JSAの紹介:2000年韓国映画。韓国と北朝鮮の境界の板門店に設けられた、韓国軍と北朝鮮人民軍が共同で警備に当たるJSA(共同警備区域)を舞台に、ふとしたことから奇妙な友情を育む事になった南北の兵士の姿を描いたフィクションドラマです。
監督:パク・チャヌク 出演者:イ・ビョンホン(イ・スヒョク)、イ・ヨンエ(ソフィー・チャン)、ソン・ガンホ(オ・ギョンピル)、シン・ハギュン(チョン・ウジン)、キム・テウ(ナム・ソンシク)ほか
映画「JSA」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「JSA」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「JSA」解説
この解説記事には映画「JSA」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
JSAのネタバレあらすじ:起・事件発生
10月28日午前2時16分。
韓国と北朝鮮の境界にある板門店に設けられた、韓国軍と北朝鮮人民軍のJSA(共同警備区域)の北朝鮮側詰所で、警備を担当していた朝鮮人民軍の将校と兵士チョン・ウジン(シン・ハギュン)が韓国軍兵士により射殺される事件が発生しました。
10月31日、事態を重く見た韓国と北朝鮮の同意を得た中立国監視委員会は事件の真相解明に乗り出し、スイス軍法務科将校の韓国系スイス人、ソフィー・チャン少佐(イ・ヨンエ)に捜査を依頼しました。ソフィーはまず事件の容疑者とされる韓国軍兵士のイ・スヒョク(イ・ビョンホン)に面会しますが、スヒョクは事件のショックからか何も語ろうとはしませんでした。ソフィーはスヒョクの捜査記録から、事件の当日スヒョクは詰所付近で用を足していたところ、突如として北朝鮮人民軍に拉致されてしまい、脱出の際に銃撃戦になったという記述を見つけました。スヒョクはその後、境界線で倒れているところを韓国軍に保護されたということでした。スヒョクと共に勤務していた韓国軍兵士ナム・ソンシク(キム・テウ)も同様の証言をしていました。
JSAのネタバレあらすじ:承・証言の食い違い
続いてソフィーは、銃撃戦で負傷したという北朝鮮人民軍の兵士オ・ギョンピル(ソン・ガンホ)を訪ねました。ギョンピルの証言によると、スヒョクは拉致されたのではなく、自ら北朝鮮詰所に出向いて発砲してきたというのです。両者の証言の食い違いにソフィーは困惑の表情を浮かべました。
その後、被害者の検死の結果、二名とも1回撃たれた後で更に追い打ちをかけるように銃弾を浴びせられたことが判明しました。更に調べを進めると、遺体および現場の銃痕と発砲された銃弾の数が一発合わず、スヒョクが使っていた銃の残弾と合わせてもどうしても数が合わず、1発だけが行方不明になっていることが判明しました。やがて事件当日になぜかスヒョクとソンシクの銃が入れ替わっており、ソンシクの銃からは北朝鮮兵士の血痕が発見されました。このことにより、ソンシクも容疑者のひとりとして挙げられましたが、ソンシクは取調べ中に窓から飛び降り自殺を図り、意識不明の重体に陥ってしまいました。
JSAのネタバレあらすじ:転・事件の背景
物語は事件の前にさかのぼります。
ヨーロッパからの観光客の一団が板門店(韓国側)を訪れた時のこと、旅行者のひとりの帽子が風に乗って国境を越えてしまい、当時国境警備に就いていたギョンピルが帽子を拾い上げて旅行者に返しました。一方、韓国側で警備についていたスヒョクは旅行者が写真を撮ろうとするのを制していました。
その後、スヒョクは警備中に誤って北朝鮮側に入ってしまい、しかも地雷を踏んでしまいました。どうすることもできないスヒョクの前にたまたま通りかかったギョンピルとウジンが地雷を解除してスヒョクを助け、それがきっかけで三人は文通を始めるようになりました。しばらくして今度はスヒョクが密かに北朝鮮側の詰所を訪れ、すっかり意気投合した三人は密かに酒を飲み、互いの国の文化などについて語り合いました。スヒョクは人見知りがちなソンシクにも声をかけ、彼も交えた四人は互いの立場を超えた友情を築き上げていきました。
しかし、韓国と北朝鮮の関係は悪化していき、そして運命の10月28日、四人が集うのはこの日が最後と決め、ソンシクは絵の好きなウジンに絵の具をプレゼントしたのですが、その場にウジンらの上司が現れました・・・。
JSAの結末
時は現在に戻り、スヒョクとギョンピルは取調べで顔を合わせました。ソンシクが飛び降りた時のビデオを見せられたスヒョクは取り乱し、真実を打ち明けそうになりましたが、ギョンピルは敢えてわざとスヒョクを罵倒しました。
その後、ソフィーは自身の父が北朝鮮軍将校だったことを理由に上司から任務解除を言い渡されましたが、どうしても真相を知りたいソフィーはスヒョクに現場近くで発見したウジンのノートを見せ、再度の証言を求めました。ノートにはウジンが描いたスヒョクの恋人(ソンシクの妹)の絵があり、スヒョクはギョンピルの身の安全を保証することを条件にソフィーに真相を語り始めました。
事件当日、ウジンらの上司がその場に現れたことで四人は一触即発の事態に陥ってしまい、スヒョクは上司と銃を向け合いました。ギョンピルの必死のとりなしでその場は何とか丸く収まろうとしましたが、その時上司は無線機を取ろうとポケットに手を入れ、銃を出すのだと勘違いしたスヒョクは上司を撃ち、止めに入ろうとしたウジンをも誤って撃ってしまい、動揺したソンシクは何度もウジンに銃弾を浴びせてしまいました。ギョンピルはかねてからパワハラを受けてきた上司にとどめを刺し、証拠隠滅と偽装工作としてわざとスヒョクに自分の肩を撃たせたうえで逃がしました。行方不明になった銃弾1発はスヒョクがウジンを撃った際に貫通してカセットデッキに当たったのであり、ギョンピルはそれを川に投げ捨てたのです。
ソフィーはギョンピルから預かったライターをスヒョクに渡しに行き、その際にうっかりギョンピルの証言内容を伝えてしまいます。取り返しのつかないことをしてしまったと深く悔いるスヒョクは密かに引率していた兵士の拳銃を奪い、自ら命を絶ちました。
映画のラスト、友情を組む前の四人が板門店で初めて出会った時の写真が映し出されました。
現代の国家をテーマにしてドラマを作れる国はそう多くない。
作ったとしても、その多くは、イデオロギーの誇示やただの告発ものだ
この韓国映画「JSA」は、現実に起こった、あるいは起こり得る出来事を描きながら、それを韓国外の観客にも共感を持たせるドラマとしての普遍性を生み出している。
国内的には、この映画は、南北朝鮮への意識の今日的変化を表現しているとともに、この映画を通常みることができるのは、今のところ北の人々ではないから、南の人々の意識を変える力をもっているだろう。
南北を合一させたいという、強い感情に貫かれた内容だが、それを国家理由や社会的要請としてではなく、個々の登場人物の願望と具体的な行為の中で描くことによって、多くの共感を呼べるようになっていると思う。
冒頭に梟の顔の大写しが出、それから飛び立ち、夕空に浮かぶ大きな月の一点となる。
そして雨が降り出し、タイトルが映る。
これは、「ミネルバの梟は、夕闇せまって飛び立つ」というへーゲルの言葉を示唆するのだろうか?
板門店の事件は、南側の主張によれば、北側の兵士が南に侵入し、兵士を北側に拉致したが、銃激戦の後、脱出したということであり、北側の主張では、南側の兵士が奇襲攻撃をかけてきたという。
この問題は、スイスとスウェーデンによる中立国監督委員会に委ねられ、スイス軍の将校ソフィー・チャン(イ・ヨンエ)が、板門店にやって来て、関係者に会っていく。
彼女は、南北分離の際に、北でもなく南でもなく、第3国を選んだ両親をもち、スイスに住んでいた。
ソフィーの調査を再現するスタイルで、映画は、その夜の事件にいたるJSAで起こった出来事を見せていく。
基本は、敵同士に分断されている朝鮮人の間に、このままでは、北も南も共に滅びるという意識が、日常的なレベルで芽生え始めているということであり、硬直した制度の枠が、既に踏み越えられているということだ。
制度の中で生まれる、制度を越える友情。切り離された文化とそれを越えて進む相互理解。
ひょっとしたら、南側の亡命誘致作戦かもしれないという疑心暗鬼。
ふとしたことから、「南に亡命しないか、南へ来ればこういう、うまいハンバーガも食えるじゃないか」と言ってしまった時、ソン・ガンホが言う台詞「俺たちは、北でうまいハンバーガーを食べられるように頑張っているんだ」。
この映画では、北の兵士を「人間的」に魅力のある人物として描いているような気がする。
「シュリ」では、まだ屈折を見せるにとどまっていましたが。