ホーリー・モーターズの紹介:2012年フランス,ドイツ映画。アポイントにそって『誰か』を演じるオスカー。物乞い、少女の父、病床の老人、ect。彼を乗せたリムジンはどこへ向かうのか。
監督 :レオス・カラックス 出演:ドニ・ラヴァン(オスカー)、エディット・スコブ(セリーヌ)、エヴァ・メンデス(ケイ・M)、カイリー・ミノーグ(ジーン/エヴァ)、エリーズ・ロモー(レア/エリーズ)、ミシェル・ピッコリ(あざのある男)、ほか
映画「ホーリー・モーターズ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ホーリー・モーターズ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ホーリー・モーターズ」解説
この解説記事には映画「ホーリー・モーターズ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ホーリー・モーターズのネタバレあらすじ:リムジンでアポイントを受ける「オスカー」
白黒のコマ送りの映像が始まる。どこかの部屋では男が壁を探り扉を開けると観客席を見下ろす映写室へと出る。子供に見送られて瀟洒な家からセリーヌの運転するリムジンに乗り込むオスカー。中は楽屋さながら、アポイントのファイルを見ながら電話をし、化粧台を開くとカツラを梳かし始めた。車から降りたオスカーは脚の悪い物乞い扮してパリの街で物乞い始める。次のアポイントはモーションキャプチャーの付いたタイツでのアクション撮影。すると暗がりの中に同じくタイツ姿の女性が入ってくる。抱き合いながら撮影が続けられできた映像には二匹の交わる蛇のような化け物だった。隻眼の老人に扮して次の現場に向かい、指定のマンホールにもぐり地下水道へ。地下には行列に紛れて墓地のマンホールから出たオスカーは。墓場の花を荒らし、参り客を驚かせながら美しいモデルの撮影場所に行くと、「醜い」といって逆にカメラマンに撮られる。掲載許可を求める助手の指を食い千切り、アルテミス摸したモデルを攫い再び地下水道にもぐった彼は、彼女の服を神話の女神の装束から、厳格なムスリムのように目だけ見えるように変える。そして彼が服を脱ぎ膝にを枕に横たわると、彼女は子守唄を歌い始める。
ホーリー・モーターズのネタバレあらすじ:彼は演じているのか?
赤い車に乗り込み、パーティーの行われているアパルトマンに娘を迎えに行くと、一緒に送るはずの娘の友達ソニアは先に帰ったという。疲れてるのと尋ねる娘にアポが次々と入っていると答えるオスカー。そこへ娘とオスカーの携帯電話に連絡が入り、娘のアンジェルはトイレに閉じこもっていたということが発覚する。もてないと嘆く娘に、嘘をついた罰を受けなければならない、それはお前がお前として生きることだと言ってアパルトマンの前で娘を降ろした。次のアポイントにインターミッションと書かれた楽譜を渡されるアコーディオンを弾きながら教会へ入っていくと他のアコーディオン弾きもやってくる。やがてドラムや弦も加わる。アポイントのファイルには標的テオとある。中華街の一角の市場に乗り付け、女主人にテオに会いに来た、皆外に出たほうがいいと告げると、そこではアレックスと呼ばれた。テオを見つけ首を切って殺すと、その髪をそり自分の服を着せ、まるで殺されたのが自分のように偽装している最中に、テオに首を刺されてしまう。よろよろと出てきたオスカーをセリーヌがリムジンに運んだ。次のアポイントのために着替えていると、向かいの席に乗り込んでいた紳士に、仕事を楽しんでいるか、疲れているのではないかと問われる。紳士はカメラが身体より重かった頃が懐かしい、今は小さく目に見えないほどになってしまったと昔を懐かしむように語った。美しさは見る者の瞳の中。では見るものが居なくなったらどうなってしまうのだろう。リムジンの後部座席のモニターに映されるパリは夜景から監視カメラの映像へとシフトする。殺しは一日一件でいいと愚痴るオスカーは、車を止め、目だし帽を被りカフェで銀行家に発砲。ボディガードに蜂の巣にされる。そして再びセリーヌに助け起こされ車の中へ。ヴォーガンと呼ばれる老紳士に扮したオスカーはホテルで床に就く。やがて枕元に看病をする女性レアがやってくる。死に行く資産家とお金目当てで関係を持った情婦のようなやり取りをし、諭すように今際の言葉を語り、死を演じるオスカー。次のアポがあると言ってベッドから起きると、また会いたいと言われた。彼女はエリーズと名乗った。
ホーリー・モーターズのネタバレあらすじ:同じ生業の女性と紡ぐ30分の舞台
百貨店サマリテーヌの前で別のリムジンと角でぶつかる。窓を開けると、同じくリムジンの後部に乗った女性にあなたなの?と問われ、30分だけ時間があると言ってそれぞれのリムジンから下りた。彼女に仕事をやめたかかと思ったと言われ、今老人のような風体なのはさっきまで演じていた紳士の老けメイクだと返すオスカー。彼女はエヴァ・グレースの最後の夜だと語り百貨店の中に入っていった。もう二度と会えないだろうから残り20分で離れていた20年分を取り返す言う彼女は、あの頃の私達は誰だったのとミュージカル調に歌いながら舞台に見立てるように広い階段を昇り、屋上まで向かった。オスカーは彼女にジーンと話しかけ、時は僕たちの味方じゃない、もう会わないほうがいいとその場を去った。残された屋上でスチュワーデスの姿になった彼女は屋上の端に行き、ヘンリー、私はここよと呟いた。オスカーは一階で男と行き違い、百貨店を出ると、彼女の飛び降り死体があった。
ホーリー・モーターズの結末:今日最後のアポイントの後で。
赤外線カメラに映る、パンテオン。リムジンの中でもうすぐ真夜中を過ぎた頃、オスカーはセリーヌにスローな曲で一緒に踊ろう誘うが断られてしまう。その代わり、彼女は昔自分がダンサーであった事を教えてくれた。しかし写真は残っていない。最後のアポイントのために着替えるオスカー。向かう先は妻と娘が住む家。そこで今日の分のお金と家の鍵を渡される。家に入るとチンパンジーが彼を迎える。妻も娘もチンパンジーであることに動じる事もなく、オスカーは僕らの暮らしが変わるんだと窓辺で彼女たちに語った。ホーリー・モーターズと書かれたガレージ入っていくリムジン。仮面をつたセリーヌは家に帰りますと電話をし、車から降りる。ガレージが閉まり彼女が去ると、ガレージの中でリムジン達が愚痴を話し始める。いつか用済みになる、人間はもう見える機械を望まない、モーターを望まない、アクションも望まないと。そしてアーメンと言う声がかかり暗転。
以上、映画ホーリー・モーターズのあらすじと結末でした。
ホーリー・モーターズのレビュー・感想:「映画」を象徴するもの、その一世紀の歴史。
オスカーが何者であるかは最後までわからない。しかし彼はアポイントにそって「演じる」事を生業にしている。彼のアポイントのそれぞれが映画作品の一場面だと考えると納得が行く。そこにはモーションキャプチャーを撮られ、およそオスカー自身とはかけ離れた造形のもの含まれる。
最後、ガレージで、リムジン達に「静かに!」と声が掛けられるそこからの一連の流れからキーになる単語拾うと、silence motuer actionになる。これは映画などの撮影の際にフランス語で掛けられる合図で、作品全体が映画撮影を模したもの、「映画」というものの象徴とも解釈できる。
寡作の天才、レオス・カラックスの最新作。カイリー・ミノーグが出演、と聞いた時は一体どうなることかと思ったが、何の違和感もなく、しっくりとカラックスの世界にはまっていて感心した。とにかく謎に満ちた作品。しかし、tokyo!シリーズで彼が描いたメルドは、アキバ事件を予期していたのではないかと震えたが、本作も私たちの進んでゆく世界をカラックスなりに暗示しているのでは…と思ってしまう。そして冒頭にカラックス本人と愛犬が出演しているのにも驚いた。