重力ピエロの紹介:2009年日本映画。伊坂幸太郎の同名小説『重力ピエロ』を原作とした作品。仙台市に住む奥野家には弟・春の出生に関わる秘密がありました。兄の泉水は春とともに街で頻発している放火犯を捕まえようとしますが、春がその犯人ではないかという疑惑が持ち上がります。
監督:森淳一 出演:奥野泉水(加瀬亮)、奥野春(岡田将生)、奥野正志(小日向文世)、奥野梨江子(鈴木京香)、葛城(渡辺篤郎)、夏子さん(吉高由里子)ほか
映画「重力ピエロ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「重力ピエロ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
重力ピエロの予告編 動画
映画「重力ピエロ」解説
この解説記事には映画「重力ピエロ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
重力ピエロのネタバレあらすじ:起
仙台に住む奥野正志(小日向文世)、長男の泉水(加瀬亮)、次男の春(岡田将生)は、ごく普通の家に暮らす平凡な家族でした。正志は自宅の庭で蜂蜜を作っており、泉水は大学で遺伝子の研究、春は街中のグラフィティアートを消す作業をしているのでした。母親の梨江子(鈴木京香)は数年前に事故で亡くなっていて、以来家族は3人で暮らしていました。
仙台では連続放火事件が発生しており、春は街に描かれたグラフィティアートと放火の関連性を探っていました。そんな中、父の正志に癌が発覚し、病院で手術が終わるのを待っていた泉水と春は、父と母が出会ったときのことを語ります。
母の梨江子はモデルをやっており、大雪の降る街で車が立ち往生していたところに、役場の職員をやっていた正志の車が通りかかったのでした。しかし結局2人とも雪の中で立ち往生してしまい、それが正志と梨江子の出会いなのでした。
奥野家にはある秘密がありました。24年前、まだ幼かった泉水をベビーカーに乗せて帰宅した梨江子は、仙台で発生していた連続レイプ事件の被害者になってしまいます。それ以来、家に引きこもりがちになってしまった梨江子を、正志は適当な嘘をついて外へと連れ出します。しかし嘘をつくと唇を触ってしまう癖がある正志は、すぐに梨江子に嘘を見破られてしまうのでした。
梨江子は子どもを身籠っていることを知り、正志に伝えます。それはレイプ被害に遭った際に身籠った子どもでしたが、正志は子どもを産み、育てていくことを決意し、実の子どもとして泉水と同じように育ててきたのでした。
重力ピエロのネタバレあらすじ:承
春から連続放火事件とグラフィティアートの関連性について聞いていた泉水は、そこに遺伝子が関係していることを発見します。自分の得意とする分野に思わぬ関連性を見つけ興奮する泉水ですが、遺伝子と今回の放火事件との直接の関係性については判然としないままでした。
泉水は大学で友人からかつて仙台で発生した連続レイプ犯・葛城が出所し、仙台で売春を斡旋しているという話しを聞きます。泉水は探偵を使って葛城の素性を調べ、尾行して彼のDNAを採取するのでした。さらに泉水は春の部屋から毛髪を採取し、葛城のDNAと春のDNAが一致するかどうかを調べました。
結果として2人のDNAは限りなく近く、それは親子関係を示すものでした。泉水は直接葛城のもとへと出向き、自分の素性は明かさずに会います。葛城は過去の犯罪を悪びれる様子もなく、現在も売春に手を染めていました。過去に行った強姦についてもまるで武勇伝を話すように語り始め、写真まで持っていると話すのでした。
泉水はやるせない思いを抱えて、その場をあとにします。そして過去に梨江子が自動車事故で亡くなった際に、警察官に自殺の可能性について問われたことを思い出すのでした。その可能性についてきっぱりと否定した正志はその後、泉水と春の前で春がレイプ事件によって生まれた子どもであることを告げるのでした。
梨江子の妊娠を知ったとき、正志は神様に相談したと言います。「自分で考えろ」という天からの声をはっきりと聞いたという正志は、その場で春を育てる決断をしたのでした。
重力ピエロのネタバレあらすじ:転
泉水は全く更正していなかった葛城を見て愕然とし、彼を殺害することを決めます。インターネットで殺害方法を調べ、レンタカーや必要な道具を買いそろえて葛城と会う約束を取り付けるのでした。
そんなとき、春が泉水のもとへとやって来ます。春は泉水が自分に隠し事をしているのではと疑い、自分の部屋で毛髪を採取していた泉水を問いただすのでした。春は新しいグラフィティアートが見つかったことで、再び現場に張り込もうと提案しますが、泉水はそんなことに付き合っていられないと怒ります。店を飛び出した泉水は見知らぬ女性に跡をつけられているのを感じて追いかけ、それがかつて春をストーカーしていた女性・夏子さんであることに気がつくのでした。
泉水ではなく春のことを尾行していたという夏子さんは、グラフィティアートや連続放火をしていた人物が春であることを泉水に告げます。春の部屋にやって来た泉水はそこで仙台市内の地図と過去の連続レイプ事件の記事を発見し、一連の放火がレイプ事件の現場と一致していることを知るのでした。
新しく見つかったグラフィティアートには遺伝子暗号に関連した「終わり」の意味が込められており、これが最後の放火になることが暗示されていました。
重力ピエロの結末
最後の放火現場として用意された場所は、かつて奥野一家が住んでおり、梨江子がレイプされた場所でもある一軒家で、そこには春と一緒に葛城の姿もありました。春は放火のたびに葛城に放火事件の記事を送りつけており、葛城をおびき出していたのでした。
春が自身の息子であることを知った葛城は、強姦されてできた子どもを育てる家族を「恥ずかしい一家」と吐き捨てます。春は家中に撒いた灯油に火をつけると、家の中は炎に包まれるのでした。
葛城は自分の危機を悟って自分が春の父親であることを主張しますが、春は「自分の父親は癌と戦っているあの人だけだ」と話すのでした。そこに泉水が駆け付け、窓ガラスを割って家に侵入しようとします。兄の存在に気がついた春は安堵したような表情を見せ、向かい合う葛城をバットで殴ると、その場をあとにするのでした。
犯行後、正志のいる家に戻った2人は、父から癌が転移していることを告げられます。ひょうひょうとした様子で「死ぬことなんか怖くない」と話す正志は、2人に「悪いことをしなかったか」と尋ねます。なにもしていないと話す2人でしたが、春は言いながら唇を触り、それを見た正志は春に「お前は俺に似て嘘が下手だな」と、嬉しそうに話すのでした。
以上、映画「重力ピエロ」のあらすじと結末でした。
原作も読みました。原作の印象的な書き出し「春が二階から落ちてきた」の実写化に感動しました。文章からのイメージしていた雰囲気を損ねていません。キャストがみんなはまり役です。家族の形は色々でいい。最強の家族、バンザイ。