怪談の紹介:1965年日本映画。当時としては破格の製作費と豪華キャストを費やし、小泉八雲の著書『怪談』に収録されている4つのエピソードをオムニバス形式で映画化したホラー映画です。カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞しています。
監督:小林正樹 出演者:『黒髪』:三国連太郎(武士)、新珠三千代(妻)、渡辺美佐子(第二の妻)、石山健二郎(父)、赤木蘭子(母)ほか 『雪女』:仲代達矢(巳之吉)、岸惠子(お雪/雪女)、望月優子(巳之吉の母)、浜田寅彦(船頭)、浜村純(茂作)ほか 『耳無芳一の話』:中村賀津雄(耳無芳一)、丹波哲郎(甲冑の武士)、志村喬(住職)、田中邦衛(矢作)、花沢徳衛(松造)ほか 『茶碗の中』:三代目中村翫右衛門(関内)、滝沢修(作者)、杉村春子(おかみさん)、二代目中村鴈治郎(出版元)、仲谷昇(式部平内)ほか
映画「怪談」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「怪談」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「怪談」解説
この解説記事には映画「怪談」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
怪談のネタバレあらすじ『黒髪』
遠い昔。京都のはずれにある屋敷。若い武士(三国連太郎)は優しく献身的な妻(新珠三千代)とこの屋敷で暮らしていましたが、仕えていた主君が落ちぶれたため貧しい暮らしを強いられていました。貧しさに耐えかねた武士は新たな主君に仕えるため、妻を捨てて遠い土地へ旅立っていきました。武士はその土地で裕福な家の娘(渡辺美佐子)と再婚しましたが、新しい妻は非常にわがままで冷酷な女であり、武士はいつも京都に残してきた前妻のことを思い出しては自分の身勝手さを後悔し反省する日々を過ごしていました。やがて任期を終えた武士は第二の妻と離縁し、前妻と寄りを戻すため元の屋敷に戻りました。すっかり朽ち果てた屋敷では妻が機織りをしており、武士はこれまでの仕打ちを詫び、一夜を共にするのですが、その翌朝、妻は朽ち果てて変わり果てた屍となっていました。実は妻は武士が去った直後に哀しみのあまりこの世を去っていたのです。驚愕した武士は逃げようとしましたが、妻の屍から伸びる長い黒髪はどこまでも武士を追いかけ、やがて武士は妻の呪いにかかり朽ち果てて死んでいきました。
怪談のネタバレあらすじ『雪女』
ある冬の日。武蔵の国の小さな村に住む二人の木こり、年老いた茂作(浜村純)と若い巳之吉(仲代達矢)は森へ薪を取りに出発しましたが、途中で吹雪に遭って帰れなくなり、ひとまず近くの山小屋で休むことにしました。その夜、山小屋で眠る二人の前に白い着物の黒髪の雪女(岸惠子)が現れました。雪女は茂作に白い息を吐いて凍死させ、巳之吉をも凍死させようとしましたが、まだ若い巳之吉を殺すには忍びないと思った雪女は「今夜見たことを誰にも話すな。もし話したら命はないと思え」と告げると吹雪の中に消えていきました。それから月日が流れ、森へ薪を取りに行った巳之吉は、白雪のように美しいお雪(岸惠子(二役))という女性と出逢って恋に落ち、二人は結婚して三人の子宝に恵まれました。お雪は働き者で、いくら年月を重ねても決して老いることはありませんでした。ある吹雪の夜、子供たちを寝かせた後で巳之吉はお雪に数年前に出会った雪女のことを語り出しました。突然立ち上がったお雪は自分こそがその雪女であると明かしたうえで、他の者に自分のことを話したら殺したものの、子供たちを見ると巳之吉を殺すことはできないと言い、子供たちの面倒を見るよう託すと吹雪の中に消えていきました。その日以来、誰も雪女の姿を見たものはありませんでした。
怪談のネタバレあらすじ『耳無芳一の話』
源氏と平家の最終決戦“壇ノ浦の戦い”から約700年後。盲目の琵琶法師、芳一(中村賀津雄)は「平家物語」の弾き語りを生業としていました。ある夜、壇ノ浦の近くにある寺で留守番をしていた芳一は、寺を訪れた甲冑姿の武士(丹波哲郎)に誘われるがままにとある屋敷へ導かれ、そこで芳一は「平家物語」の“壇ノ浦の合戦”のところを琵琶で弾き語りしました。それから毎夜になると芳一は武士に出迎えられて琵琶を引かされ、芳一の身体は日を追うごとに痩せ衰えていきました。そんな芳一を心配した寺の住職(志村喬)は、寺男の矢作(田中邦衛)と松造(花沢徳衛)に芳一の後をつけさせたところ、芳一は平家の戦死者が眠る墓場で怨霊たちを前に弾き語りをしていました。住職は平家の怨霊に取り憑かれてしまった芳一の身体中に般若心経を書きつけ、怨霊の目を欺こうとしましたが、住職は芳一の耳にだけ経文を書くのを忘れてしまっていました。やがて芳一の元に現れた怨霊は何度も彼を呼ぶも返事はなく、空中に浮かんでいた芳一の耳を引きちぎって持ち帰っていきました。両耳を失った芳一はその後“耳無芳一”と呼ばれ、その名声は遠方にまで轟いたといわれています。
怪談のネタバレあらすじ『茶碗の中』
中川佐渡守の一行は年始回りの途中でとある茶屋に立ち寄りました。家臣のひとりである関内(三代目中村翫右衛門)は喉の渇きを潤そうと茶碗に水を汲んで飲もうとしましたが、茶碗の水には何やら見知らぬ男の顔が映っていました。不気味に思った関内は何度も水を入れ替えたり、茶碗を取り替えたりしても、やはり同じように謎の男の顔が映り込んでいました。不敵な笑みを浮かべる男の姿に苛立った関内は、思い切ってその水を一気に飲み干しました。その夜、城内で当直をしている関内のもとに、あの茶碗に映り込んでいた男そっくりの式部平内(仲谷昇)という一人の若い武士が現れました。関内は「狼藉者!」と叫びながら平内を斬りつけましたが、彼はスッと姿を消しました。翌日の夜、自宅に戻った関内の元に平内の家臣を名乗る三人の侍(佐藤慶・天本英世・玉川伊佐男)が訪れ、主人は関内に斬られて療養中であり、来月16日に必ず恨みを果たしに来ると告げました。関内は槍を手に取り、三人に斬りかかりましたが彼らは消えては現れ、また消えては現れと関内を翻弄し続けるのでした…。
1899年、この「茶碗の中」を執筆中の作家(滝沢修)の自宅を版元(二代目中村鴈治郎)が訪ねてきました。応対したおかみさん(杉村春子)は、ついさっきまでいたはずの作家を探しますがどこにもいませんでした。その時、おかみさんの絶叫を聞き付けた版元は慌てて駆け寄り、おかみさんが指差す水瓶の中を見てみると、水の中には何と作家が映っており、二人に対して手招きをしていました。作者の机には「人の魂を飲んだ者の末路は…」と記された、書きかけの原稿が置かれていました。
小泉八雲の怪談を映画化した作品です。とても美しくて幻想的な映画。まさに芸術と言える作品ではないでしょうか。独特の怪しくて怖い世界にくぎ付けになってしまいました。雪女に魅入られた男のように、まるで、夢物語を見ているようなそんな気持ちにさせてくれます。怖いのにどこか心地よくてスーッと惹きこまれてしまう。わーとかキャーとかいう怖さではなくて、しんみりしみじみ怖くて、いつまでもその怖さが心の中にいる、そんな怖さです。この極めて日本的な作品を外国人の小泉八雲が書いたというのは本当に驚きです。お金はかかりそうだけど、舞台化してほしいな。