タイトル、拒絶の紹介:2019年日本映画。ワタシの人生に、タイトルなんで必要なんでしょうか――? 劇団「□字ック」主宰でドラマ「全裸監督」の脚本を手掛けた山田佳奈が2013年に初演した同名舞台を自ら監督・脚本を務めて映画化した群像劇です。様々な事情を抱えたセックスワーカーの女性たちが力強く生きようとする様を、彼女たちの世話係をする主人公の女性の視点から描きます。
監督:山田佳奈 出演者:伊藤沙莉(カノウ)、恒松祐里(マヒル)、佐津川愛美(アツコ)、片岡礼子(シホ)、森田想(キョウコ)、円井わん(カナ)、行平あい佳(チカ)、野崎智子(リユ)、大川原歩(ヤヨイ)、モトーラ世理奈(和代)、池田大(ハギオ)、田中俊介(良太)、般若(山下)、でんでん(設楽)ほか
映画「タイトル、拒絶」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「タイトル、拒絶」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
タイトル、拒絶の予告編 動画
映画「タイトル、拒絶」解説
この解説記事には映画「タイトル、拒絶」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
タイトル、拒絶のネタバレあらすじ:起
上半身は黒い下着、下半身はリクルートスーツ姿といういで立ちの女性・カノウ(伊藤沙莉)は、悪質なポン引きを禁止する看板の前で「私の人生なんて、クソみたいなもんだと思うんですよね」と毒づいていました。
そんなカノウはなかなか仕事にありつけず、デリヘル(デリバリーヘリス)嬢になろうとして、とある雑居ビルにある風俗店「クレイジーバニー」に体験入店したカノウでしたが、これから仕事だというところで怖気づいて部屋から逃げ出してしまいました。
カノウは「クレイジーバニー」に雇われることとなりましたが、彼女の役目はデリヘル嬢ではなく、彼女らの世話係でした。設楽(でんでん)がオーナーを、厳しい山下(般若)が店長を務め、未だにバブルの残り香が漂うこの事務所で、カノウはアツコ(佐津川愛美)やキョウコ(森田想)、チカ(行平あい佳)らといった若いデリヘル嬢の面倒を見ていました。
デリヘル嬢たちは事務所で煙草や香水などの臭いを漂わせては客の文句ばかりこぼし、年上のシホ(片岡礼子)は一歩離れたところで彼女たちを見守っていました。キョウコはスタッフで運転手の良太(田中俊介)に惚れていましたが、良太はデリヘル嬢と本気で恋愛する気などありませんでした。カノウはそんな彼女たちの応対に追われていました。
タイトル、拒絶のネタバレあらすじ:承
そんな時、この店でNo.1の人気と美貌を誇るマヒル(恒松祐里)がひと仕事終えて帰ってきました。たちまちこの場の空気を一変させ、いつも楽しそうにしているマヒルを見て、カノウは自分が小学生の時にクラスで演じていた芝居「カチカチ山」を思い出し、自分が演じていた誰も目もくれないタヌキとは違って、マヒルは可愛らしく人気のあるウサギだと比較していました。
そんなマヒルはよく街の清掃員を見つけては動画に撮り、いつか金を貯めて用務員や清掃員を雇って暮らすと、冗談半分に言っていました。いつも明るく振る舞うマヒルでしたが、彼女には人に言えない事情がありました。時折マヒルに会いにきては金をせびる妹・和代(モトーラ世理奈)の存在でした。
マヒルと和代は母の恋人から虐待を受けており、マヒルのように世渡り上手ではない和代は結局暴力的な男と交際したあげくに、離れられないまま妊娠させられていました。マヒルもまた金のためにデリヘル嬢として働く一方、家族が平穏になるならばとの思いで母の恋人と肉体関係を持っていました。和代はそんなマヒルのことを気持ち悪いとさえ思っていました。
タイトル、拒絶のネタバレあらすじ:転
そんなある日、「クレイジーバニー」に若くてスタイルの良い新入りのデリヘル嬢が入ってきました。このことをきっかけに、「クレイジーバニー」の面々の人間関係に少しずつ変化が生じていきました。
未だに店のNo.1であり続けるマヒルは山下とも関係を持ち、ゴミ清掃員の写真を撮り、金を稼ぎ続けていました。山下はそんなマヒルに対しても文句を言い続け、マヒルも和代と話しながら、東京なんて燃えてしまったらいいと冗談なのか本心なのかわからない言葉を吐いていました。
客の文句を言ったり同僚に喧嘩腰だったりと問題児であるアツコは、とうとう山下から店に出ないよう圧力をかけられ、自暴自棄に陥っていました。アツコは新入りからも、こんな店で働いている時点で社会の底辺であり、その中で上に立とうなどバカらしいと吐き捨てられてしまいました。
そんなデリヘル嬢のやりとりを見守っていたカノウは、マヒルから彼女が内に秘めていたことを聞かされ、これまで“ウサギ”だと思っていたマヒルが実は沢山の人々の“ゴミ溜め”にされていると感じていたことに動揺を覚えました。
一方、山下に罵倒される良太も、変わらず自分に好意を寄せているキョウコを突き放しつつも、彼女の愛情に揺らいでいき、女に体を売って日銭を稼ぐ同じスタッフのハギオ(池田大)もこの商売への嫌悪感と虚しさを感じ取っていました。
タイトル、拒絶の結末
そんなある日、山下からも新入りからも侮辱され、溜まっていた怒りを爆発させたアツコが事務所に上がり込んで山下に謝罪を求めてきました。アツコをブス呼ばわりする山下に、カノウは彼女の気持ちを察して「好きで体を売っているわけない。好きでブスやっているわけがない」と代弁しましたが、彼女たちの悲痛な心の叫びは聞き入れられず、カノウは山下に殴られてしまいました。
アツコは持ってきた液体を撒き散らし、ライターで火を点けようとしましたが点かず、ライターを取り上げたマヒルはどこか乾いた笑いを見せました。
その数日後、事務所は何者かに放火されました。カノウはハギオと共に後片づけをし、その際にマヒルのことを好きかと尋ねてみました。ハギオは自らも体を売っていること、それに対する嫌悪感などをカノウに打ち明け、なぜ自分に話してきたのかと問うカノウに「だってカノウとはそういう感じにならなさそうじゃん」と語りました。
その言葉を聞いたカノウは、これまで溜まっていた感情を抑えきれず、ハギオが帰ったあとで一人涙に暮れていました。
以上、映画「タイトル、拒絶」のあらすじと結末でした。
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