竹取物語の紹介:1987年日本映画。竹取物語を原案として、かぐや姫が宇宙人だったという設定で描いた、豪華キャスト出演のSF大作です。東宝の特撮技術を生かし、更にSFXも駆使し、巨大竜との戦いや『未知との遭遇』ばりのUFOシーンも見ものの一つです。
監督:市川崑 出演者:沢口靖子(加耶)、三船敏郎(竹取の造)、若尾文子(田吉女)、中井貴一(大伴の大納言)、春風亭小朝(車持の皇子)、竹田高利(安倍の右大臣)、石坂浩二(帝)、小高恵美(明野)、中村嘉葎雄(理世)、伊東四朗(僧上の道尊)ほか
映画「竹取物語」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「竹取物語」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
竹取物語の予告編 動画
映画「竹取物語」解説
この解説記事には映画「竹取物語」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
竹取物語のネタバレあらすじ:起
竹林のそばに住む竹取の造(三船敏郎)の家に行った商人の宇陀(常田富士男)は、一人でいた女房の田吉女(若尾文子)に「何も出来ているものはない」といって追い返されます。この家では竹細工と織物を作っていて、宇陀が買って街で売っていました。
家を出ると竹取の造が一人水辺に座っていました。話を聞くと「幼い一人娘の加耶を病気で死なせてしまった」と言います。宇陀が帰り、夜になると家の中で田吉女が「うちが貧乏だから医者にも見せてやれなかった、だから死んだんだ」と悔やんで泣きはじめます。
その時、家の外に眩しい光が走り、そのあと大きな音と衝撃が伝わります。驚いた二人が外に出ると竹林の方が燃えています。夜は危険だと翌朝、竹取の造が竹林に向かいます。
竹林は竹細工の命です。竹取の造が竹林に着くと無事で、死んだ加耶の墓も大丈夫でした。墓の横には大きな筍のようなものがありました。竹取の造が見ているとそれは光を放ち、加耶の墓に当たりました。よく見ると筍のようなものの中に赤ちゃんがいます。
竹取の造は「こんな所に放っておいてもいけない」と言いながら筍のようなものを抱えます。しかし熱を持っていて、途中で落としてしまいます。すると中にいた赤ちゃんが一気に成長して加耶そっくりの女の子になりました。
そのころ、宮廷に支える理世(中村嘉葎雄)は兵たちと竹林の横にできた大きな穴を調べていました。「これが昨夜の出来事だったのか?」とつぶやきます。
竹取物語のネタバレあらすじ:承
女の子を連れて帰ると、田吉女が「加耶が帰ってきた」と大喜びします。竹取の造は「目が青いし、水晶の玉を持って、赤ちゃんがあっという間に大きくなった、加耶じゃない」と言います。しかし田吉女は「加耶として育てます。不幸な私たちを助けてくれたんです」と言って育て始めます。
加耶には不思議な力がありました。手をかざして念ずると、すべてのものが元通りになります。このことで、悪い事は全て加耶のせいになり、竹取の造は毎日のように村人に謝っていました。
金に困っていた竹取の造は、宇陀に頼んで、筍のようなものの破片を金物屋に売りに行ってもらいます。それは純金で、金物屋が大金を払ってくれました。気をよくした竹取の造は、小さい破片にして小出しにして宇陀に売ってもらいます。
宮廷では帝(石坂浩二)が「町で上質の金が出回っているそうだ、この国には無い純度で、金は国の富になるが、逆に反乱者を生む。回収してここに集めよ」と命令します。
裕福になった竹取の造は、町で毎日酒を飲んでいます。理世が目をつけ、田吉女らの会話を盗み聞きしていました。家に帰ると加耶(沢口靖子)が急に成長し、立派な娘になっていました。
やがて大金持ちになった竹取の造は、貴族が多く住む町に、大きな屋敷を建てて引っ越しをします。村人の噂から逃れるために移り住んだものの、今度は加耶の美貌が噂になり、男たちが屋敷の周りに集まる毎日になります。
やがて加耶は『かぐや姫』と呼ばれるようになります。そこで竹取の造は、貴族の子息と加耶を結婚させようと企み始めます。
竹取物語のネタバレあらすじ:転
噂を聞いた安倍の右大臣(竹田高利)と車持の皇子(春風亭小朝)が、屋敷を訪ねてきます。二人は加耶を見て一目ぼれします。草原で一人いた加耶に、逃げた馬が走って来ました。加耶を助けたのは目の見えない明野(小高恵美)という女性でした。明野は安倍の右大臣の屋敷で子守りをする使用人です。加耶と話をした明野は「貴女はただの人間じゃないね」と、加耶の正体を見破ります。
ある日、野道で人車が鉢合わせになりました。お互いが「避けろ」と言い争う中、大伴の大納言(中井貴一)が出てきます。「ワシを誰だと思っている、車を脇にどけろ」と怒鳴ると、中から「それなら、そっちの人も手伝ってください」と言って加耶が降りてきます。目を合わせた二人は、お互い魅せられました。
家に帰った加耶は大伴の大納言の事が気になっていました。このころから加耶の水晶玉が光るようになっていました。
近くの森で加耶が田吉女と話していると、大伴の大納言が走って来て加耶に求婚します。嬉しかった加耶でしたが、安倍の右大臣と車持の皇子からも求婚されています。困り果てた加耶は明野に相談します。
少しして加耶は求婚された3人を呼びます。「3人様に3つのものそれぞれ探して来ていただきたい。見事探してきたお方と結婚する」と言います。それはおとぎ話の宝物で、この世に存在しないものでした。それでも3人はそれぞれ探しに向かいます。
再び水晶の玉が光り、加耶は遂に出生の秘密を知り、両親に話し始めます。「私たちは月から飛び立ちましたが、途中で船が火を噴き爆発したはずみで、私の艇が飛ばされました。そのまま船は地球に激突し、私以外皆死んでしまいました。この水晶の玉は、月と連絡するものです」。それを聞いた二人は「加耶は私たちの子供だからここに住んでいい」と言います。
竹取物語の結末
安倍の右大臣と、車持の皇子が宝物を見つけてきます。しかし両方とも偽物で、すぐ見破られました。帝に追放された二人は、海に出ていた大伴の大納言が外国で救助され、帰ってくることを知り刺客を送ります。
加耶の出生の秘密を盗み聞きした理世が、帝に「加耶は月の人間です」と告げ口をしますが、逆に「バカな子を言うな」と言われて職を解かれます。
刺客に襲われた大伴の右大臣に理世が加勢して助けます。そのまま加耶に会いに行くと「宝物なんてどうでもいいんです、大納言様に会いたかったのです」と言います。そして「今度の満月に迎えが来ます。月に帰らないといけない」と言うと、「私も行きます」と大納言が言いますが、「貴方様は月では生きていけません」と言います。
大伴の大納言は帝に加耶との結婚の承諾をもらいに行ったものの、こっぴどく叱られて反対されます。逆に、「加耶を迎えに来た船を撃ち落とせ」と兵たちに命令します。
やがて満月の日が来ました。月から光が飛んできます。宮廷の上まで来ると、それは光り輝く巨大な円盤状のものでした。「矢を撃て」と命じますが、矢は届かず燃えて落ちました。
そして屋敷の庭に光線が照射されました。両親と大伴の大納言が見守る中、加耶は立ち上がり両親に礼を言った後「人間のまごころは忘れません」と言って光の中に入ると、吸い込まれるように船に飛んで行きました。
大伴の右大臣は「またきっと会える」とつぶやきます。加耶が船に乗り込むと、小さな光が明野に飛んできます。そして「あれが満月か、目が見えるようになった」と言います。そして船は月に向かって飛んで行くのでした。
以上、映画「竹取物語」のあらすじと結末でした。
「かぐや姫の正体は宇宙人だった」—–この市川崑監督の「竹取物語」の発想は、斬新かつ大胆だった。
日本最古の物語文学を、SFエンターテインメントにという、「ゴジラ」シリーズのみならず東宝特撮映画の推進者の大プロデューサー・田中友幸の長年の夢を託され、実現した市川崑監督。
だが、監督自身もこの映画は完全に失敗作だったと認めていて、公開当時の評判も散々なものでした。
だが、この映画を市川崑監督が撮った「ウルトラQ」だと考えると、けっこう楽しめるんですね。
山里に巨大な火の玉が落下してくる。中から出てきたのは加耶。
演じたのは、第1回東宝シンデレラガール・沢口靖子。
大伴の大納言(中井貴一)と巨竜との闘い、「未知との遭遇」のマザーシップを想起させる巨大な宇宙船。
それまで、市川崑監督が撮ってこなかったものばかりだ。
そして「ウルトラQ」といえば、ナレーターは石坂浩二。
このアンバランス劇場の幕を閉じるため、彼の扮した帝が、もっともらしく話をまとめるのだ。
「人間は、まだまだ知らない途方もないものがあることを、知らねばならないのだ」と。
かぐや姫を授かる夫婦に、三船敏郎と若尾文子。
二人とも全編かなり強烈な演技を見せているのだが、最後に元シカゴのピーター・セテラの歌うテーマ曲「ステイ・ウィズ・ミー」が流れ、お馴染みの「完」の文字で、何だか全てを許せてしまう市川崑版「ウルトラQ」という映画でしたね。