イヴ・サンローランの紹介:2010年フランス映画。2002年引退、2008年没の世界的デザイナー、イヴ・サン=ローランと、イヴ・サンローランのパートナー、ピエール・ベルジェ。最期を看取ったピエールの語りに、天才デザイナーの孤独と苦難の日々そして幸福を垣間見る。ファッション界での大きな実績や、カトリーヌ・ドヌーヴなどセレブリティとの華麗な交際の陰には、半世紀もの歳月を共にしたパートナーのみが知る一面があった。そんなイヴ・サン=ローランの素顔やキャリアを貴重な映像資料と共にひも解いていくドキュメンタリー映画。
監督:ピエール・トレトン 出演:イヴ・サン=ローラン(アーカイヴ映像・写真)、ピエール・ベルジェ、ほか
映画「イヴ・サンローラン(2010年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「イヴ・サンローラン(2010年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
イヴ・サンローランの予告編 動画
映画「イヴ・サンローラン(2010年)」解説
この解説記事には映画「イヴ・サンローラン(2010年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
イヴ・サンローランのネタバレあらすじ:起・ファッションの寵児
18歳でディオールのアシスタントとなり、21歳でそれを引き継ぎ、44年もの間婦人服を作り続け、自ら引退したイヴ・サンローランが亡くなった。葬儀ではフランス大統領など各界の著名人がその死を悼んだ。
イヴ・サンローランの生涯のパートナー、ピエール・ベルジェは、彼の死後、二人で集めた美術品を競売にかける事にした。ピエールはその美術品が新しく生を受ける場所を見つけて欲しいと願っていた。
二人はディオールの葬儀で初めて出会った。オートクチュールは死ぬと言われたディオールの死後、弟子のイヴは20歳でメゾンの継続を担い、行われた最初のコレクションで成功を納めた。その後の夕食会で再び顔を合わせた二人は恋に落ち、一か月後には一緒に住み始めた。
しかしアルジェリア戦争に徴兵されたイヴが非適合者として収容されると、ディオールは彼を解雇した。そこで天職を続けるためにピエールと新しいメゾンを作ることにした。この時イヴは既にファッション界では名が知られていたものの独立にはリスクが伴う中、一人のアメリカ人投資家を見つけ、無事にモンテーニュ通りに開店、最初のコレクションを成功させ、イヴは一歩を踏み出した。
イヴ・サンローランのネタバレあらすじ:承・旅と美術品
少しずつビジネスが軌道に乗り始めた頃、モンドリアンの絵をモチーフにしたワンピースを発表した頃、二人はバビロン通りの書斎を兼ねたアパルトマンに移った。そこからゆっくりと美術品の収集が始まる。そのほとんどは偶然の出会いや一目惚れで集められた。
また。コレクション後の休暇でマラケシュを二人で訪れた際、ホテルから見えた素晴らしい景色にほれ込み、ダル・エル・ハンというアラビア風の家をマラケシュで買った。楽しい思い出の詰まったこの家で、サンローランはアフリカ風の服を多数デザインした。
この家には彼らの友人も多く訪れ。中でもベティ・カトルーとルル・ド・ラ・ファレーズは、イヴへの愛とピエールへの尊敬で結ばれた二人の絆を賞賛した。
60年代末、五月革命の起きた年、イヴは「オートクチュールは死んだ」と言った。彼はその数年前から、未来のために状況を変えようと、他のメゾンは行っていなかったプレタポルテを始めていた。並行してオートクチュールも守っていたが、彼は自分の手腕に溺れることはなかった。
イヴ・サンローランのネタバレあらすじ:転・プレッシャーの果て
70年代半ば、『二人の幸せ』という家を買った頃、夜になるとバーやクラブへ出掛けるようになったイヴは、アルコールとドラッグに逃げ道を見つけた。それは彼のプレッシャーからすれば予測できたことだった。その時期に発表されたオペラ・コレクションやバレエ・リュス・コレクションは狂気の中のイヴによって作られた。そんなイヴを、ピエールは絶望しつつも見捨てなかった。また同じ頃に発売されたサンローランの香水『オピウム』は、アヘンを連想させると言って中国人街の人々から批判された。
イヴは夜に帰ってこないことも度々あり、ピエールは荷物をまとめてホテルに滞在することがあった。しかしイヴと別れることはできず、彼の住む部屋の近くのホテルにとどまることにした。
80年代に入ると、ノルマンディに田舎風の家を買うと、イヴは8月はそこに籠り、仕事と昼寝をして過ごした。ピエールは、この静かな家で過ごせばイヴは再出発できると信じていた。
イヴ・サンローランの結末:引き継がれていく二人の姿
ミッテランが大統領に選ばれ、ピエールは政治の世界に居場所を見つけた。イヴは政治には無関心だったがミッテランとピエールの関係を喜んでいた。さらにピエールはエイズ撲滅運動組織の会長にもなった。イヴ・サンローランとピエール・ベルジェの絆は若者たちの希望となり、ゲイの権利やエイズ撲滅運動が一気に進んだ。
しかし、イヴの神経症は手の施しようが無く、メディアから姿を消し、誰とも会わず、ショーは行うものの、彼にとって喝采や名声は苦痛だった。
90年にイヴはアルコールとドラッグの依存を克服する治療を受け仕事に集中した。そして、商売の方面に完全に変わってしまったファッション業界から引退することを決めた。
二人が過ごした家から運び出された美術品は、NY、ロンドン、パリで競売にかけられ、ピエールはディーラーたちの手に渡っていくのを最後まで見届けた。
以上、映画「イヴ・サンローラン」のあらすじと結末でした。
イヴ・サンローランのレビュー・考察:二人の思い出
イヴの思い出を語るピエールと平行して、二人が集めた美術品は着々と鑑定、梱包、輸送され、競売にかけられていく。もちろんその品々には一つ一つ思い出があるだろう。けれど、パートナーのイヴを看取ったピエールは、その思い出に囲まれた余生を過ごすより、それらが誰の手に渡るのかを見届けていた。それは、次の世代に、二人のが共に過ごした時間の象徴が受け継がれていくのを見守っているように見えた。
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