新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君にの紹介:1997年日本映画。1995年に放映開始され、一大社会現象を巻き起こしたテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の旧劇場版第2作です。テレビ本編最終回および劇場版前作『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』(1997年)では描かれなかった結末を完全新規ストーリーの第25話・第26話として映像化。当初『エヴァンゲリオン』シリーズは本作をもって完結する予定でしたが、最終的に真の完結は10年後の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(2007年)から始まる新劇場版4部作に持ち越されることとなりました。
総監督・脚本・原作:庵野秀明 監督:庵野秀明、鶴巻和哉 声優:緒方恵美(碇シンジ)、宮村優子(惣流・アスカ・ラングレー)、林原めぐみ(綾波レイ/碇ユイ)、三石琴乃(葛城ミサト)、山口由里子(赤城リツコ)、立木文彦(碇ゲンドウ)、清川元夢(冬月コウゾウ)、石田彰(渚カヲル)ほか
映画「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」解説
この解説記事には映画「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君にのネタバレあらすじ:起
第25話「Air」
神奈川県箱根の第3新東京市。人類の敵である“使徒”は特務機関NERV(ネルフ)によって全て倒され、人類は平和を取り戻した、はずでした。汎用人型決戦兵器・人造人間エヴァンゲリオン初号機のパイロット、碇シンジ(緒方恵美)はすっかり心を閉ざしていました。
シンジは使徒による精神攻撃で心身喪失に陥ったエヴァ弐号機パイロットの惣流・アスカ・ラングレー(宮村優子)を見舞いました。「助けてよ…」とすがりつくシンジは、アスカが寝返りを打った際に裸身を曝け出してしまったことに欲情して自慰行為をしてしまい、直後に「最低だ、俺って…」と自己嫌悪に陥りました。
使徒が全滅してもなお、ネルフは厳戒態勢が敷かれたままでした。時を同じくして、ネルフを裏で操る秘密結社ゼーレは出来損ないの群体として既に行き詰った人類を“完全な単体の生物”として人工的に進化させる“人類補完計画”を着々と進めていました。ゼーレは“死”を伴う“人類補完計画”は神と一体化するための通過儀式に過ぎないと考えていましたが、シンジの父でネルフ最高司令官の碇ゲンドウ(立木文彦)は「死は何も生みませんよ」と否定しました。
翌日。ネルフの戦闘指揮官、葛城ミサト(三石琴乃)は15年前に未曾有の大災害を引き起こした“セカンドインパクト”の真意に迫ろうとしていました。その時、ネルフのスーパーコンピューター“MAGI(マギ)”に世界各国の同様のシステムからハッキングを試みる動きがありました。ゲンドウと副司令官の冬月コウゾウ(清川元夢)はこれがゼーレが仕組んだものだと悟っており、その目的はネルフが有するエヴァ2体および第1使徒“アダム”と第2使徒“リリス”にあると感づいていました。研究者・赤木リツコ(山口由里子)はMAGIの防御プログラムを起動させ、ハッキングを一時的に阻止することに成功しました。
ゼーレは次の手段としてネルフの直接占拠を決断、戦略自衛隊の特殊部隊や装甲車部隊などをネルフ本部に差し向けました。冬月は「最後の敵は、人間だったな」と呟き、ゲンドウはネルフ全員に戦闘配置を命じました。
戦略自衛隊は次々と警備員を殺し、ネルフ本部内に侵入を開始しました。ミサトは未だ意識のないアスカを弐号機に乗せて芦ノ湖底に隠すよう指示、続いて初号機を発進させようとしましたがシンジの居場所はわからないままでした。やがて戦略自衛隊は施設を破壊していき、ゲンドウは冬月に後を任せるとその場を後にしました。
冬月は「ユイくんによろしくな」と声をかけました。その後、ゲンドウはネフル本部の最深部セントラルドグマで所在不明だった零号機パイロット・綾波レイ(林原めぐみ)に会い、「約束の時だ。さあ行こう」と声をかけました。
その頃、人気のない場所で座り込んでいたシンジは戦略自衛隊の兵士に発見され、銃を突きつけられました。間一髪駆け付けたミサトは兵士たちを撃ち殺してシンジを救出、初号機に乗るよう命じましたが、未だにシンジは塞ぎ込んで座ったままでした。ミサトは「こんな時だけ女の子にすがって、逃げて、何甘ったれたこと言ってんのよ! あんたまだ生きてるんでしょう? だったらしっかり生きて!それから死になさい!」と怒鳴りつけました。
新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君にのネタバレあらすじ:承
ミサトはシンジにセカンドインパクト、そして人類の真実を語り始めました。セカンドインパクトは人間が仕組んだものであり、それは他の使徒が覚醒する前に“アダム”を卵の状態まで還元させて被害を最小限に食い止めようとした結果でした。そして人類は“リリス”から生まれた“第18使徒”なのです。ゼーレの狙いはエヴァを使ってサードインパクトを引き起こすことにあり、ミサトは生き残るためには全てのエヴァを倒すしかないとシンジを諭しました。
その頃、戦略自衛隊は芦ノ湖にN2爆弾を落としていました。弐号機の中で目覚めたアスカは「生きてる…」と呟き、容赦ない攻撃に死への恐怖を抱きました。その時、アスカの耳に何者かの声が聞こえてきました。「死なせない…生きてなさい…あなたを守る…」それは弐号機に宿るアスカの亡き母、惣流・キョウコ・ツェッペリン(川村万梨阿)の魂の声でした。
「死ぬのは嫌!」アスカは遂に復活を果たし、弐号機を起動させて反撃を開始しました。弐号機はネフルの艦艇を戦略自衛隊の地上部隊に投げつけ、爆撃機が投じたミサイルをATフィールドでかわしました。すっかり持ち前の強気な態度を取り戻したアスカは母と一緒に戦えることに喜びを感じていました。
戦略自衛隊は弐号機のアンビリカルケーブルを切断する作戦に出ましたが、アスカは意に介せず次々と戦闘ヘリを撃墜していきました。ゼーレは弐号機を鎮めるため「毒をもって毒を制す」と9機の量産型エヴァシリーズを投入してきました。
ミサトはアスカにエヴァシリーズを殲滅するよう命じ、シンジを初号機に繋がるルートまで引っ張っていきました。そこに戦略自衛隊が銃撃を仕掛け、ミサトは撃たれて重傷を負ってしまいました。何とかシンジを初号機に向かうエレベーターまで案内したミサトは「ここからはあなた一人よ。全て一人で決めなさい。誰の助けもなく』と告げました。
それでもシンジは「僕にはエヴァに乗る資格はないんだ。僕には人を傷つけることしかできないんだ。だったら何もしない方がいい」と拒みましたが、ミサトは「同情なんかしないわよ。自分が傷つくのが嫌だったら何もせずに死になさい。ここで何もしなかったら私、一生あんたを許さないからね。今の自分が絶対じゃないわ。後で間違いに気付き後悔する、私はその繰り返しだった。でも、その度に前に進めた気がする。シンジくん、ケリをつけなさい。エヴァに乗っていた自分に。何のためにここに来たのか、何のためにここにいるのか、今の自分の答えを見つけなさい。そしてケリをつけたら必ず戻ってくるのよ。約束よ」と父の形見のクロスのネックレスをシンジに託し、「行ってらっしゃい。大人のキスよ。帰ってきたら続きをしましょう」とシンジとキスを交わしました。
次の瞬間、ミサトはシンジをエレベーターに乗せて扉を閉め、「加持くん、これでよかったのね…」と呟いた直後に爆風に呑まれて命を落としました。シンジの目からはとめどなく涙が零れ落ちていました。
その頃、セントラルドグマのゲンドウとレイは“リリス”の肉体の保管場所へと向かっていました。そこに待ち構えていたリツコはゲンドウに銃口を向け、母・ナオコの魂が宿るMAGIを自爆させて道連れにしようとしました。しかし、MAGIはリツコよりもゲンドウを選び、リツコはゲンドウに射殺されました。死の間際、リツコは「嘘つき…」と呟きました。
アスカの弐号機はエヴァシリーズと決死の戦いを繰り広げていました。活動限界を迎えそうになった間際、弐号機は最後の1機を倒しましたが、倒したはずの他の1機が投げた武器が“ロンギヌスの槍”へと姿を変え、そのまま弐号機の頭部を貫きました。活動限界を迎えた弐号機は沈黙、他のエヴァシリーズ全機も立ち上がって弐号機を貪り始めました。アスカは「殺してやる…」と執念で弐号機を暴走させようとしましたが、遂には8本の槍に貫かれて完全に沈黙を迎えました。
その頃、シンジは初号機を前にしてもなお座り込んだままでした。すると、初号機は無人のまま動き出し、シンジは初号機に乗り込むと4枚の翼を広げて戦地に向かいました。しかし、シンジの目に映ったのは見るも無残な変わり果てた弐号機の姿でした。シンジは思わず絶叫しました。
新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君にのネタバレあらすじ:転
第26話「まごころを、君に」
セントラルドグマのゲンドウとレイは仮面を被った“リリス”の肉体を前にしていました。ゲンドウはあらかじめ“アダム”の肉体を自らの右手に移植しており、「(亡き妻の)ユイと再び会うにはこれしかない」と、“リリス”の魂を宿すレイとの融合を試みました。その時、レイはシンジが絶叫するのを感じ取っていました。
シンジの叫びに呼応するかのように、月面に突き刺さっていたオリジナルのロンギヌスの槍が物凄い速さで地球へと飛来、初号機の喉元で止まりました。ゼーレは初号機を依代として人類補完計画を実行することにし、エヴァシリーズが初号機を取り囲んで儀式が開始されました。初号機の4枚の翼は十字架のように展開し、周囲にはアンチATフィールドが張り巡らされていきました。
そして遂に第3新東京市を爆心地とする“サードインパクト”が開始され、地上に展開していた戦略自衛隊は全滅しました。ネルフ本部があるジオフロントからは“リリス”の巨大な卵である“黒き月”が浮上しました。ゲンドウは改めてレイに「私をユイのところへ導いてくれ」と迫りましたが、レイは「私はあなたの人形じゃない」と拒み、ゲンドウから“アダム”だけを吸収すると「碇くん(シンジ)が呼んでいる」と呟きながら“リリス”に融合していきました。
シンジは深く絶望するなか、“リリス”は超巨大なレイの姿となって初号機の前に現れ、やがて今度は死んだはずの渚カヲル(石田彰)の姿と化して初号機を取り込みました。冬月は、使徒の持つ“生命の実”と人類の持つ“知恵の実”の両方を手に入れた初号機は今や“神に等しき存在”となったことを察していました。
“リリス”に取り込まれたシンジは、そこで自我と向き合いはじめました。親の愛も感じられず、友だちもおらず孤独だった幼少期、加持リョウジ(山寺宏一)と激しく愛し合うミサト、アスカとのすれ違いなどこれまでの思い出が走馬灯のように駆け巡りました。シンジは改めてアスカに助けを求めましたが、アスカは冷たく突き放し、逆上したシンジは思わずアスカの首を締めました。シンジは「自分はいてもいなくても何も変わらない。みんな死んじゃえばいいんだ。僕も死んじゃえばいいんだ…」と思っていました。
新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君にの結末
“黒き月”は高度を上げて浮上を続け、“リリス”は巨大な翼を広げながら地球を飲み込んでいきました。アンチATフィールドの作用により人類は個体の生命体としての姿を保てなくなり、次々と液体化(LCL化)していきました。ユイの幻影を見た冬月は「碇(ゲンドウ)、お前もユイ君に逢えたのか…」と呟きながらLCL化していき、生き残ったネフルのメンバーやゲーレのメンバーも次々とLCL化していきました。
レイ、カヲル、そしてユイの幻を見たゲンドウは「ようやく逢えたな。俺が傍にいるとシンジを傷つけるだけだ。私に人を信じる資格はない。すまなかったな、シンジ」と言い残し、初号機に頭を咬み砕かれました。そこに真っ白な包帯を体中に巻いたレイ、幼少期のレイ、全裸のレイの3人のレイが現れ、ゲンドウの遺したメガネを拾い上げました。地球上には無数の十字架が浮かび上がり、LCL化した人々の魂は“黒き月”へと集められていきました。
シンジの前にミサトやレイの幻が現れ、「楽になりたいでしょ?」「私とひとつになりたいでしょ? 心も体も満たされたいでしょ?」と呼びかけてきました。しかし、アスカだけは「あなたと一緒は嫌」と告げてきました。
やがて映画は実写へと切り替わり、穏やかな街並み、光が差す電柱、佇むネコ、走る電車、揺れるブランコ、街を行き交う人々、映画館でエヴァンゲリオンの映画を見ている沢山の観客たち、佇む3人の女性、そして後ろ姿のレイ、アスカ、ミサトと思わしき人物などを映し出していきました。
シンジは「ねえ、夢って何かな? 現実がわからないんだ。幸せって何か…」と問いかけました。「気持ちいいの?」「これは夢なんだ。夢の中に僕はいないんだ」「それは夢じゃない。ただの現実の埋め合わせよ」
自問自答を続けるシンジは「じゃあ、僕の夢はどこ?」と問いかけると、レイの声は「それは現実の続き」と答えました。いつしか映画館からは人の姿は消え去り、シンジは「僕の現実はどこ?」と問うと、レイは「それは夢の終わりよ」と告げました。
画面は庵野秀明監督へのファンからのメッセージ、激励の声や誹謗中傷などを映していき、そして再びアニメのエヴァの世界へと戻りました。“リリス”は首から血を流して倒れ始めました。シンジはいつしかLCLの海、すなわち生命の源の海におり、そこでレイから全ての生命はひとつになったことを聞かされました。
レイから「これがあなたの望んだ世界」と告げられたシンジはミサトから託されたクロスのネックレスを見つめ、「ありがとう」とレイと握手を交わしました。シンジは自分は今までずっと逃げてきたけど、逃げた先には何もなかったことを振り返りました。今度はそこにカヲルが現れ、他人と交わることで自分も他人も傷つく世界に戻りたいのかと問いかけましたが、シンジは「かまわない」と返しました。
レイとカヲルは自分たちは“希望”だと語り、「人は互いに分かり合えるかもしれない。好きだという言葉と共にね」と語りかけました。シンジはそれでもみんなと一緒にいたいと願い、人類補完計画を否定して人類がひとつではなく個々の生命体として存在する世界を望みました。“黒き月”は崩壊し、“リリス”やエヴァシリーズは崩壊して宇宙の塵と化していきました。初号機の中に宿るユイの魂はシンジに語りかけました。
人類には元通りに復元しようとする力があり、生きていればどこだって天国になること。シンジは自分が自分でいるため、これからも生きる意味を探し続けると誓いました。シンジはユイに別れを告げ、初号機はロンギヌスの槍を持ったまま宇宙の彼方へと飛び立ち、これからの人類の行く末を見守っていくことにしました。
シンジとアスカはLCLの赤い海が広がる砂浜に横になっていました。一瞬だけレイの幻を見たシンジは起き上がり、未だ意識のないアスカの首を絞め始めました。意識を戻したアスカは優しくシンジの頬を撫で、シンジは涙を流しながら嗚咽を始めました。アスカはただ一言「気持ち悪い…」とだけ呟きました。
以上、映画「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」のあらすじと結末でした。
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