女王蜂の紹介:1978年日本映画。横溝正史の代表作『金田一耕助』シリーズの映画化作品の中でも監督:市川崑、主演:石坂浩二のコンビで作られた第4作目です。石坂浩二演じる名探偵・金田一耕助が20年もの因縁に包まれた良家にまつわる連続殺人事件の謎に迫っていきます。
監督:市川崑 出演者:石坂浩二(金田一耕助)、高峰三枝子(東小路隆子)、司葉子(蔦代)、中井貴恵(大道寺智子)、沖雅也(多門連太郎)、草笛光子(お富)、坂口良子(おあき)、萩尾みどり(大道寺琴絵)、加藤武(等々力警部)、大滝秀治(加納弁護士)、神山繁(九十九龍馬)、小林昭二(木暮刑事)、佐々木勝彦(日下部仁志)、佐々木剛(駒井泰次郎)、中島久之(赤根崎嘉文)、高野浩之(文彦)、石田信之(遊佐三郎)、常田富士男(農夫)、冷泉公裕(黒沢)、武内亨(大道寺鉄馬)、白石加代子(速水るい)、伴淳三郎(山本巡査)、三木のり平(嵐三朝)、岸惠子(神尾秀子)、仲代達矢(大道寺銀造(速水銀蔵))ほか
映画「女王蜂(1978年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「女王蜂(1978年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
女王蜂の予告編 動画
映画「女王蜂(1978年)」解説
この解説記事には映画「女王蜂(1978年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
女王蜂のネタバレあらすじ:起
1932年(昭和7年)、伊豆天城の月琴の里の良家・大道寺家に京都からやってきた二人の学生、日下部仁志(佐々木勝彦)と速水銀蔵(仲代達矢)が1週間ほど泊まることになりました。そこで仁志と銀蔵は大道寺家当主の娘・琴絵(萩尾みどり)と出会い、やがて琴絵は仁志の子を身籠ってしまいました。
数ヶ月後、仁志は琴絵との結婚の意思を固め、再び大道寺家を訪れました。仁志は二人が初めて出会った夜、琴絵が弾いてくれた月琴の音色が忘れられないと打ち明け、琴絵に預けた祖母の形見の指輪を返してほしいと願い出ました。
その直後、仁志は変死体となって発見され、警察には仁志は崖から転落死したと通報されました。弁護士の加納(大滝秀治)は大道寺家の家庭教師・神尾秀子(岸惠子)に仁志の死は本当に転落死なのか尋ねました。秀子はなぜ仁志の親が現れないのか不思議に思いましたが、警官の山本(伴淳三郎)の話によると親の代わりとして加納が遣わされたということでした。
1936年(昭和11年)。琴絵の身を案ずる銀蔵は大学を卒業して地元・京都の材木会社に就職したのを機に大道寺家を訪れ、琴絵に結婚を申し入れました。琴絵と仁志の間には娘・智子が生まれており、銀蔵は大道寺家の婿養子として迎え入れられました。しかし数年後、智子が5歳の時に琴絵は他界してしまいました。
1952年(昭和27年)、智子(中井貴恵)が19歳の誕生日を迎えた日、大道寺家の時計台で遊佐三郎(石田信之)という男が歯車に身体を引き裂かれた変死体となって発見されました。現場を目撃した智子はその場に居合わせた多門連太郎(沖雅也)という男と遭遇しますが、連太郎は「僕じゃない。僕が来た時、遊佐は死んでいた。智子さん、僕を信じてくれ」と無実を主張して去っていきました。
銀蔵は山本の事情聴取に対し、智子が19歳になったら月琴の里の屋敷を閉めて地元の京都に連れ帰ることにしていたと語り、智子には死亡した遊佐の他、赤根崎嘉文(中島久之)と駒井泰次郎(佐々木剛)の計3人が同時に智子に求婚してきたことを明かしました。
女王蜂のネタバレあらすじ:承
智子はなぜ時計台に行ったのかと銀蔵に問われ、何者かから「明日六時半、時計台に来たれ。汝の身の上の秘密を知ることができる」と書かれた手紙を受け取ったことを明かしました。その場に私立探偵の金田一耕助(石坂浩二)が現われ、京都の加納弁護士から19年前の事件(仁志の不審死)について調べてほしいと依頼されたと銀蔵に語りました。
金田一は加納から差出人不明の手紙を預かっており、そこには「警告。月琴の里から智子を呼び寄せることはやめよ。彼女が京都に来ることで血が流れる。十九年前の惨劇を回想せよ。果たして過失であったか。殺されたのではなかったか。あの娘の母は男を死に追いやる魔性。その血を引く娘もしかり。娘に群がる男の命は脅かされるであろう。彼女は女王蜂である」と書かれてありました。
19年前、仁志の死体が発見された屋敷の“唐の間”は琴絵によって鍵がかけられ、開かずの間となっていました。しかし、智子は母の形見の口紅の中から唐の間の鍵の在り処を記した紙を見つけ、琴絵の墓のそばにあった鍵を発見しました。
事件直前、遊佐は赤根崎や駒井と共にテニスをしていたのですが、そこに現れた連太郎が智子にいきなり友達になってほしいと話しかけ、その際に連太郎は遊佐と付き合うのはやめろと忠告したというのです。やがて大道寺家を静岡県警の等々力警部(加藤武)が訪れ、遊佐のポケットから智子の名義で時計台に呼び出す手紙が見つかったと話しました。等々力は犯人は連太郎であり、智子を犯人に仕立てようとしたのだと推理しました。
一方の金田一は秀子に19年前の事件のことを尋ね、かつて琴絵が仁志から預かった指輪は事件後にいずこへと紛失したこと、仁志は死の前日に珍しいコウモリの写真が撮れたとフィルムの現像を秀子に依頼するも、出来上がった写真にはどこにもコウモリが写っていないこと、その写真は所在不明になっているという証言を得ました。金田一は智子に、犯人は智子を京都に行かせまいとしている人間だろうとの推理を語りました。
程なくして、大道寺家に心霊研究家の九十九龍馬(神山繁)が訪れました。九十九の妹で大道寺家女中の蔦代(司葉子)の出迎えを受けた九十九は「大道寺君は私の助けを必要としてるだろう」と笑いながら応えました。その後、蔦代・赤根崎・駒井は京都に戻り、九十九は銀蔵に「心配いらんよ。僕は過去のことは喋らんよ。琴絵さんが君の友達を殺したことをな」と語りました。
金田一は連太郎と遊佐が知り合いであり、互いに自分の身分を明かさないとの約束を交わしていたとの証言を得ました。再び山本に事情を尋ねようとする金田一でしたが、山本は19年前の事件について上層部から何も調べるなと命じられていたことを明かし、なんでも宮内庁のお偉い方から署長に直々に圧力をかけられていたと打ち明けました。
そして山本は、琴絵と銀蔵は夫婦らしい生活を送っていなかったことを証言しました。婿入り後も京都に居住する銀蔵に対し、琴絵は月琴の里から離れようとはしなかったというのです。その日の夜、唐の間に入った智子は血にまみれた月琴を発見しました。
その後、京都に行った智子の前に連太郎が現れ、自分も智子も犯人に騙されたこと、赤根崎と駒井のことも調べてみるとろくな人間じゃないことを告げ、彼らが智子に無礼な真似をしたら絶対許さないと語りました。
女王蜂のネタバレあらすじ:転
金田一は加納の手引きで公爵家・東小路家の当主・隆子(高峰三枝子)と対面しました。金田一は独自の調査で仁志が実は隆子の次男であることを嗅ぎつけており、隆子は智子が自分の孫であるということは彼女の幸せを思って伝えていないことを語りました。
隆子は元々能登藩主の娘であり、10年前に夫だった公爵と死別、長男も先の戦争で戦死し、東小路家の血を引く者はもはや智子しかいないというのです。銀蔵は仁志と学友になってから頻繁に東小路家に出入りするようになったということであり、金田一と隆子は19年前の事件と智子を結びつけるのは銀蔵だと仮定しましたが、銀蔵にも同じような警告文が送り付けられているのが気になりました。
程なくして東小路家主催のお茶会が開かれ、赤根崎と駒井、智子も出席しましたが、智子の立てたお茶を飲んだ赤根崎がその場で血を吐いて絶命してしまいました。一部始終を見ていた連太郎はその場から逃げ出し、智子の茶せんからは青酸カリが発見されました。
等々力は何者かが茶せんをすり替えたのだろうと推理、常に智子のそばに仕えていて彼女の京都行きを反対していた秀子に疑いの目を向けました。銀蔵は犯行は連太郎の仕業だと反論、等々力は連太郎の正体が能登藩の家老を務めた名門の出であり特攻隊の生き残りであることが判明したことを話しました。
金田一は秀子から、仁志が撮ったという写真を見せられました。その写真にはコウモリなど写っておらず、代わりに年に1度天城に旅回りをしていた旅役者の嵐三朝(三木のり平)一座のスナップ写真がありました。金田一は写真の入ったアルバムを借り、写真を引き伸ばして更に調べてみることにしましたが、夜道を何者かに襲われてアルバムを奪われてしまいました。
その頃、連太郎は隆子に会い、隆子の指図で智子に会ったのだが彼女に本気で惚れてしまったことを打ち明けました。一方、智子は九十九に唐の間の秘密を教えるから「心霊研究所」に来るよう呼び出し、智子に19年前のことを語り始めました。
事件当日、仁志から別れ話を切り出されたことに逆上した琴絵は月琴で仁志を殴り殺し、琴絵を犯罪者にしたくない九十九は秀子と共に仁志の死体を崖に突き落として転落死のように装ったというのです。九十九は智子を気絶させた直後に何者かに刺殺され、現場に駆け付けた連太郎は逮捕されてしまいました。連太郎は取り調べに対し、智子のことが心配でずっと見張っていたと殺害を否認しました。
金田一は下田で提灯屋をしている嵐三朝の元を訪れ、19年前に1日だけ月琴の里で興行を開いてほしいと依頼してきた若い男の話を聞きつけました。一方の等々力は今回の事件の発端は19年前の事件と関係あると断定、智子ら一同を月琴の里に連れて行きました。秀子は智子に、仁志を殺したのは琴絵ではないと語りました。
金田一は能登に飛び、銀蔵の戸籍を調べ上げていました。銀蔵の叔母・るい(白石加代子)から銀蔵の一家は不幸な事件で離散し、父は監獄に入れられて獄中死、母にも先立たれた銀蔵はるいの養子となったというのです。金田一からそのことを指摘された銀蔵は、自分が仁志の学友になったのは単なる偶然だったのだろうかと指摘されて言葉を濁しました。一方の等々力は、仁志や九十九を殺したのは琴絵・智子の親子に異常なまでの執着を見せる秀子ではないかと疑いました。
女王蜂の結末
金田一は一同を唐の間い集め、重要な物を見つけたとして琴絵が失くした指輪は月琴の中にあったことを明かしました。事件当日、唐の間には琴絵・仁志・秀子の3人がいましたが、秀子は当時の当主で琴絵の父・鉄馬(武内亨)に呼び出されて退出、その後琴絵も指輪を取りに行くため退出して唐の間には仁志一人だけになったというのです。隆子は仁志と琴絵の結婚に猛反対しており、仁志に絶対に指輪を返してもらうよう厳命していたのです。
そして琴絵が唐の間に戻ると仁志は死んでおり、琴絵はそのショックで指輪を月琴の中に落としてしまったのだと金田一は推理、そして仁志・遊佐・赤根崎・九十九を殺したうえに警告文をでっち上げた真犯人は何と銀蔵であるとの見解を示しました。
銀蔵は仁志が死んだ時には京都にいたと反論しましたが、金田一は事件当日に銀蔵は月琴の里にいたこと、嵐三朝一座に興行の依頼をしたのは銀蔵であり、仁志が撮った写真の中に決定的な証拠があったことを指摘しました。
更に金田一は、銀蔵の父は東小路家の馬丁だったことを明かしました。るいから聞いた話で、東小路家の当時の当主は馬で女の子を撥ね殺してしまい、その罪を銀蔵の父に擦り付けたのです。東小路家への復讐を誓った銀蔵は仁志を殺すことでその血筋を完全に断ち切ろうとしましたが、誤算だったのは仁志と琴絵との間に生まれた智子だったのです。
銀蔵は全ての罪を認め、いずれ智子も殺すつもりだったことを明かしましたが、その時秀子は突然拳銃を編み物袋から取り出し、「私が犯人です」と言うと銀蔵を射殺しました。秀子はその場で自殺し、金田一は編み物袋に仕組まれていた暗号を読み取って「アカイケイトノタマ」というキーワードを入手しました。
事件の真犯人は秀子ということで一件落着しましたが、金田一は隆子と蔦代と山本だけに伝えたいことがあるとして、編み物袋の中から秀子がしたためていた遺書を取り出しました。そこには、金田一が事件の謎を解き明かした時は銀蔵と秀子が死ぬ時であることが綴られており、秀子は19年前に銀蔵と初対面してから彼に惚れ込んでいたこと、しかし銀蔵の想いは琴絵に向けられており、智子が生まれてからもその想いは変わらなかったこと、そして実は銀蔵は智子に想いを寄せ始めていたということが書かれていました。
拳銃は銀蔵が戦地から密かに持ち帰っていたものであり、秀子は大道寺家のために全ての罪を自らが被ると遺書を締めくくっていました。金田一は仁志の写真には確かに銀蔵が写っており、仁志は役者側からみればただの青年、里の側からみればただの旅一座にみえるどっちつかずの銀蔵のことを“コウモリ”と表現したのだろうと推測しました。隆子は仁志と琴絵の結婚を反対した自分を責めました。
その頃、智子は銀蔵と秀子の墓の前にいました。そこに連太郎が現れ、智子に結婚を申し入れてきました。智子は連太郎を連れて隆子たちの前に現れ、自分の父は母と自分を愛してくれた大道寺銀蔵ただ一人だと告げ、自分は大道寺家の人間としてこの里に残ると言い出しました。
金田一は帰りの汽車の中で等々力と会いました。金田一は「今度のことはどうも僕の失敗でした」と振り返りましたが、等々力は「真犯人のことか? いや、君は間違ってなかったさ」と言うと「また会おう」と告げました。
以上、映画「女王蜂」のあらすじと結末でした。
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