栄光のランナー/1936ベルリンの紹介:2016年アメリカ,ドイツ,カナダ映画。1936年、ヒトラーが国威発揚に政治利用しようとしたベルリン・オリンピックで、史上初の4冠を達成し、ヒトラーの思惑を打ち砕いたアメリカ黒人陸上選手ジェシー・オーエンスの半生を綴った感動の伝記ドラマです。「この男、世界最速。ヒトラーにさえ、止められない」と、人種差別に苦しみつつも偉業達成までの波乱の道のりを描いています。
監督:スティーヴン・ホプキンス 出演:ステファン・ジェームズ(ジェシー・オーエンス)、ジェイソン・サダイキス(ラリー・スナイダー)、ジェレミー・アイアンズ(アベリー・ブランデージ)、ウィリアム・ハート(エレミア・マホニー)、カリス・ファン・ハウテン(レニ・リーフェンシュタール)、シャニース・バントン(ルース・ソロモン)、ほか
映画「栄光のランナー 1936ベルリン」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「栄光のランナー 1936ベルリン」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
栄光のランナー/1936ベルリンの予告編 動画
映画「栄光のランナー 1936ベルリン」解説
この解説記事には映画「栄光のランナー 1936ベルリン」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
栄光のランナー/1936ベルリンのネタバレあらすじ:1.出会い
「5歳で死にかけたのに…立派になって、お前が助かったのは偉業を成す運命だからよ。神様が生かしたの」貧しい家庭に生まれながらも、ジェシー・オーエンスは中学の頃から陸上選手として類まれな才能を発揮していました。家族からの期待を一身に背負い、オーエンスはオハイオ州立大学に進学します。そこで彼はコーチのラリー・スナイダーと出会います。
「天才は嫌いだ。努力しないからな。努力できるか?」「苦労には慣れてる」「才能は認めよう。だが問題点も多い」「去年、…同じ世界記録を…」「記録なんて一瞬で奪われる。だが金メダルを取れば、それは一生、君の物だ」次のベルリン・オリンピックで金メダルを獲得すべく、オーエンスはスナイダーコーチの下で日々、学費や家族の養育費を稼ぎながら、様々な厳しい訓練に励みます。
栄光のランナー/1936ベルリンのネタバレあらすじ:2.取り巻く情勢
しかし、その当時のアメリカ国内では、ナチスに反対してオリンピックへの不参加を訴える世論が高まっていました。「政治とスポーツは切り離すべきだ」「差別的な文書が次々と出されてる。ユダヤ人ばかりか黒人選手も出場させるなと」「大会で健在ぶりを示したいんだ。大国を参加させたい」「我々が断らないと思ってる」「国内情勢も厳しい。米国民が自信を取り戻すにはチャンピオンが必要だ」問題に苦慮したAOC(アメリカ五輪委員会)は、アベリー・ブランデージをドイツに派遣します。
ベルリンに降り立ったブランデージは、巨大なスタジアムの建設など、国威発揚のために意気込むドイツの様子を目の当たりにします。その一方、街では至る所にナチスの旗が翻り、彼らの手によって囚われていくユダヤ人の姿がありました。「あなた方は五輪を利用し、思想を広めようとしてる。世界は絶対にそれを許さない。行いを改めるべきだ。“好ましくない者”の排除はやめろ」ブランデージは厳しく批判します。「約束してくれ。ユダヤ人や黒人を出場禁止にしないと」宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスは、その頑ななアメリカの姿勢に折れ、要求を承諾します。
栄光のランナー/1936ベルリンのネタバレあらすじ:3.オハイオの弾丸
「敵でも味方でも関係ない。トラックにでれば1人だ」1935年5月25日、迎えたビッグテン選手権陸上決勝大会で、腰を痛めながらもオーエンスは、僅か45分間で世界新記録を3つ、タイ記録を1つ叩きだし、皆の度肝を抜きます。
「オハイオの弾丸」と呼ばれ、一躍時の人となったオーエンスは有頂天になり、故郷に婚約者と娘がいるにも関わらず、浮気をしてしまいます。新聞記事でその事を知りショックを受けた婚約者ルースは、約束不履行でオーエンスに訴訟を起こします。思い悩んだオーエンスはスランプに陥りますが、スナイダーの助言で思い直します。ルースに過ちを赦してもらうため、故郷の街に戻ったオーエンはルースの心を再び引き寄せ、二人はめでたく結婚します。
「今日こそ決めなければならない」1935年12月23日、オリンピックへのボイコット運動が続く中、AOC総会が開かれました。「参加に反対票を投じることは、独裁国家への反対になる」エレミア・マホニーは訴えます。「勝つ日もあれば負ける日もある。何よりも大切なことは参加することだ。歴史に名を残すのは勝者だけかもしれない。だが参加した全員が与えられたチャンスに感謝する。互いに恐れや憎しみを忘れ、ベストの力をぶつけ合う。我々が重視すべきは選手だ。チャンスは与えるべきだ」ブランデージは訴えました。そして投票の結果、AOCはベルリン・オリンピックへの参加を決定しました。
栄光のランナー/1936ベルリンのネタバレあらすじ:4.苦悩の日々
数日後のオリンピック選考会を目前に控えたある日、オーエンスのもとにNACCP(全米黒人地位向上委員会)から申し入れが舞い込みます。それはオーエンスにとって驚くべきものでした。オリンピックに出場しないでほしいというのです。今やオーエンスは黒人社会の注目の的であり、最高の陸上選手でした。そんな彼がボイコットすれば、差別を行う権力者たちへの最大の抗議になるというのです。それを聞いた父は、「行かなくても彼らは気づかない。行けば、メダルを山ほど取って、前よりも憎まれる。お前の好きにしろ。何も変わらない」とオーエンスに静かに語りました。「トラックに出れば僕は自由だ。肌の色も金も関係ないし、恐怖も憎しみもない。速いか遅いかだけだ」オーエンスにとっても人種差別は認めがたいものでした。それだけにオーエンスは大いに苦悩します。
「人の期待など気にせず、自分のために闘え。大事なことはそれだけだ」苦悩するオーエンスにスナイダーは訴えます。苦悩の中でも、オーエンスは選考会で見事、3種目において出場資格を獲得します。「誰もが君に期待してる。ヒトラーの鼻を明かすんだ。俺の代わりに君がやれ!」怪我で選手生命を絶たれたと言うライバルのユーレス・ピーコックは訴えます。「負けたらどうなる?負けたら…それはナチスへの屈服だ」「ただ走ればいい。人がどう言おうと気にしなくていい。自分の心の声だけに耳を傾けて」思い悩むオーエンスに妻ルースは優しく諭しました。そして、オーエンスはオリンピック出場を決意します。
栄光のランナー/1936ベルリンのネタバレあらすじ:5.偉業への道
ベルリンに到着したオーエンスたちアメリカ選手団を、ドイツ国民は歓迎しました。そこには一見、ユダヤ人や黒人への差別はないように見えました。むしろ問題はアメリカ選手団のコーチ陣でした。「ドイツ国家を何度も聞くことになりますよ」「降りたければ勝手にしろ!黒人のくせに…」オーエンスは公式コーチから外されたスナイダーの復帰を求め、コーチと衝突します。事態を憂慮した委員会はスナイダーを特別に認めます。
「メダルを3つ取れ」スナイダーから背中を押され、オーエンスは競技場へ入りました。巨大な競技場は群衆で埋め尽くされ、一種異様な雰囲気でした。そんなアウェイの重圧の中、オーエンスは100メートル走に出場し、見事、金メダルを勝ち取ります。次の走り幅跳びの予選、オーエンスは緊張から2回ファウルをしてしまいます。あと残り1回の時、ドイツのチャンピオンであるカール・”ルッツ”・ロングが助け船を出しました。ロングのお蔭でオーエンスは決勝戦へ進出し、ロングとの一騎打ちになります。両者一歩も引かない勝負を繰り広げた末、オーエンスはオリンピック新記録で2つ目の金メダルを獲得します。二人の純粋なスポーツマンシップに則った美しい闘いに魅了され、観客は歓喜しました。
その夜、オーエンスはロングに密かに会いに行きます。快く迎えた彼はオーエンスに秘めた思いを打ち明けます。「僕は国を愛しているが、政府は常軌を逸してる。政府は僕らの優越性を世界に示したいんだ。僕はそれは間違いだと示したい。政府はこの大会を政治に利用してる。絶対、勝ってくれ」と。
そして、ロングの言葉を胸にオーエンスは、200メートル決勝に臨みました。黒人選手であるオーエンスの連勝を憂慮したナチスは、彼の最後のレースを映像に収めないように指示しました。しかし、映画監督のリーフェンシュタールは指示を拒み、カメラを回します。そんな中、オーエンスは見事に優勝を勝ち取ります。スタジアムは彼の名を連呼する観客の声で包まれました。
栄光のランナー/1936ベルリンの結末:6.絆の勝利
残るは400メートルリレーです。「ユダヤ人選手を出さなければ、我々への共感と受け取る」完全に大会の思惑を潰されたナチスの宣伝相は、密かにブランデージに要求しました。大会前に裏取引していたブランデージは、スキャンダルが表沙汰になる事を恐れ、その要求に屈服してしまいます。その結果、アメリカチームからユダヤ人選手は外されてしまいます。オーエンスは優勝できないと抗議しますが、受け入れられませんでした。「人が本当に見たいと望み、興奮するのは墜落なんだ」スナイダーは非情な現実を皮肉りました。
「夢は託した」「負けないでくれ」スナイダーや外されたユダヤ人選手たちの言葉を胸に、オーエンスは最後のリレーに挑みました。オーエンスは第1走で好走し、アメリカチームは見事、金メダルを獲得します。オーエンスは1大会で4冠を獲得するという偉業を達成しました。ニューヨークでは100万人もの人々が、オーエンスを出迎えました。
しかし、オーエンスの快挙に対して、ホワイトハウスからの公式声明はありませんでした。オーエンスとロングの友情の絆は、ロングが第2次大戦で戦死するまで、続きました。大会後25年間、オーエンスの世界記録は破られることはありませんでした。オーエンスとルースは娘3人に恵まれ、1980年に彼が息を引き取るまで添い遂げます。そして1990年、オーエンスはその死後にようやく功績を認められ、議会から“金メダル”を授与されました。
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