あしたのジョー劇場版の紹介:1980年日本映画。高森朝雄(梶原一騎)原作、ちばてつや画のボクシングを題材にしたスポーツマンガ『あしたのジョー』を原作にしたアニメ映画です。1970年にフジテレビ系で放映されたテレビアニメに力石戦までを再編集したストーリーとなっています。
監督:福田陽一郎 原作:高森朝雄、ちばてつや 声の出演:あおい輝彦(矢吹丈)、藤岡重慶(丹下段平)、岸部シロー(マンモス西)、細川俊之(力石徹)、檀ふみ(白木葉子)、ほか
映画「あしたのジョー劇場版」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「あしたのジョー劇場版」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「あしたのジョー劇場版」解説
この解説記事には映画「あしたのジョー劇場版」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:プロローグ:ドヤ街に来た少年・矢吹丈
大都会東京の台東区にある山谷のドヤ街に、ふらりと一人の少年が現われました。彼は擦り切れたベージュのコートに、オレンジ色のハンチング帽をかぶり、赤いボクサーバッグを肩にかけ、口笛を吹きながら歩いていました。すると3人のヤクザ風の男たちが、「離して、離してよ」と訴える1人の幼い女の子(サチ)を強引に連れて歩いていました。
その少年は、そのヤクザ風の男たちの前に立ちはだかりました。「どきな…あんちゃん」と脅す男に、その少年は「『どきな』とはなんだい!…てめえらはドブの中でも這って行きな」と答えました。「お兄ちゃん、やめたほうがいいよ」と言って少年に駆け寄ってきた女の子を、男たちの1人は無理矢理その少年から奪い、胸ぐらをつかんでビンタしました。どうやらその女の子は、貧しさと空腹から、屋台のおでんを一口、無銭飲食したようでした。女の子は地べたに座り、泣きじゃくりました。するとその少年は、くすっと笑うと、近寄ってきた男を突然、殴り飛ばしました。直ぐさま、かかってきた残りの2人男たちも、その少年はあっという間に殴り倒してしまいました。路地の家の陰から、その様子を見ていた女の子の友達らしい子供たちは、その少年に駆け寄り「すっげー」「かっこいいな~」と言っていると、泣きじゃくっていた女の子が、少年の赤いバッグをもってきて渡し、彼に名前を聞きました。少年は「俺かい、名乗るほどのもんじゃねえが…ジョー、矢吹丈」と答えました。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:丹下段平との出会い
ドヤ街の一軒の飲み屋から、1人の左目に眼帯をした出っ歯の中年男のおっさんが追い出されてきました。その男の名前は丹下段平、元強豪プロボクサーでしたが、左目のケガでタイトル戦を直前に引退し、その後自暴自棄になり、ドヤ街で日銭を稼いでは毎日酒に溺れる荒れた暮らしを送っていました。「とっとと消え失せろ!」と店主から怒鳴られた段平は、ちょうどそこを歩いていたジョーの脚にしがみつき、「待ちな!…あんまり見かけねえ面だが、流れ者か?…まあ、いいや。すまないがちょっと貸してくれ、…助けると思って、なあ、頼むぜ」と涎を垂らしながら金をせびりに言い寄りました。ジョーは段平にコートの襟をつかまれると、直ぐさま、その手を離させ、膝蹴りを段平の腹にぶち込み、倒しました。歩き去ろうとするジョーは、段平が笑いながら立ってくるのを、背後に感じ、立ち止まりました。段平は目をギラつかせ、笑いながら、ジョーに近づいて来ました。
「やれやれ、おっさん…。まだ凝りねえのかよ」とジョーは呟くと、直ぐさま翻り、段平の顔面めがけて、右ストレートを放ちました。すると段平は、ジョーの右拳を手で受け止め、持っていた杖で左からの攻撃を封じ込めました。段平は「おめえ、なかなかいいバネしてるじゃねえか…。どうだい!俺と一緒に組まねえか?“ボクシング”やる気ねえか?…そうよ、拳闘よ。おめえならできる!俺がコーチをしてやらあな」とジョーの両肩をつかんで、言いましたが、ジョーはバッグを拾い、立ち去っていきました。その夜、ジョーは川原で野宿をして眠っていました。気がつくと1枚の薄汚いコートがジョーに掛けられていました。それと冷えたおでんが2,3品、置いてありました。段平は、公園の近くで仲間の3人のホームレスとたき火を囲み、「ボクサーにとっちゃあ、体が元手よ。この寒空で万一のことがあっちゃあ」と呟いていました。すると、そこにジョーが現れました。「見ろ!やっぱり来たろうが~」と言いながら嬉しそうにジョーに駆け寄った段平に、ジョーはコートを返し、これ以上つきまとうなと釘を差しました。その時、ジョーは周りに不穏な空気を察知しました。大勢のヤクザが、ジョーに昼間やられた仕返しに来たのでした。段平はジョーを逃がそうとしますが、ジョーは「こいつらは俺の客だ」と言い、逃げようとしませんでした。ジョーはそれどころか逆に返り討ちにするつもりでした。直ぐさまかかってきた男を殴り倒すと、残りの男たちも次々に殴り倒していきました。その様子を見ていたそのヤクザのボスは「遊びはもう終わりだ」と言い、残りの部下たちに短刀を抜かせました。男たちは本気でジョーを殺す気でした。それを見た段平は、ボスに土下座してジョーを殺さないように頼み込みました。ジョーは笑って「そうこなくっちゃ~いけねえな」と言いました。段平はジョーを「バカ野郎!」と怒鳴り、殴り倒しました。段平は「これでいいんだい。やるなら俺からやれ!けどな、俺の目の黒いうちは、ジョーには指一本触れさせねえぞ~!」と言うと倒れたジョーの上に自身の体を乗せ、「やるんなら、この俺をやってからにしてもらおうかい」と言いました。ボスは怒り、「このおやじを叩きのめして、ひっぱがせ!」と部下に命じました。部下たちは段平を袋叩きしましたが、段平はジョーから離れませんでした。途中で目覚めたジョーは血を吐きながら自分を庇う段平に、「離せ!」と叫びましたが、段平は「てめえは大人しくしてろ~。…おめえはボクサーになるんだ。…おめえは俺の“あした”なんだ~!」と苦しみながらも、その場でジョーを庇いきりました。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:あしたのためにその一
泪橋警察署の留置所に入れられたジョーは、取り調べを終えた後、室に呼ばれました。ジョーは刑事の取り調べにあくびをして、「そう乱暴に呼びなさんな。こっちは哀れな被害者なんだぜ。“矢吹さん”と“さん”付けで願いたいね」と言うと、刑事は机を叩いて「なにが哀れな被害者だ!いくら向こうがヤクザでも15人もの重傷者が出たんだぞ!」と言うと、ジョーは「へえ~、15人、そんなもんだったの?」とあっけらかんと答えました。刑事が「段平おやじが庇わなかったら、お前は“なます”のように切り刻まれていたんだぞ!」と言うと、ジョーは「冗談じゃねえ。あいつががいなけりゃ、もっとかっちょいいとこ見せられたのに」と口答えしました。段平が家に戻ろうとすると、警官が待っていました。ジョーの保護者となって段平は警察署に連れて行かれました。警察署に行くと警官たち全員がぶちのめされ、ジョーは脱走していました。ジョーはドヤ街で知り合った子供たちと、廃屋に立て籠もりました。駆けつけた警官たちは、突入しようとしましたが、その前に段平は工事現場用のヘルメットをかぶり、単身、ジョーのもとに行きました。段平はジョーを自首させようとしますが、ジョーはそれに応じず、段平めがけて石を投げつけました。その投石にあった段平のヘルメットは壊れ、彼の額から血が流しだしました。段平は意を決し、ジョーの立て籠もる部屋に行き、ジョーを強烈なパンチで叩きのめし、気絶させました。段平は気絶させたジョーを抱き、救急車に運び入れました。ジョーは鑑別所に入れられました。段平に叩きのめされたジョーは憤り、悔しさを露わにしました。ある雨の日、ジョーに一通のハガキが届きました。それはあの丹下段平からでした。ジョーは悔しさのあまり、読みもせずに、それを破り捨てました。数日後、あまりの退屈さにジョーは、自分がびりびりに破いたハガキの1つを見ると、そこには「あしたのために」と書かれていました。ジョーは退屈しのぎと、興味本位から、ハガキの切れ端を集め、パズルのようにそれを組み合わせました。するとそこにはこう書いてありました。「あしたのためにその1、ジャブ。攻撃の突破口をひらくため、あるいは敵の出足を止めるため、左パンチをこきざみに打つこと。この際、ひじを左わきの下から離さぬ心構えで、やや内角をねらい、えぐり込むように打つべし。正確なジャブ3発に続く右パンチは、その威力を3倍に増すものなり」と。これを読んだジョーは、「あのおやじめ、こんな所にまでボクシングを持ち込むつもりだぜ。まいったぜ、この俺に通信教育しようってわけだ」と大笑いしました。その頃、段平は雨の中、「やってるか、ジョー。この段平様がとことん鍛えてやるぜ。いまにお前は日本一、いや、世界一強いボクサーになるんだ」とジョーに思いを馳せていました。ある日、ジョーは心理テストを受けました。富岡博士の質問にジョーは答えました。富岡博士はジョーの答えと姿を見て、「矢吹丈…この少年の性格は残忍で非情で利己的で…まるで乾ききった砂漠だ!草一本生えとらん!」という診断を下しました。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:実践!左ジャブ
そして、ある日の夜、ジョーは別の少年院鑑別所に移送され、ある部屋に収容されました。そこには目つきの悪い少年たちが、新入りのジョーをじっと見ていました。ジョーは名前を言うと、腹が減っていたので、「シャリ詰めいこうぜ」とみんなに言いました。すると、少年たちは不気味な薄ら笑いをしながら、ジョーに近づいて来ました。「どういたします?ボス」と1人の少年がこの部屋のボスらしき男に指示をこいました。「なんや新入りかい」と振り向いた巨漢の少年は、「おい、みんな、たっぷり可愛がったれ。“ネジリン棒”でも食わしてやりいや」と言うと、ジョーの周りにいた少年たちが一斉にジョーに飛びかかり、ジョーを床に寝かせて身動きがとれないようにすると、雑巾を絞り棒状にした物を口の中に入れました。次にボスは「声が出んようになったら、今度はパラシュート部隊でもやったれや」と指示しました。すると、少年たちは二段ベッドの上から、ネジリン棒をくわえさせたジョーの腹を目掛けて、次々に飛び降りました。ジョーはとうとう気絶してしまいました。夕食の時間が来ました。全員、旨そうにメシを食い始めました。すると、気絶していたジョーが起きあがり、メシを食いにやってきました。「あれだけリンチをくらったのに…」と少年たちの中、ジョーが席につくと、隣の少年が「やい!新入り!…最初のメシぐらいボスに差し上げるもんだい」と言い、ボスの方にジョーのメシを渡しました。憤ったジョーは、上着を脱ぐと、ボスの命令で殴りかかってきた少年たちを、あっという間に全員、倒してしまいました。最後に残ったボスはメシを食い終わると、ジョーの罵りに怒り、殴りかかってきました。しかし、ジョーは巨漢のボスを一発で殴り飛ばしました。立ち上がって「ぶっ殺したる…」と怒りに燃えるボスに、ジョーは「じゃあ、ここでいっちょ、段平おやじの通信教育を実際に試してみるか…。あしたのためにその一、ジャブ。ひじを左わきから離さぬ心構えで、やや内側をねらい、えぐり込みように…」と呟き構えると、殴りかかってきたボスの顔面に「打つべし!打つべし!打つべし!打つべし!…」と左ジャブを打ち、ボスの顔面を血だらけにして、完全に気絶させました。暴力的なジョーは、東光特等少年院専用船・野菊丸に乗せられました。すると、そこには鑑別所の部屋のボスで、ジョーが左ジャブで気絶させた西寛一が座っていました。西はその巨体を子猫のように震わせていました。西は、これから送られる東光特等少年院での暮らしが恐くて仕方なかったのでした。それを知ったジョーは笑いとばして、あくびをして眠りました。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:東光特等少年院、脱走計画
夜、トラックに乗せられ、ジョーと西は、東光特等少年院に送られました。檻の中から不気味に光る目が、新入りの2人を乗せたトラックを見て、薄ら笑いをしていました。この特等少年院には約300名の少年が収容され、1寮に20名ずつ、15寮に別れて生活を送ることになっていました。その寮の扉は頑丈な鉄でできていました。ジョーと西は第6寮で生活することになりました。先輩収容生は、もう床についていました。恐る恐る西は先輩を起こさないように、自分の床に着こうとしましたが、ジョーはそんなことはお構いなしに文句を言いながら、床に着きました。暫くすると、先輩たちが薄笑いしながら、起き上がってきました。それに気付いたジョーと西も起き上がりました。西は恐怖で額は汗だくになっていました。先輩たちは灯りを消して、暗闇の中で2人を袋叩きにしました。翌朝、起床のベルが鳴り、先輩たちが目を覚ますと、西はズタズタになって寝ていましたが、ジョーの姿が見あたりませんでした。ジョーは昨夜のうちに先輩を10人ぶっ倒して、便所に詰め込み、彼らの布団10枚を重ね、一番寮内で日当たりのいい場所で、悠々と寝ていたのでした。その日、先輩たちは、新入りの分際で大きな顔をするジョーと彼と一緒に来た西を、ブタ小屋に案内しました。ブタ小屋には多くのブタがいました。先輩たちは、2人をブタ小屋に強引に投げ入れ、ブタのクソやションベンの入り交じった凄まじい臭いの肥やしを、手桶に手で入れるように命じました。2人は仕方なく、手でつかみ、手桶に入れました。他の寮の先輩たちも見に来て、2人を冷やかしました。すると先輩たちは、今度は持っていた肥やしすくい用の銛をブタに刺して、ブタたちを小屋の中で走り回らせました。ジョーと西はブタたちに脚をすくわれ、汚い肥やしにまみれました。狂ったように走り回るブタたちを見て、西はこのブタに乗って脱走することを思いつきました。西はジョーにその話をし、「わしも協力するから」と言って、ブタたちを手桶でひっぱたき、もっとブタたちを暴走させました。ブタたちは2人の計画通り、ブタ小屋をぶち破り、少年院の門に向かって暴走していきました。先輩たちは、暴走するブタたちに圧倒され、逃げました。看守たちも誰も手が出せませんでした。ジョーはその中の1頭のブタにまたがり、脱走しようと試みました。門はもうすぐそこでした。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:憎い男・力石徹
その時、門の前に1台の自転車に乗った男が現れました。その男は「力石徹」という男でした。看守は「力石。危な~い!どけ!どけ!」と力石に叫びましたが、彼は自転車から降りると、暴走するブタたちの間を、見事なステップワークですり抜け、ジョーがまたがっていたブタを一撃で殴り倒しました。ジョーは門の前に吹っ飛びました。力石はその後も向かってくるブタたちを、次々と一撃で殴り倒していきました。ジョーは見事に力石によって、脱走を阻止されたのでした。先輩たちは失敗したジョーをせせら笑いました。倒したブタたちを足でこづきながら、「さあ、帰った!帰った!もう脱走ごっこは終わりだ」と言う大柄で彫りが深い顔立ちの力石に、ジョーは「あ…あと…あともう一歩というところまで脱走は成功していたんだ…それを…きさまこの俺に恨みでもあるのかっ!」と怒り狂いました。ジョーは力石に殴りかかりましたが、一撃で殴り飛ばされました。ジョーを冷静な目で見下ろす力石に、ジョーは「俺は…俺は、こんなに誰かを憎いと思ったことは、生まれて初めてだぜ」と呟きました。力石は「目に涙なんかためて、どうした? 悔しいか?」とジョーに言いました。それを見ていた先輩たちは、またジョーをせせら笑いました。ジョーは涙をふくと、立ち上がり、「ぶっ殺してやる!」と言い、力石の顔面めがけて、右ストレートを打ち込みました。力石の顔から鼻血が出てきました。次にジョーは「やや内側をねらい、えぐり込みようにして、打つべし!打つべし!打つべし!打つべし!打つべし!」と呟きながら、力石の顔面に左ジャブを連打しました。ジョーは、今度は右ストレートを打とうとしました。しかし、その時、力石がジョーの顔面に右ストレートを打ち込んできました。ジョーは「なんで…どうしたんだ俺は…こんな強烈なパンチ、くったのは初めてだ」と思いながら、身動きがとれずに地面に倒れてしまいました。ジョーは、口から血を流し、痙攣していました。その姿を見て、力石は「矢吹丈か。お前もつくづく変わった男だな。始めのジャブがプロ級の腕をもってるのに、あとの右ストレートはまるでド素人だとはな。分からねえ、まったく分からねえ」と言い、立ち去っていきました。ジョーは個室の反省房に入れられました。夜、ジョーの反省房から変な物音が聞こえるので、看守たちが覗いてみると、ジョーは上着を脱いで、汗だくになっていました。扉を開けてみると、ベッドが壁に立てかけられ、そのベッドめがけて、パンチを打っていました。ジョーは看守に注意され、「そんなことをしていると、いつまで経ってもここから出られんぞ」と言われました。ジョーはその言葉を聞いて「へ~そりゃ、嬉しいね。俺も当分、ここにいたかったんだよ」と言い、看守たちを部屋から追い出しました。そして、またベッドに向かって構えました。ベッドにあの力石の顔が浮かびました。ジョーは、力石の顔面に打ち込むイメージで、右ストレートをベッドに打ち込むと、ベッドは真っ二つに割れ、壊れてしまいました。ジョーはズボンのポケットから1通のハガキを出し、「拳キチのおっさん、よろしく頼みまっせ」と言い、ハガキにキスして、放り投げ、右ストレートをハガキめがけて放ちました。そのハガキは段平からのもので、こう書いてありました。「あしたのためにその2、右ストレート。左ジャブで敵の体勢をくずし、突破口を見いだせば、すかさず、右ストレートを打つべし。これ拳闘の攻撃における基本なり。右ストレートは、右こぶしに全体重をのせ、まっすぐ、目標をぶちぬくように打つべし。この際、打ったコースと同じ線上を同じスピードでひきもどすこと。1発でKOを生む必殺パンチなり」と。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:白木葉子の訪問
特等少年院に一機のヘリコプターが到着しました。そこから降りてきたのは、日本で有数の大富豪・白木財閥の令嬢である白木葉子という女性でした。看守たちは総出で、葉子を歓迎しました。葉子は、少年院の収容生たちを慰問するための演劇をするためにやって来たのでした。葉子が主人公の演劇が始まりました。あるシーンで罪人がムチで打たれていました。観客の収容生たちは、そのあまりの迫力に絶句しました。なぜなら、本当にムチで叩いていたからでした。そのムチで叩かれた罪人にお水を飲ませてあげる優しいきれいな主人公のお嬢様役を、葉子は演じていました。葉子が登場すると、観客の収容生たちから、歓声が沸き上がりました。よく見ると、ムチで叩かれていた罪人役は段平でした。「おっさん」とジョーは舞台に駆け寄りました。すると舞台袖には、ドヤ街の子供たちもいました。ジョーに会えた嬉しさのあまり、サチは涙を流して、ジョーに抱きつきました。その時、葉子はジョーに「あなた、お話は劇が終わってからしてくださる」と言ってきました。段平も葉子の言う通りにするように言いました。ジョーは気に入りませんでした。ジョーは「やい!白木葉子さんとやら。何が劇だ!何が慰問だよ!下手な芝居をムチの迫力でごまかそうなんて、まともな神経の持ち主にやれるこっちゃあねえや。みんなが許してもな、この俺は許せねえってんだよ!」と葉子に言い放ちました。すると、観客席から「何が許せねえだ!えっ!矢吹よ!」と力石の声が聞こえてきました。ジョーが振り返ると力石が立っていました。ジョーは口笛を吹いて外に出ていきました。「ジョー、待ちな!」と力石も外に出てきました。ジョーの挑発通りでした。「お前は言ってはならないことを言った。侮辱してはならない人を侮辱した」と力石は言うと、2人は殴り合いを始めようとしました。その時、葉子が「やめなさい」と言ってきたので力石は立ち止まりました。しかし、ジョーはそんなことはお構いなしで、力石を一方的に殴り倒しました。葉子は「卑怯よ」と言い、ジョーにビンタをしました。他の収容生も外に出てきて、ジョーのやり方に憎悪や嫌悪感をいだき、今にも飛びかかって行きそうな状況になりました。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:力石の宣告
「待てよ、みんな!俺に任せてもらおうか」と立ち上がって、力石は言いました。力石は矢吹の前に駆け寄り、ファイティングポーズをとりました。今にも喧嘩になりそうな2人を、段平は止めさせ、ボクシングで決着をつけるように言いました。力石はその段平の言葉を聞いて、天高く1本の指をゆっくりと挙げました。そして、宣告しました。「1ラウンドじゃない!1分だ!1分でこのジョーを眠らせてやる」と。かつて、力石はプロボクサーでした。彼はもともとウェルター級の6回戦でデビューしました。そのデビュー以来、13連続KO勝ちを収めた天才ボクサーでした。力石はあまりにも強すぎ、そのファイトスタイルはあまりにも激しすぎました。そして、「わかき殺し屋」と呼ばれていました。しかし、ある試合で「いい気になるなよ!八百長野郎!どうせ八百長じゃねえか!」という汚い野次を飛ばした観客についカッとなり、殴り倒して、瀕死の重傷を負わせてしまいました。そして、「暴力ボクサー・力石」と話題になり、コミッショナーから無期限出場停止の処分を受け、リングを去ったのでした。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:獄中でのボクシング対決
段平の提案で、ボクシングで決着をつけることになった2人のため、葉子は少年院にリングの資材を寄付しました。そして、収容生たちは、その資材を使い、立派なボクシングのリングを作りました。数日後、ジョーと力石のボクシングでの決着の日が来ました。葉子が取り仕切りをし始めました。レフリー役は、今後この少年院でボクシング指導にあたることになった段平を彼女は指名しますが、段平はジョーのセコンドにつきたい事と公平な判定を下す自信がない事を理由に断りました。困っていた葉子にクラブ活動でボクシング経験のある少年がレフリー役をしてくれることになりました。第1ラウンド開始のゴングがなり、2人のボクシングの試合が始まりました。ジョーは段平にマウスピースというものを初めて口の中に入れられ、振り向くと、猛然と力石はジョーに迫ってきていました。ジョーは反撃のいとまもなく、力石のパンチの連打をもろに受け、とうとうダウンしてしまいました。しかし、ジョーには意地がありました。力石の1分で倒すという宣告だけは破りたかったのでした。ジョーはカウント9で立ち上がり、また、ジョーは力石のパンチの嵐をくらい続け、ダウンしましたが、1ラウンド終了のゴングがなり、ジョーは辛くも力石の宣告をうち破りました。ジョーの頭の中は力石を何とかして倒すことでいっぱいでした。しかし、力石の攻撃を受け続けたジョーは、傷だらけでした。そんなジョーの状態を見たセコンドの段平は、「これでいいんじゃ、これで」と呟きました。そう呟いた段平に、西はくってかかりました。段平は西をリング下に張り飛ばしました。西は「今のジョーに必要なのはな、人間的な暖かみや」と言うと、段平は「甘いよ。拳闘のリングに人間味なんぞ、ひとかけらほどもいらんのじゃ。必要なのはな。ファイティング・マシン…つまり、とことんまで戦いぬく非情な機械が要求されるんだ」と言い放ちました。それを聞いていたジョーは、太陽に照らされ光る力石を見て、闘志だけが蘇り、段平の手当もろくに受けず、ゴングも鳴っていないのに、力石めがけて突進していきました。力石はジョーをまた、パンチを連打し、ジョーをふらふらにしました。ジョーはロープにもたれかけ、リングサイドで見ていた葉子のほうに、口の中の血だらけのマウスピースを吐き出しました。葉子は見ていられず、立ち去ろうとしました。「これからだ、力石」と呟くジョーに、力石は「一気に決着をつけてやる」と左ストレートを放ちました。ジョーは待ってましたとばかり、ロープの反動を利用して、力石のパンチに合わせて、右ストレートを放ちました。クロスカウンターです。これは段平がジョーに送ったハガキのパンチでした。「あしたのためにその3、クロスカウンター。“打たせて打つ、肉を切らせて骨を絶つ、相打ちの必殺パンチ”。相手が全力で打ち込んでくるその腕へ、十字型にクロスの交差をさせ、同時に打ち返す。カウンターパンチは相手の勢いづいた出鼻を打つために、相手の突進と自分のパンチ力で威力は倍増する。ましてクロスさせた場合、相手の腕の上を交差した自分の腕が滑り、必然的にテコの作用を果たし3倍、4倍の威力を生み出す」パンチでした。2人は互いのパンチを顔面にもろに受け、重なるようにダウンしました。レフリーは恐る恐る近づいて、カウントを始めました。そこに段平が来て、カウントを止めさせました。2人はもうあと1時間は起きあがれないと判断したからでした。段平の判断で2人は木陰の下に休ませました。リング上では、西の仕切りのもと、寮内の代表同士でのボクシングの試合が、勝手に始まっていました。その様子を見た葉子は、「素晴らしい試合だわ。いつの間にか、みんなの間にちゃんとしたルールができて、この少年院で誰に押しつけられたことのない自主的な秩序が初めて生まれたんですもの」と賞賛すると、段平は「その通りです。激しい憎しみを叩きつけあいながら、ルールを守って戦い抜いた2人が、みんなに教えたんです」と答えました。先に眠りから覚めた力石は、石ころをジョーに放り投げ、ジョーを起こしました。2人は何も語らず、ただ、仲間たちがリング上でしているボクシングを眺めていました。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:あしたのためのその4
力石とのボクシング対決後、ジョーは農作業で鍬を右手だけで耕していました。段平はジョーが手首を鍛えるためにしていることを見抜きました。今度のボクシング対決まであと10日間しかないジョーは段平に言いました。「悔しいけど、おっさん。俺はな、力石との試合でつくづく思い知ったぜ。ボクシングの命はスナップだ。あの試合で奴の特にきいたパンチは、俺に命中したとたん、必ず手首が回ってやがる。…そいつがきくんだ。こんないい手はねえ。使わせてもらうぜ」と。そして、ジョーは段平に「だがな、…このトレーニングだけで、力石を倒せるとは思ちゃいねえ。いまいちなんかいるんだ。なんか決め手がな」と言いました。収容生の間ではボクシングが流行し、木にぶら下げたサンドバッグに収容生たちは、列を作って練習するようになりました。作業時間終了のベルが鳴り、ジョーは段平に“あしたのためのその4”を教えろと詰め寄りました。段平は、「わし、今度この少年院の専任コーチになった。お前だけにかまってるわけにはいかないだよ」と冷たく言いました。それを聞いたジョーは驚き、段平に自分のコーチをしないつもりかと、更に詰め寄りました。段平は「その必要はねえと言ってるんだよ。わしが教えようとした“あしたのためのその4”は、今、お前がやっていた手首を鍛える事なんだ。…どうしても、わしのコーチがあびたいって言うんなら、片手堀りであそこまで掘るんだな」と遠くの鉄条柵を指さしました。ジョーはひたすら段平の言う通り、片手堀りをし続けました。力石もトレーニングをし始め、段平は「さすが、力石徹。…次の試合は根性だけでは勝てねえ。いよいよ教えてやるまいて…“あしたのためのその5”。だがな、…ちーとばかし厳しいぞ。…俺を頼るなよ、ジョー!」と思いました。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:雨の中の対決
ジョーは片手掘りのトレーニングをすると、サンドバックに向かって、1人で練習をしていました。そこに力石が現れました。力石はジョーに「張り切ってるな~」と冷やかしました。ジョーは「張り切りたくもなろうぜ。1週間後にお前との一戦がひかえてるんだからな」と答えると、力石は「そいつがあいにく、ダメになったのさ」と言ってきました。ジョーは驚き、理由を訊きましたが、力石は答えませんでした。1週間後に戦えなくなった力石は、ジョーに「今、ここで勝負をつけよう」と言い、上着を脱ぐと、ジョーとリングにあがり、対決しました。空には暗雲が立ちこめ、雷が音をたて、雨が降ってきました。噂を聞きつけた収容生や段平、葉子が見守る中、2人の対決は過酷を極めました。2人はほとんどガードせず、血だらけで殴り合いました。ジョーのパンチは力石の顔面をとらえ、力石はジョーのパンチがいやに重くこたえるものになっていることに驚きながら、戦いました。力石は劣性でした。それを見ていた葉子は、「やめて!お願いだから、2人ともやめて!力石くん、あなたはあとたった3日で、この少年院を出られるのよ。…あなたはここを出られたらすぐ、プロボクサーの栄光の道が開けてるのよ。こんな小さな勝負にこだわるのは、やめてちょうだい!」と言いました。「お嬢さん、栄光の道を堂々と歩きたいからこそ、この勝負にこだわるんです。これから世界の拳闘界に華々しくデビューする男が、たかが少年院の草拳闘野郎に引き分けの星を残したとあってわ、たいへんな恥ですからね!」と力石は彼女に言い返しました。そこに段平が割り込んで、力石に殴りかかろうとするジョーを止め、「なにもそんなに慌てて白黒はっきりつけることはないだろう」と言いました。力石は白木ジムからプロにカムバックすることになっていました。段平は力石に、このジョーも出所後、自分のジムからプロボクシングにデビューさせると言い、その時に決着をつければいいと言いました。雨の中でのジョーと力石の対戦は、決着がつかないまま、これで終わりました。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:力石の出所
それから3日後、力石が出所する日が来ました。力石は白のスーツに身を固め、演壇にあがり、「俺は今日、みんなより先にシャバに戻ることになった。葉子さん、いや白木家のお世話でボクシング界にカムバックすることになったんだが、この東光少年院の教官先生はじめ、院内みんなの期待に恥じぬため、ここを出て、なお一層の努力をするつもりだ。以上」と全員に言いました。東光少年院の鉄の固い扉が開き、力石は教官先生や収容生たちの励ましの言葉をもらいながら、礼儀正しく教官先生の感謝の意を示し、去ろうとしました。その時、最後尾でそれを眺めていたジョーは、思わず「力石!」と叫んでしまいました。力石はジョーに「お前とは別れの挨拶をしてなかったな」と言うと、ジョーの方に歩いていきました。ジョーは上着を脱いで、力石の顔面めがけてパンチを打ちましたが、力石はそれを簡単にかわし、「あばよ」とジョーの背中をたたいて、門に向かって歩いていきました。ジョーは「力石!」と叫びながら、閉まる門まで走りました。力石の背中は門の外に消えていきました。力石が出所後、院内でジョーは段平の指導のもとで、日々トレーニングを続けていました。ある日のテレビタイムのとき、力石のカムバック戦が放映されました。力石は圧倒的強さで相手をKOしました。彼の鮮やかなカムバックに観ていた教官、収容生たちは、拍手と歓声をあげました。ジョーも力石の勝利に喜びました。しかし、その喜びは他の人とは違いました。それは「力石、今は自分の強さを存分に見せつけるがいいぜ。俺がシャバに出て、同じそのリングの上で、お前をずたずたに叩きのめす日が来るまでよ。その時、あの葉子お嬢様がどんな顔をなさるのかね、その面を拝むのが楽しみだぜ」とジョーは思っていたからでした。ある日、ジョーはひとり浜辺で、力石からもらった強烈な右ストレートを思い出して、「早くシャバに出て、力石を倒したい」と思い、悔しくてなりませんでした。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:ジョー、ドヤ街に帰る
それから暫くして、ジョーは晴れて出所の日が来ました。段平に付き添われ、ジョーは口笛を吹きながら、出所しようとしていました。ジョーは教官先生に礼も言わずに出ていこうとしました。収容生たちも、力石が出所するときとはまるで逆に、罵声を浴びせました。ジョーは挨拶代わりに、それにわざと戯けてみせました。「いりゃあいたで厄介だし…いなくなるとへんに寂しくなるなんて…おかしな男だよ。矢吹って奴は」とみんな思いながら、「じゃあな」と言って出所するジョーを見送りました。段平は、ジョーをドヤ街に連れ帰りました。そして、ジョーに泪橋の下の粗末な木造小屋を見せました。そこには「丹下拳闘クラブ」と看板が掲げられていました。中に入って見ると、リング、サンドバッグ、グローブ、ヘッドギア、エキスパンダーなど、ボクシングを練習する道具は一通り揃っていました。そして、練習生の名札を見ると、「マンモス西」という名札がありました。誰かと思えば、ジョーより一足先に出所したあの西でした。ジョーは驚きました。西も少年院ですっかりボクシングの魅力にとりつかれてしまったのでした。「マンモス西」はボクサーとしてのリングネームでした。次の日の翌朝から、2人がプロボクサーになるための練習が始まりました。まず、早朝のロードワークからでした。段平の乗る自転車を追いかけるように2人は土の道路を走り続けました。次は縄跳びと、2人は日々、段平のトレーニングメニューをこなしていきました。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:野良犬には野良犬のやり方
ある日、段平は日本ボクシング協会の事務所に行き、「丹下拳闘クラブ」をコミッショナーに正式に認めてもらうためでした。認めてもらわなければ、その練習生であるジョーも西もプロボクサーにはなれませんでした。段平は意気揚々と日本ボクシング協会の事務所に行きました。すると、昔の仲間たちがちょうどみんな集まっていました。昔のよしみで、段平は認めてもらうように頼み込みましたが、みんな、過去の段平の悪行を持ち出し、それを非難し、ついには段平のボクシング界への復活は悪いイメージを復活させると言い出しました。それを聞いた段平は怒り狂い、大暴れしてしまい、帰りに酒を飲み、警察に捕まってしまいました。警察に行ったジョーと西に、段平は洗いざらいを話し、謝りました。クラブに帰ったジョーは「忘れたのかよ。おっさんよ~。泪橋を負け犬の泪じゃねえ、厳しい精進の泪で逆に渡ると言ったのは、いったい、どこの誰なんだい」と段平を責めました。段平は言ったことを認めましたが、渡るにも渡る橋がないことを告げました。それを聞いたジョーは橋がなければ橋を作ればいいと言い、「おっさん、俺を野良犬と言ったな。だが、野良犬には野良犬のやり方ってもんがあるんだぜ」と言い、ある無謀な策を思いつきました。ある日、ジョーは単身、ボクシングの試合を観に行きました。それはバンタム級の注目若手ボクサー・ウルフ金串の全日本新人王決定戦でした。ウルフ金串は、段平を協会から閉め出した大鷹会長のアジア拳ジム所属のホープでした。試合はウルフ金串が勝利し、新人王になりました。ジョーは手帳を持って、ウルフ金串の控え室に行き、彼にサインをせがみました。大鷹会長に言われ、ウルフ金串はサインを書いて、ジョーに渡しました。ジョーは嬉しそうに戯けてみせ、最後にはサインをバカにし足で踏み、ウルフ金串に喧嘩を売りました。ジョーの思惑通り、怒ったウルフ金串は喧嘩に乗り、ジョーに左ストレートを打ち込んできました。ジョーは待ってましたとばかりに、得意のクロスカウンターを彼に決めました。ウルフ金串は倒れ、気絶しました。周りにいたマスコミ記者たちは、8回戦クラス以上の高等テクニックのクロスカウンターを決めたこの若者は誰なのか知りたくてしかたありませんでした。ちょうどそこには力石が白木会長と葉子と一緒にいました。力石はこの若者は「矢吹丈、丹下拳闘クラブのバンタム級の選手だ」と教えました。「丹下拳闘クラブなんて聞いたことがない」と言う記者たちに、白木ジム会長は「そのクラブの会長・丹下段平氏は、大鷹会長ら協会役員の反対でライセンスがもてない身で、そのため、この矢吹丈も優れた才能を持ちながらテストを受けてない無名の選手」だと説明しました。記者たちはこれをスクープととらえ、大急ぎで記事にしようとしました。そして、すぐに段平はライセンスを取り戻し、「丹下拳闘クラブ」は正式に協会から認可がおりました。これでようやくジョーも西もプロボクサーへの道が開かれました。ジョーは朝日を浴びて、ふらふらになりながら帰ってきました。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:プロボクサー・矢吹丈、デビュー戦
その後、ジョーはプロテストに合格し、晴れてプロボクサーになりました。プロボクシング6回戦、ジョーは念願のデビュー戦に臨みました。眩しいライトに照らされたリングにジョーがあがると、観客は大声援を送りました。対戦相手は、村瀬武夫という男でした。第1ラウンドのゴングが鳴りました。村瀬はジョーに猛然とラッシュをかけてきました。途中でジョーはガードを下げ、にや笑いしました。村瀬はカッときて、左ストレートを放ちました。ジョーは得意のクロスカウンターを村瀬にぶち込みました。ジョーはデビュー戦をKOで、見事に勝利をもぎ取りました。観客は熱狂しました。その後、ジョーは両手のガードをだらりと下げるノーガード戦法からのクロスカウンターで、連戦連勝をしていき、「喧嘩屋ジョー」「野生派ジョー」と呼ばれるようになりました。ウルフ金串は「技巧派ウルフ」と呼ばれ、彼は密かに来るべきジョーとの対戦で、彼を倒すための技を練習していました。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:因縁の対決、ジョー対ウルフ金串
そして、因縁の対決、ジョーとウルフ金串との試合に日が来ました。ジョーは颯爽とリングにあがると、頭からかぶっていたタオルを取りました。するとジョーの顔も体は痣だらけでした。セコンドの段平、西も痣だらけでした。ウルフ金串陣営もリングサイドで見ていた白木会長、葉子、そして力石も驚きました。ジョーもまた、ウルフ金串に勝つために、密かに段平と西の協力の元、壮絶な練習をしてきていたのでした。新聞では試合の予想は互角でした。そして、第1ラウンド開始のゴングが鳴りました。ジョーはガードをしっかりあげて、正当的な攻撃をし、ウルフ金串をダウンさせました。ウルフ金串は大鷹会長の声を聞き、カウント9で立ち上がりました。今度はジョーはガードを下げてノーガード戦法をとりました。ウルフ金串は待ってましたとばかりに、ジョーをめった打ちにしました。そして、ウルフは左ストレートを放ちました。それに合わせて、ジョーはクロスカウンターをおみまいしましたが、倒れたのはジョーのほうでした。ウルフ金串のジョーの“クロスカウンター破り”でした。ジョーはダウンしました。ダメージは深そうでした。思わずリングサイドに力石は駆け寄り、「ジョー、立つんだ!立つんだ!ジョー!」と叫びました。するとジョーは、立ち上がりました。しかし、足下はふらふらで立っているのが、やっとの状態でした。ウルフ金串はお構いなくラッシュをかけました。そしてウルフ金串はジョーに「また左ストレートを打ってやろうか」と言うと、左ストレートを放ちました。ジョーはクロスカウンターをねらい右ストレートを出しました。しかし、ウルフ金串はまたもや“クロスカウンター破り”をし、ジョーをダウンさせました。ウルフ金串はもう立ってこないだろうと思っていましたが、カウント7でジョーは立ち上がりました。ジョーは肩で大きく息をしながら、足下はふらふらでした。ウルフ金串は、レフリーの「ファイト!」の合図とともに、ジョーめがけて左ストレートを放ちました。ジョーはそれに合わせて右ストレートを放ち、ウルフ金串は“クロスカウンター破り”で右ストレートをジョーの顔面に放ちましたが、今度はジョーがそれに合わせて、クロスカウンターを決めました。ジョーの左拳がウルフ金串の顔面に深くねじ込まれました。ウルフ金串はダウンし、レフリーはドクターを呼びました。ジョーのKO勝ちです。ジョーはレフリーに手を挙げさせられると、そのまま、倒れてしまいました。段平と西がすぐに駆け寄り、段平は「ジョー、ようやった。がんばったのう」とジョーに声をかけ、泣きながら抱き上げ、ジョーは段平と西に肩を抱かれて、リングから立ち去ろうとしました。その時、熱狂する観客をかきわけて寄ってきた力石が、ジョーの前に立ち、言いました。「ジョー、俺が分かるか?俺の声が聞こえるか?…ジョー、次は俺の番だぜ」と。そして、力石は右手をジョーに差し出しました。ジョーも右手を差し出し、2人は固く握手をしました。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:力石の決意
力石はジョーと対戦する決意をしました。そのためには、フェザー級の力石は、ジョーのいる階級・バンタム級まで、体重を減らさなければなりませんでした。それのために力石は、考えつく限りのことをするつもりでした。その減量は非常に過酷なものでした。白木ジムの第2トレーニング室で、何台もの水を入れた鍋ややかんをストーブの上に置き、その水が沸騰し水蒸気が立ちこめる、まるでサウナ室のような中で、力石は、頭からサウナスーツを着て、シャドーボクシングをして、汗を流して練習していました。また、白木邸に寝泊まりしている力石は、夕食時、白木会長と葉子と一緒に食事をとるのですが、力石は、特別に白木会長が体力維持を計算したメニューの食事を用意して出しましたが、その食事にもいっさい手をつけず、下げさせました。力石はテーブルにある果物の中から、リンゴ1個だけをつかみ取ると、「これ1ついただきます」と言い、それにかぶりつきました。このような日が何日も何日も続きました。そして、ある日の夜、力石は、夜、白木ジムにふらふらになりながら、やって来ました。そして、後輩練習生に、「今夜から、俺は地下の物置に寝泊まりする。ついては頼みがある。俺が中に入ったら、外から鍵をかけてくれ。頼んだぞ」と言い、後輩に鍵を渡すと、力石は物置に向かって歩き始めました。その後ろ姿を見て、後輩は「力石さん、いったい何のために?」と問いました。力石は歩きながら心の中で呟きました。「何のために?…何のためにか?…ジョーに勝つためさ。…俺はジョーに勝つ!」と。そして、力石は物置に入り、後輩に鍵をかけさせました。一方、ジョーも日々、過酷なトレーニングを続けていました。腹筋をより鍛えるため、腹の上に巨漢の西に乗ってもらい踏ませました。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:宿命の対決に向けて
物置に寝泊まりするようになった力石は、あの第2トレーニング室の室温を70度のサウナ室のようにし、サウナスーツを頭から着込み、汗だくになりながら、体中の水分を外に出していました。汗だくになりながら葉子も一緒に入り、時間を計っていました。そして、ある時間が来ると、葉子にもたれながら、外に出るという過酷な減量を行っていました。
ある日、段平は、コミッショナーから正式に白木ジムの力石からジョーに、試合の申し込みがあったことを伝えました。段平はその申し込みを受けたとジョーに伝えました。ただ、段平の様子は普段と違い、何か悲しそうでした。それは力石と会ったからでした。ある日、ジョーは力石のバンタム級での試合を観に行きました。試合開始のゴングがなりました。力石の体は過酷な減量でやせ細っていました。そして、おかしなことに、力石の攻撃はアッパーカットの一辺倒でした。最後に力石は、左ジャブ3発と右ストレート1発で相手をコーナーまで吹っ飛ばし、KO勝ちしました。その試合の帰り道で、段平はジョーに聞きました。「ジョー、勝算はあるのかい?」と。するとジョーは「勝算?…まっ、それはともかく、今日の力石、よくやったよ。さすがだった。俺は今日まで勝つか負けるかなんて考えたことがなかった。俺が勝つ。それが決まりだったからな。あのアッパーカット戦法で、力石の奴が何を考えているのか、不気味だよ」と答えました。ジョーはジムの帰ると、対力石戦に備えて、段平と西にグローブをはめさせ、2人がかりでアッパーカットを打ち、それをかわす練習を始めました。力石はサウナ室のような部屋でサンドバッグにひたすらアッパーカットを打つ練習をしていました。その中には医師がいて、時間を計っていました。記者が一緒に部屋にいた葉子に質問しました。すると葉子はあの人は白木ジムの医者だと答えました。そして、彼女は「練習中はいつもつきっきりでいてもらうのです。彼はいま、体力の限界と闘っていますから。普通の人でしたら、限界はとっくに越えているはずです」と言いました。力石は、黙々とアッパーカットをサンドバッグにたたき込んでいました。一方、ジョーもひたすら対力石戦のため、段平と西のダブルアッパーカットをかわし、攻撃するという厳しい練習をひたすらやっていました。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:減量地獄
ある日の夜、物置で力石が寝ていると、花瓶に生けた花から一滴の水が床に落ちました。その音を耳にした力石は目覚め、花瓶を放り投げて割ると、狂ったように物置の部屋の扉を「開けろ!水だ!」と何度も叫び、叩き、とうとう頑丈な扉を壊し破って、水を求めて、部屋中を駆けめぐりました。しかし、どの部屋の水道の蛇口は針金で水が出ないように縛ってありました。そして、シャワー室に入ったとき、連絡を受け駆けつけた葉子が唖然として立つ力石にこう声をかけてきました。「冷たいお水はあなたの渇ききった体には毒だと先生がおっしゃっていたわ。でもここにさ湯があります。あなたが求めている冷たい水ほど美味しくないかもしれないけれど。…ごめんなさいね、水道の蛇口に針金を巻いたりして。いつかは必ずこうなるだろうと思っていたの。でも今までこれだけ頑張ったのですもの。さあ、あなたのよ。あなたがほんの少しでも人間らしい弱さを持っていてくれた事が私、とても嬉しいの」と。すると葉子は涙をながしながら、ガラスコップに入れたさ湯を力石の手に渡しました。力石は静かにまぶたを閉じると、「お嬢さん、そのお気持ちだけ有り難く飲ませて頂きます」と言い、ガラスコップから水を床に流しました。一方、ジョーも、段平と西のダブルアッパーカットをかわし、一変してストレート攻撃に転じたところにクロスカウンターを決めるという対力石戦のための戦法をついに、会得しました。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:宿命の対決
宿命の対決の日がとうとう来ました。力石対矢吹、史上最大の8回戦と新聞では謳われました。第1ラウンドのゴングが鳴りました。宿命の試合の開始です。力石、ジョー、ともに2人はガードを高く構えました。暫くして、ジョーはゆっくりと両ガードを下げ、ノーガード戦法の構えに入りました。力石はそれを見ると、猛然とジョーにアッパーカット戦法をしかけてきました。ジョーは練習の成果もあり、力石のパンチをかわしては、ボディにパンチを打ち込みました。第1ラウンド終了のゴングが鳴り、ジョーはコーナーに戻りました。ジョーは段平に「この試合、俺には分が悪いぜ。…弱音じゃねえ、言ってみれば、本音っていうやつだ」と言うと、ジョーは第2ラウンドに向かいました。力石はアッパーカット戦法できました。ジョーはそれをかわし続けました。ジョーの頬を力石の鋭いアッパーカットがかすめました。ジョーの頬からカミソリで切られたように血が流れだしました。第2ラウンドが終了しました。段平は急いでジョーの頬に血止めを貼りました。段平はジョーに力石がアッパーカットを打った瞬間、ボディに潜り込み、ボディにフック攻めをしろと指示しました。ジョーは段平に「ありがとよ」と小声で言いました。段平にジョーが礼を言うなんて初めてでした。段平は嬉し笑いしました。第3ラウンド開始のゴングが鳴りました。段平の「今だ、ジョー」と言う声とともに、ジョーはさっきの段平の指示通りに動きました。そして、力石の顔面をめった打ちにしました。力石はたまらず、ロープに逃げました。力石はロープで一休みすると、「その手でくるのかい」と呟き、今度はジョーの顔面にフックを連打しました。そして、ジョーの隙を見て、力石はカミソリアッパーをジョーにおみまいしました。それは今度はジョーの左頬をかすめ、頬は切れ、血が流れ出ました。ジョーはノーガード戦法で向かっていき、隙を見て力石の懐に入り込みましたが、力石の左ジャブでダウンしてしまいました。ジョーは立ち上がりましたが、力石のカミソリアッパーをかわし損ね、バランスを崩してまたもやダウンしました。第3ラウンドが終了し、ジョーは左頬も血止めを貼り、ジョーのコーナーは沈黙してしまいました。ゴングが鳴り第4ラウンドが開始されました。段平の指示通り、懐に潜り込んでからの攻撃をジョーは行いました。そして、ジョーのフックを力石がかわし、ジョーのバランスが崩れた瞬間、力石は見逃さず、ジョーの顎にカミソリアッパーをおみまいしました。ジョーはもろにくらい、マウスピースが飛び、ジョーがダウンしました。カウントが始まりました。段平は「立て!…立つんだ、ジョー!」と叫びました。ジョーはリングを這って、ロープにしがみつき、立ち上がりました。ふらふらのジョーにトドメとばかりに力石はアッパーカットを放ちましたが、途中で終了のゴングが鳴りました。みんな息をのみました。力石はジョーの顎の下で寸止めしていました。コーナーに戻ったジョーの奥歯は折れて出てきました。段平はジョーにボクシングの基本中の基本の防御と攻撃をするように指示しました。
あしたのジョー劇場版のネタバレあらすじ:運命のパンチ
第5ラウンドが開始されました。ジョーはガードを堅め、ジャブからストレートという基本の攻撃スタイルで力石に対抗しましたが、力石もそれを見て、同じように攻撃してきました。リーチ差もあり、ジョーのパンチは当たらず、力石はジョーのガードなどお構いなしに打ってきました。そしてジョーのガードが少し開いた瞬間、また、アッパーカットを打ち込みました。ジョーは口から血を吹き、ダウンしました。それでもジョーは立ち上がりました。そして、ジョーはやけっぱちになり、大振りのパンチを繰り出し続け、自らバランスを崩し、スリップダウンを取られました。立ち上がろうとしたとき、終了のゴングが鳴り、ジョーは助かりました。コーナーに戻ったジョーに段平は「しっかりしろ!」と肩をつかみ、言いました。第6ラウンドの開始のゴングが鳴りました。ジョーは力を振り絞り、立ち上がりました。またもや、ジョーは大振りのパンチを出し、隙をねらわれ、力石から一発をくらい、血を吐き、ダウンしました。それでも立ち上がり、倒そうとするジョーに、観客から「死んじゃうぞ!人殺し!」「タオルを投げろ!タオルを!」と野次が飛びました。立ち上がり構えるジョーは、相変わらず、大振りのパンチを打ち続けました。力石はそのパンチの迫力に少し押され、一瞬隙ができました。力石のテンプルに、ジョーのパンチがもろに当たりました。力石は吹っ飛ばされ、倒れる瞬間、ロープに頭を打ちました。リングサイドの葉子が思わず「力石くん!」と叫びました。力石は首を振りながら、カウント9で立ち上がりました。アナウンサーも「なんだかいやな倒れ方をしましたね」とアナウンスしました。立ち上がった力石はノーガードでジョーに迫ってきました。「なんて野郎だ。とんでもなく物騒なこと考えやがってよ」とジョーは呟き、脅え、逃げました。あまりの不気味さにジョーは震えました。しかし、ふとジョーは思いつきました。ジョーは自分もノーガード戦法の構えに入りました。力石の足が止まりました。2人ともノーガードで動かなくなりました。
この状態は第7ラウンドでも展開されました。
あしたのジョー劇場版の結末:「終わった…。何もかも…」
そして、最終の第8ラウンドのゴングがなりました。2人とも開始早々からノーガード戦法の構えで、動きませんでした。レフリーは「ファイト、ファイト」と打ち合いを促しました。観客から文句の野次が出てきました。2人はじっとにらみ合いました。拳を握り、痺れを切らしたのはジョーでした。ジョーは猛然と力石に左ストレートを打ちました。力石はこれにクロスカウンターを合わせました。ジョーはそれを破り、がら空きになった力石の顔面めがけて、渾身の力を込めて、右ストレートを打ち込みました。しかし、力石はそのストレートを体を沈めてかわし、ジョーの顎めがけて、アッパーカットをおみまいしました。ジョーはよけられず、もろにくらい、ジョーは天高く飛び、マットに倒れました。力石は思いました。「終わった…。何もかも…」と。ジョーは立ち上がろうとしましたが、立ち上がれませんでした。宿命の対決は力石のKOで幕が閉じました。ダウンしたジョーは医師の制しを振り切り、力石のところに行きました。そして、「まいったぜ、力石。あそこで、トドメのアッパーくるとはな。さすが力石だ」と笑顔でジョーは、力石に握手を求めました。力石も笑顔でその言葉を聞き、ジョーの握手に応えようとしました。しかし、力石の手はあらぬ方向に行き、力石はそのまま、倒れてしまいました。
あしたのジョー劇場版の結末:エピローグ:そして、力石は…
ジョーの控え室に記者が来ました。そして、ジョーに伝えました。「力石が死んだ」と。「第6ラウンド、矢吹が放ったテンプルへのフック、その時、ダウンした際、後頭部を強打したための脳内出血。一度も意識を回復しなかった」と。これを聞いたジョーは無言で、力石の部屋に行き、眠るように死んでいる力石の顔を見つめました。そして、ジョーは大声で叫びました。「バカ野郎! あっー!」と…。
この映画の感想を投稿する