愛にイナズマの紹介:2023年日本映画。『舟を編む』『茜色に焼かれる』などを手がけた石井裕也監督が、主演に松岡茉優を迎えて描き出す人間ドラマです。念願の映画監督デビューを目前にその夢を踏みにじられた主人公の女性が、疎遠だった家族や運命的に出会った男の力を借りて理不尽な社会に立ち向かう姿を描きます。主題歌はロックバンド「エレファントカシマシ」が手がけています。
監督:石井裕也 出演者:松岡茉優(折村花子)、窪田正孝(舘正夫)、池松壮亮(折村誠一)、若葉竜也(折村雄二)、仲野太賀(落合)、趣里(携帯ショップの女)、高良健吾(ホテルの社長)、MEGUMI(原)、三浦貴大(荒川)、芹澤興人(バーのマスター)、鶴見辰吾(佐々木智夫(声))、北村有起哉(配送会社の社長)、中野英雄(鬼頭三郎)、益岡徹(則夫)、佐藤浩市(折村治)ほか
映画「愛にイナズマ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「愛にイナズマ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「愛にイナズマ」解説
この解説記事には映画「愛にイナズマ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
愛にイナズマのネタバレあらすじ:起
幼い頃から映画監督になりたいという夢を持つ26歳の女性、折村花子。彼女は“赤”という色に非情に強いこだわりがあり、街に繰り出しては行き交う人々の中の“赤”を撮影していました。
そんなある日、花子はビルの屋上から身を投げようとしている男、男をスマホで撮っている野次馬に遭遇しました。野次馬の中には「早くしろよ!」と野次を飛ばす初老の男もいました。やがて駆けつけた救助隊によって事態は収まりましたが、花子はカメラのトラブルによりこの一部始終を取り損ねました。そこに赤い自転車に乗ったガーゼマスクの男が現れ、赤に反応した花子はカメラを向けるも結局男を撮ることはできませんでした。男は食肉流通センターで冷凍肉の解体作業をしていました。
花子は彼岸の監督デビュー作となる映画「消えた女」の準備に取り掛かっていました。花子はプロデューサーの原、助監督の荒川との打ち合わせの際に先ほどの自殺未遂事件の話をしましたが、原も荒川も話を聞こうとはしませんでした。
映画の制作費として1500万円を提示された花子はより一層熱意を燃やし、「消えた女」の内容について説明しました。登場人物のモデルは失踪した花子の母・美樹であり、ストーリーは家族のことをテーマにしたものです。荒川は美樹が失踪した理由を訊くと、花子は「理由はない」と答えて荒川を呆れさせました。
原は花子に脚本の修正を要求し、一同はどこかで飲みながら話そうとしましたが新型コロナウイルスの影響により飲食店はどこも営業自粛しており、仕方なく花子のアパートで飲むことにしました。花子は改めて自殺未遂の現場で煽った人物がいると言い、「ありえないこと」が起きていると主張しましたが、荒川は母の失踪理由を話そうとしない花子の家族は変だと言い放ちました。
愛にイナズマのネタバレあらすじ:承
花子はいつものように街中にカメラを向けていました。そこに先日出くわしたマスクの男と遭遇しましたが、男はすぐに姿を消して行きました。
その夜、路地ではマスクもせず外で飲んでいた二人組の男と少年が口論になっていました。たまたま出くわしたマスクの男は仲裁に入りましたが逆に殴られてしまいました。男たちと少年はその場を去り、マスクの男は血を流し始めました。花子はその様子を撮影しようとしましたが、またもやカメラの調子がおかしかったため撮影できませんでした。
花子はとあるバーに立ち寄ると、そこにマスクの男も入ってきました。花子とマスクの男は互いに自己紹介しました。マスクの男は名を舘正夫といい、花子が言う「ありえないこと」は起きると言いました。奇遇にも正夫の友人で同居人である役者の落合は花子の映画のオーディションに受かったこと、演じるのは“兄”の役であることが判明、花子と正夫はすっかり意気投合しました。
翌朝、泥酔した正夫は自宅アパートで目を覚ましました。落合は正夫が寝言で花子の名を呼んでいたと教えました。一方の花子はスタッフと共にある病院でロケハンを行っていましたが、かねてから花子を快く思っていなかった荒川は花子と意見が食い違ってしまいました。病院側は施設を撮影場所として無償で貸す条件として花子の人間ドック受診を求めました。
やがて映画の撮影が開始されましたが、花子は監督を降板させられており、代わりに荒川が監督になっていました。一方、正夫は落合の様子がどこかおかしいことに気づいていました。落合は「血も涙もねぇな」と呟いたのち、正夫が不在の間に自ら命を絶ちました。
落合の葬儀に参列した花子は原に会い、監督を降板させられた理由が「人間ドックで花子に病気が判明したため」と伝えられていたことを知りました。降板の理由を改変され、脚本まで奪われた花子は原に抗議しましたが、原は全く取り合おうとはしませんでした。
その夜は激しい雷雨が降り続いていました。花子は正夫のアパートに身を寄せましたが、停電で部屋が真っ暗になっている間に正夫は自分の通帳と印鑑を置いて部屋を去っていました。雨の中、花子は正夫を追いかけ、通帳を返そうとしましたが、正夫は映画を撮るために使ってほしいと告げました。花子と正夫は手を組み、改めて独自に映画を撮ろうと誓い合いました。花子は正夫をアシスタントとして起用しました。
愛にイナズマのネタバレあらすじ:転
花子のもとに長年疎遠だった父・治から電話がありました。花子は10年ぶりに実家に戻ることにしました。一方で治はホテルチェーンの社長秘書をしている長男・誠一に自らの病のことを伝えて実家に呼び寄せました。教会で助祭をしている治の次男・誠二も誠一に連れられて十家に向かいました。
花子は久しぶりに父と兄二人と再会しました。治・誠一・誠二は赤い服を着せられ、花子から美樹の失踪理由を問われました。花子は美樹が失踪した理由は治が過去に傷害事件を起こして服役したこと、出所後に荒んだ暮らしを送っていたことであり、美樹は現在海外で暮らしていると聞かされていましたが、治と兄二人は真相を隠蔽しているのではないかと疑いを持つようになっていました。
花子たち一家は激しい喧嘩となり、誠一は勢い任せに治の病気のことを話してしまい、家族で唯一知らされていなかった花子は愕然としました。その後、治は意を決して美樹に電話を入れましたが、代わりに電話に出たのは美樹が失踪後に身を寄せていた佐々木智夫という男でした。佐々木は美樹が3年前に亡くなったこと、治から電話が来たら事実を伝えるよう言われていたことを明かしました。
美樹が家庭で辛い思いをしていることを知った佐々木は子供たちに会わないことを条件に彼女と暮らしていたことを明かし、遺骨は美樹の遺志に従って海に散骨したことを話しました。花子たち一家は正夫と共にその海辺を訪れ、治はかつてこの海を航行するフェリーに家族で乗ったことを語りましたが、そのことを覚えていたのは誠一だけでした。愕然とした治を正夫が慰めました。
治は美樹が失踪してからも携帯の料金だけは支払い続けていました。一家は美樹の携帯を解約するため携帯ショップに行きましたが、店員は詐欺被害防止のため本人しか解約手続きを行うことができないと説明しました。その後、一家は治の友人である則夫が営む海鮮料理店で夕食を取ることにしました。
則夫は治が傷害事件を起こした理由について打ち明けました。それは則夫の娘をもてあそんだあげく自殺に追いやった男を治が殴って失明させたというものであり、治は失明させた男への慰謝料1500万円を払い終えていたことも明らかにされました。則夫はさらに、治は末期の胃癌で余命1年を宣告されていることも打ち明けました。
店には特殊詐欺グループの男たちがおり、これから携帯で片っ端からターゲットに電話をかけまくって月に1500万円を騙し取ろうと話し合っていました。食事を終えた一家と正夫は店の外に出ましたが、正夫はやはり許せないとマスクをして店に戻ることにし、花子たち一家もマスクをして正夫と一緒に店の中へと入っていきました。
花子は騒動の一部始終を撮影しましたが、カメラは壊されてしまい、今まで撮り溜めていた映像も消えてしまいました。それでも花子と正夫は決して落ち込むことはせず、一緒にいることを誓い合いました。周囲には雷が響き、一家と正夫は帰宅しましたが落雷で停電してしまいました。花子はすっかり一家との絆を取り戻していました。
愛にイナズマの結末
それから1年後。治は雄二の教会に姿を表しました。治は子供たちを抱きしめてやれなかったことを後悔し、雄二は涙を浮かべましたが、治は忽然と姿を消していました。一方、誠一は接待の席上で社長や芸能人に自分の妹は映画監督をしていることを話しましたが、無名だとバカにされてブチギレてしまいました。
花子兄妹は雄二の提案により、一家の思い出の海辺に集まって全員でハグをしあうことにしました。花子たちは治も一緒だったらと悔んでいると、正夫が兄妹はもう治とハグしているとスマホの動画を見せてきました。
それは1年前の雷の日、酔い潰れて眠った治を花子たち三人でベッドに連れていった時、治が三人にふざけながらハグしてきた模様を撮ったものでした。
その後、花子兄妹と正夫の四人はフェリーに乗り、思い出の海に治の遺骨を散骨しました。花子は映画のタイトルを「消えない男」に変更することにし、「私は意地でも諦めませんよ」と言って撮影の続きを始めました。
以上、映画「愛にイナズマ」のあらすじと結末でした。
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