葬式の名人の紹介:2018年日本映画。大阪府茨木市の市制70周年記念事業として、茨木市ゆかりの作家・川端康成の短編小説『葬式の名人』のほか『十六歳の日記』『師の棺を肩に』『少年』『バッタと鈴虫』『片腕』などをモチーフに現代にアレンジした群像コメディです。実生活でも1児の母である主演の前田敦子が自身初となる母親役に挑戦しています。
監督:樋口尚文 出演者:前田敦子(渡辺雪子)、高良健吾(豊川大輔)、白洲迅(吉田創)、尾上寛之(緒方慎吾)、中西美帆(竹内みさ)、奥野瑛太(島村範男)、佐藤都輝子(島村ゆう)、樋井明日香(大森奈都)、中江有里(岩日京子)、大島葉子(奥村郁子)、佐伯日菜子(小畑典子)、阿比留照太(渡辺あきお)、堀内正美(吉田栄吉)、和泉ちぬ(吉田葉子)、桂雀々(葬儀屋)、中島貞夫(組長)、福本清三(若頭)、栗塚旭(僧侶)、有馬稲子(謎の女)ほか
映画「葬式の名人」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「葬式の名人」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
葬式の名人の予告編 動画
映画「葬式の名人」解説
この解説記事には映画「葬式の名人」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
葬式の名人のネタバレあらすじ:起
大阪府茨木市。28歳の女性・渡辺雪子(前田敦子)は古い木造アパートで小学生の一人息子・あきお(阿比留照太)と二人暮らしをしているシングルマザーです。雪子は貧しい生活を送っており、あきおが熱を出しても保険料すら支払っていないため病院に行くのもためらう程でした。焼き肉のたれ工場で働く雪子はそれでも稼ぎが足りないためブログを書いて小銭を稼いでおり、雪子はこれで保険料が払えると喜びました。
雪子の同級生・豊川大輔(高良健吾)は母校・茨木高校で野球部の顧問をしていますが、万年弱小チームのためグラウンドを自由に使わせてもらえない程でした。豊川は部員たちに自分が現役だった頃の思い出話を自慢げに語り、バッテリーを組んでいた投手の吉田創(白洲迅)は優れた投手だったと振り返りました。創は今アメリカで働いているということでした。
ようやく保険料を支払った雪子はあきおを病院に連れて行こうとしましたが、あきおは家にいませんでした。その頃、あきおは久しぶりに母校を訪れた吉田とキャッチボールをしており、吉田はあきおの球を「ええ球投げるな」と褒めていました。豊川も久しぶりに吉田と再会しましたが、その直後に吉田は道路に転がったボールを拾おうとしたあきおを助けようとしてトラックに撥ねられて死亡してしまいました。
友人から電話で吉田の訃報を知らされた雪子でしたが、仕事で忙しい雪子は「もうあの人はうちらとは関係ないし…」と困惑するのみでした。その頃、吉田の遺体が安置されている病院では、豊川、府議会議員となった緒方慎吾(尾上寛之)、弁護士の竹内みさ(中西美帆)、バリバリの広告マンである島村範男(奥野瑛太)と妻のゆう(佐藤都輝子)といったかつての同級生が集っていました。誰もが雪子は来ないと思っていましたが、結局雪子も安置所に姿を現しました。
葬式の名人のネタバレあらすじ:承
安置所に遅れて葬儀屋(桂雀々)がやってきましたが、葬儀屋は隣の部屋に安置されている地元ヤクザを優先したいと言い出しました。そこで豊川は吉田を母校へ連れて行ってやりたいと申し出、吉田の両親(堀内正美、和泉ちぬ)の希望もあって実行することにしました。葬儀屋が斎場を探している間、雪子や豊川らは吉田の棺を担いで茨木の街を練り歩き、人々から好奇の目で見られながらも母校に到着しました。吉田は野球を辞めてからは絵を描いていたといい、同級生たちは建て替え前の校舎に忍び込んで落書きをした時などの思い出話に花を咲かせましたが、雪子だけはどこか乗り気ではありませんでした。そんな中、応援団の練習を見ていた一行は、10年前に応援団に参加していた雪子・豊川・吉田のスリーショットの写真を見つけました。
一行は吉田の棺を毎年恒例の能勢妙見山への夜行登山のための行灯が置かれている教室に運び込みました。そこに豊川たちがお世話になった教師の岩日京子(中江有里)が現れ、吉田は死の直前に自分の元を訪ねて来たことを明かしました。野球部のエースだった吉田は地方予選決勝で右腕を壊してから野球を諦め、それから左手で絵を描こうと挑戦していたというのです。同級生の誰も吉田の絵を見たことがないのですが、吉田はみさにアメリカでの仕事がひと段落したら帰国して子供に会いに行くと伝えていたことを明かしました。雪子はあきおに父親のスケッチブックを持って学校に来るよう電話しました。
一行は吉田を学食へ連れて行ったところに葬儀屋が現れ、斎場が見つからなかったので苦肉の策としてこの校内で通夜の予行練習をしようかと言い出しました。一行は吉田の両親を交えて予行を行い、あきおもスケッチブックを持って雪子と合流しました。この学校に植えられた紅葉の木はあきおの父と雪子が出会った場所であることはあきおも知っていましたが、既にこの木は切り払われていました。あきおはスケッチブックを雪子の同級生たちにも見せ、自分の父は野球で優勝してもうじきメジャーリーグ入りすると自慢していました。しかし、雪子はまだ真実をあきおには伝えておらず、吉田の両親や同級生たちも野球を辞めてからの吉田の動向について掴めていませんでした。
雪子とあきお以外の面々が食事を採っていた時、豊川は葬儀屋から見積もりができたとの連絡を受けて飛び出していきました。その後、一行に今は出版社で務めている同級生の大森奈都(樋井明日香)が合流しました。奈都いわく、吉田から渡したいものがあったらしく、待ち合わせをしていたということでした。そんな時、葬儀屋と口論になってしまった豊川が一行の元に戻り、他の斎場も見つからなかったことから豊川は仕方なくこの学校で通夜を行うしかないと言い出しました。やがて学校に僧侶(栗塚旭)が訪れ、そのまま学食で読経が始まりました。そして通夜は吉田の両親だけで行うことになり、豊川や同級生たちは引き上げようとしましたが突然の雨で足止めをくらってしまいます。雪子はあきおと共に吉田の両親に挨拶すると、あきおにスケッチブックを吉田の遺体の横に置くよう促しました。雪子は「この人はあきおにめっちゃ会いたかった人ねん。うち、やっぱり吉田くんの傍におる。あきお、ここにいる人は、あきおのパパやねん…」と衝撃の事実を明かしました。
葬式の名人のネタバレあらすじ:転
雪子は自分のことを“葬式の名人”と自負しており、吉田を自分の手で送りたいと決心しました。奈都は吉田が渡したかったのは“大リーグのボール”なのではないかと気が付きました。
雪子は吉田の両親に身の上話を語りました。早くに両親を亡くした雪子は、16歳の時に唯一の肉親だった祖父を失くしており、たった一人で祖父を送った雪子を吉田は「雪子すごいな、葬式の名人やな」と励ましたことを涙ながらに打ち明けました。これを機に雪子は吉田と付き合い始め、やがてあきおを身籠ったのです。雪子は吉田の両親に通夜を手伝いたいと申し出、豊川も雪子の買い出しに付き合うことにしました。豊川は高校時代、雨の中を相合傘で帰って行く雪子と吉田の姿を思い出し、雪子もまた吉田と豊川がひとつの傘で雨の中を帰って行く光景を思い出していました。あの時、豊川は吉田の故障した右腕を庇うように走っていました。
夜になり、仲間たちは野球部室に吉田の遺体を運んで大宴会を開き、故人の思い出話に花を咲かせました。雪子たちは酒の勢いで盛り上がり、あきおを寝かせると吉田の棺を担いで夜の校内探検ツアーに繰り出しました。吉田がかつてデッサンしていた教室や古代の石棺が置かれている部屋などを回った一行でしたが、いつの間にか棺の中には泥酔した僧侶が入り込んでおり、吉田の遺体はどこかに消えてしまっていました。一行は手分けして吉田の遺体を探すことにし、警備員に気付かれないように妙見夜行登山用の行灯に火を灯して各所を探し回りました。しかし、結局吉田の遺体は見つからず、一行は途方に暮れていたその時、目を覚ましたあきおが現れました。あきおは雪子に、自分は吉田がついた嘘や雪子が書いたブログの内容で学校から恥をかかされたと当たり散らし、「ママなんか大嫌いや!」と走り去っていきました。豊川は泣き崩れる雪子に、実は吉田のことが好きだった、そして雪子のことも好きだった、三人でずっと一緒にいたかったと打ち明けました。
そして雪子と豊川は野球部室で吉田の遺体を発見、その傍で眠りこけているあきおを見つけました。雪子は吉田の遺体とあきおに毛布をかけてやり、雪子と豊川は吉田の隣で横になりました。雪子は吉田が祖父を亡くした自分を慰めてくれた頃を思い出しながら豊川と語らい合い、いつしか雪子と豊川も眠りにつきました。
葬式の名人の結末
夜も更けた頃、四人の枕元に和服姿の謎の女(有馬稲子)が現れました。目を覚ました雪子、豊川、あきおは女が弔問に訪れたものだと思い挨拶しましたが、女は黙して語ろうとはしません。そこに次々と和服姿の者たちが現れ、一人ひとり吉田の霊前にお参りをして去っていきました。あきおは「パパのためにこんなに来てくれた」と語り、雪子と豊川も神妙な表情をして和服の者たちにお辞儀しましたが、その時謎の女は「右腕は痛くありませんか?」と問いかけ、自らの右腕を切り離すと「片腕を一晩お貸ししましょう」と申し出てきました。女は「夢を消すため」に現れたのだといい、過ぎた日の憧れや悲しみを消すために現れたのだといいます。女はいつの間にか姿を消し、豊川はその右腕を吉田に付けてみることを思いつきました。腕さえ治れば吉田はまた野球ができるかもしれないと考えた雪子・豊川・あきおは早速吉田の遺体の腕を付け替えてみました。やがて生徒たちによる妙見夜行登山が始まり、雪子・豊川・あきおも同行することにしました。
夜行登山を終えた一行を応援団が出迎え、そこには太鼓を叩く吉田の姿がありました。その後、吉田はもう右腕は大丈夫だと語り、雪子と豊川が守ってくれたこの腕は大事にしなければならないと伝えました。そして吉田はあきおに約束の“大リーグのボール”を手渡し、吉田とあきおはキャッチボールを始めました。豊川は吉田に今まで何をしていたのかと問いますが、吉田は「ボールを追いかけてた」と語ると、ボールを追いかけるように夜の闇の中へと消えていきました。
翌朝、雪子とあきおは吉田の遺体と川の字になって眠っていました。どうやら腕を付け替えたというのは夢だったようです。ちなみに吉田が奈都に渡したかったものとは大リーグのボールではなく、吉田がこれまで書き溜めていたマンガの原稿だったのです。マンガの内容は雪子らと過ごした高校時代の思い出が込められたものでした。豊川はもっと父のことが知りたいというあきおに高校時代の吉田の活躍を熱く語ってみせました。そして仲間たちは吉田の棺を担いで母校を後にし、雪子は改めて自分が“葬式の名人”であることに感傷に浸っていました。
以上、映画「葬式の名人」のあらすじと結末でした。
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