseがダブル主演を務め、漫画家の江野スミと古屋兎丸が劇中の漫画を手掛けています。売れない漫画家が殺人事件の目撃者となり、殺人犯をモデルに漫画を執筆していくうちにさらなる事件に巻き込まれていく様を描きます。
監督:永井聡 出演者:菅田将暉(山城圭吾)、Fukase(両角)、高畑充希(川瀬夏美)、中村獅童(真壁孝太)、小栗旬(清田俊介)、松田洋治(辺見敦)、小木茂光(奥村豊)、テイ龍進(浅野文康)、中尾明慶(大村誠)、岡部たかし(加藤一郎)、橋爪淳(山城健太)、小島聖(山城由紀)、見上愛(山城綾)、宮崎吐夢(本庄勇人)ほか
映画「キャラクター」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「キャラクター」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
キャラクターの予告編 動画
映画「キャラクター」解説
この解説記事には映画「キャラクター」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
キャラクターのネタバレあらすじ:起
漫画家を目指しながら、未だにアシスタントの身分から抜け出せないでいる山城圭吾(菅田将暉)は自宅アパートで夜通しで漫画を描いていました。同棲中の恋人・川瀬夏美(高畑充希)は山城の画力の高さを評価しながらも心配して寝ようと声をかけましたが、山城はこの漫画に自身の漫画家デビューの可能性を賭けていました。人気ホラー漫画家の本庄勇人(宮崎吐夢)のアシスタントを長年務めている山城は新人賞に応募して佳作を獲ったことはあるものの、デビューに至ることなく今日を迎えていました。
翌日。出版社に到着した山城は編集者の大村誠(中尾明慶)に描き上げた漫画を見せました。大村は山城の画力の高さを認めつつも、「リアリティーがない。実際に殺人をしたことはないし、殺人現場も見ていないのでリアリティーがないのは仕方ない。せめてリアリティーのあるキャラクターが欲しい。絵は上手いが、ありきたり」として不採用にしました。すっかり落ち込んだ山城は夏美から「納得するまで描き続けていい」と励ましの電話をもらいましたが、これが最後のチャンスと決めていた山城は漫画家への夢を諦める決心をしました。
山城は本庄のスタジオを訪れ、アシスタントを辞めることを伝えました。本庄は山城に最後の仕事として「誰が見ても幸せそうな家をスケッチしてくれ」と頼みました。他のアシスタントたちは全員忙しく手が離せないため、山城は仕事を引き受けることにしました。本庄は他のアシスタントたちに「山城は性格はいいのだが、サスペンスを目指しているのに悪人が描けない」と山城が伸び悩んでいる要因を分析してみせました。
山城は「幸せそうな家」を探して夜の住宅街を自転車で走り回り、とある一軒家に目をつけてスケッチを始めました。家の中からは大音量でオペラ音楽が流れており、玄関のドアが開いたかと思えば、山城が「怪しい者ではありません」と告げるとドアが閉まりました。近所の住民からこの家の音楽がうるさいと苦情があり、山城は代わりに文句を言いに家の中に立ち入ると、リビングでこの家に住む船越一家の4人が椅子にロープで縛り付けられ、滅多刺しにされて殺害されていました。驚いた山城は、庭にピンクの髪の犯人らしき男がいるのを目撃しました。
現場の船越家には警察と救急車が駆け付け、神奈川県警察本部捜査第一課の清田俊介巡査部長(小栗旬)とその上司の真壁孝太警部補(中村獅童)が現場検証を開始しました。階段には遺体を引きずった跡があり、犯人は一家4人を別々に殺害してリビングに運んだ模様でした。凶器は発見されませんでした。
山城は第一発見者として事情聴取を受けました。山城は犯人の顔を見ていましたが、清田の質問に対し「見ていない」と供述しました。警察は本庄とも連絡を取り、山城が本庄のスタジオを出た時間と被害者の死亡推定時刻から山城のアリバイが証明されました。山城は解放されて家路につきましたが、清田は山城はまだ何かを隠していると疑っていました。
キャラクターのネタバレあらすじ:承
山城は帰宅するなり漫画を描き始めました。山城の脳裏にはあのピンク髪の犯人の顔が浮かんでいました。その頃、警察は捜査本部を立ち上げ、現場近くに住む辺見敦(松田洋治)という男に疑いの目を向けました。辺見は30年以上前にストーカー殺人事件を起こし、医療少年院に入れられた前科がありました。警察の取り調べに対し、辺見は「私がやりました」と告白しましたが、犯行の動機や凶器の行方、被害者との関係については「覚えていない」というのみでした。警察は辺見を殺人容疑で逮捕しましたが、清田は何かきな臭いものを感じていました。
その頃、山城の家では夏美が船越一家殺人事件の容疑者逮捕のニュースを見ていました。ニュースを見た山城は、辺見が自分が目撃した犯人と別人であることに気付きました。山城は描きかけの漫画の登場人物である殺人鬼のモデルをあのピンク髪の男にすることにしました。
1年後。山城の描いた漫画『34(さんじゅうし)』は大ヒットし、山城は一躍人気漫画家の仲間入りを果たしていました。山城は夏美と結婚し、セキュリティの厳重な高級マンションに引っ越していました。『34』の登場キャラクターである殺人鬼“ダガー”はあのピンク髪の男そっくりでした。
そのピンク髪の男はとある山道を歩いていました。山道には1台の車が停まっており、乗っていた4人家族の原一家はピンク髪の男を途中まで乗せることにしました。ピンク髪の男は「4人家族は幸せですね」と呟き、原一家の子供が読んでいた『34』を見るなり“ダガー”は自分に似ていないかと訊いてきました…。
山道脇の崖に転落した車の周りに警察が駆け付けていました。真壁と清田も所轄外ながら訪れていました。車の中からは座席に縛り付けられて殺害された原一家の4人の遺体が発見され、車の天井からは凶器とみられる包丁が発見されました。今回の原一家の事件は1年前の船越一家の事件と犯行手口が酷似しており、その手口や車の天井から凶器が見つかるという展開も『34』で描かれた内容とそっくりでした。真壁と清田は一連の事件の犯人は同一犯で、真犯人は作者の山城本人か『34』を読んだ模倣犯の可能性があると睨み、辺見は誤認逮捕ではないかと考えました。
夏美のお腹の中には山城との子が宿っていました。夏美は山城と共に、山城の亡き母の墓参りをした後、山城の実家に妊娠の報告に向かいました。出迎えたのは山城の父・健太(橋爪淳)、健太の再婚相手の由紀(小島聖)、由紀の連れ子の綾(見上愛)でした。健太は山城の成功を喜んでいました。
真壁と清田は山城の担当編集者となった大村を伴って山城のマンションを訪れました。清田は山城に今回の原一家の事件や『34』の内容との関連性を訊きましたが、山城は心当たりがありませんでした。山城は“ダガー”について問われると、動揺を抑えながら“ダガー”にはモデルはおらず只の創作物だと答えました。山城は今後の『34』の展開については何も決めていないと語り、真壁と清田は引き上げることにしました。山城は大村と『34』次回のネームの打ち合わせを始めましたが、弱気になった山城は「連載を止めた方がいいでしょうか」と言い出しました。大村は続けるべきだと語りました。
打ち合わせを終えた山城は、ひとりガード下の居酒屋「パブ13番地」で飲んでいました。そこに密かに山城を尾行していた清田が現れ、『34』が好きだと語りかけてみました。続けて清田は山城がなぜ漫画家になろうと思ったのか尋ねると、山城は負け組だった主人公が努力して奇跡を起こす展開が好きだと語りました。清田は『34』はどうなのかとツッコミを入れると、「殺人事件には終わりがない。遺族や友人に一生心の傷を残す。だから真実を掴みたい」と捜査への協力を求め、「思い出したら教えて」と自分の名刺を渡して山城の電話番号も聞き出しました。その時、清田に真壁から電話があり、清田は店の外に出て話し始めました。
清田が不在の間、山城の隣に“両角”と名乗るピンクの髪の男(Fukase)が座ってきました。両角は「先生のファンです」と握手を求め、「幸せの象徴と言えば“4人家族”ですね。僕のためにリアルに芸術的に描いてくれてありがとうございます。先生が描いたものを僕もリアルに再現しておきました。車の天井に包丁入れてたでしょ」と語ると、山城に「良いストーリーがある」と耳打ちしました。山城は両角が船越一家の事件現場で目撃したあの殺人犯であることに気付きましたが、両角はいつの間にか姿を消していました。
山城は店のビールのコースターに両角の似顔絵を描き、店主に両角のことを尋ねましたが心当たりはないようでした。店主は記念にと山城が描いた似顔絵を壁に貼りました。真壁との電話を終えた清田が店に戻ると、山城は既に帰っており、清田の分の食事代も山城が支払っていました。帰宅した山城は「休んでいる暇はない」と一心不乱に次回の話を描き始めました。
原一家の車の天井から発見された包丁からは、船越一家の事件の被害者の血液のDNAが検出されました。時を同じくして、第3の殺人事件が発生しました。被害者の松村一家の4人は山の川辺でキャンプをしていたところを殺害され、テントの中から発見されました。清田は犯行の手口が『34』の最新話の展開とそっくりであることに目を付けました。警察は山城が一連の事件に関わっていると断定、辺見を不起訴で釈放しました。辺見は弁護士と共に記者会見を開き、警察に自白を強要されたと批判しました。しかし、記者から30年以上前の事件について問われた辺見は「私がやったのかは覚えていない」と語りました。
キャラクターのネタバレあらすじ:転
清田は山城に連絡を取ろうとしましたが繋がりませんでした。大村から山城は「パブ13番地」にいるのではと言われた清田は店に向かいましたが、そこにも山城の姿はありませんでした。店には“ダガー”そっくりの男の似顔絵が貼られており、店主はこの似顔絵は山城が隣に座った客を描いたものだと証言しました。
その頃、山城は夏美の胎児の定期健診に付き添っていました。二人が帰ろうとすると、目の前に両角が現れました。両角は夏美に自分は『34』の共作者でアドバイザーだと自己紹介し、「子供が生まれるとは幸せの絶頂でしょう」と語りかけてきました。
帰宅した山城は夏美に事の真相を打ち明けました。山城は「アイツ(両角)が犯人だ。アイツをキャラクターに漫画を描いてしまった」と後悔し、『34』の連載を打ち切ることを決心しました。山城は清田にも真相を話し、清田はなぜ隠していたのかと問いました。山城は「自分には漫画の才能がない。アイツ(両角)と目が合って、生まれて初めて凄いキャラクターが思い浮かんだ」と語り、両角については名前以外は何も知らないと証言しました。清田は両角が必ず逮捕すると約束し、罪は償うという山城に「新作の事を考えて」と励ましました。
山城は出版社に向かい、編集長の加藤一郎(岡部たかし)に「犯人は『34』を読んで殺人事件を行っている。書いてはいけない漫画だ」と言い、連載を打ち切りたいと願い出ました。しかし、人気作を手放したくない加藤らは反対し、打ち切りではなく「長期休載」にしてはどうかと提案しました。山城も了承することにしました。
警察は一連の事件の真犯人を両角と断定、徹底的な捜査を開始しました。その頃、山城は書店で『34』休載の告知が載った連載誌を手にしていました。そこに両角が現れ、なぜ休載するのかと迫ってきました。山城は「警察に全部話した。人殺しに加担できない」と告げると、両角は「先生も楽しんで殺人を書いている。僕と同じだ」と語りました。山城は警察を呼ぶと告げると、両角は「他の人が死ぬ」と言い残して姿を消しました。
一方、清田は山城が1年前に描いた船越家のスケッチを見直していました。すると、当時家の前に停まっていた宅配便のトラックが描かれており、清田と真壁はその宅配業者を調べてみると、以前この業者は「両角修一」と名乗る“ダガー”そっくりの男をアルバイトで雇っていたことが判明しました。清田と真壁は履歴書の住所を基に両角の家を訪れましたが、応対した両角の母は息子とは10年も会っていないと答え、修一の卒業アルバムを見せました。すると、修一と“ダガー”は全くの別人であり、犯人は戸籍を買ったことが明らかになりました。捜査は行き詰まり、清田は書店の防犯カメラに映っていた両角の姿を見て「お前は誰だ」と呟きました。
その頃、両角は住宅街をうろついていました。両角は4人家族の家に目星をつけ、家に侵入すると一家全員をソファーに縛り付けて刺殺しました。そして両角は現場をポラロイドカメラで撮影し、自宅アパートに引き上げました。部屋には一連の事件の現場の写真、そして『34』の漫画の切り抜きが貼られており、一連の事件の構図は『34』の中身と全く同じでした。両角は「なかなかの出来だよ、先生」と呟きながら『34』を読み始めました。
清田は原一家の事件の現場の写真を見返していると、道端に“九条村”と書かれた看板があることに気付きました。その看板は『34』で描かれたものとそっくりでした。清田は山城の元を訪れ、原一家の事件と構図が酷似している回の舞台が“九条村”となった経緯を訊きました。山城は資料のスクラップブックを見せ、経緯を語りました。1992年に廃村となった“九条村”はある宗教団体が支配していた村であり、その教団は“4人家族が幸せの象徴”であるという信仰を持っていたのだそうです。この村にはかつて教団の信者である20組の4人家族が暮らしており、なぜ犯人は4人家族に執着するのか疑問に感じた山城はネタを探していたところでこの村の存在を知ったのでした。清田は両角が“九条村”と関係があるのではと考え、山城からスクラップブックを借りて署に戻ることにしました。
署に向かう清田を待ち構えていたのは、釈放されたばかりの辺見でした。辺見は手にした包丁で清田を滅多刺しにして殺害しました。近くの歩道橋には両角の姿があり、一部始終を見守った両角は「惜しかったね。良い所まで行ったのに」と呟きました。
キャラクターの結末
警察は清田を殺したのは辺見だと断定、その行方を追いました。清田の葬式には真壁ら警察関係者の他にも山城の姿がありました。真壁は「危ないから送っていく」と山城に声をかけ、警察は辺見を追いつつ並行して両角の捜査も続けていることを話しました。山城は自分のせいで清田が死んだと謝ると、真壁は「清田は君を恨んではいない。清田は君のファンだった。君の新作を楽しみにしていた」と慰めました。真壁はかつて少年課に所属しており、暴走族上がりだった清田の面倒を親身になって見てきていたのです。
山城は漫画で両角とケリをつける決心をし、帰宅するなり『34』の最終回を描き始めました。山城は書き上がった話を夏美や編集部に見せ、夏美は「この通りになったら?」と驚きました。そして『34』の最終回が掲載された雑誌が販売され、手に取った両角は「こう来たか」とほくそ笑みました。
最終回の内容は、“ダガー”が自分の事件をモチーフにした漫画を描く漫画家の家族を襲い、最後に漫画家を刺すというものでした。漫画家のモデルは山城自身であり、被害者の家族構成も山城の実家と同じ4人家族(父、母、漫画家、妹)でした。
捜査本部は山城の作戦は明らかに罠だとわかるため、犯人はのこのこと現れないだとうとタカをくくっていましたが、真壁は清田だったら同じ作戦をしただろうと告げ、山城、健太、由紀、綾に防刃チョッキを着せました。山城は家族を巻き込んでしまったことを謝りましたが、健太たちは気にするなと諭しました。
そんな時、山城の携帯に死んだ清田の携帯から電話がかかってきました。電話をかけたのは両角であり、両角は「先生の実家は幸せな4人家族じゃない。母は再婚で、妹は血の繋がりがない」と指摘すると、「先生の“本当に幸せな4人家族”を襲う」と宣言しました。もしやと思った山城は夏美に電話をかけると、夏美のお腹には男と女の双子の赤ん坊が宿っていることが明らかになりました。両角の真の狙いは山城の実家ではなく、山城、夏美、そして産まれ来る双子であることに気付いた山城は急いで自宅マンションに向かいました。
マンションの入り口では両角が待ち構えていました。両角は包丁で山城の足を刺し、山城にドアを開けさせると部屋まで連れていきました。山城は夏美に逃げろと告げましたが、両角は「好き勝手に書いて、感謝の気持ちもない」と言うと夏美を殺そうとしました。山城は「見くびっていた。俺が悪かった。俺を殺せよ。ストーリーは守ってもらう。共同作品だぞ」と告げ、両角は「分かったよ。共同制作だよね」と言うなり山城の胸に包丁を当てました。ところが、山城は防刃チョッキを着ていたために刺すことができず、山城は両角から包丁を奪って襲い掛かりました。
真壁ら警察が山城のマンションに駆け付けた時には、山城は両角を刺そうとしていたところでした。真壁は「山城さん、もういい。やめろ」と叫び、止めようとしない山城を撃ちました。山城は両角に折り重なるように倒れ、その構図はまさしく『34』の内容と酷似していました。
一命を取り留めた山城は病院に入院し、夏美は彼の傍に寄り添いました。やがて夏美は双子の赤ん坊を出産、住んでいた高級マンションを引き払って安いアパートに引っ越しました。そんな夏美を、何者かが背後から見つめていました。
真壁らは両角のアパートの部屋から、幸せそうな4人家族の信者の写真を発見しました。“九条村”で生まれた信者の子供たちは無戸籍の者が多く、真壁は両角も無戸籍の子供だったのだろうと推測しました。その後、真壁は山城の見舞いに訪れました。テーブルには山城が描いた清田の似顔絵が置かれていました。
法廷に立った両角は辺見との関係を問われ、自分は元々ストーカー殺人犯だった辺見のファンだったものの次第に辺見が自分のファンになっていったと証言しました。裁判長から氏名、生年月日、本籍などについて問われた両角は「僕は誰なんでしょうか? 誰として裁かれているのでしょうか?」と問い返しました。
以上、映画「キャラクター」のあらすじと結末でした。
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