愛おしき隣人 スウェーディッシュ・ラブ・ストーリーの紹介:2007年スウェーデン、フランス、ドイツ、デンマーク、ノルウェー、日本映画。北欧の町のちょっと風変わりな人々の日常を垣間見る、ブラック・コメディー。また明日があるからと、今日もバーの鐘が鳴る。
監督:ロイ・アンダーソン 出演:ジェシカ・ランバーグ、エルザベート・ヘランダー、ビヨルン・イングランド、レイフ・ラーソン、オリー・オルソンほか
映画「愛おしき隣人」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「愛おしき隣人」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「愛おしき隣人」解説
この解説記事には映画「愛おしき隣人」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
愛おしき隣人 スウェーディッシュ・ラブ・ストーリーのネタバレあらすじ:悪い夢から起きると、そこは変わらぬ日常
線路沿いに住む男性が列車の音に戦闘機が来る夢を見たと叫んで目を覚ます。そこは変わらぬ日常。公園では犬の散歩をしている女性が誰も自分を理解してくれないと愚痴を零し、アパートでチューバを練習する楽隊員は階下の住人に怒られる。バーには人が集まり酒を飲む。ロッカーのミッケに素敵な演奏だったと、好意を寄せるアンナ。気を良くしたミッケは彼女とその友達に一杯おごる。アンナはミッケに恋をしているが、ミッケは彼女をファンだとしか思っていないのでそれが叶う気配はない。いつものように店主がラストオーダーの鐘をならす。小学校では、担任の先生が授業を始めようとするも突然泣き出してしまう。原因は夫婦喧嘩、夫に「クソばばあ」と言われたことがショックで仕方がない。絨毯屋で働く夫は暴言を吐いたことを反省するがお客に呆れられてしまう。
愛おしき隣人 スウェーディッシュ・ラブ・ストーリーのネタバレあらすじ:200年ものの食器の価値はいかに
渋滞にはまってしまった土建屋は、変な夢を見たと誰にともなく話す。自分には場違いなとても豪華な夕食の席にいるのだが、そこに集まった一家はとても陰気で、盛り上げようとしてテーブルからテーブルクロスだけを抜き取る芸を披露しようとして、失敗してしまうと言うもの。ところが失敗して壊してしまった食器はその家に代々伝わる200年ものの食器で、彼は裁判にかけられ、電気椅子に相当すると判決が下される。そしていざ電気椅子の刑に処せられる場所へ行くと、ガラス越しに一家は、ポップコーンを食べながら彼の処刑を見物しようとしていた。変な夢だったとぼやく土建屋。夢を話し終わると渋滞が少し動いた。外は激しい雷雨。バス停にはこれ以上は入れないほど人がひしめいている。カフェにいる中年男性たちは、この雨ではゴルフはキャンセルだなときめ、そのままくつろぐ。雨のせいでバーにはお客がちらほらいない。それでも店主はまた明日があるといってラストオーダーの鐘を鳴らす。
愛おしき隣人 スウェーディッシュ・ラブ・ストーリーのネタバレあらすじ:怒った床屋の復讐
床屋にて、会議があるから髪を整えるようにオーダーするサラリーマン。大事な会議で急いでいるからと急かしても、床屋はのん気に話を振ってくるので、イライラした彼は、床屋がアラブ人であることと馬鹿にする。自分の出自を馬鹿にされた床屋は、仕返しに、分け目を変えた方が良いと、バリカンでうなじから額まで一直線に剃ってしまう。さすがにやりすぎたとカフェでうな垂れていると、サラリーマンが警官を連れて怒鳴り込んでくる。床屋がただでまともな髪型にするからと約束すると、警官はやれやれと言った風で去っていく。まともな髪型と言ってもバリカンで坊主に切りそろえるだけなので、会議に集まった面々はびっくりする。会議は会社について、業績は順調だが株価が低いという問題について、役員は深刻な不満を持っているのでどうしたらよいものかというもの、議長のヨーランは問題を提起したとこで、腕が上がらないと言って、そのまま床に倒れこみ、救急車を呼んだ甲斐もなく死んでしまう。
愛おしき隣人 スウェーディッシュ・ラブ・ストーリーのネタバレあらすじ:幸せな夢と、世界の終りの予感
アンナはバーでミッケと結婚する幸せな夢を見たと語り始める。婚礼衣装に身を包み新居に帰ってきた二人。ミッケは窓辺でギターを弾いている。寝室でアンナが靴を脱いでいると、新居の窓から見える風景が車窓から見た風景のように変わって行き、やがて、二人の家はプラットホームに人のたくさんの人の集まる駅に到着する。ミッケが窓を開けると、花嫁はいないのかと催促される、アンナがミッケと窓辺に顔を出すと、プラットホームにいる人々が彼らを祝福し、大合唱を始める。そして、その歌にあわせミッケがギターを弾き始めると、家は再び進み始める。行き先は、気まま、まだ決めていない。幸せな夢だったとアンナは語る。居合わせた老人が自分は空を自由に飛ぶ夢を見たと語り始めた所で、店主は鐘を鳴らす。ラストオーダーの時間だと。ある日、男性が料理を作り、味見を妻に頼むと、彼女は窓に釘付けになる。街角にて、ギャラリーの窓掃除屋と、オーナーは空の方へ視線をやったまま釘付け。チューバ吹きはシャツにアイロンをかけながら窓の外に釘付け。崖の上でミッケへの思いを叫んでいたアンナも空に釘付け。飛行機の羽から雲を下に眺める風景に画面が切り替わる。音楽隊の明るい曲に乗せて、視界が開けていくと、眼下には街が広がっている。そして、飛行機が隊列をなした十数機もの戦闘機だと分かったところで、エンドロールが始まる。
愛おしき隣人 スウェーディッシュ・ラブ・ストーリーの結末:バーの店主の掛け声
ラストオーダーの時にバーの店主が鳴らす鐘と、また明日がある、という言葉がこの作品の中でアクセントになっている。しかし、その「明日」というものは本当に来るのだろうか。冒頭、男性の戦闘機のやってくる夢が、現実味を帯びたところで作品は終わる。思い起こすと、テーブルクロスを取ったテーブルには鉤十字の模様が入っている。急ぎの重要な会議は業績に見合わない株の下落に関してだったが、これは大恐慌を示唆しているように思う。思い思いに日々を暮らしている人々の日常があるからこそ、夢の中や、生活にすぐに見えてくるわけではないところでじわじわと始まる(かもしれない)戦争と言うものを感じずにはいられない。
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