東京の合唱(コーラス)の紹介:1931年日本映画。いまでは昭和恐慌と呼ばれている時代、岡島伸二は勤めていた会社を解雇されます。妻と三人の子供を養っていかなければならない中で、再就職先がなかなか見つかりません。その後、中学時代の恩師に出会い洋食屋を手伝うことになりますが・・・。主演にはサイレント時代の二枚目スター岡田時彦。その妻に同じく人気女優の八雲恵美子。長女にはのちの昭和の大女優高峰秀子が子役として加わります。第8回キネマ旬報ベストテン第3位。監督小津安二郎28歳の作品です。
監督:小津安二郎 出演者:岡田時彦(岡島伸二)、八雲恵美子(妻・すが子)、菅原秀雄(長男)、高峰秀子(長女・美代子)、斎藤達雄(大村先生)、飯田蝶子(先生の妻)、坂本武(年配の社員・山田)ほか
映画「東京の合唱」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「東京の合唱」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
東京の合唱の予告編 動画
映画「東京の合唱」解説
この解説記事には映画「東京の合唱」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
東京の合唱のネタバレあらすじ:起
東京23区がまだ東京市と呼ばれていた大正の時代の旧制中学校(今日のような男女共学ではない)です。1限目の前に、校庭で朝礼が行われています。
いつの時代も、中学生は、ふざけ合っています。そこに先生が加われば、先生が標的です。「右を向け」と言われれば左を見、「気をつけ」の号令で休む姿勢をとる生徒。みんな、他愛のない反抗がお気に入りです。
悪ふざけが過ぎる生徒の名まえは、すべて先生が閻魔帳に書きこんでいます。先生がメモをはじめると、そばから閻魔帳を覗きこむ生徒。先生が睨みつけるとそっぽを向きますが、またおなじしぐさで覗きこんできます。
朝から何人もの生徒が先生に叱られ、生徒たちも負けじと先生をからかいます。そのやり取りが生徒にはおかしくてたまりません。転げた箸を見て笑い出すのは年頃の娘たちばかりではありません。男子だって、年頃になれば窮屈な授業を楽しく過ごしたいのです。
岡島伸二はいま反抗期です。詰襟の学生服の下に下着1枚着けずにいて先生に叱られます。腰にぶら下げた遊び道具を没収されてしまい、生徒たちの喝采を浴びています。「立っていろ」と叱られても、すぐに飽きてしまい、校庭の隅でタバコを取り出します。学業にまったく身の入らない生徒ですが、どんな生徒の身にも月日が流れます。
東京の合唱のネタバレあらすじ:承
大学を卒業した伸二は保険会社へ就職します。詰襟の学生服からスーツ姿に変わり、いまでは中堅のビジネスマンです。若くて美しい妻との間に三人の子があり、東京郊外の賃貸で暮らしています。
今日はボーナスの支給日です。しかし伸二の会社では「給与ひと月分がやっと」。それでも、妻のすが子は「支給されるだけマシよ」と言って、長男が欲しがっていた自転車をねだります。
12時開始のボーナス支給に合わせて、社員は社長室の前に列をつくっています。ボーナスは社長から直接手渡されるため、社長室からひとり出てくると、またひとり入っていきます。
みんな早く封の中身を確かめたい。いつの時代でもサラリーマンはいっしょです。そわそわと封を開く者、トイレに入って紙幣をめくる者、他人もの封の中身ばかり気にする者など、いかにも平和な風情を醸すなか、年配の山田の表情だけが冴えません。伸二が訊ねると、今日でクビになったのだと答えます。
伸二も山田も内勤ですが、山田は、こう説明します。知り合いがふたり保険に加入した、しかし、どちらもすぐに死んでしまった、「内勤のくせに余計なことをして」と社長は、会社が保険料を払って損をしたのは君のせいだと、山田を解雇しました。
伸二には、なぜ山田が解雇されるのか納得がいきません。山田に談判を勧めますが、長年世話になった会社には歯向えないと尻込みします。ならば私がと、伸二は社長室へ乗り込みます。言い争うだけでは済まなくなった伸二は、まず秘書を突き飛ばします。あげくは社長に手を上げてしまい、伸二もその日、「解雇通知」を受け取ります。
東京の合唱のネタバレあらすじ:転
結局、長男の欲しがっていた自転車には手が届きません。代わって伸二は小さなキックスケーターを買ってきます。しかし、誰でも分かることですが、自転車とキックスケーターでは用途が違います。父親が痛いほど真面目でも、子供からは小馬鹿にされます。悪態を吐かれ、「パパの嘘つき!」と無慈悲なまでになじられます。
家にいたくない伸二は、用もないのに街へ出ます。すると、会社をクビになった山田に出会います。「いまではこのあり様です」と、チラシ配りのアルバイトをする山田に、「仕事があるだけマシですよ」と、つい弱気な本音が口を吐いて出ます。
長女の美代子が食あたりで入院します。どうなるかと心配したものの、経過は良好です。すると次は入院費の心配です。不安げなすが子に対して伸二は強気と弱気、開き直りとあきらめの複雑な表情をしてみせます。
美代子は元気に退院しますが、家に帰ったすが子のタンスの中が空っぽです。泥棒に遭ったのではなく、伸二が売りさばいたのです。目に涙を溜めるすが子を横目に、伸二は子どもたちと美代子の全快を祝っています。「せっせっせえ~のよいよいよい」。繰り返し、繰り返し、手遊び歌で伸二ははしゃいでいます。これでもかこれでもかと、最後はすが子も加わります。
東京の合唱の結末
職安の帰り道に、中学校時代の先生に出会います。定年退職した先生は、いま洋食屋「カロリー軒」を経営しています。カレーを食べさせるその店で伸二はアルバイトを始めますが、チラシ配りです。
丸の内のオフィス街でチラシを配っていると、脇を通る市電の中から「あっパパだ!」。子どもたちが叫びます。すが子も振り返りますが、見て見ぬふりをします。世間体を気にするすが子はその夜、チラシ配りに腹を立てますが、夫の苦労が並大抵でないことを知ると、自らも「カロリー軒を手伝う」と言って夫を励まします。
カロリー軒ではその日、中学の同窓会が催されています。テーブルを設えた店内では、恩師夫婦と伸二夫婦とがカレーづくりに精を出しています。そこへ同級生のみんながやってきます。先生を中心にカレーパーティがはじまります。飲むほどに酔うほどに座が盛りあがる中、先生はその日、伸二に就職先を紹介します。
さしあたり女学校の英語教師の口がありました。伸二は栃木県へ赴任することに決めます。「都落ち」ですが、伸二とすが子は再起を誓います。カレーパーティのお開きでは同級生全員が輪になって『寮歌』を合唱します。
以上、映画「東京の合唱」のあらすじと結末でした。
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