英雄 ~HERO~の紹介:2002年香港・中国合作。中国映画界の巨匠であるチャン イーモウが製作したアクション巨編で、美しい色彩とワイヤーアクションを多く取り入れた斬新な演出により、全世界の中国映画の興行収入が塗り替えられるという大ヒットを記録します。
監督:チャン・イーモウ 出演:ジェット・リー(無名 / ウーミン)、トニー・レオン(残剣 / ツァンジェン)、マギー・チャン(飛雪 / フェイシエ)、チャン・ツィイー(如月 / ルーユエ)、ドニー・イェン(長空 / チャンコン)、チェン・ダオミン(秦王 / チンワン)、ほか
映画「英雄 ~HERO~」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「英雄 ~HERO~」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
英雄 ~HERO~の予告編 動画
映画「英雄 ~HERO~」解説
この解説記事には映画「英雄 ~HERO~」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
英雄 ~HERO~のネタバレあらすじ:王様を狙う3人の刺客
中国が戦国時代の真っ只中であった時、秦の王様である政王は残りの6つの国からの刺客に常に怯えていたのです。中でも残剣、飛雪、長空は最強の刺客として国中を噂が駆け巡り、日々不安のまま過ごしていました。
英雄 ~HERO~のネタバレあらすじ:無名という男
ある日、護衛部隊に守られ、一つの馬車が政王の宮殿へ近づきます。その馬車の中には、無名(ジェット・リー)と呼ばれる男が座っていたのです。彼は全身を黒づくめの衣装で固めていました。彼は政王に謁見するため、3人の刺客を殺したのです。その報告をするために宮殿へ出向いたのでした。
政王は、暗殺を恐れるあまり、王から100歩の距離を近づくことを許しませんでしたが、今回、無名は刺客を打ち取ったことで、特別に謁見が許されます。
最初は長空(ドニー・イェン)との戦いを王に話します。長空は槍の達人で、雨の降りしきる中、無名は長空と壮絶な戦いを行い、長空を殺します。
英雄 ~HERO~のネタバレあらすじ:飛雪と残雪の物語
そして話は飛雪(マギー・チャン)と残剣(トニー・レオン)に変わります。飛雪は女性で、残剣とは恋人関係にありました。また、残剣には下女である如月(チャン・ツィイー)が行動を共にしています。
彼らは趙の国の人間であり、残剣は書道の達人でもあり、屋敷で書道を親しんでいるところに秦軍の矢が降り注ぎます。残剣はそんなことはお構いなしに書を書き進めます。外では飛雪と無名が、飛んでくる矢を必死になって剣で振り払っています。
残剣は、優しくしてくれる如月と関係を持ってしまいます。そのことで嫉妬した飛雪は、残剣を刺します。如月と対決、紅葉の森で如月を同じく刺してしまいます。無名は飛雪と図書館で決闘を行いますが、決着はつかずに終わります。
舞台は砂漠の中に移り、無名は飛雪と対決をします。この対決で飛雪はついに無名に負け、砂の上に横たわります。終わった後に駆けつけた残剣は、無名とともに美しい湖で飛雪の仇を取るために決闘をします。
無名は、残剣が飛雪を愛しているのを見ると、決闘を終了し、その場を去ります。
英雄 ~HERO~のネタバレあらすじ:統一の意義
国王の場面になり、無名が持ち帰った残剣の掛け軸を壁にかける王、そして王の前に並べられているろうそくが、ゆらりと揺れます。残剣と飛雪は、ついに王の宮殿へと襲撃し、残剣は王と剣を交えます。
しかし、戦う最中、残剣は幾度の戦争により国土が荒廃し、人々は疲労困憊している、統一が必要だと思い、その場を去ります。
王宮に移り、無名の殺気を感じた王は、剣を無名の目の前に落とします。無名は空中を飛び、王に剣の鞘を突きつけます。殺そうと思えば殺せたものを、無名は王を殺しませんでした。無名は、国のため、統一が必要だと悟ったからです。
英雄 ~HERO~の結末
砂漠で残剣と飛雪が戦い、残剣が動かなくなると、静かに飛雪が残剣とともに剣を突き刺し、絶命します。そばに駆けつけた如月は彼らの姿をみて、泣き狂います。
王様は無名の姿に感銘を受けながらも、彼を殺すことに決め、宮殿の門前に立った無名は、兵士からの数千の矢を受け、絶命します。その後、政王は中国全土を統一し、史上初の始皇帝となります。
以上、映画「英雄 ~HERO~」のあらすじと結末でした。
「英雄 ~HERO~」感想・レビュー
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英雄・秦の皇帝の命を狙う刺客を次々と倒した功績で、皇帝への謁見を許された無名という男。
賢明なる皇帝が、刺客たちとの戦いを語る彼の話が真実ではないことに気がついた時、その男は10歩の距離までに迫っていた。美しい色彩設計、端正な構図、羅生門的な物語構成。
それらがこの作品の品格を高めていることは、間違いない。しかし、様式にこだわり抜いて見せたこの作品は、そこに足を引きずられたのか、アクションのリズムを刻まない。
ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイー、ドニー・イェンという、これだけのアジアの大スターを揃え、これだけのスケールの作品でありながら、最後まで血沸き肉躍ることのない、このアクション娯楽大作は、その一点において作品のあるべき姿を見失っているのではないかと思う。様式の中に閉じ込められた夢幻的なアクション・シークエンスは、それが生気のないプラスティックのディスプレイのように、自らを閉じ込めたショーケースという枠組みを、突き破りはしない。
窮屈な型に閉じ込められて、物語は最後まで躍動する瞬間を得ることがない。
つまり、様式がアクションのリズムを殺しているのだ。もちろん、私怨を超えて安定した国家を築く大義を語るのが、この作品のテーマなので怒りや哀しみを押し殺した”枠組み”に納まることを選ぶ「英雄」たちが、そういう窮屈なショーケースの中でしか、その美しくも超絶的なアクションを披露出来ないのは物語的な必然なのかも知れない。
ただ、物語のテーマに忠実であることで、この映画はそれ以上の何かになる可能性を自ら放棄しているのだと思う。
優等生であるが故の、面白味のなさを感じるのだ。監督のチャン・イーモウは、それまでどんなジャンルの映画でも器用に、巧みな手腕を発揮してきた人だが、この作品でまた、これまでとは違う”武侠映画”というジャンルに挑戦して、一応の成功を収めていると思う。
大地を揺るがす秦の大軍、唸る矢、芸術的な振り付けを施されて宙に舞う剣士たち。
それにしても、それらのシーンが美術館の展示品であるかのようにダイナミズムを欠いているのが、実に惜しいと思う。そして、この監督が枠に閉じ込めコントロールする発想でしか、アクション映画を撮れないのであれば、彼の体質に合っていない、このジャンルではなく、もっと小味な人間ドラマの路線でいった方がいいように思う。
画像の美しさ、息をのみます。
全体に流れる、張り詰めた駆け引き・・・・・・
絶対おすすめの映画です。