ストックホルム・ケースの紹介:2018年カナダ,スウェーデン映画。ストックホルム症候群とは、誘拐事件や監禁事件の被害者が、犯人と長い時間を共にすることにより、犯人に過度の連帯感や好意的な感情を抱く現象。本作は、この言葉の由来となった1973年に実際に起きた事件を、スリリングかつユーモラスに描いている。主演はマルチに活躍する演技派イーサン・ホーク。そのホークが伝説的なジャズのトランペット奏者チェット・ベイカーを演じた『ブルーに生まれついて』(2015年)のロバート・バドロー監督と再びタッグを組み、犯人ラースを魅力的に演じている。
監督・脚本・製作:ロバート・バドロー キャスト:イーサン・ホーク(ラース)、ノオミ・ラパス(ビアンカ)、マーク・ストロング(グンナー)、ビー・サントス(クララ)、クリストファー・ハイアーダール(マットソン)、マーク・レンドール(エロヴ)、イアン・マシューズ(ハルステン)ほか
映画「ストックホルム・ケース」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ストックホルム・ケース」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ストックホルムケースの予告編 動画
映画「ストックホルム・ケース」解説
この解説記事には映画「ストックホルム・ケース」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ストックホルムケースのネタバレあらすじ:起
1973年、スウェーデン・ストックホルム。
自らをカイ・ハンソンと名乗る男(イーサン・ホーク)は、長髪のかつらと帽子をかぶり、いかにもアメリカ人といった格好で“クレジット銀行”へやってきました。
ハンソンがいきなり大きな銃を取り出したので、女性行員ビアンカ(ノオミ・ラパス)はすかさずデスクの下の非常ボタンを押しますが、気づかれてしまいます。ハンソンは天井に向かって威嚇射撃したあと客たちを外に逃がし、ビアンカには警察署長に電話するよう指示します。そして「10分以内に来ないと女を撃つ」と告げ、ビアンカともうひとりの女性行員クララ(ビー・サントス)を男性行員に縛らせました。
そのとき、正面入口からハルステンという刑事(イアン・マシューズ)がひとりで入ってきて銃撃戦になりましたが、彼は撃たれ、ハンソンは「女が撃たれたらどうすんだ!」と怒ります。そして警察無線でボブ・ディランの曲を歌うようハルステンに命令し、裏口から侵入した警察署長のマットソン(クリストファー・ハイアーダール)は苦々しい顔でそれをききながら、銀行の2階に拠点を設置します。
ハンソンの要求は“グンナー・ソレントンの釈放”、そして拳銃2丁、防弾チョッキ、逃走用の車でした。早くも外にはマスコミややじうまが集まってきています。
若いクララがトイレに行きたいと言いますが、人質の女はひとりずつしか行かせられないし、それで逃げたらもうひとりを撃つとハンソンが言うので、まず年上のビアンカが行くことになりました。ひとりになってビアンカはメガネをはずして涙をぬぐい、そしてハンソンのもとに戻るのでした。
その後、釈放されたグンナー(マーク・ストロング)が警察に付き添われてやってきます。ハンソンとグンナーは抱き合って喜びますが、監視カメラを切っていないことが気になりグンナーはひとりで監視の部屋を見に行きます。するとそこに、ひとりの男が潜んでいたのを見つけて連れてきました。エロヴ(マーク・レンドール)というその男がなぜそこにいたのかは謎ですが、彼も人質になりました。
しばらくすると警察はビアンカの夫を連れてきました。夫は代わりに自分を人質にするようと頼みますが断られ、ビアンカは子どもたちの夕食の準備を細かく夫に説明し「LOVE YOU」と言って別れます。
ハンソンたちは食べ物やビール・タバコを所望し、車が用意できたら人質を連れたまま逃走できるよう要求しますが、警察側は首相から人質を連れていってはいけないと命令されています。それを知ったハンソンは首相に電話をして命令を撤回するよう迫りますが、首相は拒否。「10秒以内に撤回しないとクララを撃つ」と脅すとビアンカがそれを阻止しようと体当たりし、グンナーがビアンカを殴りつけます。
犯人と人質たちは金庫室に移動し、そこでハンソンはラジオを取り出してニュースを聞き始めます。人質の女性たちはレイプされているかもしれない、とラジオから聞こえてくると「レイプなんかしねえ」とハンソンは怒ります。そしてハンソンとグンナーは酒を飲みながら、ボブ・ディランの「明日は遠く」を上機嫌で歌うのでした。
ストックホルムケースのネタバレあらすじ:承
ラジオの情報でハンソンの正体に気づいたビアンカは、皆が寝静まった夜中にそっとラジオを手にとりますが、いきないハンソンに肩をつかまれてしまいます。
「ヘルシンボリ出身なの?」
ビアンカがたずねるとハンソンは、ヘルシンボリ生まれのアメリカ育ちだと答えます。ビアンカが5~6年前に新聞でみた、ちょっと間抜けだけど心やさしい強盗の話をし始めると、ハンソンは「人ちがいだ」と否定します。そして、逃走して自分たちが車を降りたらビアンカにしばらくだまって運転してほしいと頼みます。ビアンカはそれを断り、さっきの強盗について「たしか妻がいたはず。子どもも…」というとハンソンは「元妻と息子」とつぶやきます。
「名前はラース!」
そう言うビアンカの言葉は否定しますが、「子どもに会わせて、ラース」と言われハンソン、いやラースはビアンカを連れて金庫室を抜け出します。電話することを許されたビアンカが自宅に電話すると、ウトウトしていた夫が出ますが子どもたちは眠ってしまったといって取り次いでくれません。事件のことは内緒にする約束でしたが話してしまったと夫は言い、昼間頼んだ夕食のメニューも変えてしまっていました。
翌朝、生理になってしまったクララのためにラースはタンポンを用意するよう警察に頼みます。気分はどうかと警察に聞かれたビアンカは「よくないわ」とぶっきらぼうに答え、犯人の言う通り人質もいっしょに車で逃走することを認めてほしいと文句を言うのでした。
銀行の前にいるテレビの記者からかかってきた電話でビアンカは、「首相の命令のせいで逃げられない。人質の私がお願いしているんです!」と訴えました。
いいこと思いついた!とラースはビアンカを連れ出します。それは、気づかれないようにビアンカに防弾チョッキをつけさせ、ラースがわざと撃ってビアンカが死んだフリをするというものでした。
そしてふたりは実行します。警察に対し「要求を飲まなければこの女を殺す」と脅し、人質を連れて逃げられるよう交渉しますがうまくいかず、演技で逃げようとしたビアンカの背中をラースは撃ったのです。それは思った以上の威力でビアンカはまるで死んでしまったかのように倒れて動きません。あわてたラースはビアンカの体を抱えて金庫室へ戻ります。テレビのニュースはビアンカの死を報じ、警察は催涙ガスの準備を始めます。
しばらくしてビアンカは目を覚まし、事情を知らなかったクララたちはひと安心。でも、背中にケガを負ってしまい少し辛そうです。そんな中、警察が排気用ダクトにマイクを仕掛けたことに気づいたラースたちは、ウソの会話をして警察をだましながらみんなで梨を食べたり、1本のタバコを交互に吸ったりしていました。
署長のマットソンは違和感をおぼえ、差し入れをするフリをしてグンナーを呼び出し、今回の犯人逮捕に協力すれば罪を軽くしてやるといった約束がなかったことになるぞとささやきます。
ストックホルムケースのネタバレあらすじ:転
マットソン署長とグンナーのやりとりを見て不信感を持ったラースが詰め寄ると、その騒ぎに乗じて金庫室の扉が閉められ、ラースたちは閉じ込められてしまいます。
こんなことになるとは知らなかったとグンナーは言い、ラースはダクトに爆薬を入れてマイクを破壊します。怒ったマットソン署長は金庫室を蒸し風呂状態にし、その後室温を下げろと命令します。人質の健康状態を心配する部下に対し、電話にも出るなと聞く耳を持ちません。
一方、ラースとグンナーは互いを責めて争い始め、銃を向けあってしまいます。
「素手で勝負しろ」とラースが言い、殴り合いを始めるふたり。するとビアンカが拾った銃をふたりに向け、「もうウンザリだわ」と叫びます。争いをやめ、男たちは落ち着きを取り戻しました。
「さっきは勇敢だった」
夜になり、ビアンカの背中の傷を心配しながらラースは語りかけます。家に電話したいというビアンカの要望を拒み、自分の昔話を始めるラース。ラースの、グンナーに対する友情を理解したビアンカ。すると突然、ラースはビアンカにキスをします。ビアンカは驚きますが、今度はゆっくりとお互い探るようにキスを交わし、やがてふたりは皆に気づかれないようにこっそりと愛し合うのでした。
ストックホルムケースの結末
次の朝、マットソン署長が「1分後にガスを入れる」と唐突に通達してきました。困ったラースたちは苦肉の策で、人質のクララとエロヴの首に縄をかけ、ガスで失神したらふたりとも死ぬことになる、だからガスを止めて外に出せと要求します。警察側は折れてガスを止め、金庫室の扉を開けました。死んだことになっているビアンカはその場に倒れたまま置いていき、残りの4人は銀行の外に用意された車へと向かいます。しかし、ラースがラジオをつけたまま金庫室に置いていったことを不審に思ったマットソン署長はビアンカが生きているのではないかと考え、再び金庫室にガスを入れるよう命じます。「死んでるなら苦しくない」と署長はほくそ笑みます。
そのころ、ラースたち4人は車に乗り込みますが、誰かがタイヤを撃ってパンクさせ車内はパニックに。結局、タイヤ交換の間銀行に戻った方が安全だということになりロビーまで戻ってくると、ビアンカが生きているということが警察にバレていました。ラースたちは金庫室に戻り、再びラースとグンナーは対立します。そしてとうとうラースはグンナーを撃ってしまいました。
人質たち三人はラースが心やさしい人間だということがわかっているので、必死にラースを守って脱出しようとします。自分たちが盾となり、ラースが警察に撃たれないよう守りながら進みますが、大勢の警察官によって引き離されてしまいました。
数年後。
服役中のラースのもとにビアンカが面会に訪れています。グンナーはあのあと無罪放免となり自由の身になったとのこと。ビアンカももちろん事件後家庭に戻り、家族と元通り幸せに暮らしています。ただビアンカは、あの出来事が忘れられないと言います。犯人であるラースのことが気になって仕方がない。好きになってしまったのです。そんなビアンカにラースは、出所したらスウェーデンを出ると告げるのでした。
以上、映画「ストックホルム・ケース」のあらすじと結末でした。
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