ジェントルメンの紹介:2019年イギリス,アメリカ映画。長年にわたり、大麻を大量に栽培し売りさばくことで財を成したアメリカ人ミッキー。その利益総額は500億円。しかしビジネスを売却し、引退するウワサを聞きつけ目の色を変えた強欲なユダヤ人大富豪マシュー、下衆な私立探偵フレッチャー、チャイニーズマフィア、さらには下町のチーマーまでもが跡目争いに参戦。ジェントルメンとは一流のワルたち。彼らの駆け引きを緩急自在にギア・チェンジしながらスタイリッシュに描く。
監督:ガイ・リッチー 出演:マシュー・マコノヒー(マイケル"ミッキー"・ピアソン)、チャーリー・ハナム(レイ/レイモンド・スミス)、ヘンリー・ノールディング(ドライ・アイ)、ミッシェル・ドッカリー(ロザリンド・ピアソン)、ジェレミー・ストロング(マシュー・バーガー)、エディ・マーサン(ビッグ・デイヴ)、トム・ウー(ジョージ卿)、バグジー・マーロン(アーニー)、エリオット・サムナー(ローラ)、コリン・ファレル(コーチ)、ヒュー・グラント(フレッチャー)ほか
映画「ジェントルメン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ジェントルメン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ジェントルメンの予告編 動画
映画「ジェントルメン」解説
この解説記事には映画「ジェントルメン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ジェントルメンのネタバレあらすじ:起
真っ昼間のロンドン。
パブに入ってきたハンサムな紳士ミッキー・ピアソンは、バーテンダーにビールとピクルドエッグを注文すると、ジュークボックスにコインを投入しました。渋いアメリカンロックをBGMに、電話でデートのお誘いをしているミッキーの背後で男が銃を構え、銃声が響きました。ビールグラスは血で染まりました。
ミッキーのビジネス・パートナーのレイが帰宅すると、リビングに私立探偵フレッチャーが忍び込んでいました。殺すぞ!と怒鳴るレイをなだめながら、フレッチャーは語り始めました。彼を雇ったのはあるゴシップ紙の編集長ビッグ・デイヴ。ミッキーに激しい恨みを持つ男でした。
フレッチャーは密にミッキーとレイの行動を監視し、様々な犯罪の証拠を集めていたのでした。それらは「ブッシュ(大麻の意)」とタイトルを付けられ映画の脚本としてレイの目の前に差し出されました。公になれば大スキャンダルとなり、組織は破滅。それが嫌なら2000万ポンド払え。と、ゆすりをかけるフレッチャーにレイは困惑しました。
ジェントルメンのネタバレあらすじ:承
ミッキーの学生時代。
アメリカで生まれ、頭が良い彼はイギリスの名門オックスフォード大学に合格。しかし、次第に勉強はそっちのけ。この名門校に集まる上流階級の金持ち生徒たちを相手に大麻を売り始めたことをきっかけに、数十年もの間、時には乱暴な手段を使いつつ勢力を拡大。いつしかロンドンのアンダーワールド一番の大麻王国を築き上げたのでした。
現在、ミッキーの総資産は4億ポンド(約500億円)。しかし、彼の人生は大きな岐路に差し掛かっていました。
裕福な中年となり、美しい妻ロザリンドと穏やかな生活を送ろうと考えたミッキーは、大麻ビジネスから足を洗い誰かに譲ろうと思案していました。
名乗りをあげたのは、大富豪のユダヤ系アメリカ人マシュー・バーガー。大麻の年間栽培量は50トン、売上は2億ポンドで、うち収入は1億。ミッキーはこのビジネスの秘密の仕組みをマシューに見せるために農園に案内しました。大麻農園はイギリス国内全12か所。すべては上流階級の貴族たちの所有する敷地の地下に作られていました。
公爵や公爵夫人たちは土地があっても金はない。しかし豪邸を綺麗に保つには膨大な資金が必要。そこに目をつけたミッキーは豪邸の管理費を負担する代わりに無償で土地を借り受けているのでした。今後、大麻が合法化されれば、年間売上は2000億から5000億へとハネ上がることを見たてたミッキーは12か所の農園、栽培士と大麻ソムリエ、そしてテクノロジーや顧客リストまで全て込みで、総額4億ポンドで売却するとマシューにオファーしました。
ジェントルメンのネタバレあらすじ:転
その後、ロザリンドが経営する高級車専用のガレージに、ジョージ卿率いるチャイニーズマフィアの若頭ドライ・アイが現れました。10万ポンドの車のパーツ引き換えにロザリンドに夫ミッキーとの面会を仲介してもらったドライ・アイは手下のファ・アックを従えて事務所を訪れました。どこから聞いたのかミッキーが引退することを知っていると語るドライ・アイは、電卓をたたき縄張りの買取金額を提示しました。このはした金の提示にミッキーは軽くあしらい面会は終了となりました。
その直後、秘密農園では騒ぎが起きていました。覆面マスクにデジカメを装着したトラックスーツの4人組が侵入し、従業員をボコボコにした上、大麻強奪をはかったのでした。録画された動画はラップ・ミュージックに乗せ“ドラーズ(よちよち仲間の意)”の動画としてネットにアップされました。このよちよち仲間の正体は、スラムの不良たちの指導と更生に尽力しているボクシングジムの“コーチ”が面倒を見ている若者たちでした。
裏社会を牛耳るミッキーの農園を自分の教え子たちが襲ったことを知ったコーチはレイに謝罪をし、借りを返すまでミッキーの元で働くことを約束。さっそくドライ・アイの手下ファ・アックからジョージ卿を突き止めミッキーが制裁を加えたのでした。
命を取り留めたジョージ卿はドライ・アイの暴走を咎めましたが、あっさり射殺されてしまいました。
そんな中ミッキーは懇意にしているプレスフィールド卿から、娘のローラがヤク中のロック歌手と失踪してしまったという連絡を受けました。探して連れ戻すよう命じられたレイは南ロンドンの団地を突き止め踏み込みました。
ローラは無事に連れ戻すことができましたが、そのさなかにベランダから大富豪のロシア人の息子アスランが転落してしまい命を落とすことに。レイは慌てて死体や地元の子らが撮った写真など証拠隠滅をはかりましたが、その一部始終をカメラにおさめている人物がいました。フレッチャーです。その写真とひきかえに2000万ポンドを払えと、目の前のレイにゆすりをかけてくるのでした。
ジェントルメンの結末
フレッチャーの調べで大麻農園襲撃の経緯も明らかになってきました。実はマシューは密にドライ・アイとつながっており、ミッキーのビジネス価値を下げ値切ることが目的で、ドラーズに情報を流し農場を襲撃させたのでした。
しかしここには誤算がありました。マシューが想像する以上に強欲だったドライ・アイはマシューの元で働く気などなく、単独でミッキーを片付けようと動きます。
妻ロザリンドのガレージに現れ襲いにかかりました。
冒頭、バーでミッキーが銃を向けられたシーンで電話をかけていた相手はこのときのロザリンドでした。幸い、ミッキーを狙ったロシア人の殺し屋はレイによって射殺されましたが電話越しにドライ・アイがロザリンドの目の前にいることを知り駆け付けます。愛する妻がドライ・アイによって今まさにレイプされるところを間一髪のところでミッキーは撃ち殺しました。
そんなことは全く知らずに、マシューはビジネス価値が下がったことを理由に買値を1億3000万ポンドまで値切るようミッキーに詰め寄ります。しかしミッキーはドライ・アイの冷凍された死体を見せました。損害金2億円7000万ポンドを払わなければドライ・アイと同じ目に遭うと脅しました。
ここまでが全て記述されている“脚本”をレイに突き出し、金を要求するフレッチャー。
しかし、レイは全てお見通しでした。ミッキーを嗅ぎまわるフレッチャーに気付かれないように尾行し、わざと証拠をつかませていたのでした。いたるところに隠されていたフレッチャーの証拠はコーチの命により無事ドラーズが回収。フレッチャーの脅しを封じ込めることに成功しました。
ところが、フレッチャーはアスランが殺された真相をロシア人の大富豪である父親にタレこんでいました。それによりミッキーはロシアンマフィアの手に落ち、さらわれることに。
しかし、そこに現れたのはドラーズの4人組。ロシアンマフィアを爽快に襲撃しミッキーを助け出しました。
後日、ミラマックス社を訪れるフレッチャーの姿がありました。
売り込んでいたのは例のシナリオ。軽快に社を後にしてタクシーに乗り込むフレッチャー。しかしタクシーの運転手に扮していたのはレイでした。
以上、映画「ジェントルメン」のあらすじと結末でした。
「ジェントルメン」感想・レビュー
-
プレミアムバーボンやブレンデッドウィスキーの15年ものを口にすると、杯を重ねるごとに味わいが深まってすっかり虜になってしまう。「ジェントルメン」とはそう言うテースト(taste)を有した大人のための作品だ。とっておきのご馳走だからプレミアムなのである。ガイ・リッチーは随分と凝った本を書いてくれたものだ。お陰で私は深酒して酔っ払わないようにと注意しなければならかった。酔っぱらってしまえば折角の凝ったストーリーが台無しになるからである。豪華キャストを活かしきれずに消化不良が多い昨今、適材適所でピシッとハマったキャスティングがこれまた絶妙なのだ。マシュー・マコノヒーの得体の知れない魔性の魅力もチャーリー・ハナムの抑制の効いた知的な演技もひときわ光っていた。また狂言回しに徹し狡猾な初老の俗物を演じたヒュー・グラントの軽妙な語り口にも味があった。更にコリン・ファレルは朴訥で渋い燻し銀の持ち味を存分に発揮して面目躍如。ガイ・リッチーは役者の使い方を十分に心得ていたし彼の演出も見事で申し分がない。この映画は数々のエピソードを散りばめた群像劇であり、ダークでビターな大人の為のメルヘンでもある。ところで、ひと昔前は私も歓楽街で飲み明かし人生の裏街道を歩く渡世人とも互角に渡り合って来た。かつての日本では極道の中にも仁義や任侠道が通じる者も幾ばくか見受けられたからだ。しかし欧米のヤクザが相手であったなら私もとっくに骨になっていたはずだ。度を越した過激なヴァイオレンスがエロティックなユーモアを伴って観客を酩酊状態に誘導する。西欧のギャング映画の醍醐味はこの過激さとユーモアのギャップが独特の猟奇性を醸成する点に集約されている。様々なテーストが絶妙にブレンドされているからこそ、とっておきの美酒に酔いしれることが出来るのである。素材を吟味し絶妙に配合し適度に熟成された「ジェントルメン」は、ガイ・リッチー監督が手塩に掛けた渾身の逸品である。
全員が悪い奴なのか、過激な言葉の連発で思わず笑ってしまった。
前半は退屈だが、後半にかけてドタバタしており面白かった。
時々若者と中年の対比があり、主人公たち大人は若者たちに翻弄されながらも揺るぎない強さで跳ね返していくところが素敵でした。