息子の紹介:1991年日本映画。椎名誠の小説「倉庫作業員」を山田洋次監督が映画化したもので、一人暮らしの父親とフリータの息子との確執や和解を通じて、家族の在り方のひとつについて描かれた作品です。
監督:山田洋次 出演者:三國連太郎(浅野昭男)、永瀬正敏(浅野哲夫)、和久井映見(川島征子)、原田美枝子(浅野玲子)、田中隆三(浅野忠司)ほか
映画「息子」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「息子」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「息子」解説
この解説記事には映画「息子」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
息子のネタバレあらすじ:起
バブル経済真っ只中の時代。岩手の自然豊かな田舎に住む浅野昭男(三國連太郎)は妻を亡くし、子供たちも独立、今では農業をしながら一人暮らしをしています。長男の忠司(田中隆三)は東京でエリートサラリーマンとなり、長女のとし子(浅田美代子)も結婚して巣立ち、次男の哲夫(永瀬正敏)は数年前に岩手を飛び出して上京、職を転々とする不安定な生活を送っていました。ある夏の日、新宿の居酒屋でアルバイトをしている哲夫に昭男から電話がかかってきました。母の一周忌法要があるから帰って来いとのことです。法要の当日、哲夫はアロハシャツにジーンズといういで立ちで帰郷し、親戚中の顰蹙を買います。
息子のネタバレあらすじ:承
その夜、昭男の家には久々に家族が揃いました。忠司やその妻・玲子(原田美枝子)、とし子やその夫・徹(山口良一)は昭男の今後の生活や定職に就かない哲夫を心配していました。翌日、子供たちは家を後にし、哲夫だけが残りました。畑仕事を手伝いながらも、昭男から一人前の男としてちゃんと生きろと喝を入れられた哲夫は反発します。東京に戻った哲夫は居酒屋を辞め、新たに下町の鉄工場で働き始めます。最初のうちはきつい肉体労働に根を上げかけていましたが、現場のボス(いかりや長介)や運送業者のタキさん(田中邦衛)など個性豊かな面々に囲まれ、何とか仕事をこなしていきます。そして哲夫は、取引先の倉庫で働く征子(和久井映見)と出会い一目惚れ、征子に会いたい一心で仕事に打ち込み、かつてのようにすぐ辞めることなく長続きしていきます。
息子のネタバレあらすじ:転
しかし、中々哲夫と征子の関係は進展せず、哲夫は思い切って手紙に想いをしたため彼女に渡します。ある日、哲夫は征子の職場の先輩から、彼女が聴覚障害者であることを知らされます。哲夫は衝撃を受けますが、それでも彼女への想いは変わるどころか益々強くなっていきました。やがて冬が訪れ、昭男は戦友会に出席するために上京、忠司一家が住む東京近郊のマンションを訪れます。忠司夫妻は昭男のために部屋を用意しており、一緒に暮らそうと提案しますが昭男は丁重に断ります。
息子の結末
戦友会に出席した昭男は、岩手に帰る前に哲夫のアパートを訪れます。哲夫はアルバイトから契約社員に昇格しており、真面目に働いていました。安心した昭男に哲夫は征子を紹介し、彼女と結婚前提の交際をしていることを報告します。征子のために手話を覚えた哲夫の姿に昭男は心から喜びがこみ上げてきました。征子を見送った哲夫は、昭男が歌っているところを初めて聞きました。それは心の底から息子の結婚を喜ぶ父の想いが込められていました。昭男は哲夫や征子とやり取りするためのファクシミリを買い、岩手へと帰っていきました。
「息子」感想・レビュー
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冒頭に、「男はつらいよ」の車屋の三平ちゃん役の北山雅康さんが飲食店の店員の役で映っていましたね。
ラストですが、家族をもっている者にも、生涯独身の者のも、大体が持っている昔の家族の思い出、そして別れ、取る残される。まさに、仏教の諸行無常ですよね。
SNSはおろか、インターネットもなかった時代、息子の聾啞者の彼女との連絡用にFAXを買う。当時は普通の事ですが、今見るととても良い風情に映ります。
山田洋次監督が、高度経済成長期に沸く日本と、その犠牲になる自然環境や変わっていく人間同士の繋がりを鋭く描いた作品です。物語に登場するのは、日本の映画史に燦然と輝く名優ばかり。その中でも、青年の面影が残る永瀬正敏さんと、瑞々しい演技で障害のある女性を演じた和久井映見さんの二人の恋愛は、世の中がどんどん消費社会に変わっていく当時の日本と対照的に、決して変わらない普遍のテーマを描いていて胸に刺さります。名作ではないでしょうか。