タッカーの紹介:1988年アメリカ映画。第2次世界大戦に勝利したアメリカでは、帰国した兵士は結婚し車を持つことをアメリカンドリームの一つと考えます。プレストン・タッカー(1903年-1956年)は戦争中は軍事車両を設計し、戦後は安全性を重視した車を作ります。しかし大手自動車企業と政治家から警戒され、対立することになります。『タッカー』はフランシスコ・フォード・コッポラ監督による伝記映画で、ジェフ・ブリッジスが主演を務めます。1988年公開当時は日本からの自動車輸入がアメリカ大手自動車メーカーを脅かしていると問題になっていた時代です。映画の中で、タッカーがアメリカ大手自動車会社の没落を予想するスピーチは印象的に描かれています。2019年に『タッカー4Kデジタル・リマスター版』が公開されます。
監督:フランシス・フォード・コッポラ 出演:ジェフ・ブリッジス(プレストン・T・タッカー)、ジョーン・アレン(ヴェラ・タッカー)、フレデリック・フォレスト(エディ・デイーン)、マーティン・ランドー(エイブ・キャラッツ)、ディーン・ストックウェル(ハワード・ヒューズ)、ロイド・ブリッジス(ファーガソン上院議員)、マコ(ジミー・サクヤマ)、イライアス・コティーズ(アレックス・トレムリス)、クリスチャン・スレイター(プレストン・タッカー・Jr)、ほか
映画「タッカー」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「タッカー」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
タッカーの予告編 動画
映画「タッカー」解説
この解説記事には映画「タッカー」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
タッカーのネタバレあらすじ:起・タッカーの夢の未来の車の計画
プレストン・タッカー(ジェフ・ブリッジス)は少年時代から車に熱中し、第2次世界大戦中は軍事用の車両を設計していました。戦後のタッカーの夢は、大衆車を生産することでした。タッカーは自宅に戻ると、妻のヴェラ(ジョアン・アレン)と子どもたちに、彼が理想とする”未来の車”を紹介します。その車はシートベルトの装備、後部エンジンなどを特徴とします。
タッカーはエイブ・キャラッツ(マーティン・ランドニー)をビジネスアドバイサーとして迎え、会社と工場設立の準備を始めます。フォードを筆頭とする大手自動車会社の力が強い自動車業界に乗り込むことにキャラッツは懐疑的ですが、雑誌でのタッカーの車の宣伝は大きな反響を呼びます。
タッカーは日系人のジミー(マコ・岩松)、若いエンジニアのアレックス(イライアス・コーティズ)らを雇い、ニューヨークからの資金集めのため、ベニントン(ディーン・グッドマン)を迎えます。タッカーはワシントンでプレゼンを行いますが、そこで大手自動車会社を、自動車事故死を引き起こす人殺しと非難します。しかし、 安全性を強調した彼の車にほとんどの人が興味を持たず、キャラッツは彼のプレゼンに失望します。
しかし、参加者の一人が興味を持ち、タッカーはシカゴでの工場を獲得します。タッカーは短い期間で車を生産することを義務付けられます。
タッカーのネタバレあらすじ:承・会社資金と技術上の困難に立ち向かうタッカー
タッカーは廃車から部品を集めて自動車生産を開始します。また、彼の息子プレストン・タッカー・Jr(クリスチャン・スレイター)も大学に行かず、父タッカーから自動車づくりを学ぶことになります。タッカーは車の宣伝も開始し、投資家にも会い資金集めを続けます。タッカーは大手自動車企業の本拠地デトロイトのファーガソン上院議員(ロイド・ブリッジス)に会いますが、議員は大手自動車会社に批判的なタッカーに冷たい態度を取ります。
そんな中、タッカーは車を完成させ、工場での大規模な新車発表会を行います。発表会当日、多くの人が詰めかけますが、新車はまだ準備中で火災まで発生します。野次とブーイングを飛ばす人々の前で、タッカーはなんとか新車を見せます。新車の評判は良く、タッカーはピンチをくぐり抜けます。
タッカーは新車の宣伝で全米を回り始めます。しかし、会社の経営をするベニントンは、新車の革新的な技術がコスト高を招き、資材の鉄が大手自動車会社の圧力で高い値段で買わされていると懸念し、コスト削減のためシートベルトの装備などをやめさせようとします。タッカーの妻ヴェラまでもが危機を感じ、ベニントンに会いますが、相手にされません。タッカーは直接ベニントンに会いますが、新車の技術と経営権利をめぐり口論になります。
タッカーのネタバレあらすじ:転・新車の成功と詐欺容疑
タッカーは実業家ハワード・ヒューズ(ロイド・ブリッジス)からの連絡を受け、ヘリコプター工場があり、そこに鉄とエンジンがあるとアドバイスされます。タッカーはその工場でエンジンを手に入れ、エンジニアはヘリコプターエンジンを改良することにします。
タッカー達は試験走行を重ねて『タッカー車』は長時間、走れることが証明され、タッカーは大喜びで生産を開始します。ベニントンは自分に無断で革新技術で生産開始したことに怒り狂い、タッカーに弁護士から連絡が来ると警告します。キャラッツも、大手自動車会社に潰されるぞと警告し、辞任届けを出します。キャラッツはタッカーに詐欺士で逮捕された経歴を語り、翌日のラジオのニュース番組を聞けと言い残して去ります。
タッカーと家族がその番組を聴いていると、ファーガソン議員主導によるタッカーの詐欺容疑のニュースが流れます。そしてベニントンは工場の閉鎖を発表します。生産停止の工場で車を運転するタッカー。エンジニアは生産を再開するには、詐欺ではないことを証明するためにさらに50台の車が必要だと聞き、もう3台の生産を始めます。警察に追われるタッカーは車でカーチェイスを行いますが、最終的には自首し裁判を受けることになります。
タッカーの結末:裁判でのタッカーと彼の夢
タッカーは車を作る気などなく、資金を集めて投資家を騙したとして裁判にかけられます。工場では50台の車を生産するための作業が続きます。裁判では投資家や自動車販売店がタッカーに騙されたと証言します。ヴェラはタッカーの無実を証明しようと、会社の書類をチェックします。
ようやく、50台目の車が完成し、タッカーは車を裁判所前に並べることを指示します。裁判最終日、タッカーの最終弁論で「外の車を見ろ」と叫びます。裁判長は証拠の提出はもう遅いとします。タッカーは、アメリカの発明家と起業家がこの国を発展させてきたが、大企業はベンチャービジネスを潰そうとしている、このままではアメリカ製造業は衰退する、と述べ、ドイツや日本から製品を買うことになるとスピーチします。
タッカーに言い渡された判決は無罪。タッカーと家族は喜びます。裁判所の外では、タッカーは人々に車に乗るように呼びかけ、彼も家族と乗り込みます。自らの車の中でタッカーは家族と次のビジネスの計画を語り、幸せな時を過ごすのでした。
(映画の最後の字幕)タッカー車50台のうち6台は今(1988年現在)も使用されていること、タッカー車の革新的技術の多くが後に大手自動車会社も取り入れたこと、タッカーは1956年に生涯を終えたが彼の夢は生きていること、が流れます。
以上、映画「タッカー」のあらすじと結末でした。
この映画「タッカー」は、仮に監督がフランシス・フォード・コッポラでなくても、また製作総指揮がジョージ・ルーカスでなくても、観るに値する凄い映画だ。やっぱり、”男のロマン”を描く映画は最高だ。
この作品のテーマは、単に個人の闘いのみにとどまらず、それを押し潰そうとした権力が、結局は国家の繁栄をも妨げることになったという、政財界の過失をも訴えていることだと思う。
この作品は、車作りの物語で、実話の映画化だ。第二次世界大戦後、車大好き少年のタッカーが成長して、あらゆる点で優れた夢の車を発表する。
だが、それを量産するためのバックアップ体制作りに奔走していたところ、三大メジャーの大企業によって全面妨害されてしまう。しかも、罠にかけられて、裁判にまで持ち込まれる。
果たして、巨大な権力に立ち向かう男の行く末は!? —–。
この作品の魅力は、まず1940年代をリアリティーたっぷりに再現していることだ。更に、タッカー自身のキャラクター作りのうまさ。スマートなやり手の男ではなく、いつも人なつっこい笑顔を見せる元気タイプなのだ。
とにかく、車が好きで好きで仕方がないという、素朴な顔そのものが職人を動かし、自らも作業着姿で手を加え、その一方で資金のバックアップを依頼するために営業的にも奔走するのだ。
その彼のバイタリティーには、素直に好感が持てる。それに加えて、彼を支える家族や技術スタッフの協力姿勢にみる”純粋な美しさ”。それは、自分のためだけでなく、お金のためだけでなく、彼らが共有する”アメリカン・ドリーム”のためなのだ。
彼らは連日連夜、不眠不休で数十台の車の製造にとりかかる。正義を主張するためにも急がなければならない—–とでもいうかのように。
そんな過程で、実に生き生きと描かれる人間たちが、なんとも魅力的だ。情熱に突き動かされることによって、懸命に働く姿は、実に美しく、私は好きだ。
この主人公のタッカーを演じるジェフ・ブリッジスは、まさに見事のひと言につきる。ロバート・デ・ニーロを尊敬しているなと思わせるような、徹底した役作りの凄さ。顔をふっくらさせて、情熱のたぎる男を体現していて、かつての彼の「カリブの熱い夜」「白と黒のナイフ」などでの精悍な男とは思えないし、「スターマン」の宇宙人とも違っている。
やっぱり、実在したタッカー本人の顔にあくまで似せているのだと思う。そして、その顔で熱っぽくしゃべったセリフが、きっとコッポラやルーカスを熱くさせたのだろう。
「もし大企業が、一個人の発想を押し潰せば、進歩を閉ざすばかりか、今までの汗と涙は無駄になる。この国の存在も危ない。我々の知らぬ間に、この国はどん底に落ちて、旧敵国からラジオや車を買うことになるだろう!—–」