インランド・エンパイアの紹介:2006年アメリカ,ポーランド,フランス映画。鬼才デヴィッド・リンチ監督が贈る、現実と演技の世界の区別がつかなくなった女優の混乱する姿を描くミステリー・ドラマです。ハリウッドでとある映画の主役を射止めた女優でしたが、この映画は出演者が謎の死を遂げたといういわくつきの映画のリメイクであり、やがて女優の周りで続々と不可解な出来事が起こるようになっていきます…。
監督:デヴィッド・リンチ 出演者:ローラ・ダーン(ニッキー・グレイス/スーザン・スー・ブルー)、ジェレミー・アイアンズ(キングスリー・スチュワート)、ジャスティン・セロー(デヴォン・バーク/ビリー・サイド)、ハリー・ディーン・スタントン(フレディ・ハワード)、ダイアン・ラッド(マリリン・レヴェンス)、ジュリア・オーモンド(ドリス・サイド)、ナオミ・ワッツ(スージー・ラビット)、裕木奈江(ホームレスの女)、デヴィッド・リンチ(バッキー・J)ほか
映画「インランド・エンパイア」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「インランド・エンパイア」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
インランド・エンパイアの予告編 動画
映画「インランド・エンパイア」解説
この解説記事には映画「インランド・エンパイア」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
インランドエンパイアのネタバレあらすじ:起
とある薄暗いホテルの一室で蓄音機が鳴り響いていました。やがてこの部屋に一人の娼婦が入りました。娼婦の顔はぼやけていて確認できません。娼婦は客から促されるまま服を脱ぎ始め、「ここはどこなの、怖い」と呟きました。
とある部屋では、ポーランド人の少女(カロリーナ・グルシュカ)がテレビを見ながら涙を流していました。テレビの画面には3人のウサギ人間、ジェーン(声:ローラ・ハリング)、ジャック(声:スコット・コフィー)、スージー(声:ナオミ・ワッツ)の姿が写り、彼らは意味不明な会話をしていました。
ある豪華な一室では、ファントム(クシシュトフ・マイフシャク)という男が仲間のジャネク(ヤン・ヘンツ)と語り合っていました。ジャネクから探しものかと尋ねられたファントムは、その通りであり、この意味が分かっているのかと問いかけました。ジャネクは分かっていると答え、ファントムは安心しました―――。
―――女優のニッキー・グレイス(ローラ・ダーン)は夫のピオトレック(ピーター・J・ルーカス)と共にハリウッドに豪邸を構えていました。しかし、ここのところニッキーの人気にも陰りが見え始めていました。そんなある日、ニッキー邸に近所に越してきたばかりの婦人(グレイス・ザブリスキー)が挨拶に訪れました。
婦人はどこからかニッキーが新しい役を得たという情報を仕入れており、その物語の内容を語り出しました。小さな男の子が悪魔の化身を作り出し、ある女の子が宮殿を見つけ、そして殺人事件が起こる―――。
そんな話など聞きたくないニッキーは婦人を追い返そうとしましたが、婦人は「行動には必ず結果が伴う」「それでも魔法は起こる」なとと取り留めもない話をした後にソファーを指さし、もし今日が明日ならニッキーはこのソファーに座っていると告げました。
その後、自宅に友人たちを招いていたニッキーは執事のヘンリー(イアン・アバークロンビー)にエージェントから電話がかかってきたことを知らされ、正式に新作映画「暗い明日の空の上で」への出演オファーをもらいました。ニッキーはこの映画に再起をかけようと意気込みました。
インランドエンパイアのネタバレあらすじ:承
ニッキーは監督のキングスリー・スチュワート(ジェレミー・アイアンズ)と会い、この作品は絶対に成功すると声をかけられました。ニッキーに与えられた役はヒロインの“スーザン・“スー”・ブルー”、長年タッグを組んできた俳優のデヴォン・バーク(ジャスティン・セロー)がスーザンと不倫関係に陥る相手役の“ビリー・サイド”を演じることが決まりました。
ニッキーとデヴォンは映画の宣伝を兼ねてテレビのトークショーに出演しました。二人は司会者のマリリン・レヴェンス(ダイアン・ラッド)から、今回の共演をきっかけに交際に発展するのではと訊かれました。出演終了後、デヴォンはマネージャーから、夫が街の有力者であるニッキーには手を出すなと忠告されました。
ニッキーとデヴォンはキングスリーやプロデューサーのフレディ・ハワード(ハリー・ディーン・スタントン)と共にスタジオ入りし、リハーサルを開始しました。に現れたキングスリーは、待っていたニッキーとデヴォンと共にリハーサルを始める。その時、スタジオのセットに謎の人影が現れ、デヴォンが様子を見ようとしたところ人影は姿を消しました。
その後、完全新作と思われていた「暗い明日の空の上で」は、未完成の映画「47」のリメイクであることが判明しました。ポーランドのジプシーの民話を基にしたという「47」は撮影中に主役二人が謎の怪死を遂げ、そのまま製作が打ち切られた曰くつきの映画でした。製作会社はこのことを製作陣に伝えぬまま今回のリメイクを決定、これが最初からリメイクとわかっていたら出演しなかったというニッキーとデヴォンも今さら中止にはできないとして出演を続行することにしました―――。
―――ビリーの妻ドリス(ジュリア・オーモンド)は警察署で取り調べを受けていました。ドリスはこれから自分は人を殺すと告げると、自分の脇腹に突き刺さったドライバーを見せました―――。
―――撮影は順調に進み、ニッキーは“スーザン”を、デヴォンは“ビリー”を熱演しました。しかし、撮影が進むにつれ、ニッキーは現実と映画の世界との見境がつかなくなっていきました。映画内のスーザンとビリーは愛し合っているところをスーザンの夫スミシー(ピーター・J・ルーカス)に目撃されてしまうという役どころでしたが、役柄を引きずってしまったニッキーとデヴォンは現実でも愛し合ってしまいました。その際、ニッキーはデヴォンに、昨日撮ったシーンは明日のシーンだと意味深な言葉をつぶやきました。
インランドエンパイアのネタバレあらすじ:転
翌日。街に繰り出したニッキーは裏路地に車を止めて買い物をしました。車に戻ったニッキーは、とある建物のドアに謎めいた文字が書かれているのを目にし、文字に誘われるがままにドアの中へと入っていきました。
そこは何と撮影を始める前の光景そのものであり、ニッキーの目の前で自分とデヴォン、キングスリーが打ち合わせをしていました。先日のリハーサル時に現れた謎の人影はニッキー自身だったのです。デヴォンが様子を見に来たので逃げ出したニッキーは、別の部屋にいた“ビリー”に声をかけましたが、なぜか“ビリー”は彼女に気付かない様子でした。
別の薄暗い部屋に入り込んだニッキーは、そこにいた9人の女性から話しかけられました。ニッキーは腕時計をしてシルクに煙草で穴を開け、穴の中を覗くよう指示されました。ニッキーは女性たち一人ひとりの辿ってきた運命を体験させられました。ある女性は少女時代に自分をレイプしようとした男を痛めつけ、またある女性は恋人に浮気を疑われて襲われそうになり、ある女性はドライバーで男を刺し…ニッキーはもはや本当の自分を失いつつありました。
ニッキーはもはや自分がニッキーなのか、それともスーザンなのか見境がつかなくなっていました。ニッキーはスーザンとしてビリーの家に行き、ドリスにビリーとの関係を白状して殴られました。その後もニッキーは次々と不思議な体験に遭遇し、様々な世界が交錯していく様を目の当たりにしていきました。
ある時はスミシーが訪れてきたサーカス団の動物の世話をすると言い出したり、またある時はサーカス団から逃げ出したファントムが失踪した少女と会ったり、今度はあのウサギ人間が現れたり…時系列すらも定まらぬ世界をニッキー(スーザン)は行き来していました。
何とかトラブルから抜け出したスーザンは、傷だらけのまま夜のハリウッドの大通りを歩きました。やがてスーザンはあのドアに書かれていた謎の文字を目にすると、あの9人の女の姿がありました。スーザンは鬼のような形相で迫ってくる女たちから逃げ出し、やがて小さなクラブへと逃げ込みました。
インランドエンパイアの結末
スーザンは劇場にいた男にことの顛末を話し、助けを求めました。その時、男に電話がかかり、誰かが自分の元に近づいていることを察したスーザンはその場から逃げ出しました。しかし、スーザンはあの9人の女たちに捕まってしまい、その中にいたドリスにドライバーで腹部を刺されてしまいました。
ドリスや女たちは早々に逃げ去り、腹に刺さったドライバーを引き抜いたスーザンは激痛に耐えながら歩き始めました。しかし、スーザンは力尽いて倒れ、近くにいたホームレス(テリー・クルーズ、裕木奈江)になぜかバスでポモーナというところまで行くよう勧められました。立ち上がろうとして倒れたスーザンは、その場にいた見知らぬ女性に看取られて息を引き取りました―――。
―――スタジオに「カット!」の声が響き、スーザンを演じ切ったニッキーはふらふらと立ち上がりました。どうやらニッキーはまだスーザンの役から抜けきっていない様子でした。スタジオを出たニッキーはそのままとある劇場に辿り着くと、そこのスクリーンでは先程まで撮影していた映像の後に自分が男(ファントム)と話している様子が映し出されていました。
ニッキーはファントムの姿を劇場内で見つけると後を追いかけ、奥の部屋の引き出しにあった拳銃を手にしました。そしてニッキーは「47」という番号の部屋でファントムと対峙し、拳銃でファントムに向けて発砲しました。ファントムの顔は次第に亡霊のような形相へと変化していきました。
「47」の部屋にはあのウサギ人間たちがいましたが、ニッキーが部屋に入った時には姿を消していました。ニッキーは失踪していた少女を見つけ、キスをして部屋を後にしました。その後、少女は息子を連れたスミシーと再会を果たし、抱き合いました。自宅に戻ったニッキーは、ただソファーに座っている自分を見つめていました。
以上、映画「インランド・エンパイア」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する