生きてみたいもう一度 新宿バス放火事件の紹介:1985年日本映画。1980年に起きた新宿バス放火事件の被害者、石井美津子の手記を映画化した作品。放火に巻き込まれ、全身に重い熱傷を負った主人公が、過酷な運命に立ち向かっていく様を描いた社会派人間ドラマです。石井美津子役を演じた桃井かおりの迫真の演技が光ります。
監督:恩地日出夫 出演者:桃井かおり(石井美津子)、石橋蓮司(杉原荘六)、柄本明(丸山博文)、 初井言榮(石井なお子)、 岸部一徳(石井義治)、 原田大二郎(斉藤宏保)、 佐藤慶(中島研郎医師)、ほか
映画「生きてみたいもう一度 新宿バス放火事件」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「生きてみたいもう一度 新宿バス放火事件」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
生きてみたいもう一度 新宿バス放火事件の予告編 動画
映画「生きてみたいもう一度 新宿バス放火事件」解説
この解説記事には映画「生きてみたいもう一度 新宿バス放火事件」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
生きてみたいもう一度 新宿バス放火事件のネタバレあらすじ:起
1980年8月19日。新宿西口、時刻は午後9時8分をまわろうとしていました。フリーライターの石井美津子は疲れた様子で停車中のバスに乗り込みます。車内はこれから帰宅する乗客で賑わっていました。
そこへ現れた中年男が、火の付いた新聞とガソリンの入ったバケツを車両後方へと投げ込みました。バスは瞬く間に炎に包まれていき、やがて大きな爆発を起こします。火の海と化していく現場、転げ落ちるようにしてバスから脱出した美津子は全身に火傷を負いながら、必死に助けを求めます。病院へ運び込まれた美津子は重い熱傷により、生命の危機に晒されます。病院に駆け付けた母・なお子が付きっきりで美津子の看護にあたることになりました。
報道カメラマンの兄義治は偶然にも事件の日に新宿に居合わせ、バス放火の瞬間をとらえたスクープ写真を撮影していました。しかし妹が事件に巻き込まれていたことなど知る由もなかった義治は、罪悪感に苦しむことになります。病院には美津子の恋人杉原荘六も病院へ駆けつけてきました。美津子は仕事仲間である杉原と不倫関係にありました。
生きてみたいもう一度 新宿バス放火事件のネタバレあらすじ:承
8月23日。美津子は千葉の葛南病院へと転院しました。主治医の中島は美津子が全身の80パーセントの熱傷を負っており、今もなお予断を許さない状態にあること、四肢運動障害の後遺症が残ることや輸血に伴う合併症のリスクを背負っていることを告知します。
9月6日、バス放火犯として逮捕された丸山博文は拘置所に移され、精神鑑定を受けます。すでにこの事件でナイター観戦帰りの父子やシングルマザーら多数の乗客が命を落としました。
9月22日には足首右下腿自家植皮手術が行われ、10月3日には左右手首自家植皮人工皮膚交換、10月13日には両手両下腿自家植皮手術が行われました。やがて美津子は自力で歩けるまでに快復、医師から外出の許可が出ます。母とともに駅前の寿司屋へと出かけますが、介助なしに食事を取ることさえできない現実に直面します。
12月1日、植皮手術が完了。病院の近くで久しぶりに杉原と会います。美津子は事件が起きた時一瞬逃げることを躊躇したと告白します。当時の美津子は借金に追われる杉原を助けるため金策に走り回る日々が続いていて、生きることに疲れ切っていました。事件時このまま死ねば楽になれるかもしれないと考えてしまったことに美津子は深い罪悪感を抱いていました。
12月11日、肝機能の悪化により薬浴は中止され、鎮痛剤の使用も禁止、トイレ以外の起床が不可になってしまいます。美津子にとって何よりも辛かったのは鎮痛剤を使用できないことでした。痛みに苦しむ日々が続いたまま、やがて年の瀬を迎えます。
生きてみたいもう一度 新宿バス放火事件のネタバレあらすじ:転
初公判で丸山は事件を起こしたことを覚えていないと証言、精神鑑定が行われることになりました。美津子は丸山の生い立ちについて調べ始めます。丸山博文は幼くして母を亡くし、働く意欲のない父のもと極貧の少年時代を送った男でした。その父も亡くなると叔父を頼ってとび職の仕事に就き、29歳で結婚、待望の長男を授かりました。しかしその一年後には妻が精神疾患を患い入院、同年長男は乳児園へ預けられることになってしまいます。丸山は稼いだ金を長男へ送金し続けますが、次第に生きる意味を見失っていき、結局孤独な境遇が彼を犯行に走らせていったのでした。
美津子はなかなか退院できないことに苛立ちを感じ、母に八つ当たりする日々が続いていました。杉原からは妻が末期がんを患っていることを打ち明けられ、妻を看取ったのち一緒に暮らさないかと提案されますが、美津子の心は複雑に揺れ動きます。その後、ようやく退院できた美津子は実家に身を寄せることになりました。事件から一年の月日が経っていました。
静かな暮らしを望んでした美津子でしたが、連日のようにテレビの取材が家に押しかけてくるようになっています。被害者のその後の生活を追ってきたNHK社会部の記者斉藤からは犯人を憎いとは思わないかと尋ねられますが、美津子は答えることができません。丸山の生い立ちを知る美津子は彼が凶悪な犯罪者だと割り切って考えることができませんでした。
妻を亡くした杉原は美津子の両親に頭を下げ、二人は結婚を前提に同棲することになりました。美津子は丸山に手紙を送り、拘置所へ面会に行きますが、被害者と加害者が直接面会することは不可能でした。しかし後日、丸山から丁寧な手紙が送られてきます。そこには事件を起こしたことへの後悔や被害者への謝罪が綴られていました。美津子は丸山と文通を始めます。
生きてみたいもう一度 新宿バス放火事件の結末
杉原の抱える借金は、もはや返済不可能なほどに膨らんでいました。死ぬ覚悟を決めた杉原は美津子を連れて、雪深い北陸の温泉地へとやってきます。夜、杉原は舌を噛みちぎって死のうとしますが、美津子は杉原を抱きしめ、必死に自殺を思いとどまらせようとします。
美津子と杉原は斉藤に助けを借りて、破産申請の申し立てをしました。裁判所の判断が下るまでの間二人は各地を転々とする生活を余儀なくされます。母は美津子を心配し、家へ戻って来てはどうかと提案しますが、美津子は杉原と運命を共にする覚悟を決めていました。母は手作りの弁当の差し入れと十万円を持たせて、二度も無くしかけた命なのだから大切にしなさいと美津子を激励しました。
杉原と美津子がようやく都内の小さなアパートで新しい生活を始めたころ、死刑を求刑されていた丸山に無期懲役の判決が下ります。事件当時心神耗弱状態にあったことが認められたのです。美津子は丸山へ宛てた手紙に、一人の人間として生き抜いて欲しいと綴るのでした。
以上、映画「生きてみたいもう一度 新宿バス放火事件」のあらすじと結末でした。
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