夜の鼓の紹介:1958年日本映画。近松門左衛門の浄瑠璃「堀川波鼓」を原作に、巨匠・今井正が初めて時代劇に挑んだ作品。時代考証を綿密に行った。脚本は橋本忍と新藤兼人の共同となっているが、実際の執筆は今井監督と主演の三國連太郎によるもの。
監督:今井正 出演:三國連太郎(小倉彦九郎)、有馬稲子(お種)、雪代敬子(お藤)、森雅之(宮地源右衛門)
映画「夜の鼓」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「夜の鼓」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「夜の鼓」解説
この解説記事には映画「夜の鼓」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
夜の鼓のネタバレあらすじ:起
鳥取藩御納戸役の小倉彦九郎は、江戸詰めを終えて国元へ帰郷。1年2ヶ月ぶりとあって、妻のお種、義妹のお藤たちが笑顔で彼を迎えます。帰郷後も江戸同様、無事日々のお役を勤める彦九郎ですが、やがて周囲の人間が自分を妙な目で見ていることに気づきます。不審に思い、親しくしている義兄に事情を聞こうとするものの、ハッキリした事を教えてくれません。業を煮やして、今度は伯父の黒川又左衛門を訪ねると、驚くべき話を聞かされます。
夜の鼓のネタバレあらすじ:承
お種が彦九郎の留守中、宮地源右衛門という鼓師と不義密通の関係にあったというのです。帰宅して詰問すると、お種はそれを否定。彦九郎は一旦は納得しますが、不義の噂はそれからも収まりません。本格的に調べる気になった彦九郎は、噂の出処が同僚の磯部床右衛門であると知り、彼を非難します。しかし磯部は、不義密通は本当だと言い張るのです。再びお種に訊ねると、彼女は隠し通せなくなったと覚悟し、真実を語ります。
夜の鼓のネタバレあらすじ:転
桃祭の日にお種が実家で宴を催した時、前から彼女に懸想していた磯辺が酒に酔って口説こうとしてきたのです。頑としてはねつけると、刀で脅してきたため、仕方なく体を任せようとしましたが、そこへ客の1人である宮地が姿を見せました。磯辺は慌てて逃亡。危険は去ったものの、今度は宮地が他人にこの事を告げないか、お種は心配になります。意を決した彼女は自ら宮地を誘惑。彼と関係を持つことでその口封じを図ったのでした。
夜の鼓の結末
告白を聞いて驚いた彦九郎はお種を責めるものの、どうしようもない状況だった事を理解し、妻を許す気になります。しかし、話を聞いた周りの人間はお家の面汚しだとお種を非難。彼女に自害を迫るのです。諦めたお種は彦九郎の前で胸を刺そうとするものの、どうしても出来ません。衝動的に彦九郎は刀を抜き、お種を袈裟懸けに切って捨てます。やがて彦九郎は家族とともに京都へ。そこに宮地が住んでいるのです。祭礼の日、その屋敷で不意を襲った彦九郎は宮地を討ち取ります。集まってきた群衆をぼんやりと眺める彦九郎。その胸には晴れ晴れとした気持ちなどありませんでした。
夫三国の疑心暗鬼に揺れる表情といい、妻の有馬稲子の不義を何とか隠そうとする女心のけなげさといい、脇を固める配役陣の豪華なこと。
誰がとがめられるほどの罪を犯したとは言えないが、結果美人妻への懸想が悲劇を生む。封建社会の名聞大事の掟が惨劇をもたらしたと言える。
さすが今井正の最高傑作の一品です。