潮騒の紹介:1975年日本映画。三島由紀夫の同名小説で、何度も映画化された名作をホリプロダクション創立15周年記念作品として4度目の映画化をした青春ラブストーリーです。ダブル主演に数々の作品で名コンビを組む山口百恵と三浦友和を迎え、三重県鳥羽地方を舞台に若き海女と漁師が困難を乗り越えて愛を育んでいく様を描きます。
監督:西河克己 出演者:山口百恵(宮田初江)、三浦友和(久保新治)、初井言栄(久保とみ)、亀田秀紀(久保広)、中村竹弥(宮田照吉)、有島一郎(灯台長)、津島恵子(灯台長の妻)、中川三穂子(千代子)、花沢徳衛(大山十吉)、青木義朗(日の出丸船長)、中島久之(川本安夫)、川口厚(浜田竜二)、丹下キヨ子(お春婆)、高山千草(うめ)、田中春男(行商人)、森みどり(海女)、石坂浩二(ナレーション)ほか
映画「潮騒(1975年 山口百恵・三浦友和主演)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「潮騒(1975年 山口百恵・三浦友和主演)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
潮騒(1975年)の予告編 動画
映画「潮騒(1975年 山口百恵・三浦友和主演)」解説
この解説記事には映画「潮騒(1975年 山口百恵・三浦友和主演)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
潮騒のネタバレあらすじ:起
三重県鳥羽地方、伊勢湾に浮かぶ小さな島、歌島。亡き父に代わって家業を継いだ若い漁師の久保新治(三浦友和)は一家の大黒柱として漁船「大漁丸」に乗り、海女として働く母・とみ(初井言栄)と小学生の弟・広(亀田秀紀)の生活を支えていました。
水の乏しい歌島は20年ほど前から水源からの水の汲み取り配分は決められており、汲み取り作業に向かうのは決まって女性の仕事でした。そんなある晴れた日、一人の若い女性が桶に水を汲み、天秤棒で担ぎ上げていました。どこかぎこちない動作のその女性は誤ってバランスを崩し、通りかかった新治に水がかかってしまいました。女性を見かねた新治は残った桶の水を均等に二等分して運びやすくしてあげました。
新治は何かと世話になっている島の灯台長(有島一郎)とその妻(津島恵子)のために捕れたてのヒラメを届けに行く途中であり、灯台長夫妻は新治の律儀さに感謝の気持ちを表しました。灯台長は東京の大学に通う娘の千代子(中川三穂子)が夏休みに帰郷してくるとの手紙を受け取っていました。帰宅した新治はとみに、この島でも水汲みが下手な女がいることを話しました。広はとみに修学旅行の費用を出してほしいとせがんでいました。
翌日、新治は「大漁丸」船長の大山十吉親方(花沢徳衛)から、島で一番の金持ちである“照爺”こと宮田照吉(中村竹弥)の末娘で他家に養子に出されていた初江(山口百恵)を呼び戻したことを知らされました。照爺は跡継ぎにと考えていた長男に先立たれたため、初江に婿を取らせて跡を継がせようと考えていました。初江の美貌はたちまち島中の若者たちの間で話題となりました。実は昨日に新治が出会った、水汲みが下手な女性こそが初江であり、一仕事を終えた新治は神社に向かうと家族の健康、そして叶うならば初江のような美しい娘を嫁に迎えたいと祈りを捧げました。
そんなある日、「大漁丸」のエンジンが故障したので自宅で休養していた新治はとみから山にそだを採りに行ってくれと頼まれ、かつての戦時中に観測所として使われ今ではそだ置き場になっている山の頂上の観的所に向かいました。すると、どこからともなく女性の美しい歌声が聞こえ、新治は観的所の屋上でひとり口ずさむ初江の姿を見つけました。新治と初江は昨日のこともあって互いに自己紹介を交わし、たわいない会話を楽しみましたが、この狭い島の人々の噂の種になることを恐れた二人は別々の道を降りて帰ることにしました。
潮騒のネタバレあらすじ:承
その夜、島では青年会の会合が開かれました。参加した新治は、青年会の代表であり島の実力者の息子である川本安夫(中島久之)が照爺の家の宴会に呼ばれていることを知りました。居ても立っても居られなくなった新治は青年会を抜け出して照爺の家に向かい、そこで初江が安夫のお酌をさせられている初江の姿を見ました。
翌日、漁業協同組合で給料を受け取った新治は、安夫が初江の入婿になるという噂を聞きました。その帰り際、噂にいらつく新治は初江ら島の女たちが漁船「特儀丸」の陸揚げ作業をしているところを見かけ、迷いながらも作業を手伝いました。ところが、帰宅した新治は給料の入った袋を紛失したことに気付き、夜の漁港に探しに飛び出しました。その後、新治と入れ違いに初江が新治の給料袋を届けにとみの元に訪れました。
とみから新治の居場所を聞いた初江は漁港に向かい、新治に給料袋を届けたことを伝えました。安堵した新治は思い切って初江に、安夫が入婿になるのかと尋ねてみたところ、初江は笑いながら入婿の件を否定しました。新治は笑いすぎて胸が痛くなったという初江を気遣い、大丈夫かと思わず彼女の胸に手を当てました。新治は初江の唇を奪おうとしましたが、初江は逃げるようにしてその場から去って行きました。
数日後、修学旅行に出かける広と入れ替わりに千代子が島に戻ってきました。この時、初江は灯台長の妻に刺繍を習おうと訪れていました。灯台長の妻は魚の調理が苦手な自分に代わって料理してほしいと初江に頼みました。一方、千代子と再会した灯台長は謙虚な気持ちを忘れず余計な噂話を流してくれるなと忠告しましたが、噂話が大好きな千代子はうんざりしながらその言葉を聞き流していました。
やがて灯台長の家に新治がオコゼを届けにやって来ました。かねて新治に好意を寄せていた千代子は帰ろうとする新治を引き留め、土産に買ったライターに火を点けると、この火は自分の情熱だと言ってきました。困惑する新治は、自分は煙草を吸わないとライターを受け取らず、そのまま家を出ていきました。この様子を台所から見ていた初江は千代子への嫉妬のあまりオコゼを殴ってトゲが手に刺さってしまいました。
灯台長の家を出て行った初江を新治が待ち構えており、新治は初江の手のトゲを優しく吸い出してあげました。なぜいつも灯台長の家に魚を届けに行くのかという初江の問いに、新治はかつて中学を卒業する際に落第しそうになったところを助けてもらった恩があると答えました。次はいつ会えるのかという初江に、新治は雨で漁が休みになる時だと答え、その時は観的所で待ち合わせしようと約束しました。
その後は残念なことにしばらく晴天が続き、ようやく待ちに待った嵐の日がやってきました。朝から浮かれていた新治は一足先に観的所に到着しましたが、まだ初江は来ていなかったので、濡れた服を乾かすために焚き火を起こしているうちにうとうとと居眠りしてしまいました。やがて初江が遅れて現れ、新治が眠っている間に濡れた服を脱いで乾かそうとしました。
その時、新治は目を覚まし、恥ずかしがる初江に「ならば俺も裸になる」と言って服を脱ぎ、ふんどし一丁になりました。それでも全部脱いでいないという初江に対し、新治はふんどしをも脱ぎました。初江は新治に焚き火の火を飛び越えて来るよう求め、言う通りに火を飛び越えた新治は初江を抱こうとしました。しかし、初江は自分は既に新治と所帯を持つ決意を固めており、嫁入り前に関係を持ってはいけないと思い直して「今はいかん」と拒否しました。
新治は初江の気持ちを受け取り、嵐が止む頃を見計らって初江と共に山を下り始めました。その頃、自宅にいた千代子は雨上がりに絵でも描こうと山に登ることにし、途中で初江を背負って山を下りる新治の姿を目撃してしまいました。
潮騒のネタバレあらすじ:転
新治と初江の様子に衝撃を受けた千代子は、たまたま出くわした安夫に新治と初江の関係をバラしてしまいました。激怒した安夫は初江が水を汲む時間を見計らって彼女を襲いましたが、安夫は突然現れた蜂に刺されそうになったため初江は難を逃れました。しかし、千代子が流した新治と初江の噂は瞬く間に島中に広がってしまい、それはとみや修学旅行中の広の耳にも聞こえてきました。とみから事情を話すよう言われた新治は、自分はやましいことは何一つしていないと噂を全面否定し、とみは世間の口には十分気を付けるよう忠告しました。
ところが、たまたま外出した照爺は島の人々の噂話を聞いて激怒、初江に外出を禁止しました。それでも新治への想いを捨てきれない初江はこっそりと家を抜け出し、十吉親方に新治宛ての手紙を託しました。手紙には、これから新治宛ての手紙を毎日台所の側にある蛸壺の下に置いておくので信頼できる人間に取りに来てほしいと書かれてありました。それからというもの、新治の「大漁丸」の同僚である浜田竜二(川口厚)が手紙を受け取るようになり、初江と新治は手紙を通じて想いを通わせ合うようになりました。
新治の最大の理解者である灯台長は噂話に怒り、噂を流した者の行いはこの島に対する大変な冒涜だと痛烈に批判しました。噂を流した張本人である千代子は父の話を盗み聞きし、自分の過ちを深く後悔しました。それから間もなく、千代子は逃げるように島を離れていき、新治に渡すはずだったライターを海に投げ捨てました。
そんなある日、初江は新治に手紙を送り、照爺に来客がある日を見計らって神社でこっそり落ち合おうと呼びかけました。新治は神社へ向かいましたが、安夫の告げ口によって事を知った照爺は新治の目の前で初江を連れ戻してしまいました。家に着いた照爺は、お前の婿は俺が決めると初江に対して強い口調で言い放ちました。一方、とみは新治が隠していた初江からの手紙を読み、二人の想いの強さを知ると共に貧乏な家に生まれたばかりに初江と添い遂げることができない新治を不憫に思いました。
そんな時、新治の家に十吉親方が照爺の所有する沿岸輸送船「日の出丸」の船長(青木義朗)を連れてやってきました。船長は新治に「日の出丸」で働いてみないかと誘い、とみは照爺が新治と初江の仲を引き裂くのが目的だとして反対しますが、新治は船長の誘いを引き受けました。納得がいかないとみは照爺の家に乗り込み、会おうともしない照爺を罵倒するとこっちから初江なんかもらう気はないと吐き捨ててしまいました。
潮騒の結末
数日後、新治が「日の出丸」で出航する日がやってきました。「日の出丸」には何と安夫も乗ることが決まっていました。それから時が経ち、新治と安夫がひので丸に乗り込む日となりました。初江は十吉親方を通じて手紙を新治に渡しました。手紙には初江の写真とお守りが添えられていました。
新治は一生懸命に「日の出丸」の雑用をこなしていきましたが、お調子者で要領のいい安夫は傲慢な態度をとり、怠けてばかりいました。そんな対照的な二人の様子を船長はこっそりチェックしていました。
時を同じくして、島ではアワビ漁が解禁となり、初江も海女として働いていました。とみは先日の剣から初江と距離を置いていましたが、それを見かねた海女仲間のお春婆(丹下キヨ子)が海女たちに突然乳比べをしようと言い出しました。お春婆は恥ずかしがる初江の胸元をかき開いて海女たちに見せ、「これが男を知らん処女の胸だ」と全員に告げ、むやみに噂を信じてはいけないと訴えました。
そこに行商人(田中春男)が通りかかり、流行のビニール製ハンドバッグを景品に出すからアワビ取り競争をしてみないかと持ちかけました。初江は一生懸命にアワビを捕って競争に勝利、もらったハンドバッグをとみに渡しました。それでも中々素直になれないとみでしたが、お春婆の仲介を受けて思い直し、自らの頑固さを恥じて初江の好意を受け止めました。
それから程なくして台風がやってきました。初江は家の仏壇に新治の無事を祈るなか、沖縄の運天港に停泊していた「日の出丸」も激しい嵐に見舞われ、船を港に繋ぐ舫綱が切れてしまいました。船長は誰かる船長は船の命綱をブイに繋ぐ者はいないかと声をかけますが、誰もその役割を買って出ようという者はいませんでした。やむなく船長自ら行こうとしたその時、新治が自分が行くと申し出てきました。新治は荒れ狂う海を必死で泳ぎ、何とかブイまで泳ぎ着いて命綱を繋ぐことに成功しました。船長や乗組員は誰もが新治の勇敢な行動を称え、安夫は船から恥ずかしそうに眺めていました。
やがて「日の出丸」は歌島に無事に帰還、新治は再び「大漁丸」で働くこととなりました。一方、灯台長は東京の千代子から手紙を受け取っていました。それは、新治と初江の噂を流した張本人は自分であり、今はそのことを深く後悔していること、そして新治と初江には結ばれてほしいということが書いてありました。灯台長の妻はお春婆や海女たちにその手紙を見せ、二人の想いの強さに心を打たれた灯台長の妻やお春婆たちは一緒に照爺の家に行き、どうか初江と新治を結ばせてほしいと頼みました。
すると、照爺は「初江の婿は新治に決まっとるんや」と宣言、意外な言葉にお春婆たちは驚きました。照爺が新治と安夫を同じ「日の出丸」に乗せたのは、どちらが初江の婿に相応しいかを見極めるためであり、「日の出丸」船長から新治の勇敢さを聞いていた照爺は男の価値は気力であり、家柄や財産などは二の次だと自らのこれまでの考えを改め、初江の婿には新治しかいないと認めたのです。
初江の愛を手に入れた新治は神社にお礼参りに行くと、そこに現れた十吉親方と竜二が初江と二人で船に乗れと勧めてきました。親方たちの粋な計らいを受けた新治は初江と共に「大漁丸」に乗り、初江からもらった写真を彼女に見せました。こうして若い二人は「大漁丸」に乗って大海原へと乗り出していきました。
以上、映画「潮騒」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する