下妻物語の紹介:2004年日本映画。嶽本野ばら原作『下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん』を中島哲也監督が映画化。孤高のロリータファッション女子高生と、時代錯誤な熱血スケバンのヘンテコだけど真っ直ぐな友情を軽妙なタッチで描く、王道ガールズ青春コメディ。カンヌJr.フェスティバルで邦画初のグランプリを得るなど、海外でも高い評価を受けている。
監督 :中島哲也 出演:深田恭子、土屋アンナ、宮迫博之、篠原涼子、樹木希林、岡田義徳、阿部サダヲ、小池栄子、荒川良々、矢沢心ほか
映画「下妻物語」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「下妻物語」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「下妻物語」解説
この解説記事には映画「下妻物語」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
下妻物語のネタバレあらすじ『孤高のロリータちゃんと、自由奔放なヤンキーちゃん』
変わり者の女子高生、竜ヶ崎桃子は孤独だった。尼崎出身で父親は元ヤクザ、茨城は片田舎の下妻で暮らしながらも、可愛いロリータファッションのお洋服を誰より愛する彼女は「友人など必要ない」などと公言してしまう自称、孤高の存在。そんな桃子に奇妙な出会いが訪れる。
桃子の父親が昔作っていたパチモノのベルサーチの服を処分するために、捨て値で売りに出したところ、買い手がついたのだ。その相手は、白百合イチゴ。可憐な名前と裏腹にレディース「舗爾威帝劉」のメンバーで、いつも特攻服やニッカポッカを着て歩くというコテコテの〝ヤンキー〟だった。パチモノという言葉の意味すら理解しようとしない無教養っぷりで、ベルサーチはベルサーチだろう、などと言い放って桃子をげんなりさせるイチゴだが、どこか憎めない根の良い奴。
これをきっかけに『ロリータちゃん』と『ヤンキーちゃん』というまるであべこべな二人が、つるむようになる。ただし、イチゴの方から一方的にだが。持ち前の脳天気さでイチゴはことあるごとに桃子に接しようとする。そのがさつな立ち振る舞いなどに、桃子はうっとうしく感じながらも、次第に心を開いていく自分に気づきはじめていた。
下妻物語のネタバレあらすじ『ヤンキーちゃんの願い。ロリータちゃんの献身』
そんなある日、イチゴは桃子に頼み事をする。舗爾威帝劉のリーダーの引退式で自分が着る特攻服へ、代官山に居ると言われる伝説の刺繍家に「ありがとう」と文字を入れてもらいたいので、東京に詳しい桃子に刺繍家を探すのを手伝ってもらいたいとだ。以前ならば、絶対に他人の頼みなど聞かなかったはずの桃子だが、これを承諾する。
だが、二人がどんなに代官山を探し回っても、伝説の刺繍家は見つからなかった。酷く落胆するイチゴ。その可哀想な姿を見た桃子は自然と、自分が刺繍を請け負うことを申し出てしまう。そして、徹夜で作業し、職人顔負けの刺繍入り特攻服を完成させた。イチゴは感嘆し、桃子へ惜しみない感謝の気持ちを送る。そのあまりにストレートで屈託のない言葉と笑顔が、桃子に彼女にとって初めての感情――友情を自覚させた。
その後、桃子は刺繍の才能を開花させる。自らのロリータファッションのアレンジを行ったものを、代官山のロリータショップ「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」の社長に見そめられ、スタッフとして働くことを薦めら、デザインの仕事を任せられてしまったのだ。
下妻物語のネタバレあらすじ『ロリータちゃんの友情。ヤンキーちゃんの真心』
ロリータファッションの業界で働くというのは桃子の夢でもあったが、突然叶ってしまうことに戸惑い、夢を生活の糧としてしまうのか、それとも、夢は夢のままとして愛し続けるのかを深く悩んで、思うように刺繍ができない。このままでは頼まれた仕事を完成させれない。彼女が悩みを相談できる相手は、イチゴだけ。「会いたいよ、イチゴ」電話口で桃子が言ったその言葉は、初めてイチゴを頼ったものだった。イチゴは暴走族グループの集会をすっぽかしてまで駆けつける。そして桃子は、イチゴに勇気づけられ、自らの夢へ真っ正面から挑む決意をする。
無事、桃子が最初の仕事である刺繍を終え、納品の期日になった時、最悪の知らせが入る。イチゴが暴走族グループから〝ケジメ〟をつけられるとのこと。理由は先日にイチゴが桃子の相談にのるために暴走族の集会をすっぽかしたせいだった。
イチゴを助けに行かなければならない。だが、それをしてしまえば、ワンピースの納品ができなくなり、夢を叶えられなくなる。それでも桃子はイチゴを助けに行くことを決断する。したこともない殴り合いの喧嘩をする覚悟をして、乗ったこともないスクーターに跨がり、だがあくまで、ロリータファッションを着込んで、レディースの集会場へと突入する。
そこではもう、イチゴがリンチされていた。助けに入ろうとする桃子だが、あっさりとレディースの一人に泥水の中へとはっ倒されてしまう。
愛するお洋服が台無しにされたことと、親友が痛めつけられたことで、桃子はぶち切れる。父親譲りの尼崎弁、それもヤクザ節全開で啖呵を切る桃子に、レディースたちは怯む。そこへイチゴが調子を合わせて、桃子が実は伝説の刺繍屋と結婚した超カリスマ的レデュースの娘であるとハッタリをかます。 これがイチゴの着ている特攻服の刺繍によって説得力を持ってしまい、暴走族達は戦意を喪失し、桃子はイチゴの救出に成功する。
桃子とイチゴは改造スクーターに二人乗りして凱旋、下妻の農村地帯を駆け抜けていく。その顔は傷だらけでも、笑顔だった。
「下妻物語」感想・レビュー
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とにかく深田さんのロリータファッションがかわいかったです。桃子のかたくなな心がイチゴと出会って少しづつほぐれて、最終的に親友になれた所がすごく良かったです。
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二人の女の子の最高にカッコいい生き方を観れる映画です。自分の信じている事だけを見つめて突き進んでいくってしんどいけれど、かっこいいって事を下妻物語から教えてもらいました。あと、お洋服への愛も。映画の途中、桃子ちゃんがイチゴに「お洋服への自分なりの向き合い方」を語りかけているシーンがあって(イチゴは全然聞いていないのですが)ジーンときました。エンディングの映像も楽しくて好きです。桃子がイチゴの特攻服を着て、イチゴが桃子のロリィタ服を着て、ふざけあってはじゃいで…どこをとっても最高!な映画です。
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「下妻物語」は、キッチュでトリッキーなオタク文化(ギークの世界観)を描き切った「マジカルワールド」なのだ。 なのでこの作品を完成させるには「膨大なエネルギー」と、並々ならぬ「集中力」とが要求されるのである。 これを敢えて一言でいうと「非常にクオリティーが高い作品」であるということになる。 またこの映画は、「いつ見たのか」「誰が見たのか」によってもその評価が大きく分かれるであろう。「人を選び時を選ぶ」「鮮度が命」の極めてセンシティブな作品なのである。 この映画を創った(撮った)中島哲也は1959年9月生まれで、私と全く同じ生年月(日だけが違っている)の同世代。つまり新旧の文化に通じノスタルジーの意味を解する、斬新なる発想を重んじる先駆者(パイオニア)なのである。 そして齢65歳(令和6年現在)の意味するものは、日本映画界の至宝である大林宣彦の全盛期をリアルタイムで知っている世代でもあるということだ。 中島は「テレビCM業界」で長年にわたり辣腕を振るい「功成り名遂げた」人物である。このことはCM界の巨匠であった大林宣彦と完全に被っている(ラップしている) そして驚いたことに両者は期せずして時を隔て「マンダム(旧社名 丹頂 1978年からGATSBYを立ち上げた)」のCMで共演を果たしている。そのマンダムのCMこそは、大林が1971年にチャールズ・ブロンソン主演の「マンダム 男の世界」を、そして中島は2006年に木村拓哉主演の「GATSBY ムービングラバー」を手掛けたのである。 樹木希林が「居合術」(或いはカメレオン)さながらに一瞬にして虫を捕まえる場面も、大林宣彦のユーモアとウィットに富んだ「映像美学」と重なるものである。スピーディーでメリハリのある展開は、カメラの切り替えで瞬時に場面が入れ替わる、「CG合成技術やアニメ映像の多様」など、どれもこれもがテレビCMで培った(或いは蓄積された)「経験則(メソッド)」なのである。CM業界の部外者ではこれらの実績や運動神経には到底太刀打ちできないであろう。 ところで「下妻物語」は、これを見た映画ファンからは圧倒的に支持され絶賛されている。その一方で専門家による評価はさほど高いとは言えない。私はこの落差がどうも腑に落ちない。なるほど土屋アンナなどが各賞を受賞したがそれだけでは物足りない。 この作品はキネマ旬報の上位入賞並びに日本アカデミー賞を独占し総なめにしてもおかしくないと考えているからだ。 この映画の中で一分の隙もない完璧な淡いピンクのロリータファッションに身を包む桃子(深キョン)が、「晴天碧空の田園地帯」で日傘を差して「うっとり」している。これは印象派の巨匠クロード・モネの名画「散歩、日傘をさす女」を彷彿させる。更にはロリータファッションと、ヨハン・シュトラウスの「ウィンナワルツ」を被せる辺りも中島の渋いセンスが光る。なるほどCM界の重鎮は「引き出しの多さが命」なのかも知れない。 桃子の父親は尼崎がルーツのチンピラヤクザ:テキ屋(神農系の渡世人)だ。 この辺りのストーリーが実に丁寧に作り込まれている。そしてそれが終盤のクライマックスで見事に生きて来る。ほぼ全ての伏線がキレイに回収されて行くのである。大阪弁(正確には神戸弁)で啖呵を切りヤクザ言葉で一気にまくし立てる桃子(深キョン)の存在が、田舎のヤンキー(レディース暴走族)を「圧倒し唖然」とさせる。何と爽快なのだろうか、これは「水戸黄門」や「遠山の金さん」と同じく日本人が好む「カタルシス効果の典型」だ。 そしてこの映画のハイライトであり、最大の見せ場は「傍若無人」の土屋アンナのヤンキーファッションである。土屋アンナの存在感と可愛さは「空前絶後」であり群を抜いてる。思いっ切り突っ張って、ヤンキー座りで凄んで見せる白百合イチゴ(土屋アンナ)は、「凛々しくて神って」いた。この「神聖なる悪ガキ」こそは、神に背いて天界を追放された「堕天使」そのものである。2004年の公開当時19歳~20歳だった土屋アンナは、正に「悪魔と天使の両性具有」(倒錯者 トランスジェンダー)であり、世界史上稀に見る「美神」であったのだ! 「悪に強きは善にも強し」(ニーチェ:ツァラトゥストラはかく語りき)と言ってもよいだろう。 私が個人的に10年来にわたって「半同棲している女」(20歳年下)も同類である。 彼女も高校を中退して「BMWやメルセデスの改造車」に乗り込んで、大阪市内で暴れていたそうだ。彼女も若かりし頃は「暴走族やヤクザ」ばかりの環境に身を置いて、「お水の世界 業界」で荒稼ぎをし、シャブを打って警察の世話にもなったらしい。彼女は背が高くて美人だが比類なき「大酒飲み」(焼酎をストレートで一晩に2ℓコース)で思い切り酒癖が悪い。幸いなことに私は自他共に認める貴重な「猛獣使い」なので、距離を置き優しく接して何とか彼女を御して(操縦して)いる。 この作品を見るのは今回が初めてであった。「下妻物語」という題名やポスターは見ていたがさほど興味はなかった。アイドル優先のPV(宣伝)作品だと誤解していたからだ。今回は〈 最高画質版 〉を入手したのでこの映画のリピーターになるつもりである。この作品を見て、この映画レビュー書くことで、私のシネマギーク(オタッキー)の欲求が満たされた。 改めまして、いつもこのスペースお借りしている「映画ウォッチ」さんに「深謝致したいと存じます。」 愚老 画狂人
ギャグのテンポとセンスが秀逸です。少しでも間がずれたりトーンを間違うと寒々しくなりそうなギャグシーンが満載ですが、すべて笑わせてくれるのは、役者さんたちの技術の賜物でしょうね。冒頭の桃子の両親のなれそめが割と下品な描写なので、家族で観るときは注意です。ただの回想にするとテンポがだれそうなところでアメコミ風のアニメーションを挟んで説明しているところが斬新で面白かったです。