太平洋ひとりぼっちの紹介:1963年日本映画。設立されたばかりの石原プロモーションが最初の劇場用映画として企画。裕次郎が市川崑と初めて(そして唯一)タッグを組み、前年にベストセラーとなった堀江謙一の体験記を映画化した。脚色は市川夫人の和田夏十で、単調になりがちな話を劇的な構成に仕上げている。
監督:市川崑 出演:石原裕次郎(堀井)、森雅之(堀井の父)、田中絹代(堀井の母)、浅丘ルリ子(堀井の妹)、ハナ肇(堀井の先輩)、大坂志郎(造船所の主人)、芦屋雁之助(造船所の船大工)、草薙幸二郎(渡航課の職員)、ほか
映画「太平洋ひとりぼっち」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「太平洋ひとりぼっち」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
太平洋ひとりぼっちの予告編 動画
映画「太平洋ひとりぼっち」解説
この解説記事には映画「太平洋ひとりぼっち」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
太平洋ひとりぼっちのネタバレあらすじ:起
高校時代にヨット部に入った堀井(石原裕次郎)は、やがてその楽しさに夢中となり、自分のヨットを持ちたいという望みを抱きます。勉強が嫌いだった堀井は父親(森雅之)の反対を押し切って就職。もっとも職場は父親が経営する自動車部品工場でした。
まもなく堀井の野望は膨らみ、自分ひとりだけで小型ヨットで太平洋を横断しようという気になります。そのためにはもっとお金を貯めなければ、というので給料の良いトラベルエージェントに移り、荷物の配送でヨットの建造費を稼ぎます。
太平洋ひとりぼっちのネタバレあらすじ:承
会社を辞めた堀井はいよいよ設計図を取り寄せて自らのヨットを建造。そして資料を読み漁って太平洋横断の計画を念入りに立てます。
搭載品も細かく計算し、飲食物は水60リットル、パン30個、ハム5キロ、バター2.5ポンド、缶詰276個、米3斗、ビール5ダース等、調理器具は石油コンロ1台、飯盒2個、フォーク6本、計量カップ2個等、そしてメインセール、クルージング・ジブなどのヨット器具もしっかりと揃えます。
太平洋ひとりぼっちのネタバレあらすじ:転
日本の法律では小型ヨットで国外へ出ることは出来なかったため、堀井は仕方なく密出国という形で秘かに西宮の港から出発。1962年5月12日の夜でした。ヨット部の先輩2人だけに見送られた寂しい門出です。
日本の領海を出るだけで大幅な遅れが出て先行きが危ぶまれましたが、風と潮に乗ってスピードが上がり、堀井の気分も高揚します。ただやはり予想よりも海は荒く、台風のために船内は無茶苦茶になります。堀井は1人だけで思いっきり泣いたり、父、母、妹とのやり取りなどを思い出しては苦境を何とか乗り越えます。
太平洋ひとりぼっちの結末
この後も持ってきた水が腐って水不足になったり、ひどい凪で全く動けなくなるといったトラブルはありますが、強い風の時に遅れを取り戻して何とか距離を稼ぎ続け、ついにある夜、サンフランシスコに到着。地元の警察からの連絡で領事館の役人が駆けつけ、その私宅に厄介になります。
その頃、日本ではこの快挙がマスコミによって報道され、大騒ぎとなっていました。連絡先を知った家族から早速電話がかかってきます。しかし堀井は目標を達成したことで旅の疲れが出て、役人が部屋のドアをノックするのにも応対できません。ブツブツと返事を呟きながら、彼はそのままベッドで眠り続けます。
以上、映画「太平洋ひとりぼっち」のあらすじと結末でした。
「太平洋ひとりぼっち」感想・レビュー
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1962年(昭和37年)5月12日に、兵庫県西宮市から出港したマーメイド号は、米国のサンフランシスコ港に入港した。
堀江謙一青年の、このひとりぼっちの旅を再現したのは、名匠・市川崑監督で、堀江に扮したのは、石原裕次郎だった。
この映画が出来たのは、ヨットによる太平洋横断旅行のほとぼりも、まださめない1963年のことで、まるでドキュメンタリー映画を観ているような気分になってくる。
太平洋という大海に出た、ひとりの若者の生活がユーモラスに、しかし、厳しく捉えられている。
回想シーンという形で、家族などが描かれ、なぜこの旅をするのかと問いかけた。ぶつぶつ、独り言を言ったり、一人はしゃぎまわったりする姿は、まさに暴風に見舞われ、木の葉のように大海に弄ばれるヨットに似ていた。
画面のほとんどは、この若者ひとりしか出てこない。
孤独感が、この映画全般にわたって、ひしひしと観ている私を包みこみましたね。
石原裕次郎 さんがファンの持っている自身のイメージとは違う役やった、唯一の作品といえますよね。違う種類の役がやりたくて、立ち上げた石原プロ第1作。
しかしこの後は、自分のイメージと違った役をやる事はなかったようです。スターの宿命ですね。