TATSUMI マンガに革命を起こした男の紹介:2010年シンガポール映画。大人向けの読み物としての漫画作品「劇画」というジャンルを確立した漫画家辰巳ヨシヒロの半生を代表的な短編作品とともに綴る異色のアニメーション映画。監督は辰巳のファンを公言するシンガポール出身のエリック・クー。俳優の別所哲也がナレーションと声優6役を演じわけています。第64回カンヌ国際映画祭のオフィシャル・セレクション(ある視点部門)に選出された作品です。
監督:エリック・クー キャスト:辰巳ヨシヒロ、別所哲也、ほか
映画「TATSUMI マンガに革命を起こした男」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「TATSUMI マンガに革命を起こした男」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
TATSUMI マンガに革命を起こした男の予告編 動画
映画「TATSUMI マンガに革命を起こした男」解説
この解説記事には映画「TATSUMI マンガに革命を起こした男」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
TATSUMIマンガに革命を起こした男のネタバレあらすじ:起
漫画家手塚治虫の7回忌。その偲ぶ会に一人の漫画家の姿がありました。彼の名は辰巳ヨシヒロ、大人を読書の対象とした漫画「劇画」という言葉を考案した漫画家です。「劇画」は70年代に飛躍的に進化し、その後の漫画表現に大きな変化を与えました。
原爆の写真に翻弄されるカメラマンの悲劇を描いた辰巳の作品「地獄」。原爆投下後の広島を訪ねた従軍カメラマンの小柳は壁に焼き付けられた二つの人影を見て思わずシャッターをおろします。それはまるで孝行息子が母の肩を叩いているような人影に見え、小柳は美しい親子の最期を見たようで感涙します。死んだ母子の名は山田だと判明しました。
それから6年後家族を抱え生活に貧困していた小柳は新聞社にその写真を高い値で売ってしまいました。小柳は良心の呵責に苦しみますが、写真は人々に感動を与え、親子像の彫像を作ろうという動きも出てきます。小柳はいつしか原発の廃絶を訴える運動にも担ぎ出されるようになっていました。
しかしそんなある日あの親子像の息子は自分だと名乗る男、山田が訪ねてきます。そしてあの人影は男が女を絞め殺している殺人現場なのだと小柳に話始めます。山田は金欲しさに母の殺害を友人に依頼、友人が母を殺害しようとした時まさに原爆が落ちたのであのような人影が出来たのだというのです。自分の撮った写真が親孝行の光景を捉えたものではなく殺人現場を捉えたものだったと知った小柳は苦悩します。
そして真実を黙っている代わりに金を融通してほしいと迫る山田を殺害してしまいます。小柳は自首する勇気もなく地獄を抱えながら生き続けます。
TATSUMIマンガに革命を起こした男のネタバレあらすじ:承
戦後の混乱期、大阪で育った少年辰巳は12歳の時漫画好きだった兄の影響で漫画を描き始めます。そして少年雑誌に投稿し続けるうち、漫画が採用されることも増えていきました。ちょっとした天才少年漫画家として知られるようになった辰巳を取材したいという記者も現れます。この記者には憧れの漫画家手塚治虫に会う機会を貰いました。こうして手塚の自宅を訪ねた辰巳は長編漫画を描くよう勧められます。
急成長する社会に取り残され、下層を底流する青年を描いた作品「いとしのモンキー」。工場で働く青年吉田は四畳半のアパートでペットの猿モンキーと一緒に暮らしています。ある朝満員電車に耐えらえれなくなった吉田は上野で下車し、上野動物園に向かいます。そこで若い女と知り合い、束の間のデートを楽しみます。過酷な工場の仕事を辞めようかと悩んでいた吉田は勤務中に不注意から機械に手を巻き込まれ、片腕を失ってしまいます。
失職し、若い女にも金を巻き上げられた吉田はいよいよモンキーを手放さなければならなくなりました。吉田は上野の猿山にモンキーを解き放ちますが、猿達の襲撃の標的となってしまい、吉田の目の前で命を落とすのでした。
その後も辰巳は貧しき家計を支えようと賞金目当てに様々な雑誌に漫画を投稿し続け、昭和29年には初めて描いた長編漫画「こどもじま」が単行本として発刊されます。辰巳にとって漫画は生活の糧であると同時にイマジネーションを具現化できる貴重な創造の場所でした。
TATSUMIマンガに革命を起こした男のネタバレあらすじ:転
昭和31年夏、辰巳は日の丸文庫の若手漫画家たちとアパートの一室を借り、貸し本雑誌の執筆に励みます。これは実家で暮らしてきた辰巳にとって初めて感じる自由な暮らしでした。初老の男が抱える悲哀を描いた作品「男一発」。定年退職が迫っている冴えないサラリーマン花山は家庭では妻や一人娘にないがしろにされ、不遇な日々を送っています。彼はこっそりと貯めていたへそくりを下ろし、惚れた女と浮気したいという願望を抱き始めます。風俗を利用して女を抱いたりしますが、心は満たされません。
そんな折以前から気になっていた女性社員大川から食事の誘いを受けます。二人で飲みに行き、失恋したという大川を慰めようとホテルに行きますが、性的不能により浮気は叶いませんでした。虚しさを抱えながら大川は木の上から放尿するのでした。貸し本漫画の執筆に生きがいを見出し始める辰巳でしたが、俗悪で子供達に悪影響を与える作品として世間から疎んじられはじめます。これに怒りを感じた辰巳は大人のための読み物漫画の呼び方を変えたらどうかと考え始めます。
そうして彼が思いついた言葉が「劇画」でした。大人向けの新しい漫画作品を世に発表するため、劇画工房というグループを結成します。やがて劇画ブームがやってきます。漫画家としての辰巳の姿を投影した作品「はいってます」。漫画家の下川は編集部から連載の打ち切りを言い渡され、挙句にここ数日ひどい腹痛に悩まされています。気分が悪くなりトイレに駆け込んだところ、壁には卑猥な落書きがされていました。
後日何故かまた落書きを見たくなりトイレに入ってみると、そこには新たな卑猥な落書きが書き込まれていて、激しく興奮します。下川は子供向けの漫画を卒業し、自分には大人向けの作品が向いているようだと劇画を描くことを決意します。
下川は晴れ晴れとした気分でトイレに駆け込み、壁に女性の裸体を描き始めます。しかし彼が入ってしまったのは不覚にも女子トイレで、痴漢に間違われ逮捕されてしまうのでした。
TATSUMIマンガに革命を起こした男の結末
日本は高度経済成長期を経てますます豊かになっていきましたが、辰巳の暮らし向きはよくならず、鬱屈した思いを抱えながら漫画を描き続けていました。私生活では喫茶店で働いていた女性と出会い、家庭を持ちました。
戦後のある親子を題材にした作品「グッドバイ」。米軍相手の娼婦をしているマリコのもとを度々父親が訪ねてきます。金をせびりにきたと分かっているマリコは父をつい邪険に扱ってしまいます。その後、夢中になっていた米兵に棄てられ、悲しみに暮れるマリコのもとを再び父が訪ねてきます。やけになったマリコは父を誘惑し、関係を持つことで父との関係を自ら断ち切ります。グッドバイと囁きながら。
辰巳は75歳になりました。描きたい作品はまだまだあると本人は意欲を見せます。
以上、映画「TATSUMI マンガに革命を起こした男」のあらすじと結末でした。
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