ペイン・アンド・グローリーの紹介:2019年スペイン映画。脊椎をはじめ体のいたるところに痛みを抱えた世界的映画監督サルバドール。苦痛から生きがいを見出せなくなり、引退同然の消極的な生活を送っていた。しかしあるきっかけで少年時代の母との思い出や、移り住んだバレンシアの村の記憶を回想するようになる。そんな中、32年前に撮った作品の上演依頼が届く。この上映を機に閉ざしていた過去を蘇らせることとなる。アカデミー賞では国際長編映画賞と主演男優賞の2部門にノミネート。70歳を迎えたペドロ・アルモドバル監督の自伝的作品。
監督:ペドロ・アルモドバル 出演:アントニオ・バンデラス(サルバドール)、アシエル・エチェアンディア(アルベルト)、レオナルド・スバラーリャ(フェデリコ)、ノラ・ラバス(メルセデス)、フリエタ・セラーノ(年老いたハシンタ)、セザール・ヴィセンテ(エデュアルド)、アシエル・フローレス(子供時代のサルバドール)、ペネロペ・クルス(若い頃のハシンタ)ほか
映画「ペイン・アンド・グローリー」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ペイン・アンド・グローリー」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ペインアンドグローリーの予告編 動画
映画「ペイン・アンド・グローリー」解説
この解説記事には映画「ペイン・アンド・グローリー」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ペインアンドグローリーのネタバレあらすじ:起
スペインを代表する世界的映画監督のサルバドールは、引退同然の隠居生活を送っていました。脊椎からくる背中の痛み、膝や肩の炎症、耳鳴りや頭痛など様々な病気の上に、4年前に母を亡くして、いまだ立ち直ることができず、創作意欲は失せ、生きる気力さえなくしていたからです。
そんな中、32年前に撮影したサルバドールの代表作『風味』がシネマテークで再上映されることになりました。そこでサルバドールは主演を務めたアルベルトと舞台挨拶をすることを思いつきますが、当時、彼の演技をめぐって言い争いになりプレミア上映を最後に絶縁していました。サルバドールはアルベルトの自宅へ突然訪問するもアルベルトはやはり不快感を隠しません。しかし、時を経て自身の映画と向き合ったことを語るサルバドールにアルベルトも心を開いていきました。
和解できたサルバドールは、アルベルトが吸っていたヘロインをもらい試しました。ヘロインはサルバドールの体の痛みを和らげ、過去の思い出へと誘いました。
ペインアンドグローリーのネタバレあらすじ:承
少年時代のサルバドール。
バレンシア州の貧しい村へ移り住み、みすぼらしい洞窟の家に母ハシンタはショックを受けています。しかし楽しそうにしているサルバドールを見て、「私が家らしくする」といつもの前向きな母になりました。
場面は現在に戻り、今度はアルベルトがサルバドールの自宅を訪れました。サルバドールはアルベルトのヘロインでまたも母との思い出に浸りました。サルバドールが朦朧としている間、アルベルトはPCに保存された『中毒』というタイトルの脚本を読んでしまいます。アルベルトはこの作品に大きく心を揺さぶられました。そして目覚めたサルバドールに、『中毒』を舞台で演じさせてほしいと頼みます。しかしサルバドールは「この話をしたくない」と舞台化することを拒むのでした。
興味で吸い始めたヘロインが、2~3日に1回から、毎日へと増えていくサルバドール。友人メルセデスの心配は的中し、ついには『風味』の上映当日も自宅から出ることができませんでした。
迎えに来たアルベルトもついています。そこで、会場からの質問に電話で答える方法を取ることにしました。しかし、観客からの「アルベルトの演技をどう思うか?」という質問に、サルバドールは酷評し、口論がはじまってしまいます。アルベルトは怒って帰ってしまいました。
数週間後、サルバドールは反省し、アルベルトと和解するために『中毒』を演じる権利を譲ることにしました。ただし、サルバドールの名前は一切表に出さないという条件で。
ペインアンドグローリーのネタバレあらすじ:転
『中毒』は1980年のマドリードを舞台とした、恋人たちの悲しい別れの物語でした。客席は満席。舞台は大成功をおさめました。上演中、観客の中に、ひとり涙を流していた男がいました。彼は舞台が終わると楽屋を訪ねてきました。実は『中毒』はサルバドールの自伝的作品で、男はサルバドールがかつて愛したフェデリコだったのです。
当時ヘロイン中毒だったフェデリコ。
若かりし頃のサルバドールはそんな彼を支え、愛しました。しかしヘロインは2人を引き裂き、やがてフェデリコはブエノスアイレスへと発っていきました。
フェデリコは今やヘロインは完全に絶ち、所用で訪れたマドリードで偶然入った劇場で上演されていたのがアルベルトの舞台だったのです。
フェデリコはアルベルトから聞いたサルバドールの住所へ訪ねてきました。30年以上の時を経て、再会を果たす2人。フェデリコから「君の映画は僕の人生の“祝祭”だ」と称えられ、熱いキスを交わしました。サルバドールは失った愛の痛みと忘れていた過去の栄光に心を満たされました。
ペインアンドグローリーの結末
翌朝、サルバドールはこれまでに避けていたドクターの診察を受け、ヘロインとの決別と監督としての再起を約束しました。
そんなサルバドールをメルセデスは気分転換にアトリエへと誘います。サルバドールはそこに飾られた、ある絵画の前で足を止めました。なんとその絵には子供のころのサルバドールの姿が描かれていたのです。
一気に過去の記憶が蘇ります。
バレンシアの洞窟住まいをしていた幼少期。貧しくて読み書きを習うことができなかった左官職人の青年エデュアルドにサルバドールが読み書きを教える代わりに、家の壁を塗ってもらっていたことがありました。絵はそのときにエデュアルドが描いてくれたものでした。裏には、サルバドールへの手紙と、エデュアルドの新しい住所が書かかれていましたが、母ハシンタは、息子のエデュアルドに対する性的な視線を見逃していませんでした。絵はサルバドールの目に触れることなくマーケットへと持ち込まれたのでした。
サルバドールが感じた“はじめての欲望”でした。
手術を経て、サルバドールはついに撮影現場に戻ってきました。
新作として選んだテーマは、過去の記憶でした。幼き頃のサルバドールと、母ハシンタの姿を撮っています。そのタイトルには『はじめての欲望』と名付けられていました。
以上、映画「ペイン・アンド・グローリー」のあらすじと結末でした。
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