LOVERSの紹介:2004年中国映画。「3つの[愛]が仕掛けてくる」というキャッチで、2人の男と1人の女が繰り広げる壮烈な秘略の応酬と悲劇的運命に翻弄される愛の行方を、華麗な映像美で描いたアクション・ラブストーリーです。監督は『HERO 英雄』(2002年)などのチャン・イーモウ。
監督:チャン・イーモウ 出演:金城武(ジン)、チャン・ツィイー(シャオメイ)、アンディ・ラウ(リウ)、ソン・タンタン(牡丹坊の女将)ほか
映画「LOVERS」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「LOVERS」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「LOVERS」解説
この解説記事には映画「LOVERS」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
LOVERSのネタバレあらすじ:1.時代
時は西暦859年、舞台は中国、唐の時代、不能な皇帝のもと政治腐敗が進み、各地で反対勢力が台頭していました。中でも最大の規模をほこっていたのは「飛刀門(ひとうもん)」という一派でした。彼らは長安に近い奉天縣を本拠地にして、圧倒的な支持を集め、都にとっては脅威でした。朝廷の命を受けた奉天縣では「捕吏(ほり)」と呼ばれる治安部隊と飛刀門との死闘が繰り広げられていました。
LOVERSのネタバレあらすじ:2.運命の出会い
奉天縣の捕吏のリウ(劉)隊長とジン(金)隊長は、朝廷から10日以内に飛刀門の新しい頭目を抹殺せよとの命を受けていました。リウは「牡丹坊」という遊郭で一番の売れっこ芸子が飛刀門の一味であるという情報を得ました。生真面目なリウは、遊び好きで飄々としたジンにその芸子を探るように頼みました。ジンは早速、牡丹坊へと客になりすまして、探りに行きました。ひとしきり芸子たちと酒を飲み遊ぶと、ジンは女将を呼び、今一番の売れっこ芸子を呼び出しました。そして、ジンの前に現れたその芸子は、シャオメイ(小妹)という、それは見目麗しき凛とした気品ある娘でした。ただ、彼女は目が見えませんでした。ジンはシャオメイに踊りを踊らせました。彼女は美しく優雅に舞い、歌いました。舞が終わるとジンは、酔ったふりをしてシャオメイを強引に抱こうとし、騒ぎを起こしました。そこに、打ち合わせ通り、リウが乗り込んできました。リウはシャオメイを逮捕しようとしましたが、女将は「この娘は一番の売れっこ。連れて行かれては困ります。舞が上手にできたら許してください」とリウに頼みました。リウはその女将の頼みに応じ、シャオメイに鼓打ちの舞を踊らせました。目が見えないシャオメイにとって、鼓打ちの舞は指南の舞と思われました。しかし、シャオメイはリウの目の前で、美しく正確に鼓打ちの舞を披露して見せました。そして、舞の終盤、シャオメイは舞いながらリウに近づき、リウの剣を奪い、リウを暗殺しようとしました。シャオメイは目が見えないとは思えないほどの鋭い攻撃をリウに仕掛けましたが、リウに倒され、逮捕されてしまいました。
LOVERSのネタバレあらすじ:3.計略
シャオメイの部屋から飛刀(小型のナイフ型手裏剣)が見つかりました。また噂で、飛刀門の前頭目の娘が盲目であり、その娘は父の敵討ちのために一人旅しているとも言われていました。シャオメイは飛刀門の一味と確信したリウは、逮捕したシャオメイを拷問にかけて、飛刀門の本拠地を吐かそうとしますが、シャオメイは口を割りませんでした。
リウはそんなシャオメイを見て、一計を案じました。それはジンがシャオメイを助け出して逃亡し、シャオメイを泳がせて本拠地を突き止めるという計略でした。ジンは女好きのシャオメイに「本気で惚れたりするなよ」と冗談交じりに釘を刺しました。早速、ジンはその夜、シャオメイを助け、スイフォン(随風)と名乗り、馬を走らせ深い林の中へと逃亡しました。その跡をリウは追跡しました。
始めはスイフォンに不信感を抱いていたシャオメイでしたが、スイフォンの優しい心配りと「誰にも従わず、どこにも属さず、自由に生きる。風のように風流な男」と自らの名の由来を語るスイフォンに信頼を寄せました。スイフォンは追っ手をまくため、シャオメイに男装させました。男装したシャオメイの美しさに、改めてスイフォンは心を強く惹かれました。スイフォンはシャオメイの言葉に従い、ひたすら北を目指して逃げました。シャオメイはその途中、スイフォンを美しい花畑に立ち寄り、そこで休憩することにしました。「約束通り、野山に連れて来てくれた」とシャオメイは喜びました。二人はいつしか愛し合うようになりました。
そんな二人を引き裂くかのように、捕吏の追っ手がやって来ました。スイフォンは自分も捕吏であり極秘任務を遂行中である事を、シャオメイに気づかれないように追っ手に伝えようとしましたが、追っ手は信じませんでした。仕方なくスイフォンは次から次へと襲ってくる追っ手たちを打ち倒しました。シャオメイも飛刀を使い応戦しましたが、数の上で勝る追っ手たちに苦戦を強いられました。スイフォンは傷を負いながらも、シャオメイを助けるため、追っ手たちを撃退しました。
その夜、密かにジン(スイフォン)はリウに会いました。リウはジンに、将軍の命で直属の精鋭部隊が襲ってくるぞと忠告しました。リウの策の通りに動いていたジンは「俺たちの命など大儀の前では無に等しい」と他人事のように言うリウに憤り、「仲間を殺さなきゃならない俺の身にもなれ!…俺は降りる!」と言い放ち、リウと別れました。そんなジン(スイフォン)を待っていたシャオメイは、本当に心から自分のことを愛してくれているのかと問いました。スイフォンはシャオメイを愛していましたが、その答えをはぐらかしました。シャオメイは憤り、翌朝、スイフォンに別れを告げ、一人で北へ向かって旅立ちました。
LOVERSのネタバレあらすじ:4.交錯
シャオメイはひたすら北へと馬を走らせました。そして、ある美しく広大な竹林の中で休息をとりました。静かな竹林から微かながら不審な音が、シャオメイの耳に入りました。将軍が差し向けた精鋭の追っ手たちの音でした。追っ手たちはシャオメイを抹殺しようと、襲撃してきました。シャオメイは全力で、次々と襲いかかってくる追っ手たちをなぎ倒しました。しかし、数で勝る追っ手たちの襲撃にシャオメイは苦戦を強いられました。そこに一人の男が現れました。スイフォンでした。スイフォンは愛するシャオメイを守るため、彼女を追ってきたのでした。二人は力を合わせて、追っ手たちから逃げようとしましたが、彼らの罠にはまり、身動きが取れなくなりました。二人は死を覚悟しました。
その時でした。いずこからか飛刀が飛んできました。大勢いた追っ手たちはその飛刀で、一掃されました。鮮やかな緑の衣装を身に纏った軍団が、竹林の中から現れました。それは飛刀門一派でした。その飛刀門の頭目はなんと、あの牡丹坊の女将でした。女将はスイフォンにシャオメイを愛していることを知ると、彼女と結婚してほしいと頼んできました。スイフォンは驚きましたが、その話を丁重に受けました。油断したスイフォンを女将は捕縛しました。女将はリウも捕縛していました。女将はスイフォンが捕吏のジン隊長であることを見抜いていました。そんな二人の前にシャオメイが現れ、女将にお茶を入れました。スイフォンは目を疑いました。実はシャオメイは目が見えないふりをしていた頭目の娘の「影武者」でした。シャオメイは影武者となり、捕吏をおびきよせる任務を担っていたのでした。
女将はまずリウを表に出し、竹林の中で処刑しようとしました。女将は剣を抜きました。その剣はリウを捕縛していた縄を斬りました。なんとリウも飛刀門の一員でした。リウは前頭目の抹殺計画を阻止すべく、3年前から捕吏として潜入していた二重スパイでした。そして、リウとシャオメイは恋人同士でした。女将から3年の極秘任務の労を労われ、シャオメイとの逢瀬を許されたリウは喜びました。3年ぶりに二人きりになれたリウとシャオメイは抱き合いましたが、シャオメイはリウを拒みました。シャオメイはいつしか、スイフォンを本気で愛するようになっていたのでした。たった3日で恋に落ちたシャオメイに、3年間シャオメイの事を想い続けていたリウは激怒しました。そこへ本物の頭目が現れ、憤るリウの背に飛刀を刺しました。頭目はリウに引き続き、潜入スパイとしての任務を継続するよう命じました。リウは飛刀に刺されたまま、その場を立ち去りました。頭目はシャオメイにスイフォンを処刑するよう命じました。しかし、シャオメイは愛するスイフォンを刃にかけることができませんでした。シャオメイはスイフォンの縄を解き、逃がしました。スイフォンはシャオメイに共に逃げ、自由に生きようと訴えましたが、彼女は動きませんでした。仕方なくスイフォンは独り馬に乗り、立ち去りました。
LOVERSのネタバレあらすじ:5.恋人たちの死闘
スイフォンの言葉を退けたシャオメイでしたが、心は大きく揺れ動いていました。悩みに悩んだあげく、シャオメイは飛刀門を捨て、スイフォンと自由に生きる決意をしました。シャオメイはスイフォンを追い、馬を走らせました。その途中の草原で、シャオメイに向かって飛刀が飛んできました。その飛刀はシャオメイの胸に突き刺さりました。シャオメイは落馬し、倒れました。それはリウが放った飛刀でした。リウは目を潤ませ、「俺はお前を愛している。愛せとは言わん。だがあいつとは行くな。…シャオメイ、お前が悪いのだぞ。なぜだ!」とシャオメイに訴えました。シャオメイは息も絶え絶えに「風のように自由に生きたくて…」と言うと、その場に倒れてしまいました。リウは嘆き悲しみました。
シャオメイへの想いを断ち切るかのように馬を疾走させたスイフォンでしたが、彼女への想いを断ち切れず、馬を駆りシャオメイのもとに戻りました。途中、草原で倒れているシャオメイを見つけました。そこにリウが現れ、スイフォンに襲いかかってきました。スイフォンは気づきました。リウが飛刀門であり、シャオメイを愛していたことを。「愛しているのに、なぜ刃にかけた!」と憤るスイフォンに、リウは「そう仕向けたのはお前だ!本気になってはいかんと言ったはずだ」と言い、スイフォンに斬りかかりました。リウの嫉妬と憎悪と怒りは、強烈な殺意へと化していました。スイフォンとリウとの死闘が始まりました。いつしか雪が降り出し、草原は雪原へと化しましたが、互角の剣の腕を持つ二人の決着はなかなかつきませんでした。美しく降り積もる雪を、二人の赤い血が染めました。リウは背中に刺さった飛刀を抜き、勝負の決着をつけようとしました。
そんな二人の闘いの最中、シャオメイが息も絶え絶えに立ち上がってきました。シャオメイはリウに「やめて…その人を殺したら…私はあなたを殺す」と言い、胸に刺さった飛刀に手をかけました。そんなシャオメイの姿をリウは一瞥すると、殺意の目でスイフォンを睨みました。スイフォンはシャオメイに「飛刀を抜くな!抜けば死ぬぞ」と言い、シャオメイの命を案じ、剣を捨てました。スイフォンは死を覚悟しながらも、ただひたすらにシャオメイの命の事だけを案じていました。恋人たち3人が命をかけて対峙しました。
LOVERSの結末:6.3つの愛
一歩ずつ近づくスイフォンに止めを刺すべく、リウは飛刀を持つ腕を振りました。それと同時にシャオメイは胸の飛刀を抜き、飛刀を投げました。シャオメイの胸から一気に血が吹き出ました。降りしきる雪の中、シャオメイの放った飛刀はスイフォンに向かってきた一滴の血を阻みました。リウは飛刀を放っていませんでした。リウは愛するシャオメイと共に死ぬ覚悟をしていました。シャオメイはかつてもそして今も自分を愛し、それ故に苦しむリウに刃を放つことなどできませんでした。倒れるシャオメイをスイフォンは泣きながら、抱きしめました。「なぜ戻ったの…」と問うシャオメイに、「戻ってくるさ。お前のためなら…」とスイフォンは答えました。シャオメイは笑みを浮かべ、静かに息絶えました。シャオメイの亡骸を抱き「北方に佳人あり♪比類なき絶世の美女なり♪ひと目見れば城を傾け…♪」と唄い嘆くスイフォンを背に、負けを悟ったリウは飛刀を手放し、降りしきる真っ白な雪の中、静かにその場を独り立ち去っていきました。
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